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「FFXIV」吉田氏&祖堅氏Gamescomインタビュー

次の5年への構想から14時間放送の見どころまで5周年を迎えた「FFXIV」のあれこれを聞く

8月23日(現地時間)

会場:Koelnmesse

スクウェア・エニックスブース内の「FFXIV」コーナー

 スクウェア・エニックスは、ドイツで開催されているGamescom 2018に、プレイステーション 4/Windows/Mac用MMORPG「ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター(以下、FFXIV)」をスクウェア・エニックスブース内に出展した。また今年は24日、25日にドルトムントで「FFXIV」のオーケストラコンサート「Eorzean Symphony」も開催される。今回、プロデューサー兼ディレクターの吉田直樹氏と、サウンドディレクターの祖堅正慶氏から話を聞くことができた。ドイツの印象から間近に迫る14時間放送まで、普段のインタビューとは一味違う話題に吉田氏と祖堅氏が答えてくれた。

Gamescomではファンをいかにエキサイトさせるかを学べる

――まずは、今回のGamescomの印象を教えていただけますか。

吉田氏: それが、ほぼインタビューブースから出ていないので、会場全体の雰囲気は、このインタビューの後ようやく見に行くことができるんです。ただ昨日だけでも、人の入りが爆発的にすごいなと思いました。まだ設営中の各社のブースを見ても、ゲーマーに楽しんでもらうために、ゲームの見せ方だったりをすごく工夫していて。Gamescomは遊んでくれる人たちをどうエキサイトさせるかというところにフォーカスされているので、見習うべきところが年々増えていっていると感じました。祖堅は今回が初めてだよね?

祖堅氏: そうですね。E3と比べて規模が大きいなと。事前の憶測とかリーク情報なんかは全然なくて、ここへ来て初めてわかることが結構多いから、この会場に足を運ぶこと自体が楽しいというイベントになっていますね。僕らも楽しいです。

吉田氏: 来る価値がありますね。

祖堅氏: 空き時間に、Blizzardのグッズショップに行ったりしています(笑)。

吉田氏: 2人で行って、「やべぇ、ディアブロのTシャツかっけー」みたいな(笑)。唯一行ったのそこだもんね。

祖堅氏: ほかにはどこも行けてないです。

――吉田さんにとってというか、ゲーム開発者にとって、Gamescomはどういう位置づけになるんですか?

吉田氏: 多分、「FFXIV」と、違うプロジェクトでは、ちょっと意味合いが変わるかなとは思います。E3がアメリカのプレーヤーさんに向けた新情報の発信だったり、コミュニケーションの場だとすると、「FFXIV」にとってのGamescomは単純にヨーロッパ全土の光の戦士たちが触れ合う場所だったり、メディアを通じてヨーロッパなりの新情報や、詳しい情報を出したりする場所だと思っています。確かにE3と開催日は近いですが、意味合いは全然違っています。E3は8年連続で行っていますが、今回Gamescomも8年目に突入しているので、そういう意味ではアメリカならE3、ヨーロッパならGamescomという感じではあります。ただ勢いでいえば圧倒的にGamescomの方が上だと思うので、もしかしたら今後大きな発表をする場所がE3ではなくこちらでという会社も増えてくるような気がします。

――個人的に注目しているブースはありますか?

祖堅氏: 会場がでかすぎて。どこから見ていいのかわからないなという感じですね。

吉田氏: 僕はE3と情報が変わらないところは別にいいかなと思っています。どちらかというと「フォートナイト」とか、巨大なコミュニティを抱えているところ。PC、コンソールあまり関係なくですが。どういう盛り上げ方をしているのだろうとか、ステージアクティビティでゲームじゃないことをされるケースが結構多くなってきたなと感じます。昔は単純に試遊台で遊んでくださいとか、ステージでやりましょうとかいうものでしたが、ゲーム内のエモートをステージ上でみんなでやろう、みたいな。現場に来たからこそ楽しめるというものにシフトしているのかなと思うところがあって、それを見たいです。「FFXIV」に限らず、ESLブースもそうですが、見ている人をゲームを使ってどうやってエキサイトさせるのかというところは日本は完全に遅れているので、そこは毎年興味があって見ています。

【「フォートナイト」のブース】
ブース内にはスライダーや、ロケット型のロデオマシンなどが設置されていて、まるで遊園地

――「フォートナイト」のブースはまるで遊園地でしたね。

吉田氏: そうらしいですね。スタッフから聞いたので「フォートナイト」だけはなんとしても自分の目で見なければ、とは思っています。

――今回のGamescomに合わせて、NVIDIAの新GPU「RTX」のシリーズが発表されました。今後PCの描画能力が上がっていくと、ゲームのグラフィックスも今後さらにリッチになっていくと思います。その場合、「FFXIV」のPC版にさらに上位のグラフィックス設定が加わる可能性はありますか?

