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カプコン、3DS「バイオハザード ザ・マーセナリーズ 3D」インタビュー
プロデューサー川田氏、ディレクター井上氏に聞く
大きな進化と変革の時を迎えた“アクションのバイオ”の魅力


5月25日収録

収録場所:カプコン東京支店



 6月2日に発売されるニンテンドー3DS用サバイバルアクション「バイオハザード ザ・マーセナリーズ 3D(以下、『マーセナリーズ3D』)」。本作のプロデューサーである川田将央氏、ディレクターの井上和久氏にインタビューを行なう機会を得た。

 お2人は「マーセナリーズ3D」と同時に、発売予定の「バイオハザード リベレーションズ(以下、『リベレーションズ』)」も鋭意制作中。「マーセナリーズ3D」はジャンルが“サバイバルアクション”、「リベレーションズ」は“サバイバルホラー”となっており、アクションとホラーと別の軸となっている。「マーセナリーズ3D」は、“アクションをメインに構築した3DSの『バイオハザード』”というわけだ。

 なお、今回はインタビュー前に1時間ほど「マーセナリーズ3D」をプレイさせて頂き、そこから、「マーセナリーズ3D」という作品の魅力について、プレイ中に気になったところについて、3DSというハードでの開発について、「リベレーションズ」と平行して開発していくことによるメリットなど、詳しく伺うことができた。




■ 「リベレーションズ」と平行して開発された「マーセナリーズ3D」。新しい“アクションのバイオ”立ち上げへ

“アクションの『バイオハザード』”を新たに確立したいと考え、単体作品にと提案したプロデューサー川田氏

――プロジェクト立ち上げの時期はいつ頃でしょうか?3DSの話が聞こえてすぐ、という時期になりますか?

プロデューサー 川田将央氏: そうですね、去年(2010年)の夏ぐらいが最初です。自分たちは「リベレーションズ」も別で作っているのですが、そちらの研究の中でアクション部分に関しては(シリーズ作の)「マーセナリーズ」をモデルにしていたんです。その研究をしていくうちに「これは単体でも商品になるんじゃないかな?」というのが見えてきたという感じですね。

 そこで、当時は手の空いているスタッフもあまりいなかったんですけど、手探りでチームを立ち上げまして。そこから会社での承認を得て、がっつり作り始めました。去年の夏から秋の時期にチームが立ち上がったという感じですね。

――「マーセナリーズ3D」を単体商品として積極的に考えた理由は、どういうものですか?

川田氏: 「マーセナリーズ3D」というアクション作品を1本作るというのは、(その時点での)ハードの限界を探るのに最適なんですよね。いろんなスペックをフル活用するゲームですので。「マーセナリーズ」というゲーム自体もすごくシンプルですし、システムも完成してますから。進めやすさもありました。

――社内の承認を得る時は、どういうアピールをされたのでしょう?

川田氏: 今までの「バイオハザード」とは違う、アクションメインでホラーではない作品ですから、そのあたりに不安はあったんですけど、キャラクターもいろいろと出して、「バイオハザード」ファンにとって魅力のあるタイトルにできるのではないかと考えました。

 最初、海外も含めて各社に「どれぐらい売れるかな?」と聞いて数字を出してもらうんですね。その数字と想定される開発費用とを計算してみて、黒字になるのであれば承認してもらえるという流れが基本になります。  もちろん、目標がもっと別なところにある場合でも承認してもらえることがあります。売り上げではなく、もっと別のところに制作の見込みを持っているケース。例えば利益があまり出なくても、別の目標を持っていれば承認を得られる場合です。心の広い会社ですから(笑)。

――たくさん売れるものではないかもしれないけど、こういうタイトルも必要だよね、というようなことですか?

川田氏: そうですね。例えば、「長い目で見た時にシリーズとして利益を出していけるんじゃないのかな」とか、「今の市場にないタイトルなので、出すことで市場にうったえかけることができるんじゃないのかな」というあたりです。

 「マーセナリーズ3D」の場合は、まあ幸運なことにというか、数字的な利益も問題ないですし、比較的短い期間で開発していけるんじゃないかなという見通しもありましたので。短い期間で作れるなんて言うとディレクターに怒られると思うんですけど(笑)、……まぁ大変っちゃあ大変でした(笑)。

ディレクター井上和久氏: “ちゃあ”って(笑)。まぁこうやってプロデューサーが期間を取ってきてくれまして。で、自分がそれを見て「うわ、短っ! 」と驚くみたいな。そんな自分に川田は、「できるよね! 」と言うわけですよ。

開発の中心であるディレクターの井上氏。穏やかな笑顔で本作の魅力を語ってくれた

――「リベレーションズ」も平行している中で、けっこう厳しいところもあったんじゃないですか?

