GPコアエッジ社長 宮本貴志氏インタビュー
「アルテイル」欧州進出。運営が鍵となるカードゲームの世界展開
株式会社GPコアエッジの「アルテイル」は、Flashを使ってWEBブラウザ上で動作するカードゲーム。日本のオンラインゲームがまだ黎明期といえる2004年に、インストールが不要で、ブラウザ上からリアルタイムにオンライン対戦ができるという、当時としては先進的なゲームデザインを実現していた。
現在もバージョンアップを繰り返しながらサービスを続けている本作は、日本国内に留まらず、北米や台湾といった海外にも進出している。そして2011年春より、新たにドイツGamigoと契約し、欧州でのサービスが開始されることになった。国産オンラインゲームの海外展開というだけで容易ではないが、本作はブラウザゲームで、なおかつカードゲームという特殊なタイトルであり、そういったタイトルの海外展開というのは前例がない。
そんな中で、複数の地域でサービス展開を実現できたのはなぜなのか。そして、この先の世界展開にはどういった狙いがあるのか。GPコアエッジ代表取締役社長の宮本貴志氏に、世界展開にかける思いを語っていただいた。
【スクリーンショット】 | ||
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WEBブラウザ上でオンライン対戦が可能な「アルテイル」。日本では「アルテイル」を始め、4つのタイトルをプレイできる |
■ SNSゲームとは違うブラウザゲームとして進化した「アルテイル」
GPコアエッジ代表取締役社長の宮本貴志氏。デックス エンタテインメントでのサービス時代には、「GM/立源寺」として活躍していた |
――まずは「アルテイル」について改めてお伺いしたいと思います。サービス開始は2004年7月、株式会社デックス エンタテインメントからでした。かなりの長寿タイトルになりましたね。
宮本氏: 「スカッとゴルフ パンヤ」(株式会社ゲームポット、GPコアエッジの親会社)と同じ年にサービスを始めたんです。カードゲームということもあり「パンヤ」ほどの勢いはありませんでしたが、徐々に上がっていきました。この年はそういう意味では、カジュアルゲームのスタート期と言えるかも知れません。
――現在の会員数と同時接続数はどれくらいですか?
宮本氏: 会員数は約70万人で、同時接続数は多い時で1,000人を超えるくらいです。カードゲームはMMOに比べて接続時間が短いので、同時接続数は1/3~1/5程度になると思っていただけると規模が見えると思います。そういった意味では、「アルテイル」で1,000人を超えるというのはすごい数字だと思いますし、毎日遊んでいただけるファンの方がいらっしゃることはありがたいですね。
――ゲームに登場するカードは全部で何枚くらいあるのですか?
宮本氏: 2,000種類くらいあります。中にはイベントカードや、イラストを着せ替えたカードもありますので、それを省いても1,500枚くらいはあります。着せ替えカードは電子カードならではの要素ですね。
――さすがに6年もサービスすると、かなりのボリュームですね。GPコアエッジさんとしても会社が設立されてから2年半が経ちました。これまでの会社の流れを振り返ってみてどう思われますか?
宮本氏: 「アルテイル」というタイトルを持って会社を作ったので、もっとうちのよさを出して成長しなければいけないと、社長としては考えています。1年目は黒字で終わりましたが、僕らには元から事業がありますから、親会社から黒字で当たり前という見方もされています。ただ、そのプレッシャーの中でみんなよくやってくれたと思いますし、2年目には「アヴァロンの鍵オンライン」という2つ目の木を植えられました。今はSo-netと「Livly Island COR(リヴリーアイランド コル)」の共同運営も行なっています。2年目は枝葉になる部分を作っていった年だったので、今年はそれをきちんと成長させて伸ばす年にしようと思っています。
弊社はFlashと、オンラインカードゲームという2つがポイントになっています。実はコアエッジという社名もそこから来ています。我々の世代が昔遊んだゲームは必ず勝ち負けがつきましたが、最近は勝ち負けがつかないゲームが結構あります。弊社はカードゲームにこだわり、はっきりと勝ち負けがつくゲームを提供するのが特徴だと思っていて、それがゲームの核(コア)になっています。そしてFlashを使った時代の最先端(カッティングエッジ)のゲームデザインですね。そこからコアエッジという名前にしたのです。今後もそれを忘れずに、ゲームゲームした物、やっていてそれ自体が面白い物を提供していきます。
――Flashのブラウザゲームも最近は多数出てきましたが、2年も前にはそんなになかったですからね。
宮本氏: 「ブラウザゲームと言えばコアエッジさんですよね」と今年になってからすごく言われるんですよ。ただ、Facebookにあるような物とか、ソーシャルを利用するような物をブラウザゲームとするならば、「アルテイル」はそこから外れています。最近になってソーシャルゲームを始めようと思われているパブリッシャーさんに、「ブラウザゲームと言えばコアエッジさん。ぜひ一緒に」と言われると、「期待されているものはここにはないですよ」と思うところもあります。
――そこは方向が違うと。
宮本氏: ブラウザゲームを作っているという意味では、弊社はすごく早かったので、その運営や開発のノウハウはあると思うのですが、ソーシャルゲームのノウハウがそんなにあるわけではないです。また同じカードゲームでも、ダウンロード型の「アヴァロンの鍵オンライン」では、「アルテイル」とは違う発見が多くあります。タイトルごとにポイントは違うなと感じますね。
■ カードのテキストが海外展開の成否を決める?
