スクウェア・エニックス、「2009年3月期 決算説明会」を開催
和田洋一氏「FFが今期出るかは神のみぞ知る……いや、頑張って出します」


5月19日 発売


主に2010年3月期連結決算計画を発表した和田洋一代表取締役社長
説明会の冒頭、2009年の数値に関する報告を行なった松田洋祐取締役

 株式会社スクウェア・エニックスは、2009年3月期決算を5月19日に発表した。連結経営成績については、売上高は前年同期比8%減の1,356億9,300万円、営業利益は42.9%減の122億7,700万円、経常利益が40.3%減の112億6,100万円、純利益は31.1%減の63億3,300万円となっている。

 連結事業別セグメントの売上高を見ると、モバイル・コンテンツ事業以外はほぼ全ての面で減収減益となっている。ゲーム事業は363億4,300万円で営業利益が41億6,200万円、オンラインゲーム事業は106億2,900万円で営業利益が30億8,700万円、モバイル・コンテンツ事業は70億9,200万円で営業利益が36億8,900万円、AM等事業が582億6,900万円で営業損失が9億4,400万円となっている。

 会場で配付された資料から2008年4月1日から2009年3月31日までの販売本数も明らかになった。それによればDS「ドラゴンクエストV」が135万本(国内122万本)、PSP「ディシディアファイナルファンタジー」が93万本(国内91万本)、PSP「クライシスコアファイナルファンタジーVII」が84万本(国内3万本)、DS「クロノ・トリガー」が79万本(国内49万本)、Xbox 360/PC「ラストレムナント」は国内16万本、北米22万本、欧州18万本、アジア2万本の計58万本となっている。今期の販売実績としては国内519万本(前期752万本)、北米371万本、欧州208万本、アジアその他8万本で計1,106万本(前期1,441万本)となっている。

 ちなみにPSP「クライシスコアファイナルファンタジーVII」が発売以来2009年度末までで全世界で210万本(国内83万本)の販売を達成したほか、DS「ファイナルファンタジーIV」が110万本、DS「ドラゴンクエストIV」が146万本を達成したことも明らかになっている。

 決算説明会は2009年度の内容の簡単な説明を松田洋祐取締役が行ない、その後2010年3月期連結決算計画を和田洋一代表取締役社長が説明した。和田氏は売上高1,800億円、純利益150億円といった数値を示し「『ドラゴンクエスト』と『FINAL FANTASY』が出ればそらそうだろうと思うでしょうが、我々のポイントとしては企業としてのイメージしていた骨格が出来、スタートを切れるという点がポイント」と4月に行なわれた「グループ戦略説明会」の説明を繰り返した。

 ゲームユーザーには直接関係はないが、今回の発表でスクウェア・エニックス・ホールディングスとして事業セグメント別の連結計画の表示方法を変更。これまでの会社による事業区分の分け方ではなく、家庭用ゲーム機やオンラインゲームを全て含めたゲーム事業、タイトーだけでなくスクウェア・エニックスのアミューズメントマシン部門も含めたアミューズメント事業といった具合に事業の分け方を変更している。この事業の分け方は、何度か和田氏が口にしている「エンターテインメントの事業のあり方」に立脚している。ちなみに和田氏はオンライン事業をゲーム事業に含めた理由について「家庭用ゲーム機を含めオンライン市場が全てのマシンにおいて一般化してきたことで収益化が見込めるため」と挙げている。

 ゲーム事業における今後の方針として「グローバル化」を挙げる一方で、「オンライン化」も挙げている。これはオンラインゲームタイトルの充実という意味ではなく、販売のオンライン化という意味。ソフトをオンラインで販売するという点での利点については、在庫のリスクを負うことがない点や、ユーザーにより直接的に細かく営業をかけることができる点などが挙げられる。

 現状のゲームのパッケージビジネスにおいては販売店がゲームを買い取って販売する方式であるため、販売店側がリスクを回避するために販売本数を絞る傾向が見られる。つまり欲しいユーザーがいてもその顧客の手元にソフトが届かない可能性もあり、これは販売店、メーカー共に数年前から問題視している。解決方法が編み出されないままここまで来ているが、メーカー側の1つの方針としてオンライン販売を強化していく方針とスクウェア・エニックスは挙げている。