川田氏: その後に控えている「リベレーションズ」をしっかり作り上げるためにも必要だと思ったんです。まず「マーセナリーズ3D」で3DSというハードのノウハウを蓄えたいなと。ネットワーク周りであったりとか、効率よく敵を動かす手法だったり、操作はどういう風にした方がいいのかな、とか。

 そういう実験を含みつつで「マーセナリーズ3D」を面白いものに作り上げようということで進めました。先行してノウハウを貯めるものだから「リベレーションズ」と同じような時期に完成し発売するのでは意味がなくなってしまう(発売後の反響や要望も含めるため)。かなり大変だったとは思うんですけど、そこはうちの社を代表するような非常に優秀なディレクターがやってくれましたので。

井上氏: またそういう事を言い出す。そんなこと全然思ってないんですよきっと(笑)。プロデューサーって説得して開発資金を確保したりするのも仕事ですから、ほんまにうまいこと言うんですよ。

川田氏: 正直に言うと、さっき言った褒め言葉の80%ぐらいの気持ちでいたんですけど、結果的には120%のものを作ってくれたので。井上に対する考えを改めないとな、と思ってるんです(笑)。

「マーセナリーズ3D」のパッケージデザイン。主人公サイドのキャラクターだけでなく、悪役のクラウザーも大きくあしらわれている

――「リベレーションズ」には、「マーセナリーズ3D」のアクション部分が反映されていくことになるんですね。

川田氏: 操作周りは、一部にちょっと違いはありますが、ほぼ共通化できてます。プログラム周りも共通していて。エンジンもどちらも「MT Framework Mobile(※)」という共通のもので作っていますから。かなりプラスになっていると思います。

※「MT Framework Mobile」はカプコンで使われている携帯機向け開発用エンジンのこと。据え置き機用は「MT Framework」。

 当然、「マーセナリーズ3D」は単にノウハウを貯めるだけということではなく、基本にあるのは“今までにないバイオを作りましょうよ”というものです。IPとしての“ホラーではないアクションのバイオ”。みなさんの好きなキャラクターたちが一堂に会したゲームで、ある種ファンに向けたキャラクターゲームでもあるかもしれない。いろんな可能性を持ったタイトルだと思います。

――「マーセナリーズ3D」の登場キャラクターは、どのように決まっていったのですか?

川田氏: 基本的には人気のあるキャラクターですよね。これは日本だけではなく、海外で人気のあるキャラクターとかいろんな視点からです。それに加えて、主人公をメインにするとどうしても偏ってしまうので、悪役からも出していこうと考えました。そこから「ウェスカー」や「クラウザー」も登場してます。そういう理由から「レオン」はあえて外すことにもなりました。

 レオンをあえて外したというのは、主人公がみんな集まっちゃうとどうしても偏ってしまうんですよね。悪役を含めてのバイオにしたかったので、レオンは今回は登場しないです。もし次回作ができれば……ですね。あと、マーセナリーズに登場済みのキャラクターだけだとおもしろみに欠けるので、「クレア」という初登場のキャラクターも出して華を添えています。
歴代シリーズ作から、人気の高いキャラクターが集まっているのも、本作の魅力のひとつ。ファンの方にはたまらないキャラクターアイテム的な魅力もおさえている




■ “移動しながら撃てる”、“アイテムを使える”。「マーセナリーズ3D」から最新の世代にあわせた「バイオ」に

迫り来る敵をハイスピードに倒していく「マーセナリーズ3D」。今作のスピーディーなゲーム性をきっかけに、バイオシリーズとしては“大きな変革”と言える変化もある

――「マーセナリーズ3D」は“アクション”をテーマにしているということですが、ゲーム性はどういうものですか?

川田氏: 制限時間内にどれぐらいの敵を倒せるかという、純粋な昔からあるようなテーマのアクションゲームですね。

井上氏: そこをさらに工夫をし、いろいろと手を加えまして。もっとアクションを際立たせようと意識して進めていったという感じですね。

――「マーセナリーズ」自体は、「バイオハザード4」、「バイオハザード5」にもボーナスコンテンツとしてあったわけですが、今作で工夫したところや進化した部分はどういったところでしょうか?