吉田氏: 最近これをよく聞かれます。先日中国でも聞かれたので、世界中でちょっと注目のポイントなのかなと思っています。将来的に上げる可能性があるかというご質問の場合は、たぶん「イエス」で、可能性はあると思っています。ただ、今計画しているかというと、これは「ノー」です。なにも計画はないですし、マイルストーンの中にも入っていないです。

 これは理由が明確にあります。新しいグラフィックスパイプラインや新しいグラフィックスの研究は、もちろん第5ディビジョンの中でもやっています。僕らも最新のゲーム作りから離れる訳にはいかないので、テストもしています。でも「FFXIV」には現状装備だけで2万アセットくらいあるんですが、これを新しいパイプラインに全部乗せ換えるとすると、果たしてどれだけのコストが必要なのかというと、あまり考えたくないレベルです。

 「FFXIV」はPS3にも対応させるために、グラフィックスのテクノロジーパイプラインが今より2世代前のものなのです。今のパイプラインに合わせようとすると、ハイモデルが用意されているものに関しては、ハイモデルに置き換えていけばいいんですが、そうではないものもある。最初からコスト削減のためにローモデルで作っているものがたくさんあるので、それは全部ハイモデルに作り直さないと、せっかくグラフィックス性能が上がっているのに綺麗に見えないんです。

 それだけのコストをかけて今やらないと、他との競争力がないかと言われると、少なくともMMOというジャンルの中ではまだ十分に競争力があるので、いま焦ってそれをやる必要がない。それに、そのGPUが搭載されているPCが、何割のプレーヤーに広がるんだろうというところも計算にいれないといけない。さらに、コンソールでも「FFXIV」をサービスしている以上、グラフィックスパイプラインが混在するのは絶対に避けたいんです。だとするとPCだけを見ているわけにはいかないので、例えばプレイステーション 4が次の世代に代わるというタイミングでなければ検討するのも難しいんです。今はとにかくどうやって今のアセットを効率よくたくさん作るかという所を伸ばすべきだなと考えています。

――グラフィックスの研究は、将来出るかもしれないPS5なども含めての研究ということなんですか?

吉田氏: スペックで考えているのではなく、この先のグラフィックスパイプラインのトレンドがどこへ行くかを研究しています。最低限これらが使えないと欧米と太刀打ちできないものとか。ちょうどCEDECでうちのスタッフがグラフィックスの講演もやっていますが、結構なレベルで研究もしています。ちゃんと研究しておけば、どんなスペックのハードウェアがでてきたとしても対応できるようになるので、スペックではなくテクノロジーベースで見ています。

――「FFXIV」はリアル寄りのグラフィックスなので、最新のグラフィックストレンドに対応しなければなりませんよね。トゥーンシェーディングのゲームはそこまでシビアではありませんが、そういう部分をうらやましいと思ったりしますか?

吉田氏: 「FF」をMMOにしようと決めたのは僕ではありませんが、引き継いだからには「FF」として胸を張って出せるようにしなければならないと思っています。他のゲームをうらやましいと思うことはないですね。僕らはハイエンドのゲームが好きで、そういうものをプレイしたい方なので、どちらかというともう少しボーンを使って、もう少し滑らかに動かしてあげたいなとか、もう少し長い髪を揺らしてあげたいなと、どちらかというとそういう風に思います。

 ただそれをやったら1パッチに入れられる装備が3分の2くらいになっちゃうだろうなとか。ボリュームもクオリティの1つだから、それを落とすわけにもいかないので、痛しかゆしだなと。ただ研究は続けていて、いかにハイレベルなアセットを効率よく作るかも今後の課題なので。そこがかみ合ったタイミングが来れば、もしかしたらグラフィックスのレベルを上げることもあるかなと。

――吉田さんは取締役になられたわけですが、職責が重くなってくるとだんだんと「FFXIV」に関わることができる時間が減ってくるのではないかと心配してしまうんですが。

