インタビュー

「ゲームエフェクトはゲームの命!」 マッチロック取締役 後藤誠氏インタビュー

第5回を迎えた「ゲームエフェクトコンテスト」にかける熱い想いを聞いた

【第5回ゲームエフェクトコンテスト】

2015年12月12日〜2016年2月27日作品募集

2016年3月26日結果発表

 ミドルウェアメーカーのマッチロックは、「第5回ゲームエフェクトコンテスト」を12月12日より開催している。応募は2016年2月27日までで、参加は無料。同社のゲームエフェクトに特化したミドルウェア「BISHAMON」のコンテスト専用バージョンを使って、誰でも手軽に参加できる。

 マッチロックが毎年主催するゲームエフェクトコンテストは、ゲームメーカーのエフェクトデザイナーやデザイナーを目指す学生たちにとって、スキルアップやひとつの目標となっているコンテストだ。ゲームに採用されたエフェクトの利用や、応募作品のゲームへの採用は不可という、営利性を一切排除し、純粋に特定のテーマで技を競い合うストイックなコンテストでもある。

 なぜ同社は手間暇の掛かるゲームエフェクトコンテストを開催し続けるのか、その真の狙いとは何なのか。今回は、マッチロックでゲームエフェクトコンテストを主導するBISHAMONエヴァンジェリストの後藤誠氏に話を伺った。

【第5回ゲームエフェクトコンテスト開会式】

エフェクトデザイナーの存在を世に広めたい

マッチロック取締役 ツール&ミドルウェア事業部部長 後藤誠氏
エフェクトツール「BISHAMON」
「BISHAMON」のスクリーンショット

――ゲームエフェクトコンテストの開催意図を教えて下さい

後藤誠氏:そもそもの起こりからお話しすると、最初となる第1回は2009年、当時は「ブレンドマジック」という名前のエフェクトツールでした。それを使って世界的に初めてかはわからないですが、少なくとも日本では初めてのゲームエフェクトコンテストを開催しました。当時は会社の知名度もなくて、そもそも「ブレンドマジック」自体が知られてなくて、一般販売もされておらず、体験版を使った1カ月ぐらいの開催でした。

 その開催意図は、1つはエフェクトデザイナーを育てたいということ、2つ目はゲームエフェクトツールというものが存在するんだということを世に広めたいというものでした。丁度その頃は、ゲームエンジンやミドルウェアが出始めたころで、当時は社内開発がまだ強い時代で、エフェクトツールは社内でつくるものというのが常識的な考え方でした。ミドルウェア、ゲームエフェクトツールとしての「ブレンドマジック」が少しずつ知られるようになっていたころです。

 その後、コンテスト自体はペンディング状態だったんですが、2012年に私が社長に直談判して復活開催することしました。その最大の意図は、当時、「日本のゲームは良くない」、「はっきりいって糞だ」と言われていたタイミングで、私は「そんなことはない」と思ったんですね。確かに、当時を振り返ると、コンシューマゲームがどんどん下火になって、カードゲーム、ソーシャルゲームが流行になり、グリーさんやDeNAさんが勢いを増していた時期です。長年ゲーム開発をしている人間にとってはコンシューマーでのゲーム作りに危機感を抱いていましたし、「日本はこんなものか」など、世界からも様々な評価を受けていました。私は日本のゲームを信じているし、なんとかしたい。自分でできることは何かと考えたときに「ゲームエフェクトコンテストを復活させよう!」とそう考えたんですね。

 私は日本にはまだまだクリエイター魂があると信じています。ただ、1本のゲームが1人の天才クリエイターによってつくられることは稀な時代になりました。昔は3人、5人で作っていた時代もありましたが、今や少なくても10人以上、多ければ200〜300人体制で作られるようになりました。そうした中で、たとえばプログラマであれば子供のころからずっとプログラムを書いていて、デザイナーであれば子供のころから絵を描かずにいられないような、ゲームデザイナーなら次はどのようなゲームを作ろうかと、寝ても覚めてもそればっかり考えている。そういう人間がゲーム業界にたくさんいて、そうしたひとりひとりのクリエイター魂が折り重なって一本のゲームとして編み上げられたものが最高の作品だと思うんですね。

 ただ、ふと考えると、その際にエフェクトは注目されていないんです。たとえば、ゲームデザイナー、ディレクター、キャラクターデザイナーに有名な人はいますが、エフェクトデザイナーにはいないんですね。エフェクトデザイナー は焦点があてられていないんです。だったら、そこに焦点を当てたコンテストを開催しようと思ったんです。そこで日本でくすぶっている多くのクリエイター魂に火を付けたいと。その魂を発展させることが日本でもっと良いゲームが生まれる源泉だと確信しています。

