インタビュー

「FFXIV」大雪像「白銀の決戦」吉田直樹氏特別インタビュー

「『白銀の決戦』はユーザーのおかげ。今年もゲーム内外で盛り上げていく」

2月4日収録

 本日2月5日より始まった「さっぽろ雪まつり」の目玉となる“大雪像”に「ファイナルファンタジーXIV」が選ばれ、大通り会場には「ファイナルファンタジーXIV: 蒼天のイシュガルド」の名シーンを再現した大雪像「白銀の決戦」が展示されている。その引き渡し式およびプロジェクションマッピングの最終リハーサルについては、昨日レポートでもお伝えした通りだが、引き渡し式の直後に、「FFXIV」プロデューサー兼ディレクターの吉田直樹氏への囲み取材が行なわれたので、その模様をお届けしたい。

 今回の囲み取材はあくまで、「白銀の決戦」を対象にしたもので、ゲームとあまり関係ない話が多いが、吉田氏の隠しきれない“北海道愛”を感じていただければと思う。ちなみにインタビューでも吉田氏自身が語っているが、吉田氏はこれから“夏休み”を取り、地元のスキー場でスノボ三昧の日々を送るようだ。天候が良ければ真っ黒に日焼けした吉田氏の姿がPLLで見られるはずだ。

大雪像「白銀の決戦」は「引いても寄っても違った迫力で見れる」

「ファイナルファンタジーXIV」プロデューサー兼ディレクターの吉田直樹氏
大雪像「白銀の決戦」と吉田氏
夜はプロジェクションマッピングが楽しめる(参考記事

――去年、別件でさっぽろ雪まつりを取材したのですが、「FF」30周年記念でクラウドとセフィロスの大雪像を見て、感動したんですね。夜のプロジェクションマッピングもとても良くて、今年もぜひ見たいと思ってやって来ました。

吉田氏:来ていただいてありがとうございます。今年のプロジェクションマッピングも凄いですよ。「白銀の決戦」は、かなり凹凸があるものなので、雪像の凹凸を利用して、質感をそのまま被せています。まるで本物のように見せています。鎧の質感とか色を上からプロジェクションすることでそのままに見える。さらにそれが動きます。内容的には2分10秒ぐらいです。寒いので長さに既定があってこれぐらいですが、それでもエスティニアンとニーズヘッグの対決がキチンとプロジェクションされます。

――音はどうなりますか? 昨年は5.1chで大迫力でしたが。

吉田氏:「FFXIV」の音から、専用のものを作っています。音周りは今夜の最終調整で確認する予定です。

――そもそもの質問ですが、なぜ「FFXIV」の雪像を作ろうということになったんですか?

吉田氏:昨年、「FFVII」20周年ということで雪像のお話があって、今年またいろんな協賛とお話しする中で、去年話題になったので、「今なら最優先でお話しできますよ」ということだったので、「であればお話を」ということでスタートしたらあっという間に決まった感じです。「FF」として2年連続になりますし、僕が北海道民だからわかりますが、行政が絡むことですし、やはり大雪像には世界の名跡、建物が相応しいのではないか、企業やキャラクターというのはちょっと違うのではないかと思っていたんですけど、むしろ今はそっちへ変えて日本から世界に発信するという方針に変わっていっているということでした。そしたら決まった後に自衛隊が作っていただけることになったんですね。挨拶でもお話ししましたが、雪まつりで自衛隊が作る雪像はクオリティが高いことで知られていて、頼めば作って貰えるというものではないんです。

――大雪像というものはすべて自衛隊の方々が作っているのではないのですか?

吉田氏:違うんです。いま2隊の雪像部隊が自衛隊にいて、毎年持ち回りだそうで、毎年2つまでしか自衛隊は作れないんです。今回はその中でももっともプライドが高く、伝統のある部隊に作って貰うことができました。自衛隊の皆さんも、去年の「FFVII」の雪像に関われなかったのが悔しかったということでした。

 「白銀の決戦」は製作難易度が高くて、「どこまでやれるんだろう?」と言いながらやっていただきました。特にニーズヘッグの口を開けたままにするというのが相当難易度が高いみたいで、1週間、上顎の自重を支えながら、牙が落ちないように、壊れないように配慮して作らないといけないので。昨日話を聞いたんですけど、「誰かがもう閉じていい」、「もう閉じましょう」って言ってくれるんじゃないかって思いながら作っていたということでした(笑)。

昨年の大雪像。クラウドとセフィロスの対決を描いている
見所はニーズヘッグの顔

――この最高難易度の形というのは、吉田さんの提案ですか?