台湾ではGamaniaがサービス中。「Taipei Game Show 2009」では1コーナーが設けられていた |
――では本題である、海外展開についてお伺いしていきます。現在までに海外でサービスしているのは、韓国、北米、台湾の3カ国でよろしいでしょうか?
宮本氏: 韓国は2年間サービスしていたのですが、ポータルさんとの兼ね合いで、現在は休止中です。北米はMedia Blastersさんがサービスしていて、お陰様で順調です。台湾はGamaniaさんが「Web戦牌」という名前でサービスしています。あとゲームサービスではないのですが、タイで携帯電話向けの壁紙配信をやっています。東南アジア地域でのサービスをにらんで、先行してマーケティングする目的で始めました。そこそこ好調ですが、もう2年くらいになるので、早くサービスを始めろと言われそうです(笑)。
――ではゲームとしてサービスしているのは、北米と台湾ですね。これらは日本版と内容の違いはあるのですか?
宮本氏: ローカライズ自体は、ほとんどテキストだけですね。インターフェイスは決定などの操作ボタンだけなので、カードのテキストの翻訳がほとんどです。カードにはストーリーを書いていたりもするので、そこもローカライズが成功するかしないかのポイントになるかもしれません。3Dキャラクターが動くゲームではないので、世界観をテキストとイラストで伝えなければいけないのです。
Media Blastersさんは、実はオンラインゲーム運営は未経験の会社でした。日本のアニメコンテンツのDVDを翻訳・販売をしている会社で、上手く日本文化を伝えるということをやっていらっしゃる会社でした。日本文化を知らない方に伝えるのは無理だと思っていましたが、Media Blastersさんにオンラインゲームを教えるのはできるなと思ったんです。英語サーバーは世界中の人が見に来ますので、世界に売っていく拠点になるよう頑張ってほしいと思っています。
――ゲームの内容的な違いはつけていないのですか?
宮本氏: カードのパラメーターは変えています。やっぱり国民性の違いが結構あるんです。中国の方にプレゼンに行った時に、色々なスキルがあるのに、攻撃以外は押さないくらいの勢いでした。カードゲームの文化の有無もあるのでしょうけれど、そういった感覚の違いは国によって出るので、ある程度は変えています。
あとは日本で長くやっている中でどんどん新しい機能が実装され、できることが増えたこともあります。例えば「スタートスキル」という能力は第8弾エキスパンションで実装されたのですが、その時は北米版ではまだ第4弾あたりでした。でも、システム自体は北米版にも入れているので、カードにも入れられます。それを活かして、カードを作っているスタッフがまた1から考えています。
――台湾の方のサービスはいかがですか?
宮本氏: 台湾はGamaniaさんに完全に預けています。台湾は北米よりもカードゲーム市場がニッチなので、そこが結構難しいようです。ただ、そこにチャレンジしてくれたことはとてもありがたいですし、固定ファンも結構いらっしゃると思います。
――台湾は日本の文化に敏感ですし、日本のイラストレーターがいっぱい描いている「アルテイル」だからこその引きもあるのでは?
宮本氏: 台湾で始めた時には、イラストを前面に出してやったので、どかんと人が入ってきたというのはありました。ただ、やはりゲームがわかりにくいという声もありました。
――カードゲームというのを一切知らない状態だと、ハードルが高いのは確かですね。
宮本氏: そんなこともあったので、今後国際展開していくことを考えた上で、先月にチュートリアルをリニューアルしました。これはとてもわかりやすいと思います。
――「ここを押してください」と事細かに指示が出続ける内容ですね。
宮本氏: 新しい社員が入ってきて「アルテイル」をプレイさせる時に、誰かが横について説明すると理解して楽しんでくれますが、説明する人がいないと無理みたいな様子も見受けられました。お客様が自ら率先して遊んでもらうためには、これがないとダメだなと思いました。このチュートリアルは米国でも2011年1月には翻訳して実装します。うまくいけば台湾にも入れていきたいですね。
■ 「アルテイル」は“滑り台だけの公園で遊び方を提案する”
萌え系からハードなものまで、多彩で質の高いカードイラストも本作の魅力 |
――そして次の展開はドイツだと伺っています。こちらの概要を教えていただけますか?
