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TGS2016最大の目玉はスクエニの「Project Hikari」かもしれない!
VR×漫画の異色タッグが実現した“ストーリーの向こう側”
2016年9月16日 00:00
スクウェア・エニックスの技術部門テクノロジー推進部がまたやってくれた。テクノロジー推進部は、2014年に退社した同社CTO橋本善久氏が立ち上げた組織で、次世代ゲームエンジン「Luminous Studio」プロジェクトを立ち上げ、テクノロジーデモ「AGNI'S PHILOSOPHY」として結実させ、そのテクノロジーの大部分は現在開発中の「ファイナルファンタジーXV」でも採用されている。
そのテクノロジー推進部が手がけた新デモ「Project Hikari」は、研究開発に着手しているVRと、スクウェア・エニックスが擁する豊富な漫画コンテンツを組み合わせたユニークなテクノロジーデモだ。
数カ月前、テクノロジー推進部が、スクウェア・エニックスが保有する漫画やアニメなどのノンゲームコンテンツのVRを使った活用方法をスクウェア・エニックス代表取締役社長の松田洋祐氏に提案したところ、「それなら漫画がいいのではないか」ということで、プロジェクトがスタートしたという。開発期間はわずか数カ月ほどで、PC向けVRの担い手であるHTCとNVIDIAの協力を受け、Unreal Engine 4.12を使って開発されている。
さて、肝心のデモの内容は、月刊ビッグガンガンで連載中の「結婚指輪物語」(めいびい作)のワンシーンをデジタルコミック化し、VR上で閲覧可能にしたものとなっている。ただ、テクノロジー推進部が手がけたデモだけに、単なるデジタルコミックの閲覧ではなかった。
HTC Viveを装着してVR世界に入ると、そこは真っ白な空間で、中央のテーブルの上にコミックが置かれている。しばらくするとコミックが浮かび上がり、手元で開いたかと思うと、1ページずつバラバラになって空中に舞い上がった。なかなかクールな演出だ。
漫画本編がスタートすると、主人公の男がベッドに寝っ転がっているシーンが画面一杯に描かれ、何やらブツブツつぶやいている。自身の行動を後悔するようなセリフを吐いているが、そこまでのいきさつがわからないため、意味がよくわからない。
と思っていたら、唐突に漫画のページが手前に表示され、そこまでのいきさつが漫画のコマ割りスタイルで紹介されていく。初期位置だとページが少し遠いため、文字が読みにくいが、手元のコントローラーで手元に引き寄せ、目の前に置くことによってクッキリハッキリ見える。
引き寄せて初めて気づいたが、コマの一部が3DCGで描き直されている。3DCGなので当然奥行きがあり、角度や位置を変えることで、まるで窓を覗き込むように見える内容がかわる。3DCGで主に描かれているのは、ヒロインらしき“ヒメ”だ。最初のシーンでは浴衣を着てこちらを向いて微笑んでおり、当然のようにフルボイスで喋りまくり、まるでアニメを見ているような錯覚に陥る。
シーンとしては、神社の夏祭りを舞台にした2人のデートシーンのようだ。主人公は、意を決してヒメに告白しようとするが、言いかけたところでヒメから引っ越しすることを告げられてしまう。そして先ほどのベッドのシーンに戻る、といういかにもな展開。
主人公がベッドでふてくされていると、窓の向こうから光が輝き、そこに主人公が向かうと、ヒメが光の中に入っていこうとしていた。ヒメは引っ越すというのはウソで、別の世界に変えるところだった。光の中に消えていくヒメ、そしてそれを追いかけていく主人公。VRデモはここで終了となった。
時間としてはわずか8分ほどで、漫画の1話分に満たない程度のボリュームだが、VR漫画のつもりで読み始めたはずが、徐々にコマ割り漫画より3DCG表現が増え、最後には完全にVR CGアニメになっていた。その変化が非常にスムーズで自然だったため、どっぷり没入してしまった。この没入感は、VRゲームとも異なり、新鮮な感動がある。この感覚はかつて味わった事のないもので、ぜひTGS会場で味わって欲しいところだ。
個人的にはマネタイズが難しいと感じたが、その点はまったく心配していないという。スペック的にも、HTC Vive&GeForce GTX 1080という組み合わせである必要はなく、PlayStation VRやGEAR VRでも十分楽しめるため、VRが普及してしてくれさえすれば、十分ビジネスになると考えているという。
なお、「Project Hikari」は、今回の東京ゲームショウでユーザーの反応を見て、次のアクションを決めていくという。個人的には「Project Hikari」は、漫画という2D表現に依存してきたコンテンツフォーマットに、新たなパラダイムシフトを起こすプロジェクトで、コミックス1巻、月刊漫画1冊丸ごとぐらいの単位で、VR漫画としてドカドカ出てくれるような未来が待ち遠しい。