インタビュー

【タイトー特集】「LINEパズルボブル」プロデューサー西脇剛志氏インタビュー

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【LINEパズルボブル】

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 タイトーがモバイルゲームを軸に勢いを取り戻しつつある。2012年の「グルーヴコースターゼロ」のモバイル展開を皮切りに、2013年には、業界的にあまり前例のないモバイルからアーケードへの移植を実施してヒットを記録。

 そして2014年は、タイトー3大IPのひとつ「パズルボブル」にソーシャル要素を加えた「LINEパズルボブル」の配信を開始し、日本で500万ダウンロード(8月12日発表)、韓国で300万ダウンロード(6月発表)という大ヒットを記録。7月には、韓国に続いて中国展開も発表するなど、積極的な活動を継続している。

 GAME Watchでは、7月末から8月上旬にかけて中国上海で開かれたゲームショウChinaJoyのタイミングに合わせてタイトーへの密着取材を敢行した。代表取締役副社長の大和一彦氏、ON!AIR事業部 事業部長の川島健太郎氏、「LINEパズルボブル」プロデューサーの西脇剛志氏という3人のキーマンへのインタビューを通じて、タイトーで今何が起こっていて、今後どこに方向に進んでいくのかに迫ってみたい。本稿では第1弾として、西脇氏へのインタビューをお届けしたい。

「LINEパズルボブル」は「パズルボブル」に関わって20年の大ベテランが手がけた集大成

タイトー ON!AIR事業部プロダクション2部 部長で「LINEパズルボブル」プロデューサーの西脇剛志氏
西脇氏が最初に開発に携わったiモード版「パズルボブル」
「パズルボブル」は多くのプラットフォームに移植されている。こちらはWindows版「スーパーパズルボブル」
そして最新作「LINEパズルボブル」

――西脇さんはタイトーが長いと伺っておりますが、これまで関わってきたタイトルからお話しいただけますか?

西脇氏: 古いですよ。1993年からですからもう20年以上。親会社が京セラ時代からいますから。ON!AIRの中では1番の古株になってしまいましたね。モバイルを担当したのも、タイトーがモバイルコンテンツ事業に参入した2000年の当初からです。

――20年というとふた昔ですね。

西脇氏: そうですね(笑)。「パズルボブル」が1994年に誕生したゲームですから、その前からいたことになります。ただ、僕はもともと開発では無く、営業で入ったんですね。ですから最初の10年は営業の仕事、直近の10年は開発の仕事をやっています。

――営業から開発への移籍というのはゲーム会社では珍しいですよね。

西脇氏: そうですね。おそらく僕ぐらいですね。もともとプロダクトマネージャから入って、企画、ディレクション、プロデューサーと担当しています。

――現在は「パズルボブル」のプロデューサーということですが、「パズルボブル」はどのあたりから担当されているのですか?

西脇氏: モバイル版に関してはすべて何らかの形で関わっています。ファイルサイズが10KBのiアプリ版が最初ですね。今でも覚えていますが2001年1月です。1月21日ぐらいにiモードに「タイトーゲームパーク」を立ち上げて、最初のラインナップが「インベーダー」と「アルカノイド」と「パズルボブル」でした。10KBしかなくて、サウンドも無くて、とりあえず最低限ゲームとして動くというものでしたね。その後は各キャリアのアプリ版も配信しましたし、新しい端末のプリインストール版もやりましたし、そのアジア展開もやりました。

――「パズルボブル」は20年以上のフランチャイズですが、もっともヒットしたタイトルはどれになるんですか?

西脇氏: 1番というと、当時私はゲームセンターで仕事してましたが、初代の「パズルボブル」。アーケード版「パズルボブル」が1番ヒットしたと思います。そこからアーケードで続編が出たり、DSや3DSで出たりしています。Windows版やWindows Mobile版などもありましたね。たいてい、新しいプラットフォームにタイトーとして展開する場合は「インベーダー」か「アルカノイド」か「パズルボブル」を必ず出していますね。

――それはやはりゲームのシンプルさ、移植のし易しさ、みたいなところが理由になっているのでしょうか?

