インタビュー

様々な想いを込めてヤマトが飛び、光る! 「輝艦大全 1/2000 宇宙戦艦ヤマト」

限界を見極めた上での設計、アンドロメダの巨大さを実感できる統一スケール

 今回の野口氏の「輝艦大全 1/2000 宇宙戦艦ヤマト」は、「ROBOT魂 機動戦士ガンダム 一年戦争 ver. A.N.I.M.E.」の成功が下地にある。このシリーズを展開するに当たり野口氏は「統一スケールでの重要性」を強く主張した。

こちらの写真は実際に部屋に置いた雰囲気や、他のものとの対比で商品の大きさを印象づけるために用意したという
アンドロメダとヤマトを並べたかった、と言う野口氏。実際に並べてみるとアンドロメダの大きさがわかる
ヤマトに対する自身の想いや、ユーザーがヤマトに寄せる思いを語る野口氏
右上は検討用に作った「ドレッドノート(主力戦艦)」。アニメではヤマトより小型の船になる予定で、今回はあくまで雰囲気を伝えるためのものだという。地球軍のみならず、ガミラス、ガトランティスの艦船モデルも見てみたい

 それまでコレクターズ事業部の商品は、ブランド内でも担当者や商品特性によってスケールはまちまちで、スケール表記もしてこなかった。そこに、ユーザーが複数の商品を並べて各メカの大きさを実感するための統一スケールでの商品展開、スケールを表記を野口氏は実現すべく商品を展開し、「輝艦大全 1/2000 宇宙戦艦ヤマト」でついに商品名にスケール表記を盛り込むことができたのである。

 「『ヤマト』ではこのスケールに合わせた商品展開はしてこなかった。低価格の『メカコレクション』というプラモデルは価格帯を合わせるために船の大きさが小さくなってしまっていたり、並べると大きさがバラバラだったんです。やはり僕はアンドロメダとヤマトを並べて、アンドロメダの大きさを実感してもらいたかった。やっぱりこう、こう並べたいんですよ。こういう遊びがこの商品の醍醐味です。この大きさだからこそ並べて、コレクションが楽しめると思います」と野口氏は、ヤマトの横にアンドロメダの試作品を置いてみせた。

 今回は試作品の「ドレッドノート(主力戦艦)」の試作品も見ることができたが、こちらはまだ検討モデルであり、大きさも設定とは異なるとのこと。この他にも野口氏は企画にあたり様々な艦船の検証用モデルを作っており、何らかの機会で並べて展示したいと語った。

 一方でスケールと造形の細かさのバランスはかなりの課題だと野口氏は語る。1/2000で、巨大な艦船を再現する場合、主砲すら細くて手で動かして壊してしまいそうな細さになってしまう。きちんと憂いバリューを持った強度を維持し、かつ商品に要求される「安全基準」も満たさなくてはならない。ユーザーが満足してくれる細さ、精密さを実現し、勝つ強度を持たせるという難問には試行錯誤したという。

 折れそうな所には軟質の素材であるPVCを使うという選択肢もあったが、金型への“流動性”が悪いため、細かい金型に流し込めず、精度が甘くなってしまうという。「商品の撮影写真を見たとき、“もっと大きいモデルだ”とユーザーさんに錯覚してもらいたかったんです。もっと大きいモデルのような表現をこのサイズで実現して、驚いてもらう、そういう精度を目指しました。このサイズ感の中では、圧倒的に細かい商品になると思います」と野口氏は語った。

 ヤマトの造形に関してはアニメ側の図面を徹底的に検証して、図面に狂いがないように注意を払って作っている。また多くの資料を手元に集め、それらを検証しながら作り込んでいっているという。「今回の商品は、本当に劇中に出てくるヤマトとかなり近いものになっていると思ってます」と野口氏は語った。さらに野口氏は試作品を手に持ちながら「現在の試作品は“光造形”のものです。これから工場で実際に作っていきます。製品はもっとシャープにできると思います」と言葉を重ねた。