吉田氏: 僕はもともと正社員になる前から、本来正社員がやるような仕事をしていました。第5ディビジョンのディビジョンエグゼクティブになる前から、超巨大な「FFXIV」と、弘道さん(田中弘道氏)が退社されてから「『FFXI』の面倒もよろしく」と言われて、「XI」の方も見ていましたし、それがそのまま第5ビジネスディビジョンに後からなった感じです。その後「ビルダーズ」なんかも作りましたが。執行役員になっても結局のところ全スクウェア・エニックスの開発相談窓口みたいなことはやっていましたし、社長と話をする機会も多かったので。執行役員になった時にも、執行役員会議が月イチで増えたくらいで、取締役でも取締役会議が1つ増えたくらいで、やっていることはあまり変わらないです。少なくとも「FFXIV」に割いている時間は減ってはいないです。

――よく、管理職になってしまうと現場から離れてしまって……というような話がサラリーマンの逸話としてあるじゃないですか。

祖堅氏: うちの会社そういうのないっすよ。

吉田氏: ないよね。

祖堅氏: 偉くなったからといって現場を離れろというのはないです。両方やれ、です。

吉田氏: 僕が取締役をお受けする条件として、「FFXIV」の業務を減らせとかライブストリームはやるなということであれば受けませんという話をしたら、何も変えなくていいということを言ってもらったので、じゃあいいですよと。だから変わっていないです。確かに仕事量は少し増えているかもしれないけれど、もともとやっていたレベルの仕事だと思っていただけると。肩書が後からついてくるタイプなので、あまり気にしなくても大丈夫だと思います。

――それを聞いて安心しました。

吉田氏: どちらかというと「FFXIV」が巨大化しすぎて、把握するのが本当にきついなという。自分で蒔いた種でもあるんですが。

――今どのくらいの人数がいるんですか?

吉田氏: 今はすごい勢いで巨大なものを作らなくてはいけない時期でもあるので、「FFXIV」の開発に関わっているだけでもだいたい常時350人から、繁忙期は500人弱くらいになります。運営チームを入れると多分650人までいっちゃいます。

 それとゲームの規模が恐ろしく上がっているので、「エウレカ」の仕様を全把握したうえで、楽器演奏の仕様も、ハウジングのロールプレイは今僕の肝いりでやっているのでそちらにシフトしていますが、当然レイドのバランス調整にも参加しなくてはいけないし、この先に作っているまだ発表していない全く新しいシステムなどもあって、それらも当然僕が1番仕様を理解していないといけないし。最初はレイドとインスタンスダンジョンとアライアンスレイドとギャザクラを話せていればよかったのに、そちらの方がやばいです(笑)。

「禁断の地エウレカ:パゴス編」調整の意味を解説

――先日実装された「禁断の地エウレカ:パゴス編」についてお伺いします。「アネモス編」に比べると、装備の強化難度が少し高く感じます。逆にアネモス編の難度が緩すぎたから高く感じるのでしょうか?

吉田氏: 緩すぎたとは思っていませんが、ただ、アネモス編は、ちょっと面白い遊ばれ方をしたコンテンツだと思っています。初動で先行した人たちは、たぶんすごい勢いでモンスターを狩りまくって、エレメンタルレベルを上げて、最終的にレベルキャップに近づいた時点でノートリアルモンスター(NM)を狩りまくるというプレイスタイルでカンストして、それと同時に欠片が集まっていって武器が強化されるという流れだったと思います。

 その後に始まった波として、とにかくNMを順番に沸かせてレベリングをしながら武器を育成するというパターンが生まれました。この波に乗った人たちは、おそらくほとんど雑魚狩りをしていないと思うんです。この2つの波では、だからプレイの感覚が違うんです。今回先行した人たちは、前回もおそらく先行していた人たちなので、自分たちで試行錯誤しながらチェーンを繋ぐことを考えたり、突然変異や環境適応をどう使えば効率がいいのかと謎も時ながらプレイしていると思います。今回はNMを狩っていた人たちもスタートは同時なので、その人たちは「武器の強化に雑魚狩りが必要なの?」と思っているのではないかと思います。

