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Wii/DS「IVY THE KIWI?」開発者インタビュー
プロデューサー中 裕司氏が語る「ツタ引きアクション」の醍醐味

発売中(4月22日)

価格:各3,990円

CEROレーティング:A(全年齢対象)

Wii/DSiウェア【IVY THE KIWI? mini】

配信中 (4月20日:Wiiウェア /4月21日:DSiウェア)

価格:各1,000Wii/DSiポイント

CEROレーティング:A(全年齢対象)

 

 株式会社バンダイナムコゲームスが4月22日に発売したWii/ニンテンドーDS向けツタ引きアクション「IVY THE KIWI?」。開発は中 裕司氏が率いる株式会社プロぺが担当している。本作のポイントは、1点を指定した後、スーッとWiiリモコン/タッチペンを使ってステージにツタを引いて道を作り、飛べない鳥の「アイビィ」をゴールまで誘導していくという「ツタを引き、それを動かす」アクションにある。

 バンダイナムコゲームスにて、中氏に本作の魅力を中心に、お話を伺うことができたので、その模様をお届けしよう。



■ 「新しいものに挑戦できる可能性があるのであれば挑戦していきたい」

株式会社プロペ代表取締役社長・中 裕司氏

編集部: Windows Mobileでもリリースされている「IVY THE KIWI?」をWii/DSでリリースするに至った経緯を教えてください

中氏: 「IVY THE KIWI?」は最初、Wiiで作ったんですよ。若いスタッフたちが作ったプログラムが非常に良く、それを伸ばしていく形でプロトタイプができあがりました。Wiiを触られた方ならわかると思うのですが、現在発売されているタイトルには、細かいポインティングがやりやすいものはそれほどないですよね。ゲームを長く作っている人間が考えると、ポインティングで細かい操作をすることはユーザーのストレスにつながってしまうので安易にゲームに落としにくいんです。

 ですが、作ってみたテストプログラムを動かしてみると、思い通りに線をコントロールできることがわかったんです。慣れてくるとすごいスピードでコントロールすることができて、意外とポインティングしやすかった。

 2点目をコントロールすることで軸を動かし、思い通りの線を引く操作。これだと、うまくゲームに取り入れられることを発見したんです。Wiiが最初出たとき、「ポインターを使うゲームがたくさん出てくる」と思っていたんですが、そういったゲームはガンシューティングが多くて、しかも狙うのでさえ難しく、プレイしていると手がだるくなるなど、ネガティブな点が多かった。

 そんな中、うまい仕組みを考え付いたなと思います。慣れてくるとポインティングは手首のスナップだけで思い通りにコントロールできます。これは本作の特徴的なところです。

 「マリオ」や「ソニック」もそうですが、アクションゲームはプレイを重ねることで上達していきます。「スーパーマリオ」を最初に遊んだときも皆さんそうだったと思うんですが、慣れてきたらそのうちBダッシュをずっと続けてプレイできるようになってどんどんうまくなっていく。そういう上達性が本作にもあるんですよ。しかもすごく幅がある。アクションゲームにとっての上達性の幅の広さと、うまくなったときの自分の操作の上達の伸びが目に見えてわかるのは、かなりいいところまでできたと思います。

 慣れるまでは不自由さを感じると思いますが、人間は能力が高いので、10分ほどプレイすれば、車のハンドルを握るように自在に動かせる自分に出会えるでしょう。最近のゲームにない、新しい操作感を感じられますよ。

 Wiiリモコンが「IVY THE KIWI?」の操作に1番いいと僕は思っていたんですが、Wii版がほぼできあがった後に、Windows MobileやニンテンドーDSで作ってみたところ、意外と「タッチペンもいいな」とわかりました。DS版を作るとき、Wii版ほど操作の幅が出せるのかと心配していましたが、作り上げてみるとほぼ同じ感じにできました。

 人によりますが、僕はWii派で、社内にはDS派もいるんです。DS版は結構ペンを動かさないといけないと思うのですが、Wii版は肘を固定して、手首のスナップだけでプレイできます。ほかにも、変な操作方法もあると思いますので、それも子供達には発見してもらいたいですね。

 それと、ウェブ体験版をバンダイナムコゲームスさんが作ってくれました。本編ほどはスピード感はでないんですが、ほんの少しだけ体験できますのでプレイしてみて欲しいです。それから、DS版は体験版も配布していますので、ぜひ遊んでみていただきたいですね。

編: 最初のWii版ができるまで、どのくらいの期間がかかりましたか?

