NVIDIA、「3D Vision」や「ION」テクノロジーの体験会を開催
迫力の3D立体視デモやフルHD動画を再生可能なネットブックなどを展示 GF100最新情報も


1月23日開催

会場:カフェソラーレ リナックスカフェ秋葉原店



 NVIDIAは、1月23日、カフェソラーレ リナックスカフェ秋葉原店にて、技術デモンストレーションイベント「NSIST ON NVIDIA ~やっぱりNVIDIA~」を開催した。本イベントでは、同社の3D立体視システム「NVIDIA 3D Vision」による3D立体視のデモンストレーションや、最新の「ION(アイオン)」チップセットで構成されたPCによるフルHD動画再生のパフォーマンスデモなど、NVIDIAによる最新PC向けソリューションの展示が行なわれた。

 また本イベントでは、協賛の富士フィルム株式会社、コーレル株式会社、株式会社LoiLoによるNVIDIAの最新テクノロジーに対応した新製品の紹介が行なわれた。そこでは立体写真を撮影できるデジタルカメラや、3D再生を楽しめるBlu-rayデバイス、またNVIDIAの「CUDA」で大幅に高速化した動画のリアルタイム編集アプリケーションなどが実機と共に紹介された。

【会場の様子】
多くの来場者で溢れる会場内。「NVIDIA 3D Vision」をマルチモニタで楽しめる試遊台や、Acerの3D対応プロジェクタで構築された大画面の立体視環境が展示されていた
また会場内には協賛各社の製品デモや展示が行なわれており、「ION」テクノロジーを採用したネットブックやマザーボードも見ることができた



■ 動画再生に3D立体視。NVIDIAの最新ソリューションは「フルHD」がキーワード

NVIDIAの福田登氏
動画処理のパフォーマンス比較。CUDAコアによるアクセラレーション効果がわかる
動画オーサリングソフト「Reveal」による動画編集デモでは、フルHD2ストリームのリアルタイム編集がスムーズに行なわれていた

 NVIDIAが2010年に本格普及を目指す「3D Vision」と「ION」テクノロジーは、純粋にゲーム向けのソリューションとしても活用できるだけでなく、一般用途のソリューションとしても幅広く応用できるもので、すべてのPCユーザーに関係するものだ。それを反映してか、決して広いとは言えない会場には100人近い見学者が集まり、終日に及んだデモンストレーションを楽しんでいた。

 本イベントの最初に発表を行なったのは、NVIDIAの福田登氏。福田氏による「やっぱりNVIDIA NSIST ON」と題するプレゼンテーションでは、NVIDIAによる新GPU「GeForce GT 240/220」や、ネットブックやUMPC向けのチップセット「ION」についてのパフォーマンス事例が紹介された。そのキーワードは「フルHD」だ。

 まず「GeForce GT 240/220」は、フルHDの動画を2つ同時に処理できる、デュアルストリーム再生支援機能が目玉だ。これは昨年末に登場したDirectX 10.1対応のGPUで、1万円前後というローエンドからミドルクラスのボリュームゾーン向けのビデオカードに採用されている。

 そのパフォーマンスは、福田氏が提示したグラフによればCPUとの比較において動画編集処理で7倍、動画変換処理で8倍となるなど、劇的に高速となっている。これは「CUDA」で実装された動画のデコードおよびエンコードエンジンの効率性によるもので、CPUに負荷をかけずに動画を処理できるため、フルHDの動画を複数組み合わせて動画を作る際など、完全リアルタイムに操作できるようになるという。

 同じCUDAコアを持つ「ION」チップセットもフルHDの動画を再生できるパワーを供える。昨年には相次いでこのチップセットを搭載したネットブックが発売されているが、最新のニュースはAdobe Flash Player 10.1がCUDAによる動画再生支援に対応すること。これにより、YouTubeをはじめとするオンライン動画サービスのフルHD動画をスムーズに再生できるようになるわけだ。

 福田氏はIONを搭載するネットブックと搭載しないネットブックにてフルHDのYouTube動画を再生するデモを行なった。ION非搭載のネットブックでは秒間5フレームほどしかデコードできずカクつくことに対して、ION搭載型のネットブックでは全くコマ落ちすることなくスムーズに再生できており、その差は歴然だ。「現在、ほとんどのオンラインビデオはFlash対応」ということなので、そのメリットは非常に大きい。

 また、NVIDIAの3D立体視ソリューションである「3D Vision」についても言及された。今回紹介されたのは「FUJIFILM FINEPIX REAL 3D W1 CAMERA」を使って3D写真を撮影し、それをPCに取り込んで「3D Vision」で鑑賞するというソリューション。この3Dカメラは昨年富士フィルムより発売された、世界初の普及価格帯3Dデジタルカメラ。同社のビューワー「FinePix REAL 3D V1」でも3D鑑賞が可能だが、「3D Vision」を使えばPCの大画面でフルHDの立体写真を楽しめる。

