16世紀の興奮とロマンが蘇る海洋冒険MMORPG
大航海時代 Online |
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リスボンの波止場にて。沖合いに停泊する巨船を眺めながら、いつかあんな船で遠くまで航海したいと心に誓うのである |
MMORPGの王道といえば「剣と魔法の世界」だ。見ず知らずのプレーヤー同士がコミュニケーションしながらゲームを楽しむためには、言わずもがなの「お約束」が必要である。たとえば、魔法使いは強力な魔法を使えるが体力はなく、戦士は屈強でモンスターの攻撃を受け止めることができるが便利な魔法は使えない、といった暗黙の了解事項である。
プレーヤーたちはこれらの「お約束」を事前に了解しているからこそ助け合い、時には敵同士となってゲームを楽しめるのだ。「スター・ウォーズ」がMMORPGとして世界観の形成に成功しているのも、連綿と続いてきた映画シリーズに登場した「お約束」がベースになっているからに他ならない。誰もが知ってる「お約束」の数々が、良質なMMORPGの土壌となるのだ。
「お約束」といえば港の酒場。いつも血気盛んな船乗りたちで大賑わいだ。クエストの情報を手に入れるのにも役に立つ | ギルドマスターはスキル取得や転職などの相談に乗ってくれる。ゲームを始めたらまず最初に話しかける人物だ | 夕日が落ちていく水平線に向かって船を走らせる。このゲームでしか味わえない冒険心を掻き立てるグラフィックだ |
■ 「海洋冒険物」という新しいアプローチのMMORPG
最初に入港できる町はごく限られている。名声をアップし、イベントをクリアしていけば、入港許可は増えていく |
古い映画や小説が好きな人ならば、「宝島」、「ホーンブロアー」、「キャプテン・ドレイク」に「ピーターパン」などなど。そんなコケむした古い作品なんか知らないよ、という若い人でも、海洋冒険物のおいしい部分を借用した「天空の城ラピュタ」や「キャプテン・ハーロック」なんかのアニメを例に出すと、ピンと来る人も多いだろう。
長いエンターテインメントの歴史の中で練り上げられてきた「お約束」を数多く持つ「海洋冒険物」の世界。しかし、意外と本格的なMMORPGで素材として扱われることはなかった。ファンタジー、SFが先行してきたMMORPGにようやく現れた新しい世界観。それが「大航海時代 Online」が採用した「海洋冒険物」なのだ。さっそく、この古いようで新しいMMORPG「大航海時代 Online」の大海原に繰り出してみることにしよう。
船乗りたちが集う交易所前。遠い国から運んできた特産品から戦利品まで、様々なモノが取引されている | 航海に出る前には必ず水、食料などの補給を行なうこと。補給を忘れて大海原に出てしまえば、餓死する恐れもある | 造船所の親方の周囲には、船をグレードアップしようとするプレーヤーで、いつもごった返している |
■ 基本はギルドから得られるクエストの遂行
依頼請負画面。難易度によって報酬額は違ってくる。中には「修羅場の果て」のような、町人たちの世話を焼くだけのクエストもある |
この世界観を楽しんでやろうと思うなら、どの職業であれクエストを精力的にこなすべきだ。海洋冒険物のお約束がたくさん詰まっている多種多様なクエストにこそ、「大航海時代 Online」の醍醐味が凝縮されているからだ。
最初は、珍しい品物を探してきてくれ、とか、特産品を隣の港町に運べ、とか、ならず者を討伐せよ、とか、などといった簡単なクエストからスタートすることになる。しかし、機械的にクエスト内容が課せられるだけでなく、港町の登場人物(NPC)からの頼み事という形になっていて、それぞれに小さなストーリーが織り込まれているのが楽しい。
中でも筆者は「兄が海賊になろうとしていることを知って傷心する少年の願いを叶えるため『海賊の手引き船』をやっつけて兄を更生させる」というストーリーがお気に入りだ。
お金を稼ぐことにひたすら注力するなら、交易をガンガンこなすべきだろう。ある町で手に入れた特産品を別の町に運んで利益を上げる「交易」。これがこのゲームの根幹を成すシステムだ。より安く仕入れ、より早く大量に運び、より高く売る。港から港へ移動するのなら、そのルートに併せたクエストを請け負っておくと一石二鳥だ。
お金が貯まってくれば、船のグレードアップが可能だ。補助帆を追加したり、大砲を強化したり、装甲を厚くしたり、といった改造もよし。また、サイズの大きな船に買い換えるのもいいだろう。港町にある造船所で購入するのもいいが、造船技術を持つプレーヤーと交渉すれば格安で手に入る。
