CJIJ、「イースオンライン」先行体験レポート
柔軟なカスタマイズ機能が楽しい。今後の目標は「イースらしさ」

2009年4月よりプレオープンサービス開始予定




 CJインターネットジャパン株式会社は、Windows用MMORPG「Ys Online ~The Call of Solum~(以下、「イースオンライン」)」の国内サービスを今春より開始する。サービススケジュールは、事前に参加者を募集した形で実施するプレオープンサービスを2009年4月より、制限のないオープンサービスを4月末から、そして5月には基本プレイ無料アイテム課金制による正式サービスを開始する予定だ。

 「イースオンライン」は日本ファルコムのアクションRPG「イース」シリーズをモチーフとしたMMORPG。開発は韓国CJ Internet Game Studioと日本ファルコムが担当している。韓国では2007年11月より正式サービスが開始されている。会員数は非公開。

 「イース」シリーズは軽快な操作性と、魅力的なキャラクタと共に織りなす濃密なストーリーが魅力だったが、「イースオンライン」はそれとはまた別なベクトルの作品である。韓国産MMORPGのフォーマットを踏襲しながら、瞬間的に力を発揮できるアクションポイントシステムや、様々な効果を持ったカードシステム、10人でのパーティーを組んだ戦い、大規模なPvP守護バトルシステムなど様々なオリジナル要素を盛り込んだ作品となっている。

 筆者は2007年に韓国CJI本社で、当時開発中だった「イースオンライン」を触ってみて、アクションRPGであった「イース」が、標準的な韓国風MMORPGに変わってしまっていて失望した記憶がある。しかし、今回改めてタイトルを触ってみて、韓国産MMORPGというベースを持ちながら様々なシステムを盛り込み、拡張性を持たせている本作に好感を持った。新しい韓国産MMORPGとして注目したいと感じた。

 加えて期待したいのが、今後の展開でのキーワードは「イースらしさ」だということだ。「イースオンライン」は韓国に加え、中国と日本でサービス展開を行なっていくが、日本の運営チームは日本ファルコムと協力しながら原作である「イース」の要素を盛り込んでいきたいという。注目したい要素である。今回はサービス開始に先立ち、CJインターネットジャパン本社で開発中の本作を触ることができた。スクリーンショット共に基本的な要素を紹介したい。



■ 3つの種族でスタートする「イースオンライン」。原作とはひと味違った世界を彩るセンスに注目

キャラクター作成の種族選択画面。石像が選択すると命を持つ、というイメージだ
チュートリアルではムービーシーンが挿入される。このシステムがどのように拡張していくか楽しみだ
マップ画面。3種族は別々のスタート地点からやがて合流していく

 「イースオンライン」は「イース」シリーズと同じ“エレシア大陸”を舞台とする。時代設定としては「イース」シリーズの主人公アドルが冒険をしてから100年以上経過した時代になっており、彼の冒険は「赤毛の戦士」の物語として語られ、NPCのクエスト時のセリフにその断片を伺うことができる。

 原作のシリーズでは魔法という概念は「イースII」でなくなってしまうが、「イースオンライン」のキャラクタ達は様々な魔法を使いこなす。フィールドの設定やモンスターなどもオリジナル色の強いものであり、システムも基本的なところは韓国産MMORPGのフォーマットだ。最初の感想としては、「イースオンライン」は「イース」の名前を冠していながら、原作をあまり感じさせない作品だということだ。

 「イースオンライン」ではプレーヤーキャラクターは3つの種族から選択する。アドル達と同じ我々人間と近い外見をした「エレシア人(びと)」。屈強な体格を持ち、体に刺青をした「アフロカ人」。そして子供のような外見のかわいらしい「キーモ人」。

 種族はキャラクターを育ててからの“上位職”に影響してくる。上位職の選択肢が、種族で異なってくるのである。キャラクタは作成時、接近戦のファイターか、魔法の得意なメイジを選ぶのだが、上位職では更に役割が明確になる。エレシア人は接近戦、魔法どちらもこなすが、アフロカ人は接近戦に強く一方で魔法に関しては敵の力を下げるなどの呪術が得意で、キーモ人は魔法職が強いが戦士系を選ぶと弓の得意な職業が選べる。上位職を視野に入れた形で種族を選択したいところだ。

 キャラクターを作ると巨大なモンスターに追われるショートムービーが挿入される。さらにゲームスタート時のチュートリアルでも、モンスターに襲われる村人と立ち向かう兵士達がムービーで流れる。プレーヤーは彼らを助けるために戦場に飛び込んでいくことになる。操作を覚えながらちゃんとストーリーが入る演出と、ムービーの挿入、独自に動きモンスターと戦う兵士達がいるというシステムがきちんと入っていることに感心させられた。韓国産MMORPGではまだこういったシステムを入れられていない作品も多い。本作の可能性を感じさせられた。

