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Game Developers Conference 2009現地レポート

約10年ぶりにゲーム業界に復帰
Wiiウェア「きみとぼくと立体。」 フロムイエロートゥオレンジ 飯野賢治氏インタビュー


3月23〜27日開催(現地時間)

会場:サンフランシスコ Moscone Center

 

 Wiiメニュー 4.0アップデートとほぼ同時に配信が開始されたWiiウェア立体☆アクション「きみとぼくと立体。」は、「Dの食卓」や「エネミー・ゼロ」などで知られるゲームクリエイター 飯野賢治氏の復帰作だ。現在、米国で開催されているGDC2009にて、今回の復帰までの話や再びゲーム制作に携わることになった心境などを伺った。



株式会社フロムイエロートゥオレンジ 代表取締役 飯野賢治氏

―― まずはお帰りなさいというところでしょうか。何年ぶりになりますかね?

飯野氏:はい、帰ってきました(笑)。最後にゲームを出したのが1999年の12月ですので、最後にゲームを出したのから考えると9年2か月ですかね。

―― 長かったですね。早速ですが、飯野さんが最後に携わったゲームから約10年を経て復帰ということになりますが、この10年間、業界の外から見ていたご自身の体験などをお教えいただけますか?

飯野氏:なんというか、1年1年というか1日1日といった積み重ねで10年なっているだけで、そんなに10年間という言葉には重みがないところですね。ゲーム業界とは全く違う、自動販売機や自動改札機を使ったサービスの仕事をしていたのですが、ゲームを作る感覚というか、その気持ちを持った上で色々な仕事をしていました。

 ゲームのクリエイティブとは全く違うマインドの仕事をしていれば、10年経ったなぁという感じですけれど、僕からすると家庭用ゲームではないとはいえ、世の中にあるハードウェアでモノ作りをしてきた感じがあります。ですので、長かったという感覚ではないですね。

―― 自販機などの企画設計という意味では、プラットフォームは変わったけれどもエンターテインメントの開発をしていたということですね。

飯野氏:そうですね。ちょっと新しくてエンターテイメントがあってというところがクリエイティブという部分では変わらないと思います。サービスの企画設計の仕事以外にもブランディングやマーケティングの仕事もしましたが、ゲームの開発をするような気持ちと変わらないような気持ちで行なっていたと思います。業界は結果的には一度離れることになったのですが、僕の感覚的には離れていない気がして、それが積み重なって10年近く経ってしまったという感じですね。

 戻ってきましたが、この10年でそれほどゲーム業界が激変したということも感じませんしね。最近になって、またゲームメディアなどを拝見させていただいてますが、発売されるタイトルには昔からあるものの新作などですし、そんなに遠くに離れていたという感覚ではないですね。

―― そうですね。新しいプラットフォームが出ていることを除けば、大作タイトルであれば3年か4年に1回のペースでナンバリングタイトルが出るといった流れだったりしますしね。

飯野氏:そうですね、それらにたとえるなら1本休んだ感じですね。クリエーターとかも新しい人が出てきている感じもそれほどしませんね。

―― ぼちぼちは出てきていますよ。ただ出てきている方も30代近くからであって、飯野さんがデビューされた頃のように、20代でいきなりという方はあまりみかけませんね。何より年齢不詳の方も多いですし。

飯野氏:あぁ確かにね。

―― 10年というのは短いようで長いという感覚もあると思いますが、現在ゲーム業界に戻ってきたという感覚はありますか?

飯野氏:そうですね。先ほどリリースが配信されて、作品が世に発表されて、だんだん実感がわいてきた感じですね。内面的に長かったなとか、戻ってきたということよりも、実際にリリースが出されたり、こうやって取材を受けたりしているとゲーム業界に戻ってきたのかなと、今は自分の中で大きなことではなくても、繰り返していくと結構大きなことなんだなと実感するのではないかと思います。

―― 戦場に戻ってきたという感じですかね。スイッチが入ってまた頑張りだすというか。

飯野氏:特別な空気を持った業界ではあると思いますね。僕が10年間違う仕事をしててほかの業界の仕事をしてきましたが、ゲーム業界は特別ななにかがあると思います。何より若々しい感覚がありますね。今から10年前のゲーム業界といえば、若い業界であったわけですが、現在は30年以上経ってるわけで、そんな若いわけではないけど、そこにいる人とかの感覚は若いですよね。