吉田氏:最初はヒューランとミコッテみたいなキャラクターの雪像を共同提案していたのですが、やっぱり生身のキャラクターは雪像で再現するのが難しくて、プロジェクションマッピングした際に、アニメっぽく見えてしまって、同じキャラクターでも鎧を着ていたほうが雪像としてはディテールを出しやすい。去年は、クラウド対セフィロスで人対人だったので、今回は巨大なモンスターの方がいいだろうということで、札幌でもあるし、クルザスに見立てて、「竜騎士対ドラゴンという方がいいのではないの?」と提案したら、自衛隊からとんでもないデザイン案が来て、逆に「本当に作れるの?」と(笑)。

――この現行のデザイン案は自衛隊からあがってきたんですね。

吉田氏:そうです。それがまた凄いクオリティで、アートチームに来ませんか?っていうぐらいの(笑)。エスティニアンも最初から竜の眼を持ってて、自衛隊内にも光の戦士いるんじゃないのと思うぐらい(笑)。決まってからは、どっちかというと無茶を言う側でしたね。たとえば、最初の案では、お互い正面を向いていたんですが、それを今のように「もうちょっと相対する形にして、双方斜めに切り出してください」と。言ってみてプロが無理だというなら、また案を考えればいいかなと、僕らは見る側の気持ちにたって色々提案させていただきました。

――完成品を見たときの感想を聞かせて下さい。

吉田氏:昨夜来て、近寄って見たときのディテールと迫力が凄いんですね。夜中メンテナンスされるそうなんですけど、メンテナンスのために裏側に細かく階段が掘られていたりして、逆に今度は引いてみたときニーズヘッグの背中側のディテールが全体として浮き彫りになってきて、引いても寄っても違った迫力で見られるというのは、北海道民として様々な雪像を今まで見てきましたけど、ひいき目もありますけど、凄いクオリティだなと思いますね。

――これまで見た中で最高ですか?

吉田氏:はい。隊員の皆さんも「俺たち、これ作ったんだよな」って言ってて、自分で作っててそこまで言えるのはなかなかないと思いますね。

――雪像の鑑賞については素人なのでどこが凄いのかわからない部分があるのですが、特に見て欲しいポイントはどこですか?

吉田氏:やはりニーズヘッグの顔周り、それから口元の上顎ですね。4トントラック650台分の雪って尋常ではない重量なので、常に自重が掛かっている状態を維持しつつ崩れない状態を保つというのは恐ろしく難易度が高いので、そこは是非見て貰いたいですね。あとは寄った時の迫力と、引いたときの絵としての凄さ、この両面を見て貰いたいですね。

――ちなみに現在進行中の「FFXIV」は「紅蓮のリベレーター」ですが、なぜ「蒼天のイシュガルド」をモチーフにしたんですか?

吉田氏:「FF」を知らない人でもドラゴンというのは誰でも知ってますし、「FFXIV」を知らなくても竜騎士というのは「FF」のアイコンで、知っている方も多い。誰が見てもわかりやすく、それでいて光の戦士達が見ても、雪の北海道をクルザスに見立てて、エスティニアンとニーズヘッグの戦いというのは、納得して貰えるかなと思ったんですね。この案は割とすんなり決まりましたね。「紅蓮にこだわらなくてはいいよ」と。

――なるほど「蒼天のイシュガルド」モチーフというよりは、「FF」の判りやすいアイコンを持ってきましたという感じなんですね。

吉田氏:そうです。PRという観点から言えば、「紅蓮のリベレーター」を持ってきたほうが良かったのかもしれないんですけど、さっぽろ雪まつりは世界中から観光客が来るので、わかりやすく「FF」をアピールすることも大事だなと。僕らが「FFXIV」を作っている時も、「誰が見ても『FF』に見えるように」ということは常に言っているので。

