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OGC 2009 モバイルゲーム関連セッションレポート
キーワードはコミュニティと海外発の新プラットフォーム

2月5日 開催

会場:ベルサール神田

 2月5日に開催された「OGC 2009」は、コミュニティとの繋がりを重視した方向性から、モバイル関連の講演が増加している。内容も、キャリア、勝手サイト、iPhoneなどの海外発プラットフォームと幅広く、ゲーム関連のカンファレンスではなかなか見られない着眼点の話題が展開された。

 オンラインゲーム開発者に向けてモバイル関連の説明をするため、内容は基礎的なところから入るものが多かった。しかしその割に講演時間が45分間と短いことから、全体的に駆け足な内容で、具体的な事例や対策について詳しく触れられなかったのがやや残念だ。



■ 「モバゲータウン」におけるコミュニティ管理

ディー・エヌ・エー モバイルポータル部部長の畑村匡章氏
 株式会社ディー・エヌ・エー モバイルポータル部部長の畑村匡章氏は、「ケータイ総合ポータルサイト『モバゲータウン』について」と題して講演を行なった。「モバゲータウン」といえば、勝手サイトの代表格というべき存在で、10代後半のユーザーの口コミから爆発的な人気を集めたサイト。基本的な方針は以前の講演でも語られているとおりだが、今回は最新のデータの公開に加え、コミュニティの管理という視点からの話題も採り上げられた。

 まず現状について、会員数は2008年12月時点で1,234万人。2007年末に比べると400万人近く増えており、依然としてコンスタントに会員数を伸ばしている。ただユーザー属性は変化しており、2006年時点では69%を占めた10代のユーザーは、現在は36%になり、20代が41%と逆転している。これはテレビコマーシャルなどを行なったことに加え、根本的に10代の人口が少なくなっていることも影響しているという。事実、16歳から19歳の男性では、全人口比で6割から7割の数のユーザーを抱えており、比率的には以前よりも伸びている。

 本題のコミュニティについては、「モバゲータウン」ではSNSだけでなくゲームにもアバターが登場しており、これを絡めた仮想世界でのコミュニケーションが重要なポイントだという。「『モバゲー』の中で知り合った友達と喋ったりしていて、現実世界の自分を意識せずにコミュニケーションできる。『2ちゃんねる』も日常から吹っ切れたコミュニケーションができるから人気が出るのでは」と語った。

 そういった匿名性の高いコミュニティをどう管理するかということについては、サークル(ユーザーがSNS内に作れるコミュニティチャンネル)の立ち上げ時からのポリシーとして、サークル管理人にコントロールを任せているという。管理人には記事の削除権も与えられ、また副管理人も10人まで設定できる。かなり自由度は高いが、出会い系サイトとして使われないよう、モバゲーの外で会うオフ会などは禁止しているという。

 他にも、ユーザー同士で質問と回答ができる「質問広場」や、自作の小説や楽曲を公開して他のユーザーに評価や意見がもらえる「クリエイターコーナー」などがある。こういった部分の管理は、システム対応、人的対応、ユーザーとの協力、啓蒙活動という4つの柱で対応しているという。

 まずシステム的な対応については、禁止ワードやメールアドレスが含まれている場合は、書き込みできないようにしている。また「タヒね」、「氏ね」といった単語が含まれる書き込みは、自動的に運営者に通知される。さらに、過去にルール違反となった書き込みの内容を、SPAMメール対策でよく使われるベイジアンフィルタの仕組みで学習させ、自動的にピックアップする仕組みも用意している。他にも18歳未満のユーザーは、年齢に3歳以上の違いがあるとメッセージを送れない仕組みになっている。

 次に人的対応については、総勢400名による24時間365日の監視体制を整え、前述のシステム的にピックアップされたもののチェックとともに、無作為チェックでシステムの制度を随時確認する。投稿画像については全件目視で審査される。

 利用者との協力関係としては、サークルの管理をユーザーに任せているほか、ルールを違反しているユーザーを通報できるシステムを実装している。また電話相談窓口も設けているという。

 最後の啓蒙活動については、啓蒙コンテンツ「モバゲータウンの歩き方」を常時表示したり、投稿時に注意を促すなどの一般的な対策を実施。さらにクイズ形式で理解を深める啓蒙コンテンツを用意するなど、ゲーム的な見せ方でもアプローチしている。