宮本氏: ドイツ2位のパブリッシャーであるGamigoさんから、2011年春にサービスされます。ゲームポットとお付き合いのある会社で、初めて会ったのは2009年の東京ゲームショウでした。私は以前から、欧州でやりたかったのです。フランスやドイツ、イギリスもそうだと思いますが、日本のイラストは歓迎されるのではないかなと、特にドイツは「カタン」など、ボードゲームやカードゲームが盛んだという印象がありました。イラストの引きで入ってきても、最後に残るのはカードゲームとしての評価です。カードゲームで楽しいと思ってもらえるのは、欧州ではドイツが1番近いのではと思います。
――なるほど。ただGamigoさんとの契約は、ドイツだけの展開ではなく、欧州全域の展開を考えたものですよね?
宮本氏: そうです。私は以前から、「アルテイル」のワールドカップをやりたいと思っていました。各国の天才達が集まって、すごい戦いを見せてほしいんですよ。そしてそのためには、絶対に欧州は外せません。今回のライセンス契約としては、おおむね欧州の契約をGamigoと結んだという感じですね。サービスは、ドイツ語と英語で始めて、フランス語も春から夏にかけて用意したいと思っています。
――契約やサービス展開についての話はうまくまとまったわけですか。
宮本氏: 契約までには1年くらいかかりました。ただ最も恐れているのは、この先の運営です。大作MMOは、ディズニーランドを作っているようなもので、ビジュアルを見ているだけでもわくわくするし、その中にも戦いや生産、ギルドやストーリーと色々な要素があって楽しめます。でも「アルテイル」はカードが戦うだけで、滑り台が置いてあるだけの公園のようなものです。
滑り台の滑り方は、普通に考えれば1つなのですが、後ろ向きに滑ってみようとか、逆さに走ろうとか、遊ばせ方は実は色々あります。そういう遊ばせ方を一生懸命伝えていって、やっと楽しさが伝わります。ですから楽しませ方を誤ると、ヒットしなくなります。ライセンス元も欧米の文化がわからなければ、アップデートできずにお客様が離れてゲームが失速してしまいます。そこはお互いの理解とチームワークがとても大事なので、いいパートナーシップが築ける会社かどうかが重要ですね。
――その辺りはGamigoさんとお話ししてみて好印象だったのですか?
宮本氏: 始まってみないとわからないですが、今のところ好印象です。先日もスタッフが1人、日本に来てくれて、飲みながら色々話をしました。今はネットがあるので、メッセンジャーで連絡できたりはするのですが、会って話すのとは全然違いますから、そういう意味ではいいパートナーだと感じています。またゲームポットでも実績があったので、今回お願いすることになりました。
――以前から欧州展開したいと考えていたということは、他の会社ともお話はされたのですか?
宮本氏: そうですね。ドイツの他の会社さんもありますし、ゲームショウでお会いする会社さんや、グループとして繋がりのある会社さんとも話はしました。ただ、カードゲームに興味を示してくれる会社は少ないです。ゲームではなくイラストをカードにして売りたいという会社さんもありましたし、欧州の政府機関と話をしていて「こちらに会社を作ってください」と誘致されたりもしました。欧州ではいろんな経験をしましたね。
――その結果として、Gamigoさんとの契約になったわけですね。ゲーム内容については、北米版とはまた別の物になるのですか?
宮本氏: 恐らく北米版とほぼ同じになります。先ほどお話ししたように、北米版は日本の制作チームが経験を活かして作っているもので、バランスも取れているので、それを欧州に持って行きます。本当は日本を含めて世界共通にしたいのですが。後からできてくるスキルもあるので、違いが出てしまっています。欧州版はなるべく早く北米版に追いつかせて、同じような環境を作っていきたいと思っています。
――ちなみに北米版は日本から遊べるのですか?