 それを証明する絶好の機会、「あいつは凄いな!」とみんなに気づかせるのがコンテストです。言うなれば野球における甲子園のようなものですよね。「あのピッチャーすげえな」と。檜舞台に立つということがクリエイターにとっては重要で、このゲームのシナリオライター、エフェクトデザイナー、モデリングデザイナーは誰という具合に、ひとりひとりに焦点が当てられたらもっと日本のゲームはもっともっと変わってくると思うんです。会社やチームではなく、個人が際立ってきていますし、実際インディゲームでは個性的なゲームが数多く生まれていて、世界的な潮流でもありますよね。

 私はたまたまマッチロックという会社にいてBISHAMONを担当しているので、エフェクトデザイナーが身近なところにいます。これを活用してコンテストを立ち上げて、そこから生まれてくる新しいスターを発掘し、未知の新人、学生をプロに引き上げて、すでにプロの立場にいる方であれば、自分のスキルをさらにあげる場として活用していただきたいと思いました。日本のゲームの二段三段底上げするためにゲームエフェクトコンテストを立ち上げました。

――過去4回の参加者数、そこで生まれたエフェクト数というのはどれぐらいですか?

後藤氏:第1回から徐々にコンテストの存在が知られるにつれて参加者数は増えてきていますが、前回で30〜40人ぐらいです。日本で活躍するエフェクトデザイナーの数からすると悪くない数字だと思いますが、主催社としてはまだまだ少ないと考えています。今はそもそもエフェクトデザイナーを目指そうという学生の数自体が少ないですし、エフェクトデザイン専門でやっているプロの数も少ないです。応募数については、1人で1作品応募する人もいれば、3部門で3作品応募もいますので、40人前後の参加者数に対して、だいたい50から60の応募があります。

【第3回ゲームエフェクトコンテスト全作品集】

【第4回ゲームエフェクトコンテスト全作品集】

――エフェクトデザイナーをはじめ、個々のクリエイターの存在を際立たせるためのエフェクトコンテストを立ち上げたということですが、エフェクトにこだわるのはBISHAMONだからですか、それとも何か別の意味がありますか?

後藤氏:まず、ゲームエフェクトは広い分野でのスキルが必要という特徴をもっています。モデリング、アニメーション、テクスチャ、シーン構成などゲーム制作に必要な様々な分野に跨っており、ゲームエフェクトを学ぶことはこれらのスキルを高めることに繋がると考えております。確かに現在はBISHAMONのコンテストになっていますが、実は第2回はBISHAMONにこだわらない映像コンテストでした。Twitterに動画のリンクを張って、専用のタグを付けて応募する形式で、BISHAMON以外のツールを使ってもよいということで始めました。ただ、フリーで色んな人が使うときに、エフェクトツール自体のクセがあるんですね。たとえば、このツールであれば、あれが得意、これが不得意という具合に。コンテストとなると、ベースとなる基準がないと、そのツールの得意なところだけが前面に出て、不得意なツールを使った作品と比較すると、審査側としても公平なジャッジが難しくなります。弊社ではBISHAMONを扱っているので、まずは公平なジャッジをするために、 BISHAMONを使うことを基準としました。将来的には、もっといろんな分野への展開を考えていくにあたって、別のツール部門があってもいいと思っています。この点については、将来的に考えていくべき部分ですね。

――過去のコンテストの入賞作品の中で、実際のゲームへの実装事例もあるんですか?

後藤氏:コンテストの規約で、コンテストに出したエフェクトは、ゲームに使ってはいけないという規約がありますので、それはありません。つまり、二次利用はダメですね。もちろん、その逆のゲームで使用されたエフェクトでの参加もできません。

――それでは参加者が入賞を機にメーカーのエフェクトデザイナーに採用されましたというお話は?

後藤氏:徐々に増えています。ひとつ大きなきっかけとなったのが2014年に本が発売されたことです。「BISHAMONゲームエフェクトデザイン入門」という書籍ですが、専門学校でこれを教科書としてエフェクト制作の授業が開講されることになりました。学校自体はその前からあったのですが、教科書になったのが大きくて、そこからデザイナーとして卒業した人がゲームメーカーに入社したという事例が出てきています。その際の登竜門となっているのがエフェクトコンテストで、入賞者が入社に結びついています。ただ、専門学校の開講したのはまだ数年で、やっと今年卒業生が出たばかりなので、まだ多くはありませんが、実際にそういう事例は出てきています。

――すでにメーカーで名前を出して活躍されている方はいますか?

後藤氏:いらっしゃいます。ただ、コンテストではペンネームで参加されているので、今ここで本名を出すことはできません。学生の部で応募した方が何人かプロとして活躍しているのは確かです。

――ちなみに日本にエフェクトデザイナーは何人ぐらいいるのですか?