 最後に、現在のゲームポータル戦略について語られた。以前はゲームをきっかけにして集客するというスタイルだったが、現在はそれに加えて、基本無料でアイテム課金型の本格ゲームを展開し、ゲーム自体での収益も創出している。正式版開始からわずか17日で100万会員を突破した「釣りゲータウン」などミリオンヒットが複数出ており、売り上げも順調に推移しているという。今後も「ザ・コンビニ ネットバトル」などの新作を随時展開する。畑村氏は「アイテム課金ビジネスが隆盛で、今後も伸びていくと見ている。モバゲーの会員規模から見て、モバイルゲームコンテンツ市場のシェア10%を目指す」としている。

「モバゲータウン」は1,200万ユーザーを突破 全体での10代の比率は低下しているが、全人口比では以前よりも増えている。若年層に弱くなったわけではない
コミュニティの管理は4つの柱で動いている 新たに始めたゲームポータル戦略では、既に複数のミリオンヒットが登場している



■ ソフトバンクモバイルが語る、オープンウィジェット戦略の可能性

ソフトバンクモバイル コンシューマーサービス企画部部長代行の桑原正光氏
 ソフトバンクモバイル株式会社コンシューマーサービス企画部部長代行の桑原正光氏は、同社が2008年末から展開を始めた「モバイルウィジェット」についての戦略を紹介した。

 「モバイルウィジェット」とは、待ち受け画面に小型のアプリケーションを配置しておき、素早く情報にアクセスしたり、待ち受け画面を自由にカスタマイズできたりする機能。ハーフXGAのタッチパネルを搭載したことで話題を呼んだ「931SH」を始め、2月から3月にかけて発売される新端末のうちの数機種が対応している。

 ウィジェットと呼ばれる機能は、NTTドコモやauも展開しており、ソフトバンクモバイルは最後発となる。ただし後発なりの強みもあり、3キャリアの中で唯一、開発環境がオープンになっている。

 具体的には、「モバイルクリエイション」というサイトにユーザー登録すれば、技術情報が得られ、すぐにでも作成を始められる。ウィジェットはAjaxとFlashを組み合わせて、リッチな表現ができるとしている。NTTドコモはJavaベースのアプリ、auはそもそもプラットフォームがオープンではないという状態で、自由に制作・公開できるのはソフトバンクモバイルだけということになる。配信も、ソフトバンクモバイル公式サイトとなる「ウィジェットストア」だけでなく、自社サイトにも自由に設置できる。

 ほかにも最短1時間ごとの自動通信が可能な点や、モバイル独自APIも多数開放していること、プラットフォーム利用料が不要であることなど、機能面でのメリットも複数紹介された。

 また桑原氏は、ユーザーの利用動向についても紹介した。対応機種を持つユーザーの68%が毎日ウィジェットを使用しているというデータを示し、「待ち受け画面をオープンAPI化しているのが影響しているのでは。無料のウィジェットが多く、目新しさがあることもユーザーに好まれている」と説明した。

 対応端末についても、フラッグシップモデルとなる9xxシリーズだけではなく、8xxシリーズでも展開していることをアピール。また今後はVodafone、China Mobileと連携して仕様の共通化を促進中で、「詳細は語れないが、近日何らかのアナウンスをする。このウィジェットを作ると世界で広く対応できるという環境を整えたい」としている。

 桑原氏は「コミュニティサイトにとってウィジェットは必須。携帯端末側のAPIオープン化により、モバイルの新たな勝ち組が出現する可能性がある。『モバゲー』はFlash Liteの普及によって爆発的にヒットしたが、同様にMobileAjaxで新たなビジネスが生まれる可能性がある」と、オープンであることの利点を強調した。

 桑原氏は最後に、ウィジェットコンテストを紹介。賞金総額1,000万円のコンテストで、グランプリ作品には賞金200万円が用意されている。誰でも制作できるというオープンさを活かしたキャンペーンで、さらにサービスの知名度を高める狙いがあるようだ。

開発が簡単で自由度が高く、ユーザーの目にも触れやすいという点をアピール 他社のウィジェットと比較し、さまざまなメリットを強調 今後は海外端末との仕様の共通化を進めていくという