中氏: Wii版の形ができたのは、アイディアが出てから数カ月です。その後、調整やマルチプレイの実装などを含めると長くなって、最終的に今年に入ってからも開発を続けていました。その過程で、操作が簡単であればあるほど人とプレイしたくなると考えたので、マルチプレイを実装することにしました。

編: 他社タイトルですが、セガさんの「レッツタップ」でも、プロペさんのタイトルは操作感という点でいうと今までにないものを狙って作られていますが、やはり中さんとしては、「新しいものを狙って作る」というところからスタートしているのでしょうか?

中氏: 新しいものを作りたいというか、ゲームクリエイターという肩書きをもっている以上、世の中に新しいものを提供していけるのがゲームクリエイターの1番いいところだと思っています。同じものを作っていかないといけない環境というのが現在のゲーム業界にありますが、新しいものに挑戦できる可能性があるのであれば挑戦していきたい。新しいものが出にくい時代になっていますよね。そんな中、新しいものが出せるのはありがたいと思っています。

編: 今のところWiiとDSですが、他のハードでもリリースしたいと思いますか?

中氏: 他のプラットフォームも考えたのですが、マッチするものが意外とないんです。「プレイステーション 3やXbox 360でもできるといいな」と思ったのですが、「あの操作感が出せるか」というとちょっと厳しい。モーションコントローラーはいけるのかもしれませんが、こちらの位置は取れるが、画面の位置をとれないので難しい。iPhoneのタッチパネルは静電式なのでスタイラスが使えませんし、指でやると摩擦で指が痛くなるかと。ということで、WiiとDSで楽しんでもらいたいですね。今後、新しいハードが出たときに、また同じ操作感で進化したものをリリースするかもしれませんが、そのときはせっかくなら新しいゲームを作りたいですね。

Wii版(左)とニンテンドーDS版(右)の同時リリースとなった

■ 「タイムアタックは豹変ぶりが面白い」、「人の画面に線を引ける新しさがマルチプレイの面白さ」

編: 習熟度で遊びが変わるというのは、中さんが開発するゲームでは多いですよね?

中氏: そうですね。アクションゲームを作る以上、そこが見つからなければやめる。ゲームを作っていると、世に出ていないゲームはたくさんあります。作ってみても世に出せるまでには中々至らない。ピンポイントで面白いアイディアはありますが、トータルパッケージにまとめるまでを考えると難しい。「レッツタップ」もそうでしたが、「IVY THE KIWI?」も新しい発見があって、その発見を伸ばして作りました。昨年中に出したいくらいだったのですが、バンダイナムコゲームスさんとお話させていただいて、もう少し作り込ませてもらいました。

編: 中さんが作るアクションゲームを作る上で、アイディアの選定基準というのはあるんですか?

中氏: 基本的には自分を信じるしかないですね。ゲームを作っていくと、いろんな場面で選択を迫られる場面がありますよね。「どうしよう」と思ったとき、自分ではない誰かに判断を仰ぐこともありますが、基本的に自分の感覚を信じるしかない。基準が存在すればいいですが、ゲーム開発という職業は歴史が浅いので、面白さを計る基準がないですよね。

 僕らのように長く業界にいる人間が基準を作り上げられるといいんですが、中々難しい。ハリウッドの「感情曲線」のようなものもありますが、あれもうまくいっていない。「ゲームでそういったものが作れれば」という、仕組みの話はするのですが、難しい。長くやって名の出ている人間は、もっと出てきた方がいいと思いますが、出にくい時代になってきていますよね。昔は短いスパンでゲームが作れたので、そういう人間を生み出しやすく、成功、失敗がわかりやすかったですね。

 「IVY THE KIWI?」の仕組みは若いスタッフの発見です。よく「中さんが思いついたんですよね?」と言われるんですが、1人でゲームを作っている感覚はないし、言ったこともない。「ソニックチーム」でもそうですし、チームで作っているので。若いスタッフが考えたもののいいところを伸ばして、ダメな所をなんとかしてあげるのが役目。みんなで総合的に作っていくのがゲームだと思います。若いスタッフが新しい発想をしてくるのは非常にいいですね。