―― クリエイティブな仕事をしている人は実年齢よりも若く感じますよね。バイタリティに溢れているというか。

飯野氏:特にゲーム業界は元気がいいなという感じがしますね。細かいことへのこだわりや普通の会社だといわないようなことも、若い子が率先して発言し、それを実行するようなパワーがありますよね。寝ないで仕事をしないと間に合わないとかではなく、仕事に没頭して頑張ったりするじゃないですか。そういうとことはやっぱりいいなと思いますね。そこの熱量というか頑張り具合がいいなと思っています。

 クリエイターって、作品みたいな意識が強いじゃないですか、商品性の意識があって、作品性の意識って個人の中でしかないけど、ゲーム業界ってどんな人でもこれは商品であって作品でもあるっていう意識がすごく強いから……だからみんな頑張るんだと思うし、そんな人たちが頑張って作ったプロダクトがこんなにいっぱいある業界だからそれなりにうまくいくのかなと思います。逆にいうとそのゲーム業界が元気がないという可能性があるとすれば、そのあたりが少し落ちてきている気もしますね。

 そう考えると独特な業界ですよね。常に焦ったり、慌てたりしながら…それはスケジュールだけじゃなくて技術も含めていろいろなものを追いかけなければいけないし、そういう巻いていく気持ちもありながら、同時に少し余裕を持って物づくりをしていくじゃないですか。そういうのはゲーム業界は独特雰囲気と持っているな……と離れてから思いましたね。若くて元気でパッションがある人もなかなかないと思いますし。10年経っても思います。

―― ご自身のブログで、「GET BACK」など、おそらくゲーム業界に復帰するという意味合いの投稿を拝見しましたが、今回GDCでの発表もなく、どのゲームなんだろうとセッションなどもチェックしていましたが、まさかWiiウェアだとは思いませんでした。開発までの経緯などをお教えいただけますか?

飯野氏:今回はWiiウェアということもあって、まったく告知もしないで、発表と同時リリースという形をとらせていただいてます。GDCで何かのアクションを起こすということではなく、たまたまGDCが開催されている期間にゲームがリリースされるということで、そのタイミングと合わせてGDCも見ておこうかなと……リリースのときに日本に居ないのも初めてで、これがパッケージだったら忙しいことになっていたでしょうね。

 やっと発表もできてリリースもしたんですけども、公開ができるのが何より嬉しいですね。僕自身は元々、このタイミングでゲーム業界に戻るつもりはなかったです。10年の間に何回かはゲームを作ろうとしたこともあったんですが、割と早めに頓挫したいうか、僕自身が乗り気じゃなくて、迷惑をかけてしまった部分もありましたね。ですので、よっぽど作りたいと思うまでは、ゲームを作るということはやめようと考えていました。

 Wiiで制作した経緯についてですが、以前Wiiの発表会を見るサイトみたいなのがあって、それをたまたま拝見したのがきっかけですね。Wiiリモコンといった新しいデバイスなど、任天堂が過去の資産を捨てるというと言い過ぎですが、ちょっと途切れることをやるわけじゃないですか。それにすごい衝撃を受けました。

 そこからさまざまなゲームを作ってみて、Wii自体で試行錯誤していまして、はじめはコントローラを使うことに集中しすぎたり、自分たちの作りたい作品や世界とかを練ってみたりと……最終的に「きみとぼくと立体。」になりましたね。

―― Wiiの開発コードはRevolutionでしたね。飯野さんも衝撃を受けたと

飯野氏:男気というか僕はびっくりして、紙でWiiリモコンを作ってみたりしていたんですね。たとえるならマイルス・デイビスがトランペットをガラス越しに見ているような、そういう気持ちから、Wiiでやってみたいなというところが始まりました。僕自身、ここまで何かを作りたいという気持になることもなく、そんな気持ちのを持った中で、任天堂さんとコンタクトをとらせていただいたのがきっかけですね。

【きみとぼくと立体。】
立体の上に目標数のキャラクターを投げていくゲーム。Wiiリモコンのポインタで狙いを定め、振ってキャラクターを投げる



―― ではゲーム部分の質問になりますが、「きみとぼくと立体。」のコンセプトなどを紹介していただけますか。

飯野氏:Wiiで開発を行なったという部分では、ゲームの操作方法が複雑化してきているところを、誰でもできるように画面や状況から情報を読み取って面白かったり難しかったりするゲームになります。操作方法も基本はAボタンとリモコンを振る動作がメインになっていますし、カメラの視点変更でBボタンを使用することもできます。ほかにも、プレーヤーの反射神経に依存し過ぎないようなゲームを作ったつもりです。

