「EA EUROPEAN SHOWCASE」タイトルレポート その3
ダンテの「神曲」をモチーフにした「DANTE'S INFERNO」
Wiiでエイリアンと戦う「DEAD SPACE EXTRACTION」
宇宙を翔けるヒーローが誕生する「Spore Galactic Adventures」

4月23~24日開催




 米Electronic Artsは4月23日、ロンドンで開催した「EA EUROPEAN SHOWCASE」で多くのタイトルを発表した。本稿ではEA EUROPEAN SHOWCASEレポートその3として3本の新作タイトルを紹介したい。

 1本目は13世紀のイタリアの詩人ダンテが書いた「神曲」の中で地獄をテーマにした「地獄編」を大胆にアレンジ、巨大な鎌で地獄の亡者を切り刻むアクションゲーム「DANTE'S INFERNO」。2本目は「DEAD SPACE」のスピンオフ作品で、Wiiの特性を活かしたシューティングゲーム「DEAD SPACE EXTRACTION」。

 3本目が、4月8日にMaxis退社が伝えられたWill Wright氏のMaxis最後の作品となった「Spore」の拡張パック「Spore Galactic Adventures」だ。クリーチャーの1人をスーパーヒーローに変え、様々なシナリオに挑戦するというWii Wright氏の意志が濃厚に感じられる作品である。



■ ダンテの「神曲」が、鎌で亡者をなぎ倒し、巨人を操るアクションゲームに! 「DANTE'S INFERNO」

「DANTE'S INFERNO」Executive ProducerのJonathan Knight氏
巨大な怪物に挑むダンテ。この怪物は後にダンテの意のままに操られるようになる
シベロスのコンセプトアート。不気味で独特のデザインだ

 「DANTE'S INFERNO」はPS3、Xbox 360そしてPSPで発売予定のアクションゲーム。発売は2010年を予定している。本作は13世紀の詩人であり政治家ダンテ・アリギエーリが作った長編叙事詩「神曲」の地獄編を題材にした作品だ。プレーヤーはダンテとなり、最愛の女性ベアトリーチェを救い出すために、9つの“地獄界”を旅していく。

 原作では神曲は地獄編、煉獄編、そして天国編で構成され、完成まで20年以上かかったといわれる。物語の中でダンテは古代ローマ時代の詩人ウェルギリウスに導かれ、地獄を巡り、罪を清められる煉獄を進んだ後、天国まで至る。作者であるダンテが生み出した、すさまじいイメージと精密な描写で生み出される世界は、「神曲」の誕生から現代まで、多くの芸術家のインスピレーションを刺激してきた。

 彫刻家のオーギュスト・ロダンの代表作の1つ「考える人」は、神曲の中にある「地獄の門」をモチーフとした彫刻作品の一部分だ。また、この地獄の門に彫られているという一文「我をくぐる者、一切の希望を捨てよ」というフレーズは耳にした人もいるのではないだろうか。日本では様々な翻訳版が出され、漫画家の永井豪は漫画化を行なっている。神曲そのものだけでなく、神曲によって影響を受けた作品も、さらに次代のクリエーターに影響を及ぼしている。

 本作、「DANTE'S INFERNO」では人間の背骨のようなまがまがしく強力な「鎌」と、光り輝く黄金の十字架で群がる亡者をなぎ倒すという、過激なアクションアドベンチャーになっている。ダンテが鎌を振り回すと円形の光の軌跡が現われ、連続攻撃で敵の骸骨のような亡者はずたずたに切り裂かれて崩れ去る。ダンテのアクションはスタイリッシュで強力であり、かなり爽快なアクションが楽しめそうだ。

 神話的世界で不気味な敵と戦うというコンセプト、過激な残酷描写で敵を倒していくアクションや、アクションシーンで決められたボタンを押すギミック、さらに画面いっぱいに迫る巨大な敵との戦闘シーンなど、SCEAの「God of War」シリーズを濃厚に意識した作品だと感じられた。

