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PS VRもうすぐ100万台! SIE WWSプレジデント吉田修平氏インタビュー
増産を続けつつソフト面に注力。ハード面の可能性は?
2017年3月2日 21:01
2016年10月13日に「プレイステーション ヴィーアール」(PlayStation VR)が日本でローンチしてからというもの、はやいもので4カ月近くが経過した。GDC 2017(ゲーム・デベロッパーズ・カンファレンス)の開幕に合わせて行なわれたソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)による発表では、2月19日時点でPS VRのワールドワイド累計実売台数が91万5千台に達したとのこと。まだまだ品薄が続く状況ではあるが、すでに100万人近くの人がPS VRを入手したということで、今後ますますコンテンツ面の拡充が期待される流れとなってきている。
そんな中、GDC 2017の開催に合わせてSIEワールド・ワイドスタジオのプレジデント、吉田修平氏へインタビューすることができ、PS VRにまつわるこれまでの流れや今後の展望について語っていただいた。
PS VRの普及スピードは「予定を上回るペース」。ソフト装着率も良好に推移
── 先日、PS VRの実売台数が世界で91万5千台に達したという発表が行なわれましたが、吉田さんとしてはこの数字をどのように評価していますか?
吉田氏: そうですね、社長兼グローバルCEOであるアンドリュー・ハウスも言っておりましたが、我々の想定を常に需要が上回る状況で来ています。生産数は一生懸命増やしているんですが、出荷したらすぐに売り切れる状況がいまだに続いていまして、お待ちいただいている皆様には申し訳ないと思っています。
ただ、去年はVR元年ということで、VR市場に対して様々な推測がある中で、ゲーム開発者の皆さんの関心が集まるこのGDCのタイミングに合わせて、「PS VRの普及台数は着実に増やしていますよ」というメッセージをお伝えしたいと考え、ワールドワイド累計実売台数を発表しました。我々としては、想定を上回る需要に追いつけるように生産数を上げていく努力を続けていきます。
── 特に日本は需要が大きいのか、まだまだ在庫が少ないなあという印象です。
吉田氏: 現状では世界のどこをみても市場在庫がすごく少ない状態なのですが、おっしゃる通り日本はさらに需要が高いですね。
── 今後日本向けの割合を増やしたりとかは考えていますか?
吉田氏: そうですね、日本だけが足りないというわけではないので、そこは全世界のマーケティンググループが話し合いながら割り振りをしていきます。
── すでに購入されたPS VRのオーナーの皆さんの、ソフト購入数はどうですか?
吉田氏: 数は発表していないのですが、多くのユーザーの皆様に複数のコンテンツを遊んでいただいている状況です。しかもデジタルソフトを継続的にダウンロードしていただいていまして、嬉しく思います。
── そうすると、時間的にもかなり遊んでもらえているという感じですか。
吉田氏: そうですね、ゲームで言うと、特に「バイオハザード7」が出て、プレイ時間が長くなっている傾向がありますね。弊社の高橋(SIE グローバル商品企画部)は、VRモードのみでプラチナトロフィーを取ったんですよ(笑)。合計55時間もVRモードでプレイしたと言っておりました(笑)。それくらい遊びやすく作っていただきました。
── そういったところからギネス記録みたいなものも生まれるかもしれませんね。
吉田氏: なるかもしれないですね(笑)。
それから、ユーザーの皆さんにはゲームの他にもYouTubeや映像ソフトの視聴にも使っていただいています。そして今度、プレイステーション 4のシステムソフトウェア4.50(SASUKE)では要望の多かったBlu-Ray 3Dのサポートも入ります。私もやってみてびっくりしたのが、3Dになるとすごい解像感が増すんですよ。
── 両眼で補完される感じですかね?
吉田氏: そうなんです、両眼で違う映像を見る形になりますので、2Dのコンテンツを見るよりはすごく解像度が上がった感じがして、すごくいいです。ですので、Blu-Ray 3Dディスクをお持ちの方には喜ばれると思います。
── そこはまさに既存のコンテンツが活用できるところですね。
吉田氏: はい、それに加えて、PS VR用ではない通常のゲームもけっこうPS VRでプレイされています。PS VRでプレイされているゲームのリストを見るとずーっと長いんです(笑)。基本的にどのゲームもシネマティックモードで遊ばれている感じですね。
コンテンツのレーティングはVR業界全体への影響を踏まえつつ、慎重に
── PS VR本体について、日本ではまだまだ品薄で購入困難という感じですが、この盛り上がりというのはやはり日本独自のコンテンツ文化に寄るところが大きいのではと思います。特にキャラクターモノのコンテンツというのが
吉田氏: はい、「サマーレッスン」とか、「デッド オア アライブ エクストリーム 3」(DOAX3)とかですね。「DOAX3」はすごく海外のユーザーさんから羨ましがられましたね。私がプレイしていると、PS4で何をプレイしているのかがフォロワーさんから見えるんですよ。それで「これやってるじゃないか、羨ましい!」といったツイートをもらったりしました(笑)。
── 「DOAX3」では結構話題になりましたけども、レーティングについてはかなり慎重にやられている感じですか?