井上氏: まず、プロモーション映像でもご確認頂けるのですが“移動しながら撃てる”ということがありますね。これまでのシリーズで“移動しながら撃つ事はできなかった”のは、ゲームとして重要なエッセンスだったんです。攻撃は強いけど、弱点として動けない、リロード中も動けない。そのもどかしさですね。

 でも、「マーセナリーズ3D」はもうスコアを突き詰めていくアクションに絞ってますから。敵の動きも含め全体を見直すことで、快適に動きながらでもバランスが成立するようにできました。スピーディーなゲームに進化してます。

――今後、ホラーの「バイオ」は移動しながら撃てない、アクションの「バイオ」は移動しながら撃てる、ということになるんですか?

川田氏: というよりは……、実は「リベレーションズ」も移動しながら撃てるようになってます。今現在のゲームとして、移動しながら攻撃できない、アイテムが使えないというのは、もういいんじゃないかなと。

 ということで、今作「マーセナリーズ3D」から変更になっています。自分が担当しているタイトルだと、「マーセナリーズ3D」、「リベレーションズ」、あと「バイオハザード オペレーションラクーンシティ」(PS3/Xbox 360)。これは全部、移動しながら攻撃可能です。  もちろん、どれも同じではなくてゲームのコンセプトにあわせて調整しています。「オペレーションラクーンシティ」はほとんど走りながら撃てますが、「マーセナリーズ3D」は撃つ時は少しゆっくりになりますね。


■ 3DSでの開発。3D立体視への研究と試行錯誤。その流れから“FPS視点”が使えるように変化

「マーセナリーズ3D」、「リベレーションズ」と、連続して3DSの「バイオ」シリーズ作品を開発している井上氏。3D立体視はほぼ初挑戦ということで、未知の挑戦だったようだ

――開発状況をお伺いしますが、ディレクターの井上さんが「マーセナリーズ3D」の中心なんですか?

川田氏: (井上氏のほうを見ながら)「リベレーションズ」のスタッフとして関わっています。うちの会社は人の使い方がすごく適切ですから(笑)。優秀な才能はどんどんいろんなタイトルに投入されていきます(笑)。

井上氏: あっはっはっは……(乾いた笑い)。

川田氏: 昔からうちの会社は「プロデューサーには休みはいらんよね」と言ってましたが、最近はディレクターにもそれが適用されつつありますね(笑)。

――井上さん以外のスタッフの人も、「マーセナリーズ3D」と「リベレーションズ」で共通している人が多いんですか? この2つのタイトルのスタッフはもともとは別だったんでしょうか?

川田氏: 初期のごちゃごちゃしている頃から2つのラインが動いていたので、境界線は初期からあまりないですね。流動的に両方やっていたりします。一時期は「マーセナリーズ3D」の追い込みで忙しかったので、がっつり人に来てもらって、という感じで。

井上氏: こっちが忙しければこっちへという感じに、何かあったらびゅーんびゅーんと。こういう状況なので、作る苦しみというか、良い事も悪い事も、いい感じに全員が体験してますね。

 先ほど、「リベレーションズ」に向けてのノウハウという話をしましたが、実際に作って初めてわかることの中で、「経験」が1番のノウハウだと思うんです。スタッフ全員がそういう経験をいい感じに蓄えてますね。

川田氏: デザイナーも、「どうすれば良い表現にできるのか?」というのを「マーセナリーズ3D」で試行錯誤して、そのノウハウを引き続き「リベレーションズ」に持っていけます。クオリティはもっと上がっていきますよね。

――ノンストップに3DSのタイトルを開発されているわけですね。3DSというハードでの開発はいかがですか?

井上氏: 携帯機でありながら、次世代機みたいな作り方ができてしまうハードなんですよね。パワーさえ割けば相当いいグラフィックスが出ますし。やりがいはすごくあります。

 ただ、立体視というのはなにしろ初めてですから、そこに対しての想像が難しい。実際に出力してみないとイメージがつかなかったりするんですよね。今までに3Dを体験したのって、テーマパークとか昔に流行った頃の3D映画とかで、最近やっと現代での3D演出というのが映画に出てくるようになりましたけど。経験が少なくてどうしても手探りになりますね。

川田氏: 「マーセナリーズ3D」と「リベレーションズ」の両方とも、任天堂さんのカンファレンスに出させてもらって、そこでお客さんがどういう反応をするのかを会場で見させてもらっていたんですが、そのときも、立体の深度をどれくらいまで取っていいのかを手探りでやってましたから。「リベレーションズ」を昨年のE3で出したときは立体の深度をけっこう強くしていて、すごいことになってましたね(笑)。