 鎌は切り裂くだけでなく、敵に突き刺したり、1度空中に打ち上げてからさらに攻撃を食らわすなど、多彩な攻撃ができる。また、背骨のようになっている柄の部分のパーツは伸縮し、リーチを広げた攻撃も可能なようだ。死神のように鎌を振り回して戦うダンテはユニークなヒーローとなりそうだ。ダンテは金の十字架も持っていて、本作の内容を紹介するムービーでは、これを掲げると亡者達はあっという間に崩れ去っていた。ゲーム内ではボムのような危険回避用の瞬間的な無敵アイテムとなりそうである。

 今回はPS3版で最初のステージがプレイ可能だった。骨を組み合わせたような不気味なステージを進むダンテの前に光と共に敵が現われる。ダンテは多くの敵をものともせず鎌を振り回して切り裂いていく。敵の中には子供のような小さな手足と丸い頭を持つが、両手は鋭い鎌に変わっているというモンスターがいて、特に不気味だった。彼らの小さな体を空中に打ち上げて鎌に突き刺すアクションはかなり残酷に感じた。残酷表現の過激さも話題を集めそうだ。

 ステージの最後には、空中につきだした舞台のようなところで、そこに地響きを立てながら、下から巨大な怪物があがってきた。怪物の背中には足場がくくりつけられており、そこには神官の姿をしたモンスターがいる。どうやら巨大な怪物は背中の神官に操られているようだ。巨大な敵との戦いにはタイミングよくボタンを押していく特別なルールが用意されていて、敵が拳を振り下ろした瞬間△キーの表示が出た。制限時間内に△キーを押すことで、ダンテは敵の腕に鎌を突き刺し腕によじ登り、背中の神官が槍を突き出してきたのを□ボタンでかわし、○ボタンで背中の敵を引き下ろし自分が怪物を操る席についた。

 次の瞬間、プレーヤー自身が巨大な怪物を操作することができ、足踏みだけで敵を粉砕したり、拳を振り回して敵を簡単に倒すことができた。さらにこの巨大な怪物を操って巨大な石柱を上る、という場面もプレイできた。今回デモプレイとゲームの紹介を行なった本作のExecutive ProducerのJonathan Knight氏は、「巨人(Titan)を操るのも本作のおもしろさのひとつだ。このほかにもたくさんのアイデアを詰め込んでいる」と語った。

 Knight氏によれば、今回出展したバージョンは9つある地獄界のうちの第一階層「Limbo」のみであり、今後様々な要素が追加されていくという。地獄の猟犬として知られる「Cerberus(ケルベロスとも呼ばれる、3つ首の怪物)」がぬめぬめとした粘液質の肌を持つ怪物として描写されていたり、原作からさらにイマジネーションを膨らませたユニークな表現を試みているという。

 「私は『地獄』をテーマにしたゲームを作りたかった。その上で20年間をかけて練り上げていったダンテの神曲の世界はとても魅力的に感じた。そこから私たちなりの神曲を作っていこうと思っている」とKnight氏は語った。

 デモムービーでは地獄に堕ちていく人形のようなキャラクタが、細長い煙を立ち上らせる。その煙は現実とは違い、物質が徐々に水に溶けていっているかのようなエフェクトだ。特撮には水に色の付いた液体を入れ、広がる姿を撮影して雲がわき上がっていくように見せるテクニックがあるが、意識をしてみるといかにも作り物のように見える。本作は雲が沸き立つ演出などで、わざとこのエフェクトを再現しているように見えた。

 この他にも、「DANTE'S INFERNO」では炎の表現やモンスターが出現する際の煙など、随所に空気中ではなく、水の中でたなびく煙のように見えるエフェクトが使われている。このエフェクトは非現実な雰囲気を強調し、「異世界」の物理法則を表現しているように感じた。

 9つの地獄はどのように描写されるのか、ダンテや彼が操るアクションのギミックはどんなものになるのか、本作の発売日は2010年の予定である。これから、どんな作品に成長していくのだろうか。