 また、海外の販売比率についても「マーケットにあった比率に持って行きたい。日本の割合は大きくても1割から2割。アジアも大きなマーケットと見ているが、まだ入っていない」と和田氏は語り、Eidosをグループに加えることでこういったグローバル化についても克服していけるとしている。

 モバイル・コンテンツ事業については良い数値を残しているが、和田氏は「欧米、アジアがダメでここが課題。だがiPhoneやAndroid OS搭載携帯が登場し、携帯のスペックや課金方法が1本化されることは大きい。コンテンツの質で勝負できる。多数のコンテンツが集まりユーザーに対するマーケティングが大変だが、その部分では勝負することができる。戦える土俵が出来たので、この分野には注力していきたい」とスマートフォン市場に期待感を表わした。

 このほかの話題としては、7月に「ドラゴンクエストIX 星空の守り人」が国内でリリースされたあと海外市場に展開するかについては、「『FINAL FANTASY XIII』は年度内に海外でも出したいと思っているが、現状では見込んでいない。ただ、『FINAL FANTASY』は海外展開はとんとんと出すつもりだが、『ドラゴンクエストIX』は戦略をきっちり練ってやろうと思う」とじっくり取り組む姿勢を見せた。通信などの仕様が国によって異なるため、どうやって遊ばせるのか、各国で仕様が変更される可能性もありそうだ。

 さて、ユーザーにとって最も気になるのは「ドラゴンクエストIX 星空の守り人」と「FINAL FANTASY XIII」がきちんと発売されるかだろう。この点について会見の最後に質問を投げかけられた和田氏は、「『ドラゴンクエストIX 星空の守り人』はさすがに出るだろう。『FINAL FANTASY XIII』については……“神のみぞ知る”と言ったところでしょうか」とコメントし会場の笑いを誘ったあと、「ウソです。頑張って出します」と締めくくった。


説明会では、2009年度の数字はほとんどスライドとしては表示せず、2010年3月期連結決算計画の数字から説明がスタート。和田氏は数字を示して「良い数字です。『ドラゴンクエスト』、『FINAL FANTASY XIII』が出ればそらそうだろう」とコメント。しかし和田氏としてはポイントは別にあると説明を続けた事業セグメント別の計画の数値。実はこれまでは会社別にセグメント表示を行なってきたが、今回からスクウェア・エニックス、タイトー、Eidosを横断し、事業別に分けるようになった。これは和田氏がことある毎に説明を繰り返している事業方針によるところが大きい
ゲーム事業における方針などをまとめたスライド。オンライン化とは「オンラインタイトル」ではなく、販売面でのオンライン化のこと。ほぼ全ての端末がネットワークに繋がることとなった今、オンラインでの販売が現実的なものとなったとしているゲーム事業における販売本数の対前年度比。和田氏によれば昨年度はとにかく本数が少なかったこともあるが、今期は大作2本に加え中堅どころのタイトルもラッシュで発売されることから大幅な増加となっている。さらに海外ではEidosのタイトルが加わるため、かなりの数字となっている先日行なわれた経営方針説明会でも出されたエンタテインメントビジネスの方法論に関しても簡単な説明が繰り返された。この方法論に基づき、事業セグメントの表示方法の変更などが行なわれたとしている
好調な成績を残しているモバイル・コンテンツ事業だが、和田氏は海外市場において弱いと指摘。だが、iPhone、Android OS搭載携帯の市場が大きく育ちつつある現状を示し、「勝負できるようになった」とコメントしたアミューズメント分野については、アセットリスクを減らす努力を続けると同時に、リスクを顧客(アミューズメントセンター側)と共有していくということでフランチャイズなどを推し進めている。施設とは別にオペレーターにとって魅力的なアミューズメントマシンの開発も軌道に乗ってきたと説明した

(2009年 5月 19日)

[Reported by 船津稔]