【禁断の地エウレカ:パゴス編】

――「アネモス編」でのプレイがそのまま「パゴス編」で使えるわけではないのですね。

吉田氏: 今回エレメンタルレベルを最高効率で上げる方法はまだ見つかっていません。チェーンを繋ぎつつ、突然変異や環境適応を上手く使うというのが今回のタネではあるのですが、ちょっとわかりづらくし過ぎたかもしれません。NM待ちをしている人たちは、「アネモス編」の印象で雑魚狩りをしたくないと思っていて、NMを狩っていればよかったのに、と不満を感じる。

 そこで今回のパッチで、「パゴス編」では以前ほどNMポップの感覚が短くないのですが、そこはそのままにしたうえで、NM自体の取得経験値を上げるように調整しました。「アネモス編」ほどの効率は出ないけれど、NM待ちでも遊べるようになります。ただ武器の強化だけは、先人たちがものすごい勢いでモンスターを狩って強くしたのだから、そこは緩和しません、今回はそういう鍛え方をしてください。というのが今回の調整の意味になります。なんというか、人は変化を求める声を挙げつつも、変化があると不満を持つんだということを感じました。

 今回「エウレカ」のバトルコンテンツのディレクションをしている人間が「吉田氏が旧『FFXIV』の時に、白魔道士のケアルガのMPを調整した時に、ゲームとしてはまっとうな調整のはずなのに、ずっとケアルガを打てなくなった。MPが枯渇するようになった、どうしてくれるんだ。バランスが壊れてます、と批判されたというエピソードを改めて思い出しました」と言ってきました。そして「急激な変化ではなく、段階を踏んで戻しますか?」と聞かれたので、そこは「雲海探索」の経験もあって、程よくやりすぎても上手く伝わらないから、変えるところはドラスティックに変えないと、皆さんの印象が変わらない。経験値を3倍まで引き上げるなら、1回で済ませたほうがいいんじゃないかという話をした後、日本を出てきました。

 ですので「パゴス編」はまた少しプレイフィールが変わると思います。ゲーム内ゲームを新しいルールで作るのは本当に難しいです。でもだからこそ僕らも挑戦のし甲斐があるので、フィードバックを受けつつ、いろんな遊び方ができるコンテンツを目指して作っていきたいなと思っています。

――「しあわせウサギFATE」でNMが出やすくなるという噂がありますが、どうなんですか?

吉田氏: 答えは言わないです。まだ実装からそんなに経っているわけではないので。昔の「FFXI」でもNMの沸かせ方は皆さんで編み出していたと思うので。ただちょっとトリガーがわかりにくくて、これかなと推測しても確証が得られない、得にくいということは理解していますので、そこはもう少しなんとかならないかなという話はしています。

 でも、今の所まだ答えを言う段階ではないかな。今って、「アネモス編」ではみんな試行錯誤していた時期なんですよ。でも「アネモス編」が完全解明されているから、解明されないことに不満を感じるんでしょう。これもまた難しいことです。いろいろワーワーしている事こそ、あのコンテンツの良さでもあるので。

「モンハン」コラボは機会があればリベンジしたい!

――「モンスターハンター:ワールド」とのコラボですが、実際に開催されてみていかがですか?

吉田氏: 「極リオレウス狩猟戦」は当初8人でと思っていたのですが、「モンスターハンター」側があまりにも常軌を逸した作りこみをされたので「まずい!」と言って急遽4人にして、3回倒されたら失敗にしようということになりました。あれ自体は結果的にはロールしばりがなく、戦士4人が流行ったり召喚士4人でスーパータイムを叩き出したりとか、ある意味「モンハン」ぽく遊ばれているなと思います。「モンハン」側の「ベヒーモス」でもガンナーですごい動画があるんです。全く身動きできず、2幕目に入ったら即効メテオが落ちてきて死亡というのがありましたけど、それと似た遊ばれ方もあって、これはこれでロールフリーでいいねという声は、特に海外を中心に多かったので、新しいコンテンツを作る時のヒントになればと、ちょっと思いましたね。

 後は個人的にですが、僕らとしては当初想定していた規模の内容にしていたのですが、「モンスターハンター:ワールド」側の力の入れ方が、普通じゃないんです、本当に。なぜ基礎システムにまで手を入れているんだと(笑)。正直そこは悔しいです。ディスクリプションのせいで部位破壊表現もできなかったので、ちょっとリベンジの機会を作りたいなというのが正直なところですね。回避とガードまで入れるんだったなと。