華麗で派手な戦いを予感させるスクリーンショット。背景の書き込みにも注目したい
ダンテや地獄のコンセプトアート。「神曲」をモチーフに独自の解釈が行なわれている


■ 前作より前の世界を描く「DEAD SPACE EXTRACTION」。視点を1人称に、主人公の攻撃力は格段にアップ

「DEAD SPACE EXTRACTION」Senior ProducerのSteve Papoutsis氏(右)と、Producerを務めるShereif Fattouh氏
暗闇より現れる異形のエイリアン。本作では複数のエイリアンが一度に襲いかかってくる
「DEAD SPACE EXTRACTION」のブース。看板やモニター周りにゲームの雰囲気を持たせたアイテムを設置していた

 「DEAD SPACE EXTRACTION」は「DEAD SPACE」の以前の物語となる。対応プラットフォームはWiiでヨーロッパでの発売日は未定だ。「DEAD SPACE」は連絡を絶った採掘船に調査に赴いたエンジニアの主人公が、船を支配する恐怖の存在に直面する、というストーリーが展開した。

 暗闇から忍び寄るエイリアンの凶暴さと、無惨に倒されていく人々、工作機械を利用しての攻撃は、スマートに倒すのではなくバラバラに切断するといった残酷な表現となっていた。北米では2008年10月に発売され高い評価を得たが、ドイツや日本ではその残酷表現のため発売が見送られているタイトルである。

 「DEAD SPACE EXTRACTION」舞台は「DEAD SPACE」と同じ惑星採掘艦の「石村」である。プレーヤーは謎の感染事故で船の住人達が怪物化していく中、石村の乗員達と協力して活路を見いだすため戦っていく。「DEAD SPACE」との大きな違いは前作では3人称だったゲーム視点が、本作は1人称になっているところだ。また、主人公も、工作機械を改造した武器を操る科学者から、銃や火炎放射器など複数の武器で身を固めた武装兵に変わっている。今回デモプレイを見ることができたのだが、次々と襲いかかるモンスターを倒していく、という展開でエイリアンと戦う爽快感をパワーアップしている印象を受けた。

 ユニークなのがWiiリモコンの使い方である。メインウェポンはWiiリモコンで画面をポイントし、照準を動かして射撃する。ヌンチャクコントローラーのトリガーで火炎放射器を発射する。さらに接近専用のクローも装備しており、ヌンチャクを振ることで近寄った敵をひっかくことができる。プレーヤーキャラクタは「武器の固まり」といった印象である。ゲーム中にはさらに複数の武器が登場するという。

 「DEAD SPACE」は、船内の生存者を探すという孤独な戦いだったが、本作は複数の採掘船の乗員を守りながら戦う。安全と思える場所で乗員達を待たせ主人公は敵エイリアンのいる場所へ飛び込んでいく、という展開だ。主人公が着ているスーツには発光ギミックがあり、Wiiのリモコンを振ると画面の右側が光を放つ。これでプレーヤーは自分に注意を引かせ、近づいてきた敵を攻撃していくのだ。「DEAD SPACE」の主人公に比べて、かなり積極的でパワフルな感じだ。

 「DEAD SPACE EXTRACTION」のデモプレイを行なったSenior ProducerのSteve Papoutsis氏に「Wii版の主人公は前作に比べてかなり強いのではないか」と質問をしたところ、Papoutsis氏は「Wiiの特性を考え、戦いによりフォーカスし直感的にプレイできるように工夫したが、『DEAD SPACE』が持つ敵の恐ろしさや、船内の不気味さ、作品が持つホラーの雰囲気などは大事にしている。この作品でユーザーにはたっぷり恐怖を味わってほしい」と語った。

 船の施設にはプレーヤーが触るとホログラフを表示させる機能がある。船の設備の一部は緊急事態や事故でロックされている場合があり、このホログラフに表示されるパズルを解くことで先に進めるようになるという。こちらはまだ開発中と言うことでどんなギミックが盛り込まれるかは楽しみだ。

