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Taipei Game Show 2017に見る台湾オンラインゲーム事情

日本・韓国・欧米・台湾がそれぞれの強みを武器に台湾市場に参戦

1月19日~1月24日開催

会場:台北世貿一館

 筆者が台湾を訪れるようになって6年余り経つ。6年前はPCのオンラインゲームが全盛で、ほかにはアーケードマシンやオンラインギャンブルなど、どことなくいかがわしさを感じさせる混沌さが残っていた。しかし、6年後経って、同じ場所とは思えないほど雰囲気が変化した。

 出展社の中で最大規模のSIETをはじめ、Ubisoftやバンダイナムコエンターテインメント、セガゲームスなどコンソールのブースが中心的な位置を占め、かつての台湾らしさは薄れつつある。かつてPC MMORPGで出展していた老舗の台湾ゲームメーカーは、少々片隅に追いやられた感じだ。

 スマートフォン、タブレットのモバイルゲームでは、台湾の新興モバイルゲームメーカーInch Interactive Entertainmentが、SIEに匹敵する規模のブースで、Android/iOS用のMOBA「Glory of Immortals」を大きくアピールしていた。また、日本からはミクシィが「モンスターストライク」のブースを出し、イベント限定グッズやイベント限定色のモンスター配布を行なっていた。

 さらに今年はVRが戦列に加わり、PS VRやHTC Vive、Oculus Rift、Google DayDreamなどがあちこちで試遊されていた。また、GoogleやTwitchという動画配信の雄もそれぞれにブースを出し、ブース内のスタジオから独自の番組を配信していた。すっかり影が薄くなってしまったかのように見えるMMORPG勢も、韓国のPearl AbyssやGravityがそれぞれのタイトルをひっさげて、パブリッシャーを通さず直接乗り込んできていた。

 なかなかに多様性にあふれていた今年のTaipei Game Show。このレポートの中では、オンラインゲームやモバイルゲームに焦点を当てて、今年の出店傾向や出展内容について報告したい。

「黒い砂漠」は台湾で1月25日からオープンβテスト開始

Pearl Abyssの「黒い砂漠」ブース

 韓国のPearl Abyssは、オープンβテスト直前のWindows用MMORPG「黒い砂漠」の大きなブースを出展して、大々的なプロモーションを行なった。

 台湾版の「黒い砂漠」はPearl Abyssの直接運営で、台湾サーバーは、IPをブロックせず世界中のどこからでも接続できるアジア向けグローバルサーバーとして運営される。このグローバルサーバーに、今後展開が予定されている香港やマカオ、シンガポールのユーザーも接続する形となるようだ。

 ビジネスモデルはパッケージ有料の基本無料に、一部有料アイテムの販売という欧米のサービスと同じ形がとられている。オープンβテストは1月25日からだが、アーリーアクセス権が付いた2種類のプレミアムパッケージが販売されており、1月11日からサービスがスタートしている。ちなみにパッケージの代金は、クライアントと30日間バリューパックなどがついた基本パッケージ「Starter Edition」が299台湾ドル(約1,000円)、1週間前からのアーリーアクセス権やインゲームアイテムが付いた「Essential Edition II」が999台湾ドル(約3,600円)、2週間前からのアーリーアクセス権と限定武器などのレアアイテムが付いた「Luxurious Limited Edition II」が2,499台湾ドル(約9,000円)となっている。

 ゲームショウの会場では、まだライブサーバーに実装されていない「ヴァルキリー」を一足早く遊ぶことができた。また、PvPイベントやコスプレショーなどでステージも一日中盛り上がっていた。

【黒い砂漠】
「黒い砂漠」ブースには、対戦台が設置され、ずっとイベントが開催されていた
会場の周りにオープンβテストの告知トラックが周回していた
コンパニオンさんのコスプレ。リトルサマナーとレンジャー

直接運営に切り替わった「ラグナロクオンライン」

ほのぼのした雰囲気のGravityブース

 「ラグナロクオンライン」は、開発会社のGravityが自らブースを出展した。「ラグナロクオンライン」はもともと台湾では2002年から、台湾Soft-World Internationalの子会社遊戯新幹線が運営する形でサービスされていたが、2016年3月に、Gravityが台湾に設立した運営子会社GNJOYに運営が移管されることが発表され、6月頭からGravityの直接運営体制に移行している。

