ゲームオン、「ALLODS ONLINE」運営インタビュー
骨太なMMORPGを“気合いの入ったファン”にサービスしたい!


9月3日 収録


 株式会社ゲームオンは、Windows用SFファンタジーMMORPG「ALLODS ONLINE(アロッズ オンライン)」のクローズドβテストを10月6日から13日10時30分まで実施する。現在はこちらの記事で29日18時までクローズドβテスターを募集中だ。今回は「ALLODS ONLINE」運営プロデューサーを務める、ゲームオンオンライン事業部第二事業ユニットの松田雄介氏にインタビューを行なった。

 「ALLODS ONLINE」はロシアのMAIL.RUが開発。ロシアのゲームらしい、欧米的な価値観の中に、独自のセンスが光る。硬派なファンタジーかと思わせて、宇宙を進むアストラルシップのようなSF要素も盛りこまれており、世界観に強烈なインパクトがある。インタビューでは、この独得な魅力を持ったゲームをどうアピールするかを中心に質問した。

 なおゲーム内容については、先行体験レポートを掲載しているので、合わせてご覧いただきたい。



■ パーティープレイが核となる、ロシア産本格MMORPG日本上陸! 開発と重視するのは“コミュニケーション”

「ALLODS ONLINE」運営プロデューサーを務める、ゲームオンオンライン事業部第二事業ユニットの松田雄介氏
パーティープレイ重視の硬派なゲームデザイン。コアプレーヤーの心をつかめるかが鍵となりそうだ

編: 最初に、このゲームをゲームオンさんが運営するようになった経緯を教えてください。

松田雄介氏: アジア産のゲームが飽和状態になっている状況の中、いろいろなところにアンテナを張っていまして、このゲームが引っかかりました。ロシアだから、というわけではなく、コンテンツありきですね。やはりキャラクターや、アストラルシップといった世界観に惹かれました。他にも、従来のMMORPGの要素を持っているのですが、今までと違うところでも、しっかり作ってあって個性的だなと。

 ゲームの展開も個性的なんです。本作は「リーグ」と「エンパイア」に分かれていますが、リーグ側はファンタジー色が強く、草原や森など自然が美しいフィールドで王道的なストーリーが展開します。一方、エンパイア側は「帝国」ということもあって、軍事的な意味合いが強く、地下や、鉄や、機械……リーグは広大なフィールドで冒険を進めていくのですが、エンパイア側の序盤は首都からあまり出ないままストーリーが展開します。管理国家であることをプレーヤーは強く感じます。

 本作は1アカウントで8キャラクターが作れ、リーグ、エンパイアどちらも作れます。是非両方の陣営の雰囲気の違いを楽しんで欲しいですね。リーグは人助けなど、冒険者が自発的に進めていく展開が多いのですが、エンパイアは上から命令される状況が多いです。

編: なるほど、体験してみたのですが、エンパイア側はちょっとアクが強く、雰囲気も暗いですね。個人的には強い魅力を感じるのですが、やはりリーグ側が人気を集めてしまうかなと感じます。パワーバランスを調整するような施策は用意しますか?

松田氏: ビジュアル的にも完全に分かれていますし、ハードで本格的な「ALLODS ONLINE」で遊ぶようなプレーヤーさんならば、エンパイア側を選ぶ人も多いのではないかと思っています。そこまで大きくバランスが崩れないのではないのかと思っています。どちらの勢力も作れますし、ひょっとしたら敵勢力の情報を漏らすスパイのようなプレイもできると思います。

編: 本作のサービス形態は、基本プレイ無料、アイテム課金なのでしょうか。

松田氏: はい。課金アイテムとしては、回復やステータスリセット等は用意されていますが、日本ではどういったアイテムを販売するかはこれから調整していきます。ただロシアでの運営でも、お金をかけた人とそうでない人の差が大きすぎる、といったバランスにはなっていません。

編: 本作は一見重厚なファンタジーのようですが、大地が宇宙空間に浮かんでおり、船でその宇宙に乗り出していくというSF的な要素も色濃い作品です。SFというのはちょっと人気が得られないのかなと、心配してしまう部分があるのですが、アピールする施策などは考えているでしょうか。

松田氏: 「ALLODS ONLINE」は「Rage of Mages」という独得のファンタジー+SF小説がまず原作となっています。その世界は、独得の世界観を持っており、アストラルシップや、エンパイアなどの世界情勢も、小説から生まれたものなのです。この独得な世界は、SF好きとか、ファンタジー好きといったカテゴリーを超えた魅力を感じてくれるのではないかと思っています。