 元々セガで作った「チューチューロケット!」も、新入社員が作ったものを伸ばしたんです。「IVY THE KIWI?」も近い感じです。このポインティングの話も、我々が作らなかったら、あの時期にあの操作感を誰も見つけなかったと思いますし、きっと今後、他のゲームでも使われることがあるのではないかと思っています。僕らが導入したものは、これまでもいろんなゲームに使われています。このように、自分たちが考えたものが次のステップを踏んでいくのは嬉しいことですね。その先駆者になるのは僕の1番の幸せです。中々難しいですが、本作にはそういったものがあります。

編: 開発期間が長くなったことで、レベルチューニングなどにも時間がかけられたと思いますが、習熟度はユーザーによって差が出てくる要素ですよね。中さんのレベルデザインの考え方はどのようなものですか?

中氏: 作って、プレイしてと、やってみないとわからないですね。頭を真っ白にしてプレイしながらやっています。何度も繰り返しやっていくことで作っていくものだと思います。バランスは本当に難しいです。本作はバランス調整に時間を割けたので、細かく調整ができました。

編: チューニングに時間を取れるというのは、昨今の状況では貴重ですね?

中氏: 「細く長く」な開発体制だったのが結果的によかったと思います。Wii版ができたあと、DS版ができるまで時間があったのでWii版も調整できましたし。DS版が完成した後に、DS版にあってWii版に入っていないものがあって、慌てて入れたりもしました(笑)。DSの方が気が利いている点も少しありますが、ほぼ同じようになりました。

編: 開発期間が長いと、やり込み度合いが上がって皆がうまくなってしまい、難易度が上がってしまいがちですよね。頭をリセットするというのは難しかったのではないですか?

中氏: タイムアタックやメダルシステムをゲーム完成後に入れたのが良かったですね。いろんなことがあった上でできたことで、最初から想像していた流れではないです。新しいアクションゲームが出せるのは幸せです。新しいチャレンジのタイトルは少ないと思いますし。たくさん売れた方がいいのですが、今の時代、新しいものについてきてくれる人がどれくらいいるかは難しいと思うのですが。

 WEBなどを見ているといろんな評価がありますよね。「ゲーム業界はダメだ」といった評価もありますが、決してそうではないと思う。ゲームクリエイターみんなで新しいトライをして、盛り上げていきたいですね。

編: タイムアタックはもはや別物のようなプレイ感覚になると聞きましたが?

中氏: 実は、スピードを目標とするゲームではないので、「タイムアタックはやめよう」と思っていたのですが、ある人から「入れた方がいい」と勧められまして。試しに入れて遊んでみたら、ゲームが変わってしまい、これはダメだと思ったんです。ただ、さらに詰めて遊んでいたら、豹変ぶりが面白くて、実装を決めました。Wii版は完成した後に実装することになったので、Wii担当者は嫌がってましたけどね(笑)。

 タイムアタックは、ゲームを買って、操作が面白くなったら、トライしてほしいです。通常、エンディングに行くまでのプレイでは、タイムは表示されません。タイムを出してしまうとタイムを意識してしまいます。そうすると、タイムアタックにこだわってしまい、エンディングに到達する前にプレイを終えてしまう可能性があります。なので、ゲームが一通り終わった後に、タイムトライアルにトライしてもらう形にレベルデザインしました。操作がうまくなってくると人間は欲が出てきて、タイムを意識してしまう。今までの僕ならタイム出していたでしょうが、今回は外して別モードにした。ソニックでもここまでうまくデザインできているものはない。

 マリオでは、うまくなってくるとずっとBダッシュするようになりますが、そのためにBボタンを押しっぱなしにするのが嫌で、だからソニックを作ったんです。今回はうまくなったら、自分の操作で早くも遅くもできる。レバーを入れっぱなしにすることもない。そのあたりは上手くできたと思います。

編: 協力プレイやマルチプレイを実装した経緯を教えてください

中氏: マルチプレイに関してはWii版とDS版は同じものではなく、違う遊びができるように作ってあります。大きい画面ならWiiで、携帯ならDSで、と選んでもらえればと。どちらにもそれぞれの良さがありますよ。