 ブースの一画には、1月10日に台湾と香港に実装されたばかりの、猫の姿をした新種族「ドラム族」をプレイできる試遊機が設置されていた。また、Gtavity Taiwanが開発したAndroid/iOS用アクションゲーム「仙境伝説:復興」や、ブラウザ版「ラグナロクオンライン web」などもプレイアブル展示されていた。GNJOYがパブリッシングしている、日本の美少女育成サッカーゲーム「ビーナスイレブンびびっど!」の繁体字版「練愛球園」も展示されていた。

 しかし、ブース内は試遊の展示がメインではなく、どちらかというと、長年「RO」で遊んでくれているファンのためのアクティビティや、イベント限定グッズ販売のコーナーなどに力が入っていた。ブースの中には、首都プロンテラを背景に360度のパノラマ写真が撮れる撮影コーナーや、グッズの販売コーナー、「RO」のイラスト展示などファンサービス的なアトラクションが点在。今年でサービス開始から15年目を迎える老舗ゲームだけに、ブース内は日曜の公園のようなのんびりした雰囲気。

 ただし、ステージショーの時間だけは、熱く盛り上がった。ステージではコスプレ大会や、コンパニオンによるダンスショーが行なわれていた。「ドラム族」の実装直後ということもあり、ステージショーではドラム族特設ページで流れる癖になるBGMでメイドダンサーが猫ダンスを踊ったり、猫耳を付けたコンパニオンの撮影会があったりと、全面的な猫推しで構成されていた。ちなみにコンパニオンの中国語は語尾が全部「にゃ~」になっていた。

【ドラム族実装告知トレーラー】

【Gravityブース】
力試しコーナー
イベント限定グッズの販売コーナー
ドラム族の試遊コーナー
コスプレコンテスト

【ドラム族】
猫の姿のドラム族。街にも毛糸玉など、猫が好きそうなものがたくさん置いてある

モバイルゲームでMOBAの雄を狙う「Glory of Immortals」

Inch Interactive Entertainmentのブース

 モバイルゲームでは、台湾のInch Interactive Entertainmentは、スタートしたばかりのAndroid/iOS用MOBA「Glory of Immortals」を前面に押し出した巨大ブースを出展していた。

 「Glory of Immortals」は、「League of Legend」をそのままスマートフォンに落とし込んだようなモバイル向けMOBA。基本は5対5の対人戦だが、10対10や、3対3の対戦も可能。バーチャルコントローラーでキャラを操作し、セットした3つのスキルで戦う。途中にある砲台を壊しつつ相手の陣地に攻め込み、相手陣地にあるクリスタルを壊せば勝利する。敵のミニオンや砲台を倒すとコインを入手でき、特殊な性能のついた装備を買うことができる。

 e-Sportsを念頭に置いたタイトルだけに、ステージでは連日、一般のプレーヤー同士やタレントを呼んでの試合など、様々な大会が開催されていた。

「Glory of Immortals」のページ
https://moba.efuntw.com/

【「Glory of Immortals」】

【Glory of Immortals】

5月には、台湾サービス3年目を迎える「モンスターストライク」

会場外の大型看板
「モンスターストライク」ブース

 日本からはミクシィが「モンスターストライク(モンスト)」のブースを出展していた。「モンスト」は、2014年5月に台湾サービスを開始し、今年の5月で3周年を迎える。2016年12月現在でダウンロード数は560万を突破しており、さらに増加中だ。

 ミクシィは、2015年からXFLAGスタジオを立ち上げ、このブランド名で「モンスト」をサービスしている。ブース内にもXFLAGのロゴが高く掲げられていた。またXFLAGは、単にゲームコンテンツを提供するだけではなく、プレーヤーが一緒に楽しむことができる空間づくりを目指している。

 この空間づくりのために用いられているのが、アニメやグッズなどと連携したマルチメディア展開だ。YouTubeで配信している「モンストアニメ」は、台湾からも繁体字幕版が全シリーズ無料で見ることでき、ブース内にもアニメ映像が流れていた。

 他にも、Tシャツやクリアファイル、ストラップなどが入った福袋の販売コーナーや、カフェが作られていた。カフェでは、豆から挽く本格的なコーヒーやラッテ、フレーバーティーに加え、パンやスコーンなどが並んで臨時出展とは思えないほどの本格的。さらにモンスターのイラストが描かれた、イベント限定のオリジナルコーヒーも販売されていた。また、ステージでは、大会専用の限定色モンスターを用意したPvP大会が開催されていた。

 今年は5月に、3周年を祝う大規模なオフラインイベントの開催が予定されている。また、8月に開催される「漫画博覧会」にもブースを出展するなど、オフラインでの活動に注力していく予定だそうだ。