【「モンスターハンター:ワールド」コラボ】

祖堅氏: カプコンさん側のデベロップメントチームとうちのデベロップメントチームで、アセットのやり取りをしなくちゃいけないじゃないですか。たいていのコラボレーションって、外見のデータのやり取りで終わってしまうんです。こんな感じで実装すればいいのかなとすぐ想像もつくんですが、今回のコラボレーションに限ると異常でした。

 例えばリオレウスの動作により物理的な法則によって鳴るSEのアセットが、まるごと来る。WAVファイルが何千と。これは何のファイルだろうと、解析するところから始めました。解析しても、「FFXIV」にそのままアセットをもってきて実装することはできないので、それを「FFXIV」に読み込むためにいろいろ工夫したり。サウンドエンジンを変更したり、それくらいやりました。だから結構手間がかかったというか、我々としてもすごく面白かった、やりごたえがあるコラボレーションでした。

吉田氏: 勉強になったというのがすごく多いです。後はもう本当に、「モンスターハンター」チームと「FFXIV」チームの殴り合いみたいな感じに最後はなっていたんですが、ちょっと向こうが加減を知らなかったという感想です。お互いフルスイングしたからこそすごくすがすがしかったです。それを遊んでくれている皆さんもすごくすがすがしく遊んでいただいたので、「モンハン」チームには本当に感謝したいです。10年越しの付き合いで8年越しの約束が実ったコラボでもあるので。今回に限らず何かまたゲームファンに喜んでもらえるようなことがしたいですね。思いはお互いに1つなので。実現すればまた盛り上がれるのかなとも思うし、ゲーム業界ってすごいなと思ってもらえる学生さんとかも増えるかなと思うので。そうしてまたデザインがとか遊びがというよりも、こいつらバカだなと思ってもらえるようなことがやれたらなと。

――「モンスターハンター:ワールド」側のコラボでは、頭を叩くとヘイトが貯まるというかたちで、「FFXIV」的な役割分担のある光景が生まれていますが、あれは「モンハン」チームが用意したものなのですか?

吉田氏: 最初に企画書が来たときに、もしかしたら「モンスターハンター:ワールド」のプレーヤーからチームが嫌われるかもしれないから、余計なことはしないでくれと言いました。モンハンは役割分担がなくみんなが戦えるところがいいんだからと言われてしまう可能性があるからそこまで「FFXIV」に気を遣わなくてもいいよという話を藤岡さん(ディレクターの藤岡要氏)にしたんです。

 そしたら「わかりました!」と言っていたのに、できたのを見たら、企画書のままじゃないかと言う(笑)。あれは、徳田さん(ディレクターの徳田優也氏)も言ってましたが、「モンハン」の中に1度役割というものとギミックという、周りの環境をルール化して戦うということを1回やってみたかったと。そして藤岡さんがニヤニヤしながら言ってましたけれど「絶対鼻を明かしてやろうと思っていた」と(笑)。

――以前にも「ファンタシースターオンライン2(PSO2)」で「FFXIV」とのコラボがあった時にも、オーディン戦で「FFXIV」側のシステムを再現していたように思います。あれもセガゲームスのチームが独自に再現したのですか?

吉田氏: あの時は半々でしたね。セガさんのほうから完全再現したいんですと言っていただいて、ギミックの案を企画と動画でいくつかいただいたんです。このポイントはもう1ギミック増やしたほうがらしくなりますよ、と。オーディンのバトルは基本的に本体を見て避けて叩くというもので、「PSO2」との親和性が高かったのでコンテンツタイプ的に寄せやすかったというのはあると思うんです。「モンハン」はルールそのものを変えてしまっているので。

5周年記念イベントには拡張への秘密が隠れているかも?

――「FFXIV」が間もなく新生から5周年を迎えますが、5周年の道のりについての感想と、次の5周年に対する抱負を教えていただけますか。

吉田氏: 今回欧州のメディアの方にも結構その質問をいただいたのですが、意外とないんですよね。

祖堅氏: とりあえず毎日全力でやっているので、5年だからとか考えたことないです。目の前のことを一生懸命やるだけなので。プロデューサーという意味ではちょっと違うかもしれませんが、僕は開発なので、日々追われてる感じです。

吉田氏: でもさ、俺の日々の追われっぷりだって知ってるじゃない?