西脇氏: タイトーのIPとして知名度の高い3タイトルですので、プラットフォームの力量やポテンシャルを測る上で、その3タイトルを出してどれぐらい跳ねるかというのがひとつの指標になっています。この3タイトルでダメなら、プラットフォームとして時期尚早なのかなという判断になります。

――現在進行形の「パズルボブル」というと何になるのでしょう?

西脇氏: F2P版だとLINEに提供している「LINEパズルボブル」と、韓国で展開している「KAKAOパズルボブル」があって、あとはiOSで売り切りのアプリとして「ニューパズルボブル」などがあります。

――シリーズ最新作となる「LINEパズルボブル」は、「パズルボブル」シリーズの中でも大きな節目となるタイトルとなりましたが、開発のきっかけを教えて下さい。

西脇氏: LINEさんと何かLINEを使ってタイトルやりましょうという話があって、LINEは女性が多いプラットフォームなので、「パズルボブル」がいいでしょうということになったのですが、そもそもLINEさんの中にも「LINEバブル」というアプリがあり(笑)、「LINEバブル」のルールが、上からバブルが降りてきて下までいったらゲームオーバーというもともとの「パズルボブル」のルールになっていたんですね。

 せっかくLINEさんで「パズルボブル」を出すのであれば、それと同じルールのものを出しても仕方がないということで、奇しくも「パズルボブル」20年、私がフルで携わるということで、「じゃあ新しいものを作ろう」ということになりました。今回の「パズルボブル」は、今までの「パズルボブル」の概念を壊したいということをプロジェクトチームのスタッフに話して、完成したのが「LINEパズルボブル」になります。

――「LINEパズルボブル」プレイしていて感じたのは「Candy Crush Saga」と遊び心地が近いというか、ソーシャルゲームとして完成度が非常に高いということですが、開発前にソーシャルゲームは相当研究されたのですか?

西脇氏: そうですね。Kingさんの「Candy Crush Saga」とか、「Bubble Witch Saga」とかはかなり研究させていただいて、当然研究させていただいた以上、超えるものを作らないといけないという意気込みで開発に臨みました。

――「LINEパズルボブル」は、日本のみならず、韓国でもヒットしましたが、開発担当者としてヒットした理由は何だと考えていますか?

西脇氏: 今までの「パズルボブル」と同じものを作っていたらたぶんここまでいってないと思ってます。手数制を採用するなどのルールを変えたり、細かい話ですけど、歴代の「パズルボブル」ってバブルを発射するところに必ず砲台があるんですが、「LINEパズルボブル」では女性がターゲットだったので、この砲台から打つってのは無いだろうと。キャラクターのバブルンがそのままバブルを投げた方がカワイイじゃん!ということで、今までの「パズルボブル」は一旦横に置いて、遊んでいただく方がカワイイ、楽しいと思っていただけることを意識して作ったのが良かったのかなと思いますね。

――深い話ですね。私は遊んでみて、とても丁寧に作られている質の高いソーシャルゲームだと思ったのですが、そういう深い考えに基づいて作られているとは知りませんでした。ちなみに韓国でヒットしたことについてはどのように考えていますか?

西脇氏: 手前味噌になりますが、もともとのゲームのパフォーマンス、おもしろさに関しては日本でも韓国でも変わらないと考えていました。もちろん、国が変われば文化、価値観も変わるので、たとえばランキングの見せ方やマネタイズの仕方など、若干のカルチャライズは必要だと思っていました。今回KAKAOで展開するにあたり、韓国展開に関しては自社ではなくgumiさんと組んで、現地を分かっているgumiさんにお任せしてカルチャライズを行なってもらいました。ゲームのおもしろさプラスカルチャライズ、この2つが成功した要因だと思います。

――素人考えで恐縮ですが、すでにLINEで展開しているのなら、韓国でもLINEを使えばいいのにとも思うのですが、そういうわけにもいかないのですか?

西脇氏: 配信させていただく以上は1人でも多くの方に遊んでいただきたいので、ユーザーの多いプラットフォームで展開するのが基本になりますよね。韓国ではKAKAOが最大手のプラットフォームですので、そこは日本展開とは切り離して考えました。

(中村聖司)