■ 世界の流れに乗り遅れた日本のクリエイターに警鐘を鳴らす

ブレークスルーパートナーズ マネージングディレクターの赤羽雄二氏
 ブレークスルーパートナーズ株式会社 マネージングディレクターの赤羽雄二氏は、FacebookやiPhone、Androidといった、昨年から米国で急拡大している新たなアプリケーション流通プラットフォームについて講演した。内容は大半がFacebookにおける“ソーシャルゲーム”の重要性を語るものとなった。

 Facebookは、全世界で1億5,000万人以上のユーザーを抱える超巨大SNSで、北米ではMySpaceを抜き去って、さらに伸びを見せるという人気の高さを誇る。またFacebook上で動作するアプリケーションのAPIを公開していることから、商用ゲームも多数展開され、大きな利益を上げるベンチャー企業も登場しているという。赤羽氏はFacebookを始めとしたSNSを「5億人のユーザーを持つ、ハンディキャップや参入障壁もない、いまだかつてないプラットフォーム」とそのパワーを端的に表現した。

 ところが日本では、サービスはしており自由に登録できる状態にあるが、知名度は低い。赤羽氏は、Facebookについての紹介から始めつつ、特にデベロッパーがどうすればいいのかを語った。

 Facebookで一番人気のポーカーゲームは、友人だけでなく、知らない人とも遊べるオンラインカジュアルゲームである。このゲームを制作したZyngaという企業は、2007年7月創業のベンチャー企業だが、このポーカーゲームにおけるチップを20~100ドルで販売するというアイテム課金により、大きな利益を得ているという。収益モデルはさまざまで、アイテム課金のほかにも、一定料金を取っているものもある。

 またFacebookを使った広告・宣伝も行なわれている。例えばハンバーガーショップのBurger Kingは、「Whopper Sacrifice」というアプリケーションを展開した。これはFacebookの友人を10人削除すれば、Whopper(ハンバーガー)が無料になるというもの。これは米国でも大きな話題になったが、Whopperのために削除された友人のリストが公開される仕組みだったため、Facebookがプライバシーの侵害にあたると判断してこのサービスを停止した。

 こういった自由度の高さから、iPhoneなどと並ぶ新たなプラットフォームと認知されているFacebookなのだが、日本からの展開はほとんどなく、赤羽氏が知る範囲では、株式会社ユードーの「AeroMusic」だけだという。そこで赤羽氏は日本からの展開を支援するものとして、4月に開始予定の「dangoプラットフォーム」を紹介。作られたゲームをdangoプラットフォームにアップロードすると、自動的にFacebookに展開できるというシステムで、課金システムも含めて対応できるという。

 ではFacebookにおいて求められているゲームはどんなものか。これについて赤羽氏は、「日本のゲーム開発者から見ると、Facebookのゲームの質は低く見えるかもしれない。しかし“ソーシャルゲーム”としての力点は別。ゲームはおまけで友達を増やし、会話を増やすことに注力している。ポイントは友達とのコミュニケーション向上の観点から徹底的に企画を考え抜くこと」と開発のポイントを語った。

 講演の最後に赤羽氏は、「Facebookは中小ゲームデベロッパーが下請けから脱出して自社の事業を確立できる非常に稀なチャンス。会社の規模や実績は無関係に、世界5億人に販売できる」とプラットフォームの力を再度強調し、開発者に早期に参入すべきだとメッセージを送った。

世界で5億人以上のユーザーを抱え、しかもオープンという希少なプラットフォームであることを強調 Facebookで1番人気のポーカーゲーム。ゲーム内で賭けるチップを販売している。ちなみにチップは現金には戻せない 収益モデルはさまざま。中には広告収入のみや、マーケティング目的のものもある
1位のポーカーゲームを作ったZyngaは、設立から1年半ほどの若い企業 Burger Kingの「Whopper Sacrifice」は批判もあったと思われるが、プロモーションとしては強烈な印象を残した 日本産のFacebookアプリケーションは、ユードーが提供している程度で、ほぼ皆無の状態



■ ユードー南雲氏を加えたパネルディスカッション

ユードー代表取締役の南雲玲生氏
ユードーが最近配信したiPhone用アプリ。音楽系アプリが中心だが、他社開発の「ドアラにタッチ」の代理配信も行なっている
 赤羽氏の講演を踏まえて、ユードー代表取締役の南雲玲生氏も参加し、パネルディスカッションが行なわれた。モデレーターはIGDA日本代表の新清士氏。