祖堅氏: それは、プロデューサーだから仕方ないかなという(笑)。

吉田氏: 僕はどこかに「5年だからなんだっていうんだ」みたいな気持ちがあるんです。だって「旧FFXIV」からは8年ですし。それより重要なのは、次の「FFXIV」にどんな展開が来るのかということですね。多分、グローバルスタンダードなMMORPGとしては、もう機能として足りない部分はほぼなくなっていると思っています。どちらかというと、他のMMOが追いつけないようにするためにも、例えば楽器演奏とか、今力を入れているハウジングでのロールプレイとか、「FFXIV」でしかできない、もしくは「FFXIV」の世界に住むということをもっと充実させたいと思っています。

 次のフェーズではそういうところを伸ばしていって、テーマパークとしてより完成させたいという思いが強いです。次の5年は、当然新しいコンテンツとかシステムはもちろん作っていますが、それと同時に世界をもっと広げるという5年でありたいなと思っています。プロデューサーとして「5周年です」と言ってはいますが、これといって感慨はなく、今はファンフェスの準備に追われて死にそうです(笑)。

――祖堅さんは次の5年の予定はいかがですか?

祖堅氏: ぜんぜん考えてないですよ。毎日仕事に追いかけ回されているので。今もインタビューの合間にトラブルがあって、それの収拾をしなくちゃいけなくて。今週末はオーケストラコンサートがありますし、とにかく今できることを全力でやっているだけです。気が付いたら5年経っていたというだけです。

吉田氏: ゲームのトップがいて、ローカライズのトップがいて、サウンドのトップがいて、この3人にまたがる案件が今現場で炎上していて(苦笑)。最後のプランだけこちらで用意しておいて、現場がどうするかを見たほうがいいなというようなことを、ちょうど言っていたところです。

――5周年記念イベントとして、光の戦士が選ぶ楽曲総選挙が実施されましたが、祖堅氏と吉田氏それぞれ、個人的にお気に入りの曲を教えてもらえますか?@@

祖堅氏: 路線が違う内容で2つあります。1つは単純に曲が好きだからで、次回に乗るどこかの曲。

吉田氏: つまりまだ楽曲総選挙に入っていないんだけど、超お気に入りが1曲できたと? ずるいよねそれ、楽曲総選挙の話なのに、まだ誰も聞いてない曲を(笑)。

祖堅氏: だってできちゃったから。もう1つは「天より降りし力」。あれは「旧FFXIV」と「新生」の境目で生まれた曲でもあり、僕がいまこのGamescomに来ているのもあそこがきっかけだったので。さあやり直すぞと自分の心に火をつけるきっかけになった曲なので、曲がいい悪いではなく単純に思い入れがあるということですね。

吉田氏: 好きな曲はいっぱいありますが、どれか1つと言われるとウルダハの昼に流れる「希望の都」です。ステージイベントなどでもスタートするときに流れています。「Eorzean Symphony」も1曲目は「希望の都」で始まるのは僕のリクエストなので。「FFXIV」を引き受けて新生するぞと号令をかけた時に、当然楽曲も植松さんにお願いしなおすわけにもいかないし、祖堅が旧版にフラストレーションも抱えていたから「じゃあお前が書けよ」という話をして。ある意味ゼロからの初仕事でした。「新生の曲はどんなイメージにしたいんですか?」と聞かれて、「FFXIV」は本当にいろんなことをいわれたので、未完成だとかゲームとして面白くないとか、僕も遊んでみてそう思ったので、そういうものを立て直すからこそ「まっすぐ王道ストレートを直球で投げて欲しいから」、クラシックサウンドのド直球でラッパが鳴り響いて、すごいゲームがスタートしたと思えるようなものにしたい。もちろん田舎街にいったら寂れた音楽が流れていて欲しいけれど、3都市からスタートするのだから、冒険の幕開けを基本にして欲しい。そこから派生させていろんな曲を作って欲しいとお願いしたんです。

 何曲か上げてもらったんですが、その時に「これでしょ?」と上がってきたのが「希望の都」だったんです。「そうそうこれこれ」と。何もリテイクできず、もう後は大丈夫だからよろしくと。まったく手直しなしで。だから僕にとって祖堅という音を作る人間と出会って、初めて自分もゲームデザイナー、ディレクターとして、こういうゲームでこういう曲が鳴っているゲームにしたいんだと説明して、上げてくれた曲なので、いまだに「FFXIV」のイベントをやるにしても最初に鳴り響いて欲しいと今も思ってしまうので、僕にとっては非常に思い入れが強い曲です。あの曲を聞いた時には「これいけるんじゃないのかな?」と思いましたもん。

――結果はご覧になられましたか?