後藤氏:200人〜300人規模の開発体制でエフェクトデザイナーは5人でした。エフェクトデザイナーはこれぐらいの割合で少ないんです。ただ、現在はゲーム制作数が増えてきていて、ゲーム開発にはエフェクトデザイナーは必ずいて、かつ1人が複数に絡むので、延べ人数で、タイトルに掛ける1.2ぐらいはいる計算になりますね。

――となると千人単位でエフェクトデザイナーが存在することになりますが、それを踏まえると、エフェクトコンテストにはもっと多くの参加者が来て欲しいところですね。

後藤氏:そうですね。私は専門学校で依頼を受けてセミナーをやっているのですが、そこで1人の生徒のセリフが非常に印象的でした。その生徒は専門学校に入って、初めてエフェクトのセミナーを受けたみたいなのですが、こういったんですね、「目から鱗でした。ゲームエフェクトはご飯に掛けるふりかけだと思っていたが、ゲームにおいてエフェクトがこんなに重要なものだとは知らなかった」と。学生にとってエフェクトデザイナーを目指す人が少ないのは、まだエフェクト自体がそういう認識だからだと思います。ご飯のふりかけ程度だと思われている。それを聞いて驚いたのですが、まだまだ自分は重要性をもっと知らせないといけないと思いましたね。

第5回コンテストにかける想いとは?

物静かな面持ちに熱い心を持つ後藤氏。その考え方に共感したデザイナーはぜひ参加しよう

――その上で第5回にかける想いを聞かせて下さい。

後藤氏:今回はテーマを「魔法」としました。魔法でイメージするのは魔法攻撃、魔方陣、魔法少女、召喚魔法とか多種多様です。その多様性がそれぞれのデザイナーが持つイマジネーションがかき立てられる良いキーワードだと思っています。サブテーマとして「フレーム・エンチャント」というものを考えています。エフェクトデザイナーにとってフレームという存在は非常に大きなもので、1フレーム1フレームに神経を使っています。エンチャントというのはディズニーのアニメーションのタイトル「Enchanted(魔法にかけられて)」にもなっていますが、魔法に掛けられる、魅了されるというような意味で、1フレームごとの積み重ねによって見るものを魔法に掛けるという想いを込めています。ゲームにとって、エフェクトデザインは魔法そのものです。「魔法」、「フレーム・エンチャント」というテーマによって、クリエイターのよりクリエイティブな部分を引きずり出して、持ち出している力を底上げできればいいなと願っています。

――第5回の目標の参加者数は?

後藤氏:目標としては前回の1.5倍ぐらい、人数的には80人ぐらい来ていただけると嬉しいかなと。募集はもう始まっていて先週、開会式を終えたばかりですが、年末は冬コミがあって、そっちでめちゃめちゃ忙しいという方が多いです。冬休みが終わって1月1、2週目ぐらいから応募が増えてくる感じです。

――第4回と今回の違いは?

後藤氏:弊社としては運営コストを下げるために、同じ内容でテーマだけを変えるようにしています。昨年は「1フレーム1フレームに対する愛」、「愛」をテーマに実施しましたが、今年は魔法です。よりクリエイティブな作品を期待しています。また、賞の内容が変わりました。昨年まではお金だけをお渡しして、優勝者の方にトロフィーを授与していたのですが、学生の身になって考えた場合、賞金があればそれはそれで嬉しいと思うのですが、第三者に伝える場合、「1万円貰った」というより、「この賞を取った」という事実の方が価値が高いと思います。ですので、入賞者にはプレートを与えることにしました。最優秀賞はトロフィーと賞金というのは変わっていませんが、入賞者にも賞金の代わりにプレートを与えることにしました。

――コンテスト専用のツールは本番ツールとは何が違いますか?

後藤氏:ほとんど同じです。今回共催パートナーのアグニフレアの持っているフレアちゃんがチェックボックスを押すことですぐ出せることです。製品版ではそのようなボタンは付いていませんが、違いはそれぐらいですね。第4回ではフレアちゃんは、演出部門だけで使えましたが、今回は3部門すべてでその素材を使うことができます。

――一般と学生をわけている理由は何ですか?

後藤氏:それは学生に賞を与えるためです。第2回までは学生部門がなかったんですが、そうするとプロが圧倒的に有利になるんですね。学生に優秀賞を出すのが無理でした。そこで第3回からわけることで、学生の中から優秀賞を出せるようになりました。実は 一般もプロ、アマの差は大きいのですが、我々としては学生に賞を出したいと思いました。

――入賞者のキャリアパスはどういったものが考えられますか?