井上氏: インパクト重視でかなり強めにしてたんですよ。

川田氏: 3Dの度合いが強くて、動きが速い場面だと、「よく見えない」っていう意見が出て……。それからさらに研究を重ねました。おかげさまで今回、「マーセナリーズ3D」ではアクションの、「リベレーションズ」ではホラーでの、うまい3Dの使い方を見つけることができたんじゃないかなと思います。

――3Dの調整は本当に未知の領域なんですね。ゲームですから3D映画ともまた違う。

井上氏: 一応、計算はあるんですどね。でも「そんなん、理屈で言われてもね」っていう感じで(笑)。ゲームとして苦労したのは、「マーセナリーズ3D」だと“狙う”というゲームに関わる重要な部分です。立体視の深度が深すぎると、遠近感が強すぎて、ターゲットが遠すぎると感じられて狙いづらくなっちゃうんですよ。

こちらは従来の「マーセナリーズ」に近い肩越しの視点(TPS)だが、デフォルトでは構えると主観視点(FPS)になる。銃の先端だけが画面中央下に表示されるスタイルだ

――3D効果があることで、従来のゲームよりも遠近感が強く出過ぎる場合があるんですね。

川田氏: それ自体は良い効果でもあるんですけど、敵を狙う難しさにもなってくるんですよね。そういうこともあって今回、銃を構えた視点をFPS(主観視点)でも遊べるようにしています。より狙いやすいように。

――先ほどプレイさせて頂いたのですが、構えたときは画面の中心に銃の先端だけが表示されるようになってましたね。

川田氏: 設定で、今まで通りのTPS(キャラクターの肩越し視点)にもできますが、デフォルトはFPS視点になってます。

井上氏: 人それぞれに好みがありますし、シリーズファンの人の好みというのもありますので、切り替え機能は必要だと思いました。でも、FPS視点のほうが正面に向かって(銃が)まっすぐ伸びていて狙いやすいですし、敵との距離にも迫力が出ます。いい感じにインパクトあるものになったかと思います。

川田氏: 最初はもっと違和感が出るかなと思ったんですが、良い仕上がりになってますよ。




■ 開発エンジン「MT Framework Mobile」の力で、クオリティアップの時間が多く取れるように

2タイトルを平行して開発していても、スピーディーに開発できているのは、MT Framework Mobileと技術研究班のがんばりが大きいという

――カプコンでは3DSタイトルの投入がかなりスピーディーな印象があるのですが、それは「MT Framework Mobile」の存在が大きいのでしょうか?

川田氏: そうですね。「バイオハザード5」からデータを丸ごと持ってきて、……さすがにそれをそのままでは動きませんが……、そこから調整すれば携帯機でも使えるものになります。今までだと、すごく細かいところまで調整、変更しないと同じような画にはできなかったんですが、スムーズにできますね。

 細かいところで言うと、3Dをオフにすればアンチエイリアスがかかったりとか、そういった機能も、気がついたら(MT Framework Mobileが)バージョンアップしていて、すぐ使えるようになっている。うちで技研と呼んでいる研究班があるんですが、そこが新しい技術やノウハウの取り込みにすごく積極的で。我々がリクエストしていないところも、いつの間にかできるようになっている。それが今、カプコンの強みになっていると思います。

井上氏: 新しいハードで複数のチームが開発していると、「こんなところに難しいところがあるんだね」というところは、どのチームも同じように引っかかるんですよね。それが、どこか1チームが対応した時に技術班にフィードバックすれば、他のプロジェクトにも反映されて回避できます。

 チームごとに出るはずだったロスが、最初の1回でリカバーされるんですよね。あとは社の全員が共有できる。それが「MT Framework」の強みですね。

――ということは、御社の場合、先に「スーパーストリートファイターIV 3D」がリリースされていますが、その開発でのノウハウも「MT Framework」に反映されて、こちらの開発にも良い影響を与えているということなんでしょうか?

川田氏: そうです。「スーパーストリートファイターIV 3D」のノウハウというのも全体で共有できています。

井上氏: もちろん、ノウハウが生まれるまでの紆余曲折まではわからないんですが。先人はいろんな苦労をするんですが、その分、輝かしい経歴があるわけで。僕らはその苦労のおかげでより良いものを作っていける。

川田氏: あと、うちの会社がいろんなタイトルを、特に据え置き機での大型タイトルを作っていて、そのノウハウを携帯機向けのエンジンにも転用できたことが大きいですね。

――Framework化したことによって役割分担がはっきりして、プロジェクトに対しての負担が小さくなってきているということですか?