――この大雪像目当てでさっぽろ雪まつりに参加する人も多そうですね。

吉田氏:はい、行きの飛行機でもそういう方に会いました。引き渡し式にもいらしていましたね。さっき一緒に写真を撮ってきました(笑)。

――後ろから観ていましたが、参加されていた光の戦士達は、なぜ吉田さんがここにいることを知っていたんでしょうね(笑)。

吉田氏:引き渡し式があるというのは告知していましたから。でも時間は言ってなかったですね(笑)。20人ぐらいいらっしゃいました。地元民にとっては大雪像に、自分が遊んでいるゲームが選ばれて、しかも自衛隊の精鋭たちが作っているとなると、僕がプレーヤーの立場でも見に来てますよ。

こちらもライトアップのリハが行なわれていた旧台中駅の氷像

――北海道民にとって大雪像というのはどういう存在なんでしょう?

吉田氏:観光客の皆さんにとっては、「さっぽろ雪まつりの雪像のクオリティは凄い」という認識なんだと思いますけど、北海道民にとっては、生活の中に溶け込んでいる存在なんですよね。すすきのに呑みに行こうぜとなれば目に入りますし、出勤途中でも目に入る。身近なものなんです。だから、逆に、その身近なものに選ばれるというのは凄いことですし、「FF」だけどまだマイナーかもしれないオンラインゲームが選ばれて、かつここまでのクオリティに仕上げてくれるのは普通のことではないですよね。特に大雪像は、世界的なものだったり、日本が世界に発信したいものだったりします。去年だと「スター・ウォーズ」に「進撃の巨人」でしたよね。そこに名を連ねられたのは大きな価値だと感じています。

――スクウェア・エニックスさんとしてはこれで2年連続ですが、この流れだと毎年でもおかしくないですよね。

吉田氏:大雪像というのは非常に珍しい存在なので、毎年というのはないと思います。ただ、挑戦したいと言って貰えれば、「では、来年はもっと凄いものをやりましょうよ」とは言いたいですよね。

――2年連続「FFXIV」ということもあるかもしれない?

吉田氏:それは僕らではなく実行委員会が決めることです。ただ、大雪像が話題になって、見に来てくれた方、作った方、関係者の皆さんが喜んでいただけるなら、「また新たな挑戦をさせてください」という展開はあるかもしれませんよね。

――せっかくなので大枠の話も少しだけ伺いたいのですが、2018年が始まりましたが、今年は「FFXIV」にとってどのような年にしたいですか?

吉田氏:単独のタイトルとしては、ファンフェスを2年に1度、世界中でお金を頂いてやるということを行なっていて、昨年は単独のオーケストラコンサートで2万人を集めました。そしてまた今回単独で雪まつりで大雪像を展開してと、なかなか他のタイトルがやっていないようなことをやっています。

 大小様々な施策を実施して「『FFXIV』って色々やるよね」と言われますが、それはプレーヤーの皆さんからパワーを貰っているからできることで、今年は確実に拡張ディスクは出ないので、そういう様々な施策でゲーム内外を盛り上げたいですね。そしてファンフェスに繋いでいって、そこでまたビックリして貰えればなと思っています。今年は、言うなれば飛躍するための準備期間ですね。今仕込んでいるものはたくさんあって、発表していないものも山ほどあります。

――ゲーム内外というのは楽しみですね。たとえばゲーム外だとどういったことをやるんですか?

吉田氏:それはまだ言えません(笑)。今週末のPLLでいくつかお話しできると思うので注目しておいて下さい。

――私はひとつ勘違いしていたんですが、PLLは「白銀の決戦」引き渡し式の夜か翌日に実施すると思っていたんですが、翌週なんですね。吉田さんはまた東京と札幌を行き来するのですか?