吉田氏: 見ました。

――票が集まっていて意外だなと思った曲はありましたか?

祖堅氏: 全部意外といえば意外かな。

吉田氏:大好きだったシリウスがぎりぎりで落ちたのはショックでした(笑)。

祖堅氏: 国や地域によって好みって結構あるんだなということが今回わかりました。意外だなと。ヨーロッパ地域だとこういう曲が好まれて、日本だとこういう曲が好まれてというのが明確に分かれていました。すごく参考になりました。結果発表は少々お待ちください。

――ねぶた祭りに出展したきっかけは何ですか?

吉田氏: 札幌雪まつりを担当してくれていた広告代理店の方から、宣伝チームに「ねぶた祭りも実はやってるんですけど、いわゆる協賛としてどうですかという話が来て。狙われてるのかな。僕、北海道出身で、育ちが函館なので、青森も近いわけですよ。なんか「吉田にこの辺言っておけば通る」と思ってるかなと思いながら。

 ただ、ちょうど5周年で、だったらと。予算を確認させてもらったら、そこまで莫大でもある意味なかったのでお祭りっていうことも含めて、あとやっぱり、日本全国、世界中に光の戦士の方がいますが、イベントは首都圏が多いので、一緒に盛り上がれる場所のひとつになればと。伝統的な祭りと「FFXIV」を両方楽しめるかなという思いもあって、お願いしたら、あれよあれよという間に、「ねぶた名人が作ってくれることになりました」と。行ってみたら、なんとねぶた名人の実の息子さんが、光の戦士だったりとか。

 マイねぶたって、結構レギュレーションが厳しいのでわりと小さめのはずなのに、行ってみたらすごくでかくて。「これ、マイねぶたを越えてませんか」と聞いたら、ギリギリ、歴史に残る最大サイズを作ってみました、と言われて。まあ、そこでも「ヒカセンパワー」を思い知りました。いろんなことをやっていくのがプレーヤーの皆さんへの恩返しかなと思っているので、今後も機会があれば、いろんなことをまたやっていきたいなとは、5周年に限らず、思っています。

【紅蓮秘話】
キャラクターを掘り下げるミニエピソードが読める

――「紅蓮秘話」第6話に次の拡張を示唆するようなものが盛り込まれているとユーザーさんの間で話題になっていますね。

吉田氏: 拡張があるだなんて誰もまだ正式には言ってませんからね。

祖堅氏: 僕らもわからない。

吉田氏: ファンフェスで何か発表されることを、多分皆さん期待されてるとはおもうんですけども、わからないですよね。「もう、拡張パックは作りません!」みたいなことかもしれないし(笑)。

祖堅氏: 吉田直樹が来ないという可能性もあるよね。

吉田氏: なぜか、祖堅が基調講演にいるという可能性だってありうるからなー(笑)。まあでも、ファンフェスが迫ってくるたびに、自分がミステリー好きなんだなって思います。なぞなぞのフレーズは本編だけではなく、紅蓮秘話もそうですが、あちこちにちりばめておいて、その後何か発表があった時に、後で答え合わせができるようにするのが結構好きで。まあ、ミスリードかもしれないですけどね。よく、パッチトレーラーではミスリードばかりやるので、もしかしたらそのうちの1つなのかもしれない。それを踏まえて、4.4のメインシナリオを見ていただきたいなと思います。ますます訳がわからなくなるかもしれませんが。

 4.4のパッチタイトルには「バイオレット」という色を示唆する単語が入ってたりしますが、あの辺りも訳がわからないという。今回のパッチ4.3は「紅蓮のリベレーター」という物語が1回完結して、テレビドラマでいうと、第4シーズンへの第0話、間違いなく序章ではあります。まずトレーラーを見て「はあ?」となり、本編を見て「はあ?」となって、後はファンフェスを楽しみにしていただければいいかと。ただ、ミスリードかもしれないので、あまのじゃくな「FFXIV」チームをあまり、信用しない方がいいかも……。

祖堅氏: 「吉田を信じるな」と(笑)。

吉田氏: ひどいよね、あのフレーズ。人間として終わってるんだけど(笑)。

――14時間生放送の見どころを教えてもらえますか?

