マーベラス、PSP「西村京太郎トラベルミステリー 悪逆の季節」発売記念カンファレンス
西村京太郎氏、「ゲームがリリースされやたらうれしい。自分もプレイしています」


6月4日 発売予定

価格:5,040円

CEROレーティング:C(15歳以上対象)


パッケージ写真。「くろしお」と白浜の風景が描かれ、小説のカバー風のデザインとなっている

 株式会社マーベラスエンターテインメントは、6月4日発売予定のPSP用トラベルミステリーアドベンチャー「西村京太郎トラベルミステリー 悪逆の季節 東京~南紀白浜連続殺人事件」の発売記念カンファレンスを、神奈川県の湯河原にある西村京太郎記念館において開催した。同イベントには西村京太郎氏も出席し、トークショウでは執筆における秘密の一端なども語られた。

 「西村京太郎トラベルミステリー 悪逆の季節 東京~南紀白浜連続殺人事件」は西村京太郎氏の原作・監修のアドベンチャーゲーム。ゲームオリジナルのストーリーで、同氏の作り出した人気キャラクタの1人である十津川警部が登場する。「トラベルミステリー」と言うことで時刻表を使ったトリックはもちろん、聞き込み、張り込み、尾行など地道な捜査を進める中で犯人を追い詰めていくこととなる。

 事件はある真夏の深夜に起こる。ジョギング中の男がボウガンによって殺された。殺された男の手には数枚の女性の写真が握られていた。はじめは単独の殺人事件として捜査がスタートするが、実は連続殺人事件の始まりに過ぎなかった……。事件は東京だけにとどまらず南紀白浜へと舞台を移していく。

 

 基本的にはオーソドックスなアドベンチャーゲームで、プレーヤーは十津川警部となり相棒の“カメさん”こと亀井刑事ら部下と共に捜査本部を中心に情報を集めながら推理し、事件の暗部に迫っていく。流れ的には捜査会議が中心となり、捜査員の意見を聞きそこから聞き込み捜査を行ない情報を集めていくこととなる。聞き込み捜査は行動回数制限があり規定回数に達すると1日が終了する。

 事件が進展すると捜査活動の中には張り込みや尾行、モンタージュ作成など、様々な捜査が発生する。さらにキーワード入力システムで容疑者の名前を入力しなければならない場面も登場する。プレーヤー自らが捜査しているという雰囲気を盛り上げてくれそうだ。

 発表会に出席した同社のチーフクリエイティブオフィサーの和田康宏氏は、同作が15~6年前に3DOで発売されていたことを明かし、「評価は高かったが多くの人に遊んでいただけなかった」と振り返った。現在はPSPが普及していることから「過去の名作を新たな技術で蘇らせ、今度こそより多くの人に遊んでいただこうという意気込みで作った」と語った。

 和田氏によれば3DO版はよりテレビドラマに近く、実際に俳優さんが演じて所々で推理していくスタイルだったというが、今回は登場キャラクタは3Dのシルエットモデルで描かれており、モーションキャプチャーで常に演技するという。このシステムを採用したことにより、怪しい動きをする登場人物がいるかもしれないし、登場人物がなにかを誤魔化しているかもしれないという。シルエットモデルがただ漫然と動いているわけではなく、これらのモーションが事件を解く鍵になるかもしれないと言うことで、より臨場感を感じてもらえるようこだわったという。このほかにも尾行や張り込みなどシステム的に進化しており、より捜査を楽しめるようなっているという。

 プロデューサーの中野魅氏は「PSPということで本でも読むように気軽にプレイしてもらいたい。だが、小説やテレビドラマと違い、ゲームというインタラクティブなメディアを楽しんでもらいたい」と切り出し、十津川警部と亀井刑事の独特の掛け合いなど見所も多くこのゲームでしか楽しめないシナリオという点を強調。

 ゲームであるためプレーヤーが自ら捜査することになるわけで、「小説であれば必ず証拠は見つかるが、ゲームなので絶対必要な証拠を見逃すこともある。捜査によってはエンディングが大きく変わる(中野氏)」と言い、ゲームであることのおもしろさをアピールすると共に、今作では「『トラベルミステリー』を如何に楽しめるかに注力した」と時刻表トリックなどの西村京太郎氏の作品として重要な部分を取り込んでいる点にも触れた。


原作・監修を担当した西村京太郎先生。自身の作品がゲーム化されて「やたらうれしい」とコメント元となった3DO版については他のクリエイターも絶賛していたことなどを明かしたチーフクリエイティブオフィサーの和田康宏氏プロデューサーの中野魅氏。ゲームの魅力をアピール。ちなみに南紀白浜への取材旅行は楽しかったのだとか
キャラクタは3Dのシルエットモデルで描かれており、細かく演技する。怪しい人は怪しい雰囲気を醸し出したり、怪しいのに普通のフリをしたり……演技も捜査のヒントの1つとなるようだ推理モノ、犯罪モノと言えば“崖”。と言うことで「西村京太郎トラベルミステリー 悪逆の季節 東京~南紀白浜連続殺人事件」においても見事な崖が登場する現在配信されている体験版でも見ることができる、物語の冒頭で発生する東京での殺人事件。この時は単発の事件と思われたが……
西村京太郎氏と言えばまず思い浮かぶのは「トラベルミステリー」。今回もたっぷりと鉄道関係の謎が用意されている。鉄道が登場する時は時刻表だけでなく実際に電車に乗り、歩き回って細かな取材を行なうという西村氏。発表会で西村氏は「時刻表を見れば大概(謎は)わかります」と仰っていた。今回も時刻表を巡る謎が登場するようだ。プレーヤーのみなさんには、時刻表をじっくりと眺めて事件の真相に迫っていただきたい
オフィスや会議室で捜査会議を開いて捜査員のみなの話に耳を傾け捜査を進めることができる(上段左、中央写真)。また、各員に仕事を割り振るなど、十津川警部になりきって捜査を進めることができる。このほかにも入力によって誰が犯人か推理したり、尾行、モンタージュの作成、張り込みなども行ないながら、犯人を追い込んでいく