吉田氏: そうですね。我々は、CERO、ESRB、PEGIといった業界としてのレーティングシステムを導入していますが、VRは新しいものですし、家庭用では我々が先行してやっているということもありますから、今までももちろんそうですが、特に注意しながら進めています。そういうことをパブリッシャーさんとも最初は特に注意してやっていかなければなりません。そういうことをパブリッシャーさんと話し合いながらやっています。
また、地域毎に市場や文化の違いというのは絶対にあるとはいえ、現在では世界中の人からYouTubeやTwitchなどで見えてしまうので、そこは特に気にしているところです。やはり新しいメディアとして、良い形で伸ばして行きたいと思っています。
── そのあたり、世論への影響を考えつつ、ということですね。
吉田氏: そうなんですよね。文化を尊重することと、クリエイターさんたちの創造力を守るということのバランスを意識しています。バランスがうまくいかなくて、市場を伸ばせなくなったら意味がありませんし、我々としてはそこにも責任があると考えています。PS VRそのものの対象年齢を12歳以上としているのも、安全や健康面で十分な配慮をしていく、ということです。
新作コンテンツも製作中。ハード面ではオプション的な部分での拡張を期待
── コンテンツ面について、ワールドワイド・スタジオとしては、今後どういった取り組みをしていきますか?
吉田氏:海外では4月に「StarBlood Arena」という、マルチプレーヤーのゲームを出します。昔「DESCENT」というPCのゲームがありましたが、その360度の自由度、好きな方向に、XYZどの軸にも動けるというのがコンセプトになっています。「DESCENT」を開発した方も関わっているのですが、その体験をVRで本当に気持ちよく遊べるよう、多くの時間をかけてチューニングしたタイトルになっています。
それに続く5月に、「FarPoint」という、PS VRシューティングコントローラーを利用したタイトルを出します。シューティングコントローラー自体は「FarPoint」専用ではなくて、どのデベロッパーさんも使えますよということで、今後シューター系のゲームで広く対応していただけることを期待しています。
── シューティングコントローラーは日本でも発売しますか?
吉田氏: ええ、それはもちろん発売すると私は思っているのですが(笑)、まだオフィシャルでは言えない段階です。日本でもTGSで展示していましたし、日本のプレイステーションオフィシャルサイトにも情報を出していますので、必ず出ると私は思っています。
── 期待しています(笑)。さて各コンテンツのソフトウェア面ではプレイステーション 4 Proへの最適化もさらに進んでいくかとは思いますが、今後ハードウェア面のアップデートというのはありうるのでしょうか?
吉田氏: 予定はないですね。R&Dという意味では、我々はPS VRの発売前からいろいろなものを試して、自分たちでもやりながら、どういうパッケージでPS VRをお届けしようかと試行錯誤してきましたし、それは今でも継続的にやっています。ただやはり、我々の商品のコンセプトというのは家庭用ゲーム機をベースにしています。ユーザーさんにとっては、誰でも買ってきてすぐに使えることが大事ですし、デベロッパーさんにとっても、同じハードがたくさんの家庭に普及していてコンテンツを作りやすい、ということが大事です。
ですから毎年毎年ハードを変えていくようなことは全く考えていません。ただ、シューティングコントローラーのようにゲーム体験が劇的に面白くなるものがあれば、それは追加で入れていくということは考えています。
── オプション的な部分での拡張はアリということですね。
吉田氏: はい、特にインターフェイスの部分はタイトルによって違いますので、そこはやっていきたいですね。例えばレースゲームを、ハンドルコントローラーを使ってVRでプレイすると本当に入り込めますよね。また、今度バンダイナムコエンターテインメントさんから出る「エースコンバット7」も、フライトスティックのようなものがあれば絶対楽しいだろうなと思います。そういったものを追加していくことで、VR的な接地感といいますか、プレゼンスが増すと思いますので、積極的にサポートしていきたいなと考えています。
── そのあたり、SIE単体としてだけではなく、各ペリフェラルメーカー等と一緒にやれる部分もあるかと思いますが、そういったところで動きはありますか?
吉田氏: 今のところは新たに何か、ということはないんですけれども、「DRIVECLUB VR」にしても「グランツーリスモSPORT」にしても、VRモードでも各ペリフェラルメーカーさんのデバイスが使えますので、それで楽しんでいただければいいかなと思っています。
── 最後に、プレイステーション 4およびPS VRユーザーの皆さんに、今年の期待点や今後の抱負を伝えていただければと思います。
吉田氏: 欲しくても買えないという方には本当に申し訳ないです。今後も生産数を増やす努力を続けていって、できるだけはやく皆さんにお届けしたいと思っています。また今年はソフトを中心に頑張っていきます。未発表のものも含めて新しいタイトルをどんどん仕込んでいますので、ぜひ楽しみにしていただきたいなと思います。
── ありがとうございました。