筆者もなけなしの貯金を無駄にしないように、安く作ってくれるというプレーヤーを探して船製作を依頼してみた。波止場で釣りでもしながら10分ほど待っていると、職人から連絡が入った。筆者がオーダーした通り「速度重視」の船ができ上がりである。これが結構感激するものなのだ。
「大航海時代 Online」は、船をグレードアップすることが最大のポイントだ。船がグレードアップすれば、長い航海にも出られるようになるし、怖い海賊が出没する海域にも行けるようになる。そうすれば、新たな交易ルートを使えるようになり、新しいクエストに挑戦できるようにもなる。いい造船職人と知り合いになることは、このゲームの重要なコツといえるだろう。もちろん、自分が造船職人になるのも悪くない。
とにかく、ゲームの序盤は小さな交易や小さなクエストを着実にこなしていくことが肝心だ。最初に船をグレードアップするころには、操作方法にも慣れ、「大航海時代 Online」の世界観にも馴染んでくるだろう。この導入部分が緩やかさが、MMORPGが初めてだというプレーヤーにもすんなり入っていける間口の広さを提供している。
筆者の記念すべき2隻目の船「ジェニー2世」。必死で貯めたお金でオーダーメイドしただけあって愛着はひとしお | 船の兵装も様々な組み合わせでセットアップできる。もちろん、強力な武器はそれなりの船体がなければ装備できない | リスボンの大金持ち「バルディ頭取」との会談。これはあるクエストの聞き込みに訪れた際の会話である |
■ 多彩なクエストがやめられないとまらない
あちこちの港を行き来して情報を獲得しなければ完遂できないクエストは多い。立ち寄った港町で交易品を売買すれば、一石二鳥で儲けが出る |
筆者が特にオススメしたいのは「上陸パート」のあるクエストだ。冒険家が得意とする「探索」や「採取」、「開錠」などのスキルを使って、地中などに埋まった宝を発見するクエストがその典型だ。宝の地図に書かれた情報を元に上陸ポイントを探し、宝のありかを探索して掘り起こすというものだ。筆者はお目にかかることはできなかったが、沈没船の引き上げ、なんていうクエストもあるようだ。
もちろん、1人で掘り起こして宝を独り占めする、というのも楽しいだろう。しかし、腕に覚えがなければ、宝の在り処までたどり着くのは難しい。上陸ポイントには、ならず者たちが徘徊し、見つかれば走り寄ってきて切りかかってくるからだ。できれば海事系の仲間とともに上陸した方がいいだろう。ならず者たちを倒していけば、宝だけはなく戦利品も期待できる。
「大航海時代 Online」は、航海の演出に大きな弱点がある。せっかく美しい3Dグラフィックスでキャラクタを表現できるにもかかわらず、海上に出てしまうと船のグラフィックスしか表示されないのだ。サンセットの照り返しを受けて海原を滑るように走る船のグラフィックは美しい。しかし、船の大きさや形はまだバリエーションが限られるため、海上では個性をアピールしにくく、せいぜい、帆の色やエンブレムくらいしか差別化のポイントがないのが現状なのだ。
海上でのグラフィックに対して上陸パートのあるクエストでは、プレーヤーのこだわりを細かく反映したキャラクタが走り回ってあちこちを探索する。お気に入りの服や思い入れのある装備に身を固めた自分のキャラクタが、ならず者たちと肉弾戦闘を繰り広げる上陸パートは、気のあった仲間とのプレイに最適だろう。戦闘に勝利したときのガッツポーズはちょっと間が抜けていてウケる。
いずれ船をもっとカスタマイズできるようになれば、船だけで個性をアピールできるようになるだろう。キャラクタの装備のカスタマイズもこれからもっと個性を発揮できる要素が増えていくだろう。なにせこのゲームのキャラクタは、一癖も二癖もある「海の男」たちだ。船も服装も唯一無二の歌舞伎っぷりを見せ付けたいはずなのだ。さらなるアップグレードに期待したい。
仲間と艦隊行動中の筆者。筆者の船だけがあまりにも貧相なのでからかわれているが……。その後、資金提供をうけてグレードアップ完了 | 上陸しての戦闘画面。宝の在り処にたどり着くまでは、こうした戦闘を繰り返す場面もあるだろう | 探索スキルを使ってクエストの対象物を掘り起こしたところ。上陸ポイントでの探索は「冒険者」の晴れ舞台だ |
■ 戦うほどに奥深い海上戦の魅力とは!?
