JOGA、「オンラインゲーム市場統計レポート2009」発表会を開催
2008年の市場規模は1,239億円、市場振興に向けた次の一手は?
一般社団法人日本オンラインゲーム協会(JOGA)は、7月13日に都内で、「オンラインゲーム市場統計レポート2009」発表会を開催し、同協会が独自に調査を行なっている2008年のオンラインゲーム業界の統計と、その分析結果を披露した。
JOGAは、経済産業省関東経済局の外郭団体であった時期も含め、2005年から例年オンラインゲーム業界に関する統計資料を作成している。会員企業およびそのほかのオンラインゲーム事業者へのヒアリングによって作成されるこの資料は、事業者が資金を調達する際等の基礎資料にしてもらうといった形での活用が想定されており、フルバージョンについては昨年版以降、株式会社エンターブレインのサイトでオンライン販売されている。その最新バージョンである2009年版の完成披露が今回の発表会の目的となる。
■ ユーザーニーズに即応することで高成長を続けてきたオンラインゲームビジネス
2004年から2008年にかけてのオンラインゲーム業界に関する統計資料の説明と、オンラインゲーム産業の特質を語る、日本オンラインゲーム協会 会長 植田修平氏(ゲームポット) |
発表会冒頭では事務局長を務める有限会社コラボ 代表取締役 川口洋司氏の紹介を受けてJOGA会長のゲームポット代表取締役社長 植田修平氏が登壇し、「JOGAオンラインゲーム市場調査レポート2009」の概要に関して逐次解説していった。
植田氏はまず「日本オンラインゲーム協会では、前身に当たるオンラインゲームフォーラム時代も含めて、2004年から継続的にオンラインゲーム事業の統計資料を作成しています」と述べ、資料に出てくる会社数や金額などについて、順に説明していった。第1に語られたのはオンラインゲーム会社の数で、2006年の128社をピークとして、2007年には114社に減少し、これが2008年に126社まで増えたことを、スライド資料で示した。
植田氏の説明によれば、2007年の減少は主として「PCオンラインゲーム会社の二極化」すなわち「大きなヒットタイトルを持つPCオンラインゲーム会社が成長し、中小の会社がユーザーを減らしていく」という経緯によるものであり、「2008年も依然としてPCオンラインゲームにおける新規事業参入は低調が続いている」という。そして「2008年の会社数増加は主としてコンソールゲームのオンラインゲームタイトルが増加したため」とのことだった。
こうした動きをタイトル数ベースで2007年の数字と比べて見たとき、サービス継続タイトルが微減、新規タイトルが微増で、トータルでは503本から515本(ともにPC/コンソール合計)と、若干ながら成長している。話をPCオンラインタイトルに限定した場合もほぼ傾向は同様で、2007年、2008年のサービス継続タイトルはそれぞれ195本と189本、新規タイトルは70本と82本、合計のサービス本数では265本から271本へ、という結果になる。
なお、今回のレポートの対象となっているのは、MMORPGやオンラインFPSといったいわゆるオンラインゲームだけではなく、オンラインプレイに対応したPC/コンシューマタイトルも含んでいる。このため、いわゆる純粋なオンラインゲーム市場の統計データではない点に注意して欲しい。
ユーザーのプロファイル情報の説明では、オンラインゲームにおける課金ユーザーは「20代がほぼ半数を占めている」状況だそうで、細かく見ていくと19~22歳が17.8%、23~29歳が28.0%で、30~39歳は24.9%。年代の区切りが均等でないためややわかりづらいが、確かに大半が社会に出る年齢である22歳を待たずしてオンラインゲームの課金ユーザーは増え始め、何かとお金のかかる年齢であるせいか、ゲームをプレイする時間の問題なのか、30代、40代ではぐっと減る傾向にある。
1人のプレーヤーがオンラインゲームにかけるお金については、2004年以降定額制のゲームが緩やかに下降し、アイテム課金サービスでの支出が緩やかに伸びている。ただし、アイテム課金については2006年にいったん落ち込んでいるのが興味深いところで、植田氏によるとこれは「2006年にタイトル数が急激に増えたため、プレイされるタイトルが拡散し、一定の作品をプレイし続ける場合に比べて総支出が減った」ためとのことだ。
「2004年の調査開始以降、オンラインゲームは毎年2ケタ成長を続けている」と胸を張る植田氏の見解によるならば、オンラインゲームビジネスの本質は「提供コンテンツの中身にユーザーのニーズを素早く反映させ、それを比較的安価に提供するという意味で、まるでユニクロのような“ファストコンテンツビジネス”」たるところにあるとのことだった。
■ VISAと共同で不正アクセス対策を策定し、推進する
「不正アクセス・RMT分科会」の取り組みと成果について報告する、日本オンラインゲーム協会 理事の浅井清氏(ガマニア・デジタル・エンタテインメント) |