 チュートリアルが終わるとスタート地点の村にテレポートする。3種族のスタートはそれぞれ別な場所だ。村の作りは凝っており、独特の建築様式を感じさせられる。オブジェクトも細かく、スタッフの気合いを感じさせられる。「幻獣」と呼ばれる喋るモンスターがいるのも面白い。

 グラフィックスは欧米の最新タイトルのような圧倒的な情報量や精密さはないが、デザイナーのセンスを感じさせてくれる。特にキーモ人のスタート地点「風の村ウォールデン」は巨木を取り巻くように街ができていて、曲線を主体とした建物や、高低差のある足場が吊り橋で結ばれていて世界観の“幅”を感じさせる。今後どんな世界が広がっていくのか楽しみだ。

 街のマップ画面ではクエストをくれるNPCは黄色い点で表示されている。このクエストを受け、こなしていくことでレベルアップしていくという展開になる。クエストの中には装備セットをくれる初心者支援のものもあった。支援用のクエストなどは、運営を進めていく上でバランスを調節するために追加されたものだという。韓国でサービス開始から1年以上経過した本作は、ゲームバランス的に練られているようである。


キャラクター作成画面。キャラクタの顔パターンなどは数種類で、もう少しバリエーションが欲しいところだ
ストーリー性の盛り込まれたチュートリアル。ムービーや動くNPCなど可能性は感じるが、世界観や背景を語る演出などはほとんどない。今後深めて欲しい部分だ
アフロカ人のスタート地点となる街。建物などから独特の生活様式を感じる。幻獣の存在も興味をひかれる
開発者のセンスが強く発揮されているキーモ人の街。木の上に作られた街で、目もくらむような高さの描写が楽しい


■ 力を爆発させるAPシステム、パーティー重視のゲームバランス。これからのキーワードは「イースらしさ」

カードは消費型から装備型まで様々な種類がある。イラストはシンプルながら味がある。コラボレーションなどで発展しそうな部分だ
乗用ペットを召喚。他にもいくつもの種類の乗り物が登場するという。モンスターは無骨なデザインが多く感じた
キーモ人の戦士が体より大きな剣を振るう。キャラクタの装備は職業などの制限がない。実用を考えれば装備は限られるが、街などの“オシャレ”には組み合わせが楽しめそうだ

 「イースオンライン」は基本はオーソドックスな韓国産MMORPGのフォーマットを受け継ぎながらも様々なオリジナル要素を盛り込んでいる。1つめが「カードシステム」である。本作には様々なカードが登場する。カードには装備ができるもの、騎乗ペットを召喚するもの、武器を強化するものなど様々な種類がある。

 ペット召喚や、村や町に帰還するカード、クエスト用のカードなどは従来のゲームでも同様の機能を持つアイテムが存在するが、ユニークなのが「装備カード」だ。このカードには「アクションポイント(以下、AP)システム」と連動する能力がある。APはモンスターを倒すとゲージが上昇し、ゲージがフルになると「玉」としてストックできる。この玉を使うことで特殊な能力を発揮できる。

 装備カードをつけていれば玉を消費し一定時間「防御力上昇」、「魔法攻撃力強化」などの補助効果を得ることができる。状況や役割に応じて装備カードを交換することで、より役割にあった機能を発揮できるのだ。普段は盾役として活躍するキャラクタも状況によって防御を更に高めるカードを使ったり、他に盾役がいればアタッカーとしてのカードを使えば違う活躍もできる。装備カードはキャラクタに「幅」をもたらしてくれるのだ。

 APによって得られる玉はカードの能力を解放するだけでなく、キャラクタの周囲に強力な範囲攻撃を行なったり、瞬間的に体力を回復させるという「アーツビルド」などの特殊能力も可能にする。ボスキャラクタなど強力な敵と戦う場合などはこの玉が戦いの鍵となる。カードに使うか、アーツビルドを使うかなど選択肢を持たされているところが楽しいと感じた。

 ファイターかメイジを選択して作るキャラクタはその後種族独特の職業へ分化していく。オープンサービス時のレベルキャップは40となるとのことだ。キャラクタには多くのスキルがある。「イースオンライン」ではショートカットに登録するだけでなく、ショートカットボタンの隣にもスキルやアイテムのアイコンを置くことができる。実際にはいくつものスキルアイコンを配置し、駆使して戦っていく。多数のスキルを使っていくを使うタイプの作品だ。