Wii版(左)とニンテンドーDS版(右)の同時プレイにはそれぞれ特徴がある

 タイムを競いだすと、面と向かって戦った方が面白いので、「画面分割でもいいからやろう」と思ったわけです。作っていくと、どうやって相手の邪魔をするのかを考えますよね。「IVY THE KIWI?」では、自分の画面ではなく、相手の画面にも線が引けるんです。この行為が非常に新しいんです。これは冗談で言っていたのですが、導入してみたら面白かったんですね。出し抜いたときの面白さはたまらない。口のうまさで誰かを落としていくのが面白い。

 導入当初は全部の画面に線が引けるだけでなく、線が消えなかったんですよ。製品では、線は引けますが、3秒で消える仕組みになっています。最初は、4本目を引くと1本目が消えるシステムがあるので、問題ないと思っていたんですが、本気で勝負すると、みんな大人げなくて先へと進まなくなるんです(笑)。バカ笑いが出るほど面白かったんですが、本当のいじめのようなことができすぎてしまうので、泣く泣く、3秒で消えるようにしました。それでも、相手のいたずらをしながら、自分もゴールを目指すとなると、1位の人を見て邪魔するといった、人と遊ぶ面白さが出てきます。協力しないと勝てないという場面もありますから、人の画面に線を引ける、というのは新しくて面白いですよ。

 子供さんたちと遊ぶときは協力することもできます。1Pの通常プレイでも、残り3人がゲームに入ってプレイできるので、合計12本の線が引けるんです。1995年に作った「ソニック2」で「1.5Pプレイ」としてテイルズを操作できるのに似ていますね。4人で邪魔しあっても、助け合ってもいい。1人でコントローラーを4本使ったっていいんです。本当はそれをDSでもやりたかったんですが、DSでは、相手の画面に線を引くのが難しくて実装できなかった。その分、メダルをゲットする別の遊びを入れています。

 黙々とやるよりは、ワイワイしゃべりながらプレイしてほしいですね。4人プレイをやれる機会があれば是非ともやってみてほしいです。


■ 「“最近ゲームが面白くないな”と思っている人に触ってもらいたい」

本作の主人公は「アイビィ」。かわいらしいキャラクタになっている

編: ソニックはスピードを意識したキャラクターデザインですが、「IVY THE KIWI?」ではキウィというかわいい動物だったのが意外でした

中氏: 自分が神様のようになって、絵本の中のキウィを助けてあげて、導いてあげるように作っていきました。飛べない鳥といいますか、自由に動けないキャラクターをサポートしていくみたいな。そのため、赤ちゃんのような設定が良かったんです。

 余談ですが、昨年7月30日に第一子となる息子が生まれまして、ちょうど開発しているタイミングと重なったため、キウィが自分の息子のように思えていました。ツタを使って高速でキウィを振り回すのがなんだかかわいそうになってきて、タイムアタックがなかなかできなくなってしまうなんてこともありましたね(笑)。キャラクターに愛着がわいてきて、かわいらしさもでてきて。母性本能的なものがでてくるような感じでキャラクターを作りました。

 ソニックやマリオは自分自身、自キャラを操作するじゃないですか。今回は、間接的に操作してやらなければならないかを直感的にわかるようにするためにも、赤ちゃんである必要があった。「私が」、「俺が」、「なんとかしてやろう」と思えるように作ったんです。ゲームの必然から赤ちゃんのキャラクターになったんですね。

編: スピードを重視するタイプで設計されているのであれば、スピード感を煽る演出があると思うのですが、今回はないですね?

中氏: 最終的にはそこまで遊べますが、基本的には「絵本の中でアイビィをお母さんの元へ届けてあげる」のが目的のゲームなので。ガチなアクションバリバリという方向性ではないからですね。ソニックのように斜線が入ってスピード感を出すというより、雰囲気重視にしました。クリアすると絵本が読めるようにしたのも、そういった理由からですね。この絵本は出版したいとも考えています。(編注:インタビュー後、絵本『アイビィはキウィなの?』の出版が正式に発表された)

編: ソニックチーム時代の中さんと、プロペの中さんは立っている位置が違うように思えます。ソニックチームなら、本作もスピード感のある形でつくっていたんじゃないでしょうか?