川田氏: 昔みたいに、“そのハードに特化した作り”にしなくてもよくなったのは大きいのかなと思いますね。ケチくさい話に聞こえるかもしれませんが、他のタイトルで作った細かなモデルも別のタイトルに転用することがすぐにできる。大幅に効率化できていると思います。

 ただ、「そのぶんも質を高めようよ!」という話になるので、掛かる時間はあんまり変わってないかもしれない(笑)。クオリティは上がっているんですが、かけるコストと時間は同じように使ってますね。基礎部分のベーシックなところをエンジンの方で対処できるようになってます。

井上氏: そのぶん良いものにする時間が取れるようになったということですね。そこで、「早く作れるようになったんだから、期間も時間も少なくていいだろ?」とはしないところが、うちの会社らしいところで。「そのぶん、いいもん作んねんー!」っと。

――100m走で言えば、20m過ぎたところからスタートできるという感じでしょうか? だけど、そのぶん早く、さらに120mまで走ってね、という。

川田氏: 同じだけカロリーも消費しますけどね(笑)。

「バイオハザード5」だけでなく「バイオハザード4」からも、スピーディーに素材データを運用できたということだ

――今作の「マーセナリーズ3D」では、「バイオハザード5」だけでなく「バイオハザード4」からもステージなりキャラクターなりが出てきますが、そちらも今のお話のようにデータを使えたのですか?

川田氏: そうですね、できています。「マーセナリーズ」は独特なゲームで、ある程度のマップの広さが必要なんですが、「バイオハザード5」や「バイオハザード4」は比較的大きなマップで設計されていたので、我々としては扱いやすいものだったんですね。

 実は、「初代『バイオハザード』の洋館もステージにできないか」と検討してみたんですが、相当難しかった。洋館は大きなマップと比較すると小さくて。洋館の中というより、外をうろうろするようなゲームになってしまいそうで。「マーセナリーズ」にはちょっと向かないかなということで、ボツになりました。

――洋館はやっぱりホラー向きなんですかね? 細い通路で曲がり角がたくさんあって……。でも、ちょっともったいないですね(笑)。見てみたかったような気もします。

井上氏: あれは、扉も多いので。けっこうな量を取り除いて、扉を開けるアクションを減らして……。それに遮蔽物も取り除いてやらないと辛いですね。

川田氏: スピーディーなゲームなのに、扉の多さですごくイライラするステージになっちゃうんですよね。あと、見渡せない狭さもあまり向いてなかったですね。




■ 上級者も初心者も快適にプレイできるよう3DSにあわせた操作に。チュートリアルにはひとクセあり?

回復アイテムのハーブ使用はボタンでも1発でできるし、タッチパネルのハーブのアイコンをタッチする操作でも使える

――今回、3DSということで操作周りにはどんな配慮をされましたか?

井上氏: 基本はファンの方が馴染んでいる操作がベースです。「バイオハザード」としての、人差し指で構えて、親指で撃つという基本をなくさずに。あとは、余計な操作は減らして、タッチパネルで行なえるように形にしていきましたね。

 十字ボタンの上下で武器を切り替えたり、ボタンでハーブを使えるようにしたんですが、最初はどれも「タッチパネルで触ればいいから無くてもいいんじゃないかな」とも思ったんです。ただ、ボタンの良さって、「そのボタンを押した」っていう感触があることですよね。  タッチパネルは、ダイレクトに操作できるという利点がある反面、下のタッチスクリーンに目線を向ければ押した場所がわかりますが、見ないで押すと別のところを押しちゃう事もある。「マーセナリーズ」って瞬間的な操作が必要なので、押し損ねや間違いは厳しいので、ボタンでもできるようになりました。

川田氏: 上級者は十字ボタンとボタンで全部操作できるようにしています。

――スコアアタックのスピーディーなゲームですから、突き詰めると、上下に目線を変えている場合じゃない! という感じになりますよね。目線はずっと上の3Dスクリーンで集中して。

井上氏: 実は、3D立体視のことも絡むんですよ。安定して立体視で見てもらうためにも、目線は動かないほうがいいんです。ボタンで切り替えができるし、タッチパネルを使うにしても、武器の配置は画面の左端を縦に3等分して、右は視点という感じに配置しています。できる限り目線を変えずにダイレクトにできるように。

――初心者の人も、上級者の人もカバーしているわけですね。

川田氏: 「マーセナリーズ」は元々、シリーズ本編のボーナスゲームだったので、それはゲームをクリアしている人が遊ぶものだったんですよね。でも、今作では初めての人もいるかもしれないので、操作方法にグラフィカルでわかりやすいタッチパネルは入れようと。チュートリアルも基本の移動からやってますから。すごく丁寧にやってます。