 今回はレベル26のエレシア人の前衛職ナイトを体験してみた。防御力に特徴のある職業のようだ。特にユニークだったのが「アイアンフォートレス」というスキル、このスキルは防御力と攻撃力が増す代わり、移動速度が大きく減少する。壁役にはぴったりのスキルだと感じた。体験プレイでは周囲の敵を挑発スキルで自分に引きつけ、ポーションとAPの玉を使って体力を回復させるというスタイルで戦ってみた。スキル、カード、APを使いこなして役割を持ってパーティーで戦う楽しさを感じることができた。

 「イースオンライン」では最大10人という他のMMORPGと比べても大人数のパーティーを組むことができる。狩場はフィールドだけでなく、ダンジョンも用意されており、さらにインスタンスダンジョンシステムも実装している。インスタンスダンジョンは入るときに自動生成される構造で、フロアごとに中ボスのモンスターもいる。敵の索敵範囲は広く、囲まれやすい。ダンジョンでは大量の敵を手分けしてうまく倒していく、という展開になりそうだ。

 本作はパーティープレイを重視したバランスのゲームであるという。レベル10くらいまではソロプレイでできるが、そこから先は何人かで組むことになる。このためにゲーム内で閲覧できる掲示板といったパーティー募集のシステムも準備されるとのことだ。

 この他に上級者向け要素として「守護バトルシステム」が用意されている。これはギルド単位での「聖地奪還」を目指すという対戦システムで、最初はガーディアンが守る聖地に攻め込み、支配権を握ったギルドが今度はガーディアンを味方にして他ギルドと戦うというシステムだ。協力プレイでの役割やAPの使い所、他ギルドの連携など様々な要素が絡み合う大規模対戦になりそうで楽しみだ。

 今後の展開に関して、本作のプロダクトマネージャーを務めるCJインターネットジャパンゲーム事業1部の秋山隆利氏は「イースらしさ」を挙げる。現在の「イースオンライン」は原作の「イース」を感じさせる要素は少ない。日本の運営としては今後、「イース」との関係を強めるために、日本ファルコムとも協力して提案をしている。

 秋山氏が盛り込んでいきたいと考えているのは「ストーリーと世界観」だという。ストーリーやキャラクター性を盛り込み、かつてのアドル、赤毛の剣士の冒険に想いをはせる。現在の「イースオンライン」のプレーヤーキャラクタも、「かつて赤毛の剣士の冒険談に触れ、あこがれを持って冒険をしている」という立場を強調していきたいという。

 NPCの制御やムービーを挿入できるシステム、インスタンスダンジョンなど、「イースオンライン」はストーリー性を強調できるシステムの土台はある。秋山氏はこのシステムを活用し、現在の「イースオンライン」をさらに発展させたいと考えている。この動きは韓国にもフィードバックされ、「イースオンライン」の世界展開に関係してくる。早ければ夏に予定されている大型アップデートから「イースらしさ」を強めるコンテンツも盛り込まれる予定とのことだ。


 筆者は最初に韓国のCJ Internet本社で「イースオンライン」の開発中のバージョンを見せてもらったのだが、そのときはまったく「イース」の要素が見あたらなかったため、ちょっと失望した記憶がある。今回、改めて本作に触れてみて、「イース」らしさとは違う部分で、韓国産MMORPGとしてきちんと進化をしており、パーティープレイという明確な方向性を持っていることがわかり好感を持った。なによりも、独特の世界観を持っている制作者のセンスに感心させられた。

 加えて、日本展開にあたり「原作要素を取り入れる」という明確な方向指針を持っているところも期待したい。スタートするオンラインゲームは数多くあるが、明確な指針を持っていない、ぼんやりしたゲームが多いのが現状だ。「イースオンライン」の方針でも、具体的な点はまだまだ未知数だが、アイデアが盛り込まれた戦闘システムと、ムービーなどの演出が入れられるというシステム的な可能性に期待したい。どんな作品になっていくか注目したいところだ。


インスタンスダンジョンを経験。低レベル向けなので戦えたが、適正レベルでは少人数の狩りはきつそうだ
フィールドを探索。モンスターが集落を作るMMORPGとして一般的なものだが、海があったり、特徴的な地形がおもしろい
暗いフィールド。グラフィックスとして最新、という印象ではないがデザインとして凝っている印象がある
エレシア人のスタート地点である港町。この他にはどんな町があるのだろうか

Copyright (c) CJ Internet Japan, Corp. All Rights Reserved.
Copyright (c) CJ Internet, Corp. All Rights Reserved.
Copyright (c) Nihon Falcom Corporation. All Rights Reserved.

(2009年 3月 19日)

[Reported by 勝田哲也]