 これは開発コンセプトの段階で、どのハードウェアにも5分くらいで気楽に友達と遊べるゲームがないねという話が出たんですよね。僕自身は1人で遊ぶアドベンチャーやRPGも好きなんですけど、「きみとぼくと立体。」は単純なルールだけど、奥が深いように作ってあります。普通こういうゲームを作ると立体側を操作してバランスを取ったりすると思いますが、このゲームが変わっているのは立体に対してキャラクターを投げ込んだらあとは触れないんですよね。

 僕はたぶんどっちも過去に作った気がして、ワープ以降はゲーム性も大事だけどすごく尖ったものというのが大事で、今回はそこまで変わってる感じは見ないけど、どこかにあったようでなかったような感覚でプレイできるような作品になっています。

 技術部分でもAIや物理演算など今のハードじゃないと実装できないものを入れたりとか、本作を料理に例えるなら食べて新しい料理というよりも、食べていくうちに料理の中に素材やスパイスなどのアクセントがあるようなものになっているのではないかなと……結果的に任天堂さんと仕事をさせていただいている良さも出た気がしますね。

―― AIを実装しているあたりは確かに今っぽいですね。投げられているキャラクターのAIには、それぞれ特有のAIが組み込まれていたりしますか?

飯野氏:今っぽいでしょ? キャラクター固有のAIはないですね。画面の状態だったり、独特のアルゴリズムも入っていて、助けにいったんだけど落ちちゃうみたいな。矛盾があるのが面白いようになっています。

―― 2人用があるようですが、オンラインには対応されていますか?

飯野氏:オンラインは実装していませんね。先ほどの話にもありましたが、5分で気軽に遊べる感覚と、その場が持つ空気を大切にしています。タイトル名の「きみとぼくと立体。」にも表れていますが、このゲームを中心にしてコミュニケーションがどう生まれるのかなと。

 かなり気にして作っている部分があって、テストプレイなどを後ろから見ていると、言葉がでないようなプレイだとうまくいかなくて、声がでていたりしているとスムーズに進んでいたりと。また一般的なゲームがうまい人よりも、普段ゲームを遊ばない人のほうがスムーズに進めたりとか、何回もトライ&エラーを遊んでいくうちに自然と上達していく部分なども、我ながらよくできていると思っています。初めて自転車に乗るような……言語化して覚える感覚ではなく、遊んでいるうちに感覚をつかんでいってくれるような作品になっています。

 ちょうどGDCでもセッションや色々見てきましたが、プレイの感覚とかも世界のほかにないようなゲームができたのがよかったです。人を寄せ付けないようなすごさみたいなのもなく、今っぽさを持っていてアプローチの仕方とかがうまくできたかなと。

―― 「きみとぼくと立体。」は、ジャンル的にはカジュアルゲームに位置すると思うのですが、飯野さんがゲームを出すという話が出たときに、おそらく知っている人であれば相当尖ったゲームを出してくるのかもしれないって考えるじゃないですか。

飯野氏:実はかなり尖っているんですが、その尖がり方が大人っぽいかもしれません。駅前でがなって歌うのが尖っているっていうわけではなく、ゲーム自体にはかなり尖った作りになっていると思います。たとえば、投げたキャラクターたちは立体の上でプレーヤーが“投げ込んだ”という行動に責任が生じると思うんですよ。普通は立体やキャラクターを動かして動かした結果、落下してしまうということになりますが、投げ込んだのはあくまでプレーヤーであって、投げた感覚が残ったまま着地点まで見るじゃないですか、そうしてキャラクターたちがいろいろ動いて助け合ったりするというったものを見たりとかも面白いと思います。

―― 飯野さんは昔ゲーム制作はバンド活動のようなものだとおっしゃっていましたよね。そのあたりは今も変わりませんか?

飯野氏:気持は変わりませんね。ただ、今回は任天堂さんのステージでやらせていただくので、ロックなんだけれども、協調性を持ったロックというか……パブリッシャーとして自分のリスクでやるのであれば、開発が終わってから気に入らないから出すのを止めたとかお蔵入りにしちゃえとかやっちゃってもいいわけですけど、今回はステージがちょっと違いますしね。

―― 例えるなら、子供ができちゃったから丸くなるバンドマンというところでしょうか。飯野さんちょうどお子さんが2人いらっしゃいますよね?

飯野氏:そうですね。子供が増えたし。意識的にはインディーズでやってたんだけど子供ができたから、音楽会社と組みましたみたいな感じですね(笑)。僕自身も10年前の自分が聞いたら任天堂さんと一緒に仕事をするとは思わなかったかもしれません。

―― バンドの話の流れになりますが、飯野さんは音楽制作も好きですよね。本作でも作曲などは行なわれていますか?

飯野氏:好きですね。今回音にこだわっている部分も当然あって、プレイしていると、音楽を自分で演奏しているような感覚になると思います。これは様々なシチュエーションやタイミングと効果音が組み合わさって楽曲っぽく聞こえたりするようになっています。プレイしている人よりも、それを見ている人が気づくような感じですね。結果的にどちらが聞いても気持ちの良い音楽になっているとおもいます。また、細かいところにこだわっているというか、それを押しつけるような流れではなく、AIや物理演算もそうですが、それらを注意深く見るということよりも、様々な要素が組み合わさってゲームとして楽しめるようになっていますね。

 昔の僕なら、こういう要素は髪の毛つかんででも見ろ!ってやってたのにね(笑)。

―― それが10年間の流れというところでしょうか。

飯野氏:あとは感覚として過去のキャリアがどうのということはなくて、再デビューのような感覚ですね。ワープの頃もちょっとしたミニゲームなども作っていましたし、狙ったわけではないですが、今回もそういう気持というか、新しいゲームでちょっとした遊びやノリなどそういうのを大事にしているので、再デビューのような気がします。

―― 再デビューということですが、次の作品も考えられているとか?

飯野氏:正直にいうとゲームを作るのはやっぱり面白なと思っています。ただ次については正直なところ今はまだ何もないですね。物づくりというのは出来上がるまでの工程は当然楽しい要素ですが、それを差し引いてもゲーム作りというのは楽しいなと思えたらまた作りたいなと思っていたんですよ。結果的に作っていて面白いな……やっぱり僕はゲーム作りが好きなんだなと。

 特にゲームってアウトプットの幅が広いこともあり、またいろいろな可能性もあるわけで、たぶんどんなゲームを作っても、飯野が昔作った作品があってその流れでこうなったのかといった、たぶんどれを作っても違和感はないと思うんですよね。ゲームの幅っていうのはやっぱり面白いと思いますよ。

 これが映画業界であれば映画を作っていた人が離れたときって、それほど幅を持てないと思うんです。ゲームってユーザーの受け皿も含めて大きいし、プレーヤーの方も「あぁ、こうきたか」ということに対しての気持ちの持ち方がうまいじゃないですか。楽しめる力が高いというかゲームってプレーヤーが成熟している気がしますね。ゲームって新しい体験があって、新しいもので満足させて作りづつけていくことが大事だと思いました。GDCの会場にきて、10年ぶりくらいに会った人もいっぱいいましたし、皆いい顔してると思いましたしね。

―― 離れていると色々見えてくる部分もありますしね。

飯野氏:外野でいる気持ちは大事だなと思いましたね。ここで2、3本作っちゃうと内野の気持ちになってしまうので、それは常に気をつけないといけないなと思いますね。

 

 過去を振り返ったり反省したりするのは好きじゃないですが、10年前を反省するとしたらすごく内側にいっちゃった気がして、外側としての気持ちのこんなゲームがあったら面白いな、遊んでみたいなというものも持ち合わせていたはずですが、当時の最後はすごく内側にいってしまった気がしますね。そんなことが離れてみると気持ちもすごく外側の気持ちになって、仮にこれから1、2本作るということがあっても、せっかく学習したこの気持ちを忘れないで作っていきたいですね。

―― では、最後に読者に向けてメッセージをお願いします。

飯野氏:「きみとぼくと立体。」は、独特の感覚があると思います。ゲーム性を高める一方、フィーリングを大事にしていて、どこかにあったような感覚を感じてもらいたくてかつ、ユニークな作品としても感じてもらえるようになっています。言葉として表現するには難しい作品ですが、プレイしていただければ、言語化するのが難しい感覚がきっと得られるはずですし、そういう感覚をすごい大事にして作りました。

 また、1人でも2人でも遊べますが、両方のモードでまったく異なる感覚を得られると思います。ユニークなゲームができたので、楽しんでもらえればと思います。

―― 本日はありがとうございました。


【スクリーンショット】

(C)2009 Nintendo (C)2009fyto


2009327日)

[Reported by 鬼頭世浪 ]



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ウォッチ編集部内GAME Watch担当game-watch@impress.co.jp

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