宮本氏: 遊べます。そこは止める気もありません。米国版は英語しかサポートしませんと書いてありますが、お客様の自己責任でやれるようにはなっています。ただ台湾版はブロックする契約になっています。
――そこは契約次第なわけですね。
宮本氏: お客様からすると、グローバルサーバーが1つあって、言語も翻訳されるというのが1番だと思うのですが、国ごとの風習に合わせたイベントがあるので難しいのです。例えば米国では、11月の金曜日にブラックフライデーという安売りをしていて、北米版「アルテイル」でも先着200名様に安売りをしました。そういうものがあるのは、我々も北米から提案されて初めて知りました。我々が1つのサーバーを持っていても絶対できないと思いますし、できなければお客様はついてこないと思います。
――なるほど。それは先ほどの公園のたとえにも繋がる話ですね。
宮本氏: あと米国は、東西で時差が4時間あります。東が夜中2時でも、西はまだ10時ですよね。ニューヨークの人がそろそろ寝ようと思う時間も、ロサンゼルスの人は「さあやるぞ」と燃える時間なのです。おかげで同時接続数が保たれていて、日本ほどの規模はないものの、対戦相手がいない状況が少ないというのが、北米のいいところですね。
■ 各国の運営と手を取り合い、連携した企画を推進
12月4日にオフラインイベントが開かれ、日米チャンピオン決定戦に出場する日本代表選手が選出された |
――世界展開では欧州展開のほかにも、北米との企画が色々と進んでいると聞いています。例えば日米のチャンピオン決定戦やイラストコンテストなどは、どういった経緯でやろうということになったのでしょうか。
宮本氏: 現在、北米の運営は私ともう1人の担当で見ています。立ち上げには1年くらいかかっていて、年間4回、3カ月おきくらいに米国に行って、オンラインゲームをやったことがないスタッフを教育しました。サーバーの運用からカードの売り方、イベントの例なども話しました。
日本で行なったイベントはリストにして、そのまま北米に送るようにしました。例えば七夕には、織姫と彦星のカードが出てきて、2枚集めると好きなカードに交換できるというイベントをやっています。これは運営のアイデアを伝えるのが目的で、こういうやり方が可能なんだと気づかせるためにやっています。その上で、米国の人はこういうのはあまり好きではないと言うなら、やらなければいいわけです。最近は北米での運営もうまく回りだして、お互いに意見交換をするようにもなりました。
――その一環として、先述の2つのイベントを企画したわけですね。
宮本氏: イラストから受けるインパクトは世界のどこでも変わらないですし、翻訳する必要もありません。北米も会員数が約12万になったので、そろそろいい時期かなと思い企画しました。先日、北米に提案したら、「今はハンドターキーをやっているので無理」と言われましたが……手形でターキーを描くイベントらしいです。結局、「イラストは日本でも2カ月くらい募集するから、並行して一緒にやろう」ということになりました。このイベントのいいところは、プロのイラストレーターさんから賞をもらえたり、日本と北米のGMが両地域から応募された全てのカードを評価するというところです。
――ということは、日本のGMやイラストレーターさんが、米国から応募されたイラストに賞をあげることもあるわけですか?
宮本氏: そういうことです。それがすごくいいなと思ったので、やってみることにしました。我々としては意外と簡単にできることなのですが、各国でサービスしている有名なタイトルでも、あまりこういうことはやらないじゃないですか。そういうものを、今後どんどんやっていこうと思っています。
――海外だと、コスプレの写真が送られてきたりもしそうですよね。
宮本氏: 写真はダメですが、特別賞はあげてしまうかもしれないですね。今回は私の賞は入っていませんが、こっそり特別賞をあげようと思っています。初めてのイラストコンテストでは「立源寺賞」を用意しまして、小さい子が描いたらしい絵にあげました。そんなにうまくはなかったのですが、とても一生懸命描かれていて、こういうのがいたら怖いだろうなという気持ちが伝わってくる絵だったんです。そういうのはどんどん描いて欲しいですね。イラストのうまさを戦うコンテストではないんです。どれだけ愛しているか、どういうのがいたら強いと思うかと、考えて描いてくださっている時間がとてもありがたいじゃないですか。そういう想いを伝えるコンテストになって欲しいと思っています。
――もうイラストは届いているのですか?
宮本氏: まだですね、告知したばかりなので。告知にしても、日本の準備はページもできていて完璧なのですが、北米はハンドターキーとブラックフライデーでそれどころではないらしく、先日「これでいいか?」とテキストだけのニュースページのURLが送られてきました。
――投げやりですね(笑)。
宮本氏: 北米は運営の担当が少ないので大変なようです。苦労はしますが、いい苦労かなと思います。
――そしてもう1つの企画が、日米チャンピオン決定戦ですね。こちらはどのように進めていく予定でしょうか?