中氏: 実は、開発当初のキウィの移動スピードは、今の3倍くらい速かったんです。ただ、ターゲットやゲームデザインを考えると「違うな」と。それでスピードを落としました。スピードを落としたのは、赤ちゃんのデザインが決まったタイミングですね。裏技を使えばもっと早くもできたりもしますけどね。セガにいたときは、次に作らなければならいものが多く、15年間ソニックを育てるということもあって、なかなか新しいことができなかった。

 プロペという会社を作り、新しいものを生み出すことを続けてきましたが、「IVY THE KIWI?」でも、スタンスは変わっていません。たまたま、ソニックを作っていない、ソニックを作らない会社なんですね。僕自身、ゲームクリエイターとして何をこの世に残していけるのか。ソニックだけじゃなくて、ソニックと「なんとか」と「なんとか」というようになりたいので、新しいものを作っています。ただ、子供が生まれたので、多少今までとは違うかもしれませんね(笑)。

編: 「NiGHTS〜星降る夜の物語〜」のイメージに近いかなとも思ったんですが?

 世界観の構築は近いかもしれません。新しいものを作る以上、1つ1つに設定があるという考え方は重要です。キャラクターメイカーとして、今後も大事にして開発していきたいです。

編: バンダイナムコゲームスさんと組むのは初めてですよね? 選んだ理由はどんなところにありますか?

中氏: 何社か見ていただいたのですが、最初に「面白いね」と言ってもらえたのが大きいです。評価をする人間がハッキリとそういうことを言うのは中々ないんです。ハッキリいうのは怖いですからね。その瞬間に一緒にやりたいと思いました。大事にしてもらえると思ったので。今は、チャレンジしてくれる会社は少ない。バンダイナムコゲームスさんはチャレンジしてくれる会社なんです。デベロッパーとしては非常に嬉しいことですね。挑戦を続けていってもらいたい。続けないとゲーム業界も面白くないですしね。

編: クリエイターと経営者の自分は相反しますか?

中氏: ビジネスと考えると相反すると思いますが、今はありがたいことに、いい状態にあり、なんとかなっています。こういった形の取り組みができるなら、新しいチャレンジをしながら、他のお仕事もさせてもらいたい。これはプロペをやっている良さです。

 セガにいたときでもできたかもしれませんが、自分が細かいところまで触ることができなかったんです。プロジェクトや部下が多すぎて、1プロジェクトのゲームに触れる時間が1週間に2〜3時間とかとなると、良くするのも難しい。今回は僕が1番プレイしたかもしれない、と言えるほどに開発できました。そういった意味でやりたかった仕事ができています。バランスが悪かったら、「中裕司、難しすぎるぞ!」などと評価してもらえればと思っています(笑)。

 「ぬるくない」、「ボタンを押していればクリアできるわけではない」、「やり応えがあって、上達していって、クリアする喜びがある」。そこがゲームの良さだと考えています。そういう魂の部分が抜けているゲームがたくさんある中、きちんと魂が入っているゲームに仕上がっています。最後までプレイしてもらえるとありがたいです。

編: 「誰にでもできる」という言い方には「簡単」と「単純」という言葉が浮かんできますが、この2つの言葉には違いがあると思います。そういう意味では本作が「難しい」と思う人もいますよね?

中氏: いるでしょうね。

編: 「ゲームって何?」という定義が受け手によって違ってきていると思いますが、どうですか?

中氏:  「ゲームじゃないもの」にしか触れていない人がいるんじゃないでしょうか。今、ファミコンがブームだったりしますよね。あれはファミコンがゲームだからです。チャレンジ精神があるんです。今はそれがないものもあります。映画のようなゲームがいっぱいありますよね。かったるいお話を50時間かけてプレイするような。

 2時間の映画でも「このお話なら1時間半でいいんじゃないか」と思うものがあるくらいなのに、50時間かかるゲームの中には「1時間、2時間でもいいんじゃないか」と思うこともあります。50時間じゃないといけない風潮が数年前に確立されてしまったことに起因していると考えていますが、ゲームの上手い下手、成功失敗があって、緩急がずっと50時間継続するなら楽しくていいと思うんですけど、大抵無理ですね。