吉田氏:もし仕事の調整が付けば、僕はまだ夏休みを取っていないので、このまま滞在し続けようかなと思っています。なんとか調整が付いたので、今夜プロジェクションマッピングの最終調整が終わったら、僕は夏休みです(笑)。

――おお、夏休み! どこが夏やねんという感じですが(笑)。

吉田氏:いやいや、夏休みという制度を使うということです(笑)。“板”から何から全部持ってきて、レンタカーも手配済みで、山に篭もります。ちなみに空港で板持っているところを光の戦士達に見られました(笑)。

――それは幸せそうでいいですね。スノボ好きってのはよく語ってましたもんね。地元で完全リフレッシュして、また今年1年頑張るという感じですか。

吉田氏:そうですね。骨折だけしないように気をつけます(笑)。

――これからさっぽろ雪まつりに参加する光の戦士達も多いと思います。北海道民として、これだけは食べておけというものは何ですか?

吉田氏:まずはなんといってもジンギスカンですよね。ラムが苦手という人にこそ食べてもらいたいです。確かに服に臭いが付くというところはあるんですが、臭みなどはまったくないので、美味しい店はたくさんあります。あとラーメンです。僕が知っているところは本当に次元が違うところがいくつかあります。

――次元が違うんですか(笑)。

吉田氏:違います。ただ、具体的な名前を出すのはさすがにマズいと思うので、キーワードだけお教えします。“マグロ豚骨”といって、マグロのアラで出汁を取っていて、ここでしか食べられません。「札幌 マグロ豚骨」で検索すればわかると思います。あとは味噌ラーメン専門店で、名前一文字の獣の名前が付いているところです。ここの大将とは、屋台の時代から知り合いで、札幌にすみれっていう有名なお店がありますが、そこからのれん分けをした人が3人がいるんですけど、その1人です。なかなか良い場所が見つからないからといってZEPP札幌の駐車場でしばらく屋台をやっていたという方です。凄いストイックで、味噌ラーメンしか出さない。あそこはヤバいです。ラーメンならそのどちらか、あるいは両方ですね。僕も全国でラーメン食べますが、やはり札幌は格が違うと思うので、ぜひ食べてみて下さい。

――ゲームについて1点だけ質問させて下さい。パッチ4.2について1つだけ確認したいのですが、パッチ実装直後に緊急メンテナンスになって、吉田さんがTwitterを通じてユーザーに謝罪をしましたよね。パッチ直後の緊急メンテというのは、オンラインゲームの恒例行事的な部分があると思うのですが、直接謝罪をした理由はなんですか?

吉田氏:まず、「FFXIV」で実装直後の緊急メンテというのは、まだこれで2回目です。他のオンラインゲームの印象を引きずっているのだと思いますが、僕の認識では「あってはならないもの」です。しかも、そのプレーヤーの皆さんから見て、4.0の極ラウバーン討滅戦と同じ症状に見えたため、「君ら何を経験したの?」と言われてもまったく返す言葉がないという状態で、これだけ楽しみにして貰っていたのに、またやってしまったからというのが大きいです。

――なるほど、4.0の大きなミスを繰り返してしまったんですね。

吉田氏:そうです。メジャーアップデートは、ユーザーの皆さんにとってもっとも楽しみな瞬間なので、実装直後にガッツリ遊べなかったら意味がないと思うんです。いつも以上に細心の注意を払ってリリースするのがメジャーアップデートなんですけど、ミスを繰り返してしまいました。

――もう3度目はないぞと?

吉田氏:はい。翌日緊急招集をかけて、ワークフローを変えるよと伝えました。僕の責任です。僕自身は「無理しない方がいいんじゃないの?」とは言っていたんですが、開発チームはできるだけ体験をあげたいといって、結構無理に詰め込んだ部分で、結果としてトリガーを引いてしまったので、そこは開発チームの熱情に流されずに冷静に判断しなければならないなと思いました。開発チームに「俺の判断がマズかった。俺はもう流されないからな」って(笑)。

――最後に光の戦士達にメッセージをお願いします。

吉田氏:今回、「FFXIV」として大雪像「白銀の決戦」をさっぽろ雪まつりに出展しました。さっぽろ雪まつりの大雪像は、世界中の雪まつりの中でも特にクオリティが高いことで知られています。その中に「FFXIV」が選ばれるというのは凄いことで、ぜひ間近でご覧になって楽しんでいただきたいなと思います。翌週には札幌でPLLもあります。まずは謝罪から始まると思いますが、エウレカの詳細も出しますし、サプライズも用意しています。どうぞ期待ください。

――ありがとうございました。