 小説を翻訳する予定はないのですが、物語のあらすじなどは公式ティザーサイトでも紹介しています。ちなみに、この小説を元にいくつかのPCのパッケージゲームがロシアで販売されています。ジャンルはRPGでシリーズ化されており、ロシアでは非常に認知度の高い、多くのファンを獲得するRPGシリーズになっています。10年以上前からロシアで人気の小説であり、ゲームシリーズなのです。

編: カジュアルなアクションや、MOタイプのゲームが多くサービスされる中、パーティープレイが中心となる本格的なMMORPGをこの時期に投入するのは、どうしてなのでしょうか。

松田氏: 現在たくさん出ているタイトルは、カジュアルなWEBゲームや、ソロで遊べるMMORPG等が出ていますが、それだけになってしまうのは寂しい。いわば、「重い」ゲームも必要ではないかと思ったのです。知り合いで協力し、困難に立ち向かう……現在主流ではないとしても、やはり魅力的だと思ったのです。

 僕はもともと全くの異業種の仕事をしていまして、この会社に入るまで、オンラインゲームというのはほとんど触れていなかったんです。ゲームオンに入社してからは、先ほど言ったような「重い」タイトルに関わることが多く、プレーヤーさんも古くからMMORPGをプレイしてきたような方が多かったこともあり、「ALLODS ONLINE」のようなゲームに思い入れがあるのかも知れません。個人的にも欧米産のコンシューマーゲームが好きだったりしますし、欧米風の本格MMORPGということで、「ALLODS ONLINE」に惹かれているところがあります。

 欧米産のMMORPGはいくつか他のメーカーで運営されましたが、現在ほとんどありません。難しさは感じていますが、ゲームオンが持つノウハウを投入し、日本語できちんと欧米産MMORPGがプレイできる環境を提供したいと思っています。

編: 松田さんは、過去の欧米産MMORPGの多くが定着しなかった理由はどこだと思いますか。松田さんならば、その状況をどう変えていけるでしょうか。

松田氏: 僕やスタッフはこれまでゲームオンのいろいろなタイトルに関わってきました。そしてロシア側スタッフと関わってきて痛感したのですが、やはり「価値観の違い」が大きいのです。オンラインゲームを作るのも、運営するのも人間なので、コミュニケーションをしっかりとらなくてはいけません。

 コミュニケーションを取り始めた頃は、私たちも正直戸惑いました。サービスに対する価値観やユーザーとの接し方など、あらゆる面で文化の違いを感じました。当社も韓国のメーカーなどとは長くお付き合いしていますので、初めての方でも比較的円滑に話が進むのですが、今回は連絡のメール1通をとっても、どのような意図で、何を目的として、どうして欲しいのかをかなり細かく伝えなくてはいけませんでした。ずいぶん時間がかかりましたが、今では非常に良好な関係を築けていますので、今後のサービスに関する心配は特にありません。




■ ゲームの舞台はやがて大宇宙へ! 随所に感じるロシア的価値観にも注目

エンパイア側のチュートリアルで見られる宇宙での戦い。宇宙は高レベルプレーヤー達の戦場となる場所だ

編: ゲームとしては、ファンタジー世界で、パーティープレイのMMORPGという部分から、みんなでアストラルシップを動かして宇宙へと、高レベルプレーヤーには新しいゲーム性が追加されていきます。SFというのは、あまりなじみのないジャンルではないかと感じてしまうのですが、この部分のアピールはどうしていきますか。

松田氏: 実は私自身はSFというジャンルにそれほど不安を感じていません。実際ゲームオンでは既に「RF ONLINE Z」というタイトルでSF+ファンタジーをテーマとして扱っています。「ALLODS ONLINE」では前半はファンタジー色が強いですが、アストラルシップを手に入れる後半ではよりSF色を強めていきます。イメージ的には、ファンタジーパートが第1部、アストラルシップを手に入れて、大宇宙に旅立つのが第2部だと考えています。レベルが上がってアストラルシップを個人で手に入れてから以降は、この第2部が幕を開けるんだ、というところはアピールしたいと思います。

 ゲームの中では、ストーリーでアストラルシップが重要な位置を占めていて、エンパイア側のオープニングだけでなく、他の世界へ移動する定期便や、シナリオなどで「いつかはこの船を自分で動かしてみたい」とプレーヤーさんが思うようになると思います。ギルドホールのようにも使えます。また、ギルドに所属していない人を乗せることも可能です。

 「海賊からの護衛のためだけに船を動かす」というシチュエーションも可能ですし、探索をして、宝物を得た帰りの航海こそが危険なのです。敵対勢力はそれを狙いますし、戦いを見越して複数の船で移動してもいい。アストラルシップを造るのは結構大変なのですが、既に持っている人に乗せてもらうとか、ギルドメンバーで協力して手に入れるといった、入手までのプロセスも含めて楽しんでもらいたいです。既存のMMORPGとは違ったレイヤーでのプレイが楽しめると思います。