新規ユーザーに向けた懇切丁寧なチュートリアルにもひとクセ入れているという、修羅の国のようなゲームを作り上げた井上氏。嬉しそうな笑顔が素敵だ

――先ほどチュートリアルもプレイしたんですが、そうは言いつつもちょっといじわるな感じになってますよね(笑)。ゆるい内容なのに、途中から「あれっ?」となるような。

井上氏: チュートリアルというものは、わかっている人からすると、人によってはかなりネガティブに映ると思うんですよね。そこを「そのままでいいのか」と思っていまして。「マーセナリーズ」の真髄は、“自分からアタックしていってズタボロになりながら前のめりに倒れる”ことですから(笑)。そのエッセンスを感じてもらえるようにしてますね。

川田氏: CMソングを歌って頂いている黒夢の清春さんと人時さんにも触ってもらったんですけど、初めて触る人は、下画面のマップに目標が出ていることに気づかないこともあるぐらいですから、やはりチュートリアルは必要だと。

――最初のチュートリアルは目の前に見えてる目標をたどっていくだけのものですが、目標が前に見えていますし、それをたどるだけですし。「ぬるいなー」って思ったのですが、途中で視界から次の目標がなくなるんですよね。そこで「あれ、無いぞ!?」と初めて焦って。ここで「マップを見ようね」とゲームに言われている感じがしました(笑)。

川田氏: そのあたりがやっぱり、カプコンの“ゲームに厳しいところ”ですよね。我々としては目一杯に優しい感じにしてるんですけど、ちょっといじわるになるみたいな。

井上氏: 修羅の国みたいですね。改めないといけないですかね。

――面白いのでそのままで大丈夫です。いい感じの修羅の国でいつづけていただければ(笑)。どんな場面でも緊張感は常に必要ということですね。




■ ダッシュ移動がデフォルトに。移動しながら撃てる仕様や、スピーディーなゲーム性にあわせ練り込まれた操作

3DSでの操作、「マーセナリーズ3D」のスピーディーなゲーム性を考慮し、ダッシュ移動がデフォルトになっている

――移動についてですが、デフォルトがダッシュ移動になっていますよね

川田氏: もともとの「マーセナリーズ」では、ボタンを押さないとダッシュになりませんでしたが、今作では通常移動をダッシュにしました。僕は「違和感があるから止めない?」と当初話していたんですが、井上のポリシーでその仕様になりました。

 これが、慣れるとすごく遊びやすくなってまして。触らないといけないボタンの数を減らしたり、これまでできなかったことをできるようにしたり、いろいろ配慮した結果、遊びやすくなっています。

――ダッシュがデフォルトなのはけっこう感覚が違いますよね。でも、「マーセナリーズ」って基本的にダッシュ移動しっぱなしですよね。

井上氏: そうなんですよ。それを川田は最初理解してくれなかったんです。「俺はダッシュはボタンあったほうがええんちゃうかなー?」って言うわけですよ。

 でも、「Bボタンに親指を拘束されたら、タッチパネルは誰が押すんですか?」と、そういう話なわけですよ。でも、従来の操作にこだわりのある人もいるでしょうから、操作タイプの1番最後に、ダッシュと歩きが逆になったのを入れましたとも(悔しそうに)!  ただ、これだけ長い間「マーセナリーズ」を見てくれている川田が、最後まで「ボタンを押しながらダッシュという感覚が俺の中に脈々と生き続けているんだ」と話すので、ファンの方も同じだろうなと考えを改めて。そこは配慮しました。

川田氏: まあ、僕は結局デフォルトダッシュ移動に慣れちゃったんですけどね(笑)。

――Bボタンを押してダッシュ移動しつつ、Rボタンで構えながらYボタンも押して撃つ、さらにタッチパネルも触りたい、となってくると、ちょっと同時押しが多いなと思いますね。

川田氏: 今思えばBボタンのダッシュにこだわっていた頃って、前作同様の仕様の時で、「移動しながら攻撃」ということを意識していなかった時期なんですよ。それが、移動しながら攻撃できるようになって、デフォルトがダッシュ移動のほうがマッチするようになっていったんで。

――新しい仕様やスピーディーなゲーム性にあわせて、操作もまとまっていったんですね。

川田氏: 操作の煩雑さを無くして、初めての人でも直感的に操作できるようにという、かなり難しいところだと思うんですが、ここはがんばったところなので、ぜひ触ってみてもらいたいですね。

2人で協力する「DUOモード」も搭載。Wi-Fi通信でのインターネット協力プレイも可能だ

――このタイトルは、スコアアタックをシビアにやりこむコアなところがあると思うのですが、ライトなユーザーをそういったやり込み要素へと誘導していくような仕掛けはありますか?