 ユードーは社員約10名の小さなゲーム会社だが、FacebookやiPhoneなど、赤羽氏が挙げたプラットフォームに対しても早くから参入している。赤羽氏が言う、自社の事業を確立した小規模ゲームデベロッパーの象徴のような存在である。以前は食玩を手がけるなど、異業種の企業と組んで幅広く事業展開していたが、現在は健康と音楽という2つのテーマに絞り込み、新たなプラットフォームにも果敢に挑戦している。

 まず南雲氏に対し、iPhoneの参入と収益は魅力的だったかという問いに、「非常に魅力的。参入から3カ月で250万ダウンロードの実績を得た。収益性はここ3カ月でかなり伸びてきており、人員を割く価値はあると思う」と述べた。またFacebookについても、「米国のゲームを研究したところ、SNSゲームにはすぐに参入しなければいけないと感じた」という。

 iPhone参入の障壁は何かという問いには、「マーケティング。1~2カ月かけて開発したものが当たらなかったらリスキー。100のボリュームのものを1つ出すのではなく、10のものを10個、1のものを100個出すという形も考える必要がある」と語った。

 赤羽氏に対しては、なぜFacebookが日本で無視されているのか、という端的な質問が向けられた。赤羽氏は、「島国根性と英語の苦手意識。オープンソースのコミュニティは全部英語で、そこで脱落している。5億人のユーザーは基本的に母国語を使うが、ベースは英語。そこはどうにも不利な状況にある」と答えた。

 Facebookで日本向けのコンテンツはありえるかという問いには、「そもそも日本の話ではなく、殻を破って世界に発信しましょうということ。海外の企業も頑張っている。日本人を相手にしてもしょうがない」と答えた。またコンテンツについても、「米国をターゲットにすることで、日本よりも欧米文化に近く、欧州や南米にも通じるものができるのではないか」と述べ、徹底して米国を狙うことを薦めた。南雲氏も同様で、「1990年代に日本車のデザインが急激に変わったのは、世界に向いてデザインをしたため。ゲームも同じではないかと思っている」と語った。

 また赤羽氏は、Facebookなどへの参入について、「今、下請けでやっているものを全部やめろというのは難しい。iPhoneやFacebookは数週間やればいいゲームができる可能性がある」とし、まずは片手間でも開発を始めることを薦めた。

 赤羽氏はセッションとパネルディスカッションを通じ、「ゲーム開発のノウハウを持つ日本のゲームメーカーであれば、欧米のベンチャー企業にできたことができないはずがない」ということを繰り返し語っていた。ただ、Facebookなる欧米の新規プラットフォームなりで人気のコンテンツにはどういった理由があるのか、といったゲーム開発に踏み込んだ具体性のある話題はほとんど聞けず、メッセージだけで終わってしまったという感覚は否めない。やはり何よりも講演時間の短さが惜しいところだ。

ブレークスルーパートナーズのホームページにて、赤羽氏の講演資料が公開されました。

□ブロードバンド推進協議会のホームページ
http://www.bba.or.jp/
□「OGC2008」のホームページ
http://www.bba.or.jp/ogc/2008/
□ディー・エヌ・エーのホームページ
http://www.dena.jp/
□ソフトバンクモバイルのホームページ
http://mb.softbank.jp/mb/
□ブレークスルーパートナーズのホームページ
http://www.b-t-partners.com/
□ユードーのホームページ
http://www.yudo.jp/
□関連情報
【2月5日】BBA、オンラインゲーム&コミュニティサービスカンファレンスを開催
コミュニティエンターテインメント全盛時代にゲームパブリッシャーが取るべき1手とは何か!?
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20090205/ogc_01.htm
【2008年12月3日】ユードー代表“dj nagureo”南雲玲生氏インタビュー
世界最小パブリッシャーがiPhoneで発売本数世界一を目指す
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20081203/yudo.htm
【2007年9月29日】DeNA畑村氏、「モバゲータウン」のビジネスモデルを説明
ゲームは入り口と話題作り、根幹は新世代広告メディアにあり
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20070929/mbga.htm

(2009年2月5日)

[Reported by 石田賀津男]



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