後藤氏:まず学生さんにとってはプロへの架け橋になります。プロのエフェクトデザイナー以外の人がエフェクトデザインのスキルを獲得し、キャリアを広げていただくことを目標にしています。キャリアパスを考えると、デザイナーはリードデザイナー、コンセプトデザイナーという道になりますが、マネジメントになってしまいます。純粋にデザイナーとしてキャリアを積み上げたい場合、モデリングデザイナーから次を考えると、道がまだ狭い、パスが少ないですよね。エフェクトデザインというのは、モデリングのスキルも、アニメーションのスキルも、2Dの絵のスキルも必要です。エフェクトデザインを学ぶことで、デザイナーとしてキャリアパスを広げられますし、デザイン全般にリーチできるようになります。

――学生のゲームエフェクトを学ぶ環境はどの程度整備されているのですか?

後藤氏:まだまだ少ないです。先ほども申し上げましたが、エフェクトデザイナーは、モデリング、アニメーション、2Dの絵のすべてのスキルが必要になります。いろんなことができないといけないので、どれか専門にやってた人がスキルを広げるためにエフェクトデザインをやりたいというケースが一般的で、はじめからエフェクトデザインをやるのは難しいということもあります。

――大学で言えば、エフェクトデザインは、大学でモデリングやアニメーションの基礎を学んだ上で、大学院で学ぶようなものなんですね。

後藤氏:そうですね。正に大学院のイメージはありますが、デザインという意味ではまだまだ新しい分野なのかも知れません。デザインを学ぶ中で、エフェクトデザインを知り、興味を示してくれる学生の方も増えているので、そういった方にリーチできればいいなと願っています。

――エフェクトデザインが学べる専門学校は増えているということですが、2年や3年の教育課程で、エフェクトデザイナーとして独り立ち出来るスキルが身に付くものですか?

後藤氏:デザインをやっている人は、寝ても覚めてもデザインしたり、レイアウトしたりしていて、学校入る前からやっている方が非常に多いです。学校に入ってきて、ツールの使い方など、基礎を学び、アマチュアからプロになっていきます。その中で、エフェクトという新しいフィールドで、それまで磨いてきたデザイン力を発揮できる人もいますし、プロとしての才能に目覚め、デザイナーとして本領を発揮していく人もいます。これまではエフェクトという新しい表現できるフィールドを提供できていなかったんですね。2年で学べるかというと人それぞれとしかいいようがありませんが、専門学校を通じてエフェクトの存在を知り、新たな表現の場として本領を発揮する方も増えてきているということですね。

――なるほど、デザイナーもアーティストですから、最終的にはその方のセンスになりますね。後藤さんから見て、エフェクトデザイナーになれる方はどういう適性を持っている方だと思いますか?

後藤氏:私はもともとプログラマなので、本職のエフェクトデザイナーの方とは意見が違うかもしれませんが、私が彼らエフェクトデザイナーを見ていると、物事を分析する力がある方が非常に多いです。これはエフェクトデザインを専門に手がけるアグニフレアさんでミーティングした際の話なんですが、ときに、iPhone 6が出たときに、彼らはコンロの火が着くシーンを、iPhoneのスローモーション録画で撮影し、コンロに着火するのはどういうプロセスで火が着いていくかをまず話し合って、正解を映像で見せるんです。あるいはシンクので蛇口をひねって水が落ちるシーンで、水がどのような挙動しているか撮影して、分析をしたりしています。

 エフェクトデザイナーさんは、そういう分析を日々行なっていて、映画やアニメをコマ送りで見て動きを分析と調査を繰り返したりして、現実味のある迫力あるエフェクトを作るにはどうしたらいいかを日々考えています。それは単なる真似ではなくて、様々な要素を表現するのに、分解してツール、環境を使って組み上げて、最終的な目標に織り上げていく。物事の調査と分解、ゲーム上での組み上げというプロセスは、ゲーム制作では共通の部分かもしれませんが、エフェクトでは特にそういうプロセスが求められる仕事だと思います。

――期待する応募者像は?

後藤氏:熱意のある人です。私はゲームエフェクトはゲームに命を吹き込む最後の仕上げの部分だと思っています。ゲームに対する熱い思いを持っている人に参加して欲しいと思っています。

――最後にゲームエフェクトコンテストに関心のある学生やプロのゲームクリエイターに対してメッセージをお願いします。

後藤氏:これはひとつの小さいチャンスだと思っています。このチャンスを活かして自分のフィールドを広げて、ゲーム業界に繋がっていくために、このコンテストをぜひ活用していただければなと考えてます。皆さんからのご応募をお待ちしております。

――ありがとうございました。

【スクリーンショット】

(中村聖司)