井上氏: 全般的に言うと、チュートリアルから入ってミッションに挑んでもらい、折れた心を優しく癒やす「スキルシステム」があり、1人じゃダメなら誰かと一緒に挑めば良い「DUOシステム」がありまして(笑)。

 入口も広くしてますし、キャラクターやスキルが少しずつ増えていきますし。2人で遊べばより楽しい。ちょっとがんばってくると勲章という実績を獲得するシステムもあります。ハートを掴んだら離さない感じの作りにはなったんじゃないかなと。

川田氏: 数字ではなくゲームを遊んでいる中で、“自分のレベルアップ”を感じてもらえるような作りになっているんじゃないかなと。ハマりだしたら延々と遊んでしまうような感じになってくれれば、と思います。




■ 予想以上のボリューム! スキルの組み合わせも尖ったバランスで、末永く楽しめるゲームに

こちらは現在開発中の「リベレーションズ」。匂い立つような生々しいホラーになっているという

――少し話は戻りますが、「マーセナリーズ3D」と「リベレーションズ」3DSの2タイトルで大事にしたところはどこですか?

川田氏: 裸眼立体視ということで「今までにない臨場感」というのを意識しました。任天堂さんにもそこを“生っぽい”っていう風に言いかえてもらえて。……「リベレーションズ」は特に生っぽいよね。

井上氏: 匂ってきそうなぐらい生々しいホラーです。自分は不覚にも、今でもプレイしてビクッとすることがありますから。

川田氏: 絶妙な感じで出てくるよね。

井上氏: でしょう?

川田氏: 一方、「マーセナリーズ3D」はホラーではなくアクションですが、「マーセナリーズ3D」はアドレナリンが出てくる躍動感のゲームというか。残りタイムが少ない中で「目の前の敵を倒さないと!」というような。ゲームらしいゲームという感じですね。

井上氏: でも、そんなアドレナリンが出てる空っぽの頭でも、ドキッとするときがありますよ。後ろを振り返るとチェーンソーを構えているのがアップでいたりして。「やべー、俺死んだー!」みたいな。

川田氏: 僕は「『マーセナリーズ3D』はレースゲームに近い感覚なのかな」というところもあって。ルートを考えて、時間内にどれだけ敵を倒せるかを突き詰めて、ひたすらにやり込んでいけるという感じが近い。

――今作ではキャラクターにつけられるスキルがありますが、これについて教えてください。成長もするんですよね?

井上氏: スキルは全30種類あって、そこから3つ付けられます。いろんな効果があるんですけど、同じのを使えば使うほどレベルが上がっていきます。レベル2になると効果が高まり、レベル3になると全く別の追加効果もつきます。その追加効果がかなりのクセものです。

 例えば、攻撃力アップのスキルなのにレベル3になると、体力の回復量が上がる効果が付いたりとか。元とは全然違ったものが付いたりもします。ハンドガンばかり使う人が、ハンドガン系のスキルばかり付けていたんだけど、レベル3になったら全部の武器の威力が上がる追加効果がついたり。いろんな組み合わせを考えられるようにしてあります。

――スキルを3個つけられて、レベル3で全く別の効果もつくようになるというと、バランスを取るのがかなり大変だったんじゃないですか?

井上氏: 大変でしたね。「ここまでは許せるかな?」と考えて実際に使ってみると「とんでもないな、こりゃ」っていう感じになったりして。でも、緩くはせずに、尖った感じに組み合わせを考えられるようにバランスを取っていきましたね。

――ギリギリというレベルで調整してあるんですね?

川田氏: スキルの試行錯誤もそうですが、気がついたら「1回のゲーム時間は長くはないのに、何時間も遊んでるな」ということになるんじゃないかな、と思うんですよね。価格分は十分に楽しめるボリュームになっていると思います。

予想以上のボリュームに自身も驚いたという川田氏

――ボリュームについてですが、クリアまで一通り遊ぶとどれぐらいかかるものでしょうか?

川田氏: どれぐらいだと思います?

――人によるとは思うんですけど、一通りクリアするならそんなにかからないのかなと。もともとスコアアタックをやり込むタイプのゲームですし。

川田氏: 私もね、そう思っていたんですよ。でも、1キャラクターで全部のミッションをクリアするのにかかる時間が、10時間弱ぐらいあるんです。

――かなりありますね!