市場統計の話題に続いては、ガマニア・デジタル・エンタテインメント 浅井清氏から「不正アクセス・RMT分科会」の活動に関する説明が行なわれた。浅井氏によるとJOGAでは「ビジネスマッチングや人材リクルートのための冊子作り、教育機関での講演やゲーム内広告に関する研究など、業界全体に関わる課題に取り組んでいる」とのことで、不正アクセスとRMTへの対応についても、そうした取り組みの一環である。
浅井氏の説明によると、例えば2007年と2009年で比べたとき、不正課金被害に遭ったことのあるオンラインゲーム会社の割合は81%から87%へ、チートやBOT利用は94%から100%へ、アカウント盗用が69%から100%、サーバーアタック/ネットワーク侵入が56%から80%へと、不正アクセス被害はいずれの分野でも広がっている。これに対して「日本オンラインゲーム協会では信販会社であるVISAと連携しつつ、分科会の下に『セキュリティワーキンググループ』と『RMTワーキンググループ』を組織し、情報の共有と不正対策の検討をいっそう進めていく」ことを予定しているという。
また浅井氏が強調したところによれば、不正アクセス・RMT分科会の活動によって日本オンラインゲーム協会会員企業では、VISAおよびJOGAが推奨する画像セキュリティ手法である「3Dセキュア」の普及率がかなり高くなっており、ユーザーに安全な決済環境を提供できているという。また、2006年のオンラインゲームフォーラム時代に制定した「オンラインゲーム」の改定を7月末ないし8月のタイミングで完了し、公開を予定しているとの話で、そこでは日ごとに深刻の度合いを深めているチートやクラッキング被害も扱われ、さらに未成年ユーザーを意識した「保護者の方へ」という注意喚起項目も加わる予定だ。
■ PCオンラインゲーム会社向けのカンファレンス開催を構想?
発表会に出席したのは、メディアおよび会員企業のスタッフを含め30数名ほど |
今回の発表会で司会を務め、発表会後に日本オンラインゲーム協会の今後について語ってくれた、事務局長の川口洋司氏(コラボ) |
ご存じのようにリーマンショックを起点とする経済不況は、現在のオンラインゲーム業界に重くのしかかっている。だが、それ以前に、少なくともPCオンラインゲームの分野では、ある程度の淘汰が発生していたように感じられる。
植田氏の説明における「二極分化」は、まさしくそういった状況を意味するものとして聞くべきで、それは現在も続いていると見るのが正しいだろう。新規サービスタイトルの多さは、市場としては依然活気があることを示しており、同ジャンルの作品同士の競争も激化の一途を辿っている。オンラインゲームの未来は決して暗いわけではない。また、今回の統計では扱われていないものの、新しい市場としてブラウザゲームやモバイルゲーム市場も十分に成り立ちつつある。むしろ課題は、JOGAそのものにあるように感じられる。というのも、会員構成からしてややわかりづらいところがあり、例えばガンホー・オンライン・エンターテイメントの不参加に代表されるとおり、PCオンラインゲームに限定した場合ですら、依然として業界全体の意見を代表する存在とはなり得ていない。その点を踏まえつつ発表会終了後、事務局長を務める川口氏に、今後JOGAが目指す方向性について聞いてみた。
川口氏によれば、日本オンラインゲーム協会は「業界振興のための団体」であり、また「オンラインゲームフォーラムからの正式発足時に、会員構成はほぼPCオンラインゲーム関連企業のみになった」という。これを受けて、今後はPCオンラインに特化した技術情報交換やマーケティングを充実させていく方向に進むことを検討しているという。
また、ブロードバンド推進協議会のAOGCがOGCとなって題材をWEBコミュニケーションビジネス全般へ広げ、CESAのCEDECがPC/コンソールを問わずゲーム開発技術全般を扱うなかで、JOGAとしてはPCオンラインにフォーカスしたカンファレンスの開催なども視野に入れているとのことだった。
さらに、今後の統計資料のあり方について「今後、携帯電話用ゲームも対象にすべきだという意見が、会員企業からも出ている」そうなので、PCオンラインゲームパブリッシャによる新たなビジネスチャンスの模索として、携帯電話用ゲームのリサーチが始まる可能性もあるそうだ。
官と民とのパイプ役、法整備に当たっての意見集約など、我が国で業界団体に求められる一般的な役割と比べたとき、現時点で日本オンラインゲーム協会が担う役割は、必ずしもそうした包括的なものではない。しかし、例えば信販会社との協力や合意形成など、オンラインゲーム会社がまとまって取り組むべき問題を担当しているのは事実であり、有用な役割の模索は堅実に続けられているようだ。カンファレンスの構想に限らず、彼らが今後のオンラインゲームビジネスを見据えて果たそうとする役割に、引き続き注目していきたい。
□日本オンラインゲーム協会のページ
http://www.japanonlinegame.org/
(2009年 7月 13日)