 動画、3D立体視のいずれもフルHDの高詳細画質で楽しめるというのが福田氏のメッセージ。特に普及が進むネットブックでは、フルHD動画をストレスなく見られるというのは「ION」チップセットだけということなので、今後採用機種がますます増えていくことが期待される。

CUDA対応アプリケーションの例。ゲーム意外では動画編集ソフトへの恩恵が大きいようだ
120Hz 出力可能なモニターを使い、クリアな3D立体視を実現する「3D Vision」。3Dフォトなどのゲーム以外の応用も始まっている



・新GPU、コードネーム「GF100」の情報も

NVIDIAテクニカルマーケティングエンジニア スティーブン・ザン氏

 続いて登場したNVIDIAのテクニカルマーケティングエンジニアのスティーブン・ザン氏からは、NVIDIAの新GPUコア「GF100」についての情報が紹介された。「GF100」は従来より「Fermi」と呼ばれてきたもので、DirectX 11世代のGPUだ。

 ザン氏によれば「GF100」ではジオメトリ演算性能を大幅に向上されている。その性能はGeForce GTX 285の一気に8倍となり、より高ポリゴンのシーンを軽々と描画できるようになる。また、ラスタライザの改良によりアンチエイリアスが高品質化。従来の8xAAと同等のパフォーマンスで32X CSAAモードが利用できる。

 また、DirectX 11の目玉であるテッセレーション機能についての対応も目玉だ。ザン氏によれば「GF100」では4つの専用テッセレーターを搭載し、「他社製品より圧倒的に速い」パフォーマンスを実現するそうだ。

 ちなみに「GF100」というのは正式名称ではなく、「Geforce Fermiの初号機(バージョン1.00)」という意味のコードネームに過ぎない。実際の製品名はまだ決まっていないとのことだが、既に量産を開始しているということなので、近いうちに正式な発表が行なわれることになるだろう。


今回開示された「GF100」の情報のうち最も気になるのは、やはりDirectX 11関連機能。ザン氏によれば「GF100」はテッセレーション専用のユニットを4つ搭載するということなので、かなり期待できそうだ



■ 元ゲームクリエイターが開発したCUDA対応動画編集ツール「LoiLoScope」

「LoiLoScope」を紹介する杉山竜太郎氏
ユーザーインターフェイスが非常に洗練されている

 NVIDIAによる発表に続き、フジフィルム株式会社による「Fine Pix REAL 3D W1」デジタルカメラの紹介や、コーレル株式会社による3D Blu-ray再生支援機能を備える再生アプリケーションの紹介が行なわれた。いずれもゲームには直接関連しないトピックなので本稿では割愛するが、最後に紹介された株式会社LoiLoの動画オーサリングソフト「Super LoiLoScope」は少々ゲーム業界との縁がある製品なので触れておきたい。

 「Super LoiLoScope」は、まるでゲームのように直感的でユニークなインターフェイスを備える動画編集・オーサリングソフト。NVIDIAのPureVideo再生支援、CUDAエンコーダーにも対応しており、GeForce 220/240などのGPUを搭載したPCでフルHD動画のスムーズな編集が可能だ。

 このソフトを開発したのは、かつて「スペースチャンネル5」、「Rez」などの快作を手がけてきたゲームクリエイターの杉山竜太郎氏。「LoiLoScope」のインターフェイスは「ドラッグ&ドロップするだけ」、「ボタンにマウスオーバーするだけ」という簡単操作で様々な編集行為を実現できるが、このあたりの直感操作はさすがゲームクリエイターによる製品といったところだ。

 このアプリケーションでもCUDAによる恩恵は絶大で、動画の編集、出力の両方で大幅な高速化が実現されている。例えば、フルHD動画のAVCHD形式からmp4形式への変換処理では、CPUのみを利用した場合に対してエンコード時間が10分の1以下になる。

 ちなみにLoiLoを立ち上げて本アプリケーションを手がける現在に至る杉山氏は、「ネットワーク」をキーワードとするエンターテイメントで何か面白いことをしたい、と語っていた。それを反映して「LoiLoScope」にはニコニコ動画形式の出力機能がついているのだが、直接nicovideo.jpにアップロードする機能については「ドワンゴと折衝中」とのこと。

 最近はゲームのプレイ動画がオンラインビデオの一大コンテンツとなっているが、ゲームのプレイから動画の製作、そして再生までNVIDIAのGPUが活躍するとなれば面白いことだ。その一環となるアプリケーション「LoiLoScope」は、LoiLoのホームページにて無料体験版が公開されているので、ゲーム動画の作成に関心のある方はチェックしてみよう。


多くの人が詰め掛けた会場は、12時から18時まで、様々なNVIDIAテクノロジーの関連製品を実際に見ることができた。展示内容のメインとなっていた「3D立体視」は、今後ゲームや映画など様々なコンテンツが登場する予定だ

(2010年 1月 25日)

[Reported by 佐藤カフジ ]