井上氏: だいたいそれぐらいかかります。ミッションでミスしなくても、10時間はかかるかな。

川田氏: 僕も「え、そんなにあるの?」って不安に思ったんで、うちの会社の品質管理の手練れに遊んでもらったんですよ。すると、まったく同じような返事が返ってきて。アクションを遊び続けている彼らがやっても相当に時間がかかる、10時間ぐらいかかりますね、と。

井上氏: ひどいんですよ。僕は、「ミッションが全部でこれだけあって、ひとつにこれぐらいかかるとして……」と、ちゃんと計算して「10時間ぐらいだよ」って言ってるのに、川田は聞き直すんですよ(一同笑)。

川田氏: 「それは計算上の数字じゃないの?」って疑ったんですよね。「実際はそんなにかからないんじゃないの」って。基本はやり込み攻略ゲームですから、一通りで5〜6時間でも十分なぐらいと思っていたのに。でも実際にやってみると、すごくやりがいのある内容になってますね。

――「マーセナリーズ」というと雑魚敵がたくさんいるスコアアタック向けステージがたくさんあるという印象なんですが、ちょっと違ったミッションもあったりするんですか? ボスが出たりとか?

井上氏: そのあたりは実は隠していたというか。秘密にしてきたんですけども……。まぁ、あの人がボス的な扱いになっていたりとか……。あの人がボスと言いつつも、そのステージのボスに至るまでになんかしら強い奴も出てきたりとか……。

川田氏: 実際にプレイしてのお楽しみにということで……(笑)。がんばってエンディングを見て欲しいですね。エンディング曲は3DSなのに生オーケストラを招集して(笑)。すごいスケールの曲になってます。感動的な曲ですよ。

――もう1つ、Wi-Fiを使ったインターネットでの「DUOモード(2人協力プレイ)」について教えてください。

井上氏: インターネットを使って世界中の人と一緒にプレイできます。基本はワールド募集にしていまして、国内海外問わず、混じって遊んでもらうというスタイルにしています。

――プレーヤー同士はなにかしら、コミュニケーションを取ることはできるんでしょうか?

井上氏: ゲーム中にキャラクターがアクションを取る「エモーション」というのがあります。過去に「アウトブレイク」でやったような、もどかしいながらもコミュニケーションができるというようなものですね。

――遊びこむとプレーヤーにスコアなりランクなりがついたりするのでしょうか?

井上氏: あえてそういうものは付けていないですね。もともとキャラクター自体が成長するところもないので。しいて言えばスキルのレベルと組み合わせがプレイのやり込み度合いを表しているところがあるかもしれません。通信プレイ前に相手のスキルは見えますから、そのプレーヤーのスタイルを表わしてますね。

――すれ違い通信機能は使っているのでしょうか?

井上氏: ごめんなさい。今回はやりませんでした。

川田氏: そのぶん、今回はゲーム本編のほうに入れ込んでいると思ってもらえれば。

――発売後のユーザーの目標になると思うので、スタッフでプレイしたハイスコアを教えてもらえますか?

井上氏: 調整中はこれでもかってくらいやりこみをしたのですが、調整で数値が変わっているので厳密なハイスコアは残っていませんでしたので、シリーズファンの方にわかりやすい所として、LEVEL4-4を舞台にクリスを使って2つのスコアを出してみました。

【撃破数:150体 最大コンボ:54 ランク:SS 得点:229947  スキル:装備なし】
【撃破数:150体 最大コンボ:50 ランク:SS 得点:310302  スキル:装備あり】

 このスコアで上級者への入口に立ったようなものでしょうか。スキルの有無でスコアが大きく変わっている点にも注目してみてください。スキルなしでもちゃんと150体倒しきれますよ!!

――最後にファンのみなさんへ向けて、メッセージをお願いします。

井上氏: もちろん僕も自分の分を買って、井上という名前でプレイしたいと思います。ぜひみなさんと一緒に遊べればと思っています。これまで「マーセナリーズ」を遊んでくれていた人にも、馴染みやすいものに仕上げました。寝る前にちょこっと遊んだりとか、電車の中で1プレイしたりとか。遊んだ結果がちゃんと次にも反映されるような仕組みも作りましたので。いつまでも末永く遊べるものになったのではないかなと思います。よろしくお願いいたします。

川田氏: 現状カプコンが3DSというハードにつぎ込める技術を全部詰め込んでいるタイトルと、堂々と発売できるタイトルに仕上がっています。ぜひ遊んで頂いて、アンケートはがきの方で、「もっとこうして欲しい」といった要望を頂ければありがたいです。

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(2011年 6月 2日)

[Reported by 山村智美]