 例えば、「ファンタシースターオンライン」はそれがうまくできた。正直、想定していたプレイ時間をはるかに超えて皆さん長い時間を遊んでいただいて、驚いたほどです。1カ月くらい遊べれば十分と想定していたんですよ(笑)。その「ファンタシースターオンライン」の流れを汲んだ「モンスターハンター」がすごくヒットされたのは、嬉しいですね。本当は自分が作ったものがそうなるのがベストですけどね。セガという会社は、最初にチャレンジするのは上手なんですが、それを育てていくことはなかなかうまくいかないんですよ。ずっと、そういうチャレンジを続けなきゃいけない。そういう点はセガの良さ、味であるとも思いますが。

 ゲームが楽しいのは、新しさがあったからなんです。最近は新しいものが少ない。何がいいのかわからない、どうでもいいゲームに時間を費やしたくない。プレイすることで面白さなど、何か得られるものがやりたいですよね。

編: 「ファンタシースターオンライン」のようなマルチプレイは、あの当時はオンラインで人とつながるだけでも面白かったです

中氏: あれはバランスがとれていたこと、コミュニケーションに注力できたのがよかった。ちょっとバランスはゆるかったですけど、最初のオンラインゲームとしてはよかったし、オンラインゲームプレーヤーを育成できたと思います。今の「モンスターハンター」、「ゴッドイーター」が盛り上がる地盤を作れたと思っています。

編: その一方、数分〜数十分でプレイできて、集中力が持続するギリギリのところで作られた本作は逆のベクトルですよね。短時間集中して、自分の高揚感を得られるという。2つの別方向は同じ人が発想して作るのは難しいことですか?

中氏: ゲーム作っている以上、色々作りたいですよね。実際色々なジャンルを作ってきました。同じものばかり作ると飽きるんですよ。違うジャンルを作ることで自分の幅が広がるので、ジャンルを決めずに作っているわけです。

 ユーザーから続編を作って欲しいという要望もありますが、「作ってもいいかもしれないけど、多分面白くないと思うよ」ということもあります(笑)。最初だから面白い。初めての楽しさを持続させるのは難しい。最初の楽しさに代わるものはないんです。同じ体験を続けたいなら続編もいいですけどね。

 2Dから3Dになった瞬間は違いがあって良かった。そういう点では、今ニンテンドー3DSには興味があります。3Dになったときの大きな弊害は、距離感がわかりづらいこと。そこが3DSで改善されるのか楽しみなんです。2Dの方が成功失敗がわかりやすい。

「ニュースーパーマリオ」が売れたのも、失敗、成功がものすごくわかるからですよね。3Dだとアバウトになってわかりづらく、アクションとしての面白さが減ってしまう。ソニックやマリオもその部分をうまくごまかしているが、上達ではなく、システムをうまく作っている。ユーザーもそう感じたから、「ニュースーパーマリオ」をプレイして、「ゲームってこうだよね!」と思ったはずです。半面、「新しいものが出ないのか?」と思った人は多かったはず。「IVY THE KIWI?」は、そういう人に遊んでほしい。

 「ニュースーパーマリオ」は懐かしさですが、「IVY THE KIWI?」は進化や新しさがある。本作に手を伸ばしてほしい。新しいゲームは手に取りづらいかと思いますが、だまされたと思って(笑)。自信がありますから。ただ、ボタンを押すだけじゃないゲームです。

編: 最後に読者へのメッセージをお願いします

中氏: 新鮮な新しい感覚のアクションゲームを作り出せたと思いますので、「最近ゲームが面白くないな」と思っている人に触ってもらいたいと思います。「ゲームってこういうもんだったよね」と。古いスタイルと感じるかもしれませんが、これがゲームだと思いますし、その中に新しい仕組みと操作性、今まで十字ボタンでしか動いていなかったアクションゲームの大きな進化が生み出せていると思います。

 もしかすると、ツタで送っていくようなアクションゲームがこれからたくさん出てくるかもしれませんし、他のタイトルでこの仕組みが広がるかもしれません。2点目をコントロールする「遊び」の最初になれればいい。そういう部分の「開拓している面白さ」がかなりあると思っています。普通のゲームよりもお安い分、手にとってもらいやすいと思うので、遊んでもらえると非常に嬉しいです。それに対してコメントもらえると自分たちの成長につながるし、ゲーム業界が今後どう進んでいくべきかが見えると思います。

編: ありがとうございました


(C)PROPE

(2010年 4月 27日)

[Reported by 佐伯憲司 ]