 「輝艦大全 1/2000 宇宙戦艦ヤマト」にあたり、1度“限界までの細さ”を目指した試作品を作った上で、強度や安全基準、そして“量産”を考えて今回の試作品に落ち着かせたという。細かさを追求したものは、パルスレーザーの砲身などはシャーペンの一番細い芯のようになってしまい、触ると折れてしまうほどになったとのこと。こうした“限界”を見極めた上で様々な点を考慮しながら、実際の商品仕様を決めていったという。

 また、光に関して野口氏は、原作の雰囲気、ディテールを活かしながらどう光らせるかはかなり考えたという。アンドロメダに関しても光る箇所を多めに設定していこうと考えている。オリジナル的な要素も入るが、「ヤマト」の世界観を活かしていくことを第一として、どこまで、どのように光らせていくかを考えている。という。ユーザーのプラモデルの改造作例では、設定にない箇所にも電飾を仕込んでいる人も多く、そういった人達の考え方も影響を受けているという。

 光に関してはクリアパーツで光を導きながら小さな穴を開けて光を漏らさせる方法で光る箇所を多くしている。商品ではクリアパーツのシルバーの“差し色”を加え、反射効率をさらに上げ、試作品以上の光量を実現させたいとのこと。LEDそのものは白い光だが、発光させる部分にカバーで光に色をつけていく。艦橋部分は「宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち」の設定に従い青い光、エンジン部分はオレンジの光など、設定に近づいた色味で再現するとのことだ。

 ちなみに実現などを考えない方向でやってみたいモチーフを聞いてみたのだが、野口氏は旧「さらば宇宙戦艦ヤマト」に登場した「巨大戦艦」と答えた。しかしこの船は設定上全長12kmであり、1/2000サイズでも6mになってしまう。「60cmならばイベントとかでできたかもしれないですけど6mはなあ(笑)」と野口氏は答えた。

 また、ホビー事業部で野口氏は艦載機も手がけており、こちらにも思い入れがあるという。1/2000では艦載機はとんでもなく小さくなってしまう。こういったスケールの違う商品もシリーズが受けユーザーが望めば展開は考えていきたいと野口氏は語った。まず、「輝艦大全 1/2000 宇宙戦艦ヤマト」が市場でどのように受けるかで、その後様々な艦船を展開していきたいとのことだ。

 「宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち」は全7章の展開を予定している。「宇宙戦艦ヤマト2199」同様長いスパンでの作品となる予定だ。「輝艦大全 1/2000 宇宙戦艦ヤマト」シリーズも、短く展開するのではなく、長いスパンでの商品展開を目指した商品となる。野口氏は「ヤマト」への商品化にあたり、「どんなヤマトが良いか」、「ヤマトの立体物を作るとき、どんなギミックが欲しいか」を社内外の様々な人に聞き、リサーチを行なった。「輝艦大全 1/2000 宇宙戦艦ヤマト」は、欲しかったヤマトの立体物、とすべく様々なアイディアを実現しているとのことだ。

 最後にファンへのメッセージとして「作品と同じタイミングで商品を展開していきます。『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』を見ながら、『輝艦大全 1/2000 宇宙戦艦ヤマト』を楽しんでください。部屋を暗くして、商品の発光ギミックとアニメを見てもらいたいですね」と野口氏はコメントした。

 筆者も実は、「宇宙戦艦ヤマト2199」を当初は見られなかった1人である。旧作への思い入れや、やはり「ガンダム」以降の世代の違いを感じたところもあって、「ヤマト」はちょっと遠い存在となっていた。しかし筆者も「宇宙戦艦ヤマト2199」と「宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち」を見てみて、そして今回「輝艦大全 1/2000 宇宙戦艦ヤマト」試作品を見て、野口氏の話を聞くと、むくむくと「ヤマト」の立体物を手にしたいと思ってきた。

 筆者自身「ヤマト」には様々な思いがあることを今回実感した。小学校の時にお小遣いで買ったプラモデルや、テレビでワクワクしながら見た続編、その後の何度かのリバイバル、そして昨今のリメイク……改めて作品やメカの魅力を感じた。「輝艦大全 1/2000 宇宙戦艦ヤマト」は造形だけでなく光と台座の可動という“遊び”の幅も広がっている。今後の展開も楽しみだ。ヤマトを光らせて手に持ち、そして台座で色々な角度から眺めてみたいし、いずれはアンドロメダと並べてみたい。