祖堅氏: 僕はサブ放送の方で、虫食わされたりすると思います(笑)。まあサブの方はそんな大した放送ではないと思うので、メインを見ていただきたいです。サブは「FFXIV」をプレイしながら「バカな開発者ばっかりいるな、『FFXIV』は」って感じで見てくれれば良いなと思います。長いんで。だらだらながら見してほしいなと。

吉田氏: メイン放送は5周年ぽい放送になってるかなとは思います。色々な方からお祝いのお言葉もいただいているので、合間にそういったものも挟みつつ。でも基本的には、プロの司会もおらず、本当におもしろい、バカなおじさんたちがワーワーやってるだけの放送なので、「FFXIV」をプレイしながら、なんとなくお酒飲みつつ昼間から見てもらえると良いかなと。

 1つだけ開発パネルみたいなものをやろうと思っています。ゲーム内にあるひとつの集落がどう作られていくのかみたいなものにちょっとフォーカスを当てたお話をしようと思っています。

 若手で、下から這い上がって来た子が一生懸命プレゼンをしたりすると思います。スクリーンショットも多めですし、話の内容も面白いと思うので、新しい切り口のデベロッパーパネルだと思って、注目しておいていただけると嬉しいなと思います。

――Gamescomが終わったらすぐに東京ゲームショウですが、「FFXIV」として何か予定はあるんでしょうか。

吉田氏: TGSで大きいことをやる予定はないですが、ブースの出展は例年通りさせていただきますし、バトルチャレンジをやろうとは思っています。TGSの前に14時間生放送があるので、全部の情報がそこに集約してしまうのでTGSで出す情報がない。どちらかというとプレーヤーさんと一緒に「FFXIV」を遊ぼう、みたいなテーマでやろうかなと思っています。

――行けば、吉田氏に会える感じですか。

吉田氏: 今回はビジネスデーには行かずに一般日だけになるとは思うんですが、会場にはいようと思います。

祖堅氏: まずはその前に今週末、オーケストラコンサートがドルトムントであるので、僕らは今それに集中してます。

吉田氏: 俺はしゃべるだけだから。

祖堅氏: 集中してくださいよ。間違ったらもう大惨事ですよ。

吉田氏: 本来、俺があそこでしゃべる意味がわらない。

祖堅氏: このオーケストラコンサートは、ヨーロッパでやるのは初めてじゃないですか。

吉田氏: 初めてだね。

祖堅氏: 待ち焦がれたプレーヤーさんの前に、1番最初に出てくるのは、俺じゃなくてやっぱり「吉田直樹」が良いと思うんですよ。

吉田氏: 普通、プロのMCがいるよね。

祖堅氏: それは「FFXIV」ぽくない(笑)。「FFXIV」だから、吉田直樹が1番前に出てくるべき。

吉田氏: そんなこんなで、燕尾服を抱えてここまで来たんです。今回はPAなし、生音のみなので僕らも聞くのが楽しみです。まずはそれでヨーロッパのみなさんに楽しんでもらったうえで、帰国したらすぐ14時間生放送。

祖堅氏: まずはそこまでかな。

吉田氏: その前に色々、開発のゴタゴタを片付けなければだめだという感じです。

――最後にファンへのメッセージをお願いします。

吉田氏: 新生してから5年、本当に僕らにとっては、あっという間で……、祖堅がさっき言ってましたけど、目の前にあることを1つずつ、全力でやってきて、気がついたら「ああ5年か」という感じです。それでも、ただひたすら全力で走ることを許してもらえてるのは、本当にたくさんの方に遊んでもらえてるからですし、たくさんの方に応援してもらってるからですし、5年前に発売したゲームでも、こうやって毎回インタビューに来ていただけることが僕らの支えでもあるので。それは、しっかり今回5周年のタイミングで再確認しつつ。ただ同じことを繰り返せばいいのではなくて、5年積み上げてきたからこそできることがあると思っています。それをやっていくこの先でありたいなと。それが、5年なのか、10年なのか、何も決めてないしわからないけど、とにかくひとりでもたくさんの人にまた、遊んでいただいて盛り上がってもらえるゲームにしていきたいと思いますので、今後ともよろしくお願いいたします。

――ありがとうございました!