編: 戦争や狩りをしている人達がいる一方で、彼等を助ける生産職、というのはあるのでしょうか。

松田氏: 通常のクラスではなく、生産用のスキルを持てます。採取、採掘といった材料調達や錬金などの生産まで複数の職業を用意しています。これらの生産スキルは3つまで持てますが、いいアイテムを作るためには、まず1つを極める、というプレイになると思います。

編: MMORPGでは、レベルアップの次の目的、というのが大きな魅力になっていきます。PvPや攻城戦といったゲームでは様々な目標が提示されますが、「ALLODS ONLINE」ではアストラルシップを手に入れて、宇宙でレアなアイテムを探しつつ、敵勢力の船と戦いを繰り広げる、というところでしょうか。

松田氏: アストラルシップを手に入れてからのいわば“第2部”はゲームの目的そのものも変わってきます。レアアイテムの眠る島を目指してこぎ出すというのも目的の1つで、宇宙の深淵にはアストラルデーモンが待ちかまえていて、彼等と戦うことも目的の1つです。アストラルは常に変化するのでマップを作るなどの攻略はできません。

 アストラル自体がまだまだ大きく発展していきますので、今後も様々な要素を盛り込み、充実させていく予定です。ロシア側でもユーザーの声を取り入れて進化していくところですので、これからどんどん様々な要素を取り入れていくと思います。ただ、個人的な意見ですが、ハイリスクハイリターンの「危険な旅」という雰囲気があってもいいのではないかと思います。

 飛空艇「アストラルシップ」で、宇宙を舞台とした戦いというのは、これまでのMMORPGのスケールを超えた壮大なものになるのではないかと思います。船の方で撃ち合うだけでなく、接近して飛び乗り、白兵戦も出来るので戦いの風景もまた違ったものになるのではないかと私自身も期待しています。こういったみんなで一緒に楽しめるところも、MMORPGだからこそだと思います。

編: では次に、本作ならではの“ロシア制作ならでは”と感じられる部分、という要素を教えてもらえますか。

松田氏: ストーリー、世界観、キャラクターの造形……いずれも独得の雰囲気と“価値観”を感じますね。特にクエストには「これはロシアンジョークなのかな?」と考えてしまうユニークなものがあります。例えば、リーグの方は人助けのクエストが多いのですが、「宿屋のお上が、旦那さんが亡くなってしまったので、次の人を捜している。めぼしい人達はピックアップしているので、会ってきて確かめてくれないか」と言われる。日本人にはちょっと考え付かないようなクエストですよね。

 エンパイア側では軍事国家的な、規律や風紀に厳しい。そこで「敵勢力のエルフの女性を表紙にした、いかがわしい本を所持している者がいるので、没収してこい」と言われるのです。アイテムのアイコンも、エルフがちょっと色っぽいポーズをとっていて、上官に持って行くと、「けしからん内容なので、俺が預かっておく」と取られてしまう。ストーリーは壮大で、スケールが大きい話なのですが、こういう小ネタも楽しいです。クエストのテキストも楽しいので、読み飛ばさないで欲しいですね。

編: また、ミニゲームとして生きたゴブリンをボールに見立てる、過激な「ゴブリンボール」という遊びがあるそうですが、これはどういったものでしょうか。

松田氏: この世界のゴブリンは使役される存在で、アストラルシップの修理や下働きなどに使われています。ちょっとかわいそうな存在で、ゴブリンボールは、サッカーボールの代わりにゴブリンを蹴るというスポーツなんです。このスポーツは、エンパイアのオークの戦い好きが行き過ぎて、同族同士でも争いが絶えないので、その鬱憤のはけ口として生まれたスポーツでした。

 現在はリーグでも流行るスポーツになりました。ぼやかしているのですが、何点かやりとりするとゴブリンはふと消えて、代わりのゴブリンが投入されたりします。ゴブリンは使役される者達だけでなく、冒険者達に襲いかかる強いならず者もいて、ゲーム内では様々な姿を見せてくれます。冒険者に協力するいいゴブリンもいて、開発者の愛を感じます。

編: 最後に、ユーザーへのメッセージをお願いします。

松田氏: 「ALLODS ONLINE」はとてもまじめに、MMORPGの本質を見つめ直したような作品です。ゲームの本質は骨太で、「やりごたえのあるMMORPGがやりたい、最近のタイトルは物足りない」と思っている方、「我こそは!」という気合いのある方に、1度触れてもらいたいです。プレイしていただければわかっていただけると思います。


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