宮本氏: 日本の決勝を12月4日に開きます(イベントレポート記事)。米国でも12月に決勝がありますが、米国はなにぶん広いので、オンラインでやってもらいます。そして3月くらいに、日本対米国のチャンピオン決定戦をやろうと思っています。ただ先ほどお話ししたように、日本と米国ではカードの能力が違います。
――ということは、日本のチャンピオンが北米版のサービスに合わせてプレイするのですか?
宮本氏: はい、日本のほうが先輩ですから。でも日本の「アルテイル」で優勝する方は、百戦錬磨で本当にすごいんです。どんな環境下でも勝てる人でいて欲しいですね。チャンピオンには北米版と同じ環境を用意して特訓してもらうなど、やり方は運営チームで考えているところです。
――チャンピオン決定戦はオンラインで行なうのですか?
宮本氏: そうですね。ウチがものすごく儲かっていたら、ニューヨークまで連れて行ってあげたいところです(笑)。
――でも日本代表には、オフラインイベントでみんなが見てる中で、北米チャンピオンと戦って欲しいですね。
宮本氏: それも考えにあって、春の開催を予定しています。ただ北米代表は家から参加するはずで、両者の緊張度数が違いますから、そこは代表選手に選ばせてあげたいと思っています。
――できれば北米もオフラインイベントで戦ってもらって、お互いに中継して欲しいですね。
宮本氏: 米国代表の家がニューヨークに近かったらMedia Blastersに来てもらって、私も米国に行って中継したいですね。それができなかったとしても、「アルテイル」には観戦機能がありますので、戦っている様子はWEBで見られますし、リプレイデータも公開したいと思っています。Flashだとリンクだけでそれができてしまうのもいいところです。あとはお互いのプロフィールやビデオレターを公開して、両国のプレーヤーから応援メッセージを寄せてもらうような企画もやりたいですね。
――他に北米や台湾とのコラボレーションは考えているのはありますか?
宮本氏: 我々は遊びというものによって利益を上げさせてもらっていますが、社会貢献をできないかということをいつも考えています。日本国内ですが、能登半島地震の時には、1日1回、10グラン(ゲーム内通貨、10円相当)がもらえるゲームで、その10グランを募金に入れていただくという企画を行ないました。
海外に向けても同じようなことをやりたくて、要らなくなった服を持ってきてもらうというイベントをやって、貧しい国に送ろうと考えたことがあったのですが、実は運搬する費用が高かったりして、そういった活動をしている協会から断られました。でも我々にパートナー企業があれば、2社だけでできます。例えばニューヨークで災害が起こって、服を送るとなったら、その会社に服を送って配ってもらえばいいのです。そういうことを、ゲームを通じてできればいいなと思っています。
■ iPhone向けの絵本風イラスト集も登場予定
余談だが、GPコアエッジ社内には宮本氏が書いた心得が貼られている。週3回の朝礼で、このうち1つについての話をするのだという |
――せっかくの機会ですので、日本も含めた今後の展開について何か予定があれば教えていただけますか?
宮本氏: iPhoneやiPodで、「アルテイル」のイラストを絵本のように楽しめるアプリを作っています。イラストのビューワーに、お話しなどちょっとした何かが付いているというものです。「アルテイル」の説明をするのにイラストは説得力があるので、ドイツで営業ツールとして使ってもらおうかとも思っています。IPの横展開はどんどんやっていきたいと思っています。
――iPhoneといえば、「アルテイル」のスマートフォン対応は考えていますか? iPhoneはFlashが動かないので難しいかもしれませんが、AndroidはFlashにも対応しています。
宮本氏: 我々が何も調整せずにAndroidで動く、という時代が来るといいのですが、まだ難しいようです。そこに対応していくかどうかは別として、スマートフォンは意識していかなければなとは思っています。その第1弾が先のiPhoneやiPadのイラストアプリです。
――では最後に、「アルテイル」のプレーヤーに向けてメッセージをお願いします。
宮本氏: カードゲームは、短時間でできるのに、何度繰り返しても同じ内容の対戦が絶対に起きないのが、飽きの来ない理由だと思います。とっつきにくそうだとか、難しそうだと思われがちですが、「アルテイル」の新しいチュートリアルを1度でいいから試してみてください。印象だけで食わず嫌いにされてしまうのがカードゲームの1番の残念なところで、面白さを知ってもらいたいという気持ちから、本を出したり、iPhone/iPadに取り組んだり、イラストから入ってもらおうとしたりと、色々な手を打っています。ぜひ1度チャレンジしていただきたいと思います。
――ありがとうございました。
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(2010年 12月 21日)