【「モンスターストライク」ブース】

Googleブースの「クラッシュ・ロワイヤル」台湾オープンが大盛況

Googleブース

 Googleは、「グリムノーツ」、「クラッシュ・オブ・クラン」、「クラッシュ・ロワイヤル」、「誅仙」、「ハースストーン」、FPS「Crisis Action」などのAndroid用ゲームをGoogle Playの試遊コーナーに出展していた。

 Chromecastのコーナーにはクラウド版の「ファイナルファンタジーXIII」と「Just Dance Now」がどちらもChromecastを経由した大画面で表示され、試遊されていた。

 Google Daydreamのコーナーでは、昨年11月にローンチされたBig Red Button EntertainmentのVRFPS「The Arcslinger」をプレイすることができた。これは西部風の場所で、ガンマンたちと戦うレトロな雰囲気のガンシューティング。

 Daydreamのコントローラーを相手に向けて、タッチパッドボタンで発射する。画面中央あたりには、左側に残弾、右側に自キャラのHPが常に表示されている。攻撃しようとする敵は、円形のゲージが動き始め、満タンになると撃ってくる。満タンになる前に相手を撃つと攻撃が止まる。残弾が0になるとリロードが入り、その間は攻撃ができないので、反射神経を研ぎ澄ませて敵の攻撃を止めつつも、合間にうまくリロードを挟み込むというパズル的な組み立ても求められる。

 敵を倒すと青い十字架が付いたタルを落とすことがある。これは回復アイテムで、出現後はずっと画面上に浮かんでいるので、必要な時に撃つと体力が一定量回復する。敵の攻撃はウェーブに分かれており、ウェーブが進むと固い敵や、刃物で武装して距離を詰めてくる敵が出てきて、かなり忙しくなった。

【The Arcslinger - Launch Trailer】

【Googleブース】
実況生放送用の配信ブース
Google Daydream体験コーナー
Chromecast体験コーナー

 Trixiが開発した「PhantoGeist」は、GoogleのAndroid向けのAR/MR向けフレームワークTangoを使ったARシューティングゲーム。カメラに映った風景の中に現れるモンスターを、タップ連打で退治するというゲーム。画面に映る風景の中には、モンスターを走査する赤い光が常に左右に動いている。画面上方のレーダーに赤い点として表示された方向にカメラを向けると、いかにも異次元から彷徨いこんできた感じがする極彩色のモンスターがこちらへ近づいてくるのが見える。プレーヤーが画面をタップすると、指先からビームが出て、モンスターを退治できる。

【PHANTOGEIST Trailer】

【PhantoGeist】
なぜか電車の車内風に作られたブースの中でモンスター退治

 Googleのステージ上では、1月21日に「クラッシュ・ロワイヤル」の台湾最強クラン決定リーグ「The Royal War」の台湾オープンが開催された。世界大会への出場権をかけた大会で、ランキング世界第2位の韓国人プレーヤーYao Yao選手や台湾の有名ユーチューバーLao Gaoさんなど、有名人選手も多く参加していた。試合を見るために集まった観衆は、隣のブースのステージまではみ出してステージを占拠するほどで、試合の最中はそこ以外の通路ががらんとして見えるほどだった。ブースのちょうど裏側あたりに作られた配信コーナーでは、ゲストを呼んでの実況生中継が終日配信されていたが、この大会の様子ももちろんここから配信されていた。

【「クラッシュ・ロワイヤル」台湾オープン】
観戦者数は間違いなく今回最大の人出だった「クラッシュ・ロワイヤル」の公式大会

 オンラインゲーム一強時代から、モバイル、そして家庭用とVRと、世界中のメーカーやサービスが台湾という市場を目指して集まっている。そんな中、これまで台湾市場を引っ張ってきた古参PCゲームメーカーの元気がないことは少々残念だった。

 今回、台湾と香港の同時サービスという言い方をよく耳にした。台湾と香港という、東西の文化をどん欲に消費する2つの地域が、アジア圏におけるハブとして重要視されているのを感じた。Pearl Abyssが台湾サーバーをグローバルサーバーとして直接運営するのも、Gravityが台湾スタジオを作ってパブリッシングを行なうのも、この地域を重要視している表れだろう。

 英語が使える香港、日本文化への造詣が深い台湾という2つの中国語圏のタッグは、様々なものが融合したまったく新しい文化を生み出せる可能性を秘めていると思っている。来年のTaipei Game Showで、次はどのような変化が生まれているのかが楽しみだ。