■ 西村京太郎氏の創作活動の基本はやはり取材

湯河原の西村京太郎記念館の1階にある「茶房にしむら」にて記者会見は行なわれた

 発売記念カンファレンスの中盤に登場した西村京太郎氏は、このところ氏の作品のゲーム化が相次いでいる点について、「やたらうれしいんですよ」と相好を崩した。ゲームだけでなく映像化も相次いでいるが、この点について「(十津川警部は)少しかっこよすぎ。良いんだけど、もっと泥臭いんじゃないかな」と注文を付けながらもまんざらでもないようで、「影響を受けて原作もかっこよくなってきた。身長も最初の設定では(自分がモデルだったので)165cmの中肉中背だったけど、今では173cm」と続けた。

 西村氏はゲームについて「やりますよ、サスペンスは良いですね。ぴょんぴょん跳ねるのはダメですね(アクションゲームなどのこと)」と笑いながら答えたが、自身の作品がゲーム化されたタイトルについては「難しいですね」と評した。

 PSP「西村京太郎トラベルミステリー 悪逆の季節 東京~南紀白浜連続殺人事件」もトラベルミステリーと言うことで時刻表トリックなど鉄道関係のトリックなどが多数登場するが、西村氏は時刻表が好きで毎月購入し見ているという。たとえば春夏秋冬と季節毎に臨時列車などが走るが、これを登場させると「小説を連載しているうちに走らなくなってしまうので使えない」といった内幕も明かした。

 では時刻表だけを眺めながら作品を書いているのかと言えば、それは違い、必ず駅や列車を見に行くのだという。西村氏は「列車に乗ったら歩き回ります。1分と言えば60秒ですから、その間になにができるのかと考えたり、列車の端から端までくらいなら歩けるかもしれない。以前、車掌に『この棚に死体を隠せますか?』と尋ねたことがある。すると車掌は『まぁ、乗るかもしれませんが、棚に鍵はかけられませんから隠せませんね』と答えてくれました」と数多くの取材を元に作品が成り立っていることを明かした。このほかにも「トイレに死体を隠せないかと考えたこともある。トイレがあるかどうかは時刻表に書いていないので調べておかないと。最近は特急以上は窓が開かないことが多い。窓が開くかどうかも確認しておかないと」と細かく指摘していった。

 西村氏は「どうやって人を殺すのかな?まだ逃げられるかな?とか色々と考えています」と常に考えを巡らしているというが、「だいたい時刻表を見たら(トリックは)わかるんです」と続けた。ゲームをプレイして悩んだ時は時刻表をもう1度じっくり眺めると良いのかもしれない。

 ちなみに最近では銚子電鉄に乗ってきたとか。氏は「古い車両が1両だけで走っていて可愛らしい。昔は新幹線やブルートレインばかりだったが、最近はこういったのも良い」と語っており、近々、氏の作品に銚子電鉄が登場することもあるかもしれない。

 西村氏は最後に「ゲームを買ってぜひ楽しんでください。そして、ついでに本も買ってください」とアピール。西村京太郎氏の原作ファンはもちろん、幅広い層にアピールする作品に仕上がっているようだ。


発売記念カンファレンスが行なわれた西村京太郎記念館。湯河原の川沿いの静かな場所にあり、氏のこれまでの足跡をじっくり楽しめる記念館の玄関をくぐるといきなり犯行現場!! 血は点々と階上に続いている。犯人は2階? それとも……メイン展示室となっている2階にはこれまで出版されてきた本がずらりと列んでいる。あと3年くらいで500冊と言うことで、かなりの発行点数だ
西村京太郎氏の出版第1作「四つの終止符」の直筆原稿から始まり、愛用品も出展されている。時計、ライター、パイプなどのほか、スパイカメラとしても有名なドイツ・ミノックスのカメラもある
氏の作品は数多くテレビドラマ化されているが、そのシナリオなども展示されてている「優しい脅迫者」など氏の作品は海外でも出版されている。氏によれば海外からファンレターは届かないというが、台湾や中国の若い作家志望の人が尋ねてくることはあるとか真ん中にドンと設置されている鉄道のジオラマ(レイアウト)。実際に動かすことも可能。西村氏は「子供の頃からの夢」と語った
展示室で色々と説明してくれるロボット「エノン」。約8分で展示物を説明してくれる案内ロボット・エノンはただ案内してくれるだけでなく、「西村京太郎クイズ」も出題してくれる数々の賞状。それだけでなく大きなSLの鉄道模型も展示されている。氏の多趣味ぶりがうかがえる
記念館の一角には視聴覚ルームがあり、インタビュー映像のほか展示しきれない資料をスライドなどで見ることができる左写真はゲーム内映像で、もちろん新幹線も登場する。実は記念館の3階は氏の仕事場となっているが、ここから新幹線を見ることができる。氏は「ここから新幹線を狙えるかなと思ったが、早すぎて狙えない」とか。氏は常にいろいろなトリックや犯罪について考えを巡らしているようだ

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(C)2009 Marvelous Entertainment Inc.

(2009年 5月 27日)

[Reported by 船津稔]