海上に薄く表示されている扇形のエリアが「射程圏」。敵の動きを読んで舵を切らなければ、有利な位置を取れない |
また、敵船に乗り込んで白兵戦を挑む「接舷」戦法も存在する。船員の数とその戦闘能力が問われる白兵戦は、関係するスキルを鍛え上げれば、船体そのものの性能に差がある場合でも勝機を見出せる。そうまさに「機動戦士ガンダム」においてホワイトベースに白兵戦を挑むランバ・ラルのように。もちろん、すたこらさっさと逃亡する、という選択肢もある。交易商人や冒険家が戦闘にこだわる必要はない。
艦隊同士の戦いも様々な戦術が考えられる。敵艦隊の旗艦を狙うのか、それとも弱い船から片付けていくのか。どのような隊形を組めば敵艦隊に対して有利な位置を取れるか。自艦隊の弱い船を守るにはどのような隊形を組むべきか。プレーヤーたちは、戦いの中で艦隊戦の戦術を、日夜練り上げ続けている。
艦隊戦の究極の形として、「大海戦」イベントも行なわれる。「大航海時代 Online」の世界にはプレーヤーが所属する国として「イスパニア」、「ポルトガル」、「イングランド」の3カ国が存在する。「大海戦」とは国同士が威信をかけて艦隊戦を行なう一大イベントである。戦果によって、特定の港町に対する国の影響力が変化するというから、各国ともに気合が入る。
大海戦イベントは「お祭り」の要素も大きいので、それほど勝ち負けにこだわる必要はないだろう。イベント会場となる海域に船が結集する姿を見るだけでも、その値打ちはある。これからも定期的に大海戦イベントは行なわれるだろうから、ぜひノリノリで参加して欲しい。
「大航海時代 Online」では、「危険海域」と呼ばれる他プレーヤーへの攻撃が認められるエリアが存在する。プレーヤーが操作する本当の意味での「海賊船」と遭遇する可能性があるのだ。しかし、危険海域での航海が必要なクエストは得られる経験値や報奨金が大きい。大変悩ましいバランスである。もちろん、戦力に自信があれば「海賊退治」に出掛けてもいいわけだ。
ソロでは行けない危険な海域でも、仲間とともに艦隊を組んで進めば勇気もわいてくる。水や食料も分け合いながら…… | ソロで「危険海域」に迷い込んでしまったら、一目散にUターンするか、最短距離を突っ切るか…。ドキドキである | プレオープン版の総仕上げとして行なわれたポルトガルvsイスパニアの「大海戦」。会戦海域には、両国の船がひしめき合っていた |
■ 遊び方の間口が広いのが「大航海時代 Online」と強み
ポルトガルのイベントキャラクタ「アルヴェロ」と「ポワン」。シミュレーションゲーム時代から「大航海時代」の顔だ |
逆に上昇志向のプレイだけでなく、まったりとプレイしたい人もいることだろう。「大航海時代 Online」は、メインストーリーともいうべき「イベント」が、プレーヤーの名声が上がるのに合わせて発生するのも特徴的だ。所属国固有のキャラクタが登場して、プレーヤーを新しい冒険に導く役目を果たしてくれるのだ。
他のプレーヤーと艦隊を組んで挑む難易度の高いクエストだけでなく、イベントや小さなクエストも大量に用意されたゲームデザインは、ソロプレイをしっかり楽しんでほしいという意図を感じる。コアな「廃人」プレーヤーと、短時間で楽しみたいカジュアルプレーヤーの両者が楽しめるバランスが取れているのが、「大航海時代 Online」の長所だといえるだろう。
操作が難しいのでは? 仲間ができないのでは? など不安に思って、いまだにMMORPGに手が出ない人もいるだろう。しかし、ソロでもじっくり楽しめる要素がたくさんある「大航海時代 Online」は、これからMMORPGを始めてみようというプレーヤーにも安心して飛び込める仕様になっていることを、改めて強調しておきたい。ソロプレイで楽しんでいるうちに、心強い仲間もきっと見つかるはずだ。
すこし余談になるが、筆者がプレオープン版をプレイしていて感じたのは、かなり多くのアジア系と見受けられるプレーヤーが参加している点だ。彼らの多くは漢字のキャラクタ名で、漢字と英語混じりのチャットをしているのでわかるのだ。「大航海時代 Online」が、海外のゲーマーにも注目されている事実を肌で感じた。海外展開される日もそう遠いことではなさそうだ。
これまでのMMORPGサービスといえば、日本産はきわめて少なく、米国産か韓国産か、という二者択一の様相を呈していた。「海洋冒険物」という新機軸の日本産MMORPGが、海外のゲーマーに対して強くアピールしていく点は、実に興味深い。コーエーの戦略としても、「大航海時代 Online」を前面に押し立てた海外進出を予定しているというから、ゲームビジネスという視点から見ても注目は必至だ。
名声が上がるとともに進んでいく「イベント」。どこまで進んだかは、イベントウィンドウでいつでも確認できる | リスボンからセビリアへ書状を届ける筆者。返事をリスボンに持ち帰れば、地中海への道が開ける | クエストの難易度が上がってくると、情報収集が何段階にも増えていく。この例は、まだ簡単な部類に入る |
■ 水平線の向こうへ。16世紀のロマンを感じろ!
船を失った場合に備えて、保険に入っておくのもいいだろう。そもそも「保険」という概念は、大航海時代の船乗りたちによって作られたという |
そもそも「大航海時代」とは、アジア原産の香辛料を交易しようとしたポルトガルやスペインが、イタリアとイスラム商人が制する地中海経由を避けた、新しい航路を見つけ出そうとする試行錯誤から出発している。アフリア大陸西岸