 本作はオンラインでの協力プレイにも対応しており、友人を招待して2人でゲームを攻略していくことも可能だ。「DEAD SPACE EXTRACTION」は「DEAD SPACE」同様、エイリアンは人体を無理矢理ゆがめたような、生理的嫌悪感を催すデザインだ。行動も不気味で、天井をはい回ってきたり、闇の中から不意に飛びかかってくる。こちらの攻撃方法は多彩だが、状況によってはかなりパニックになる。そんな時、友達と協力できれば心強いと感じた。「DEAD SPACE」はたった1人で生き残りを探索していく作品だったが、本作のプレイ風景はかなり違ったものになりそうだ。

 「DEAD SPACE」はその過激な表現のため日本をはじめとした複数の国で発売されていない状況だが、「DEAD SPACE EXTRACTION」もモンスターを殺すシーンなどは血が飛び散ったりと過激な印象を持った。世界観がしっかりしたゲームであり、ゲーム性も魅力的なだけに日本での発売も期待したいところだ。


本作の主人公は火炎放射器と銃を同時に使ったり、クローで近付く敵に斬りつけたりとパワフルだ。また生存者とのドラマも用意されているようで、どんなストーリーが展開するかも興味深い
不気味なエイリアン達を粉砕したり、打ち抜いたりと描写はかなり過激だ


■ 選ばれた1人の英雄スペース キャプテンの大冒険を描く「Spore Galactic Adventures」

一足早く「Spore Galactic Adventures」を触ることができた
巨大な敵に立ち向かうスペース キャプテン。これまでの「Spore」とはひと味違う方向性だ

 単細胞生物から進化し、知性を獲得、文明を興してやがて宇宙に進出するという壮大なスケールを持ったリアルタイムシミュレーション「Spore」。本作、「Spore Galactic Adventures」は「Spore」の拡張パックであり、大宇宙を舞台とした冒険が展開する。「Spore Galactic Adventures」はヨーロッパでは6月26日の発売を予定しており、プレイするためには「Spore」本体が必要となる。

 「Spore Galactic Adventures」はプレーヤー自身が育て、進化させた生き物から1人を選び、「Space Captains(スペース キャプテン)」にすることができる。スペース キャプテンとなったキャラクターは強力な力を持ち、宇宙に旅立っていくことが可能になる。スペースキャプテンが挑戦できるいくつものシナリオが用意されており、プレーヤーはキャプテンを操作してこれらに挑戦できる。

 シナリオの中には巨大な敵クリーチャーと戦う、といったものも用意されている。スペース キャプテンでの戦闘はアクション性の強いものになっており、格闘ゲームのような迫力ある展開を見せるという。シナリオをクリアしていくとキャプテンにプラズマガンなどの新しい武器や、コンバットアーマーといった強化装備を与えることが可能になる。キャプテンの成長はオンラインランキングにより他のプレーヤーと比べることもできる。

 「Spore Galactic Adventures」ではキャプテンが挑戦できるシナリオをエディットできるツールも同梱されている。自分なりの凝ったシナリオを友人とシェアすることも、他の多くのプレーヤーに向けて公開することも可能だ。スペースキャプテンが挑戦する問題として、プレーヤーがどんなギミックを考えるか、期待したいところだ。

 育て上げた生物から代表者を選び出し、超兵器やパワーアーマーに身を包んだスーパーヒーローにする、というコンセプトは生物と文明の進化をテーマにした「Spore」の方向性とはかなり違った、思い切ったアレンジといえるだろう。とはいえ、「Spore」世界ならではのスーパーヒーローという存在は非常に面白い視点であり、ヒーローによって自分が育て上げた種族に新しい魅力が加わることには間違いない。プレーヤー達がどんなシナリオを作るかも興味が惹かれるところだ。


スペース キャプテンだけでなく、文明にも追加パーツが登場するようだ。ゲーム世界がどのように変化していくか興味深い
1人のヒーローにフォーカスを当てる本作は、これまでとは違ったゲーム体験となりそうである。スペースキャプテンの力がどのように描写されていくかも楽しみだ

(C) 2009 Electronic Arts Inc. All rights reserved.

(2009年 4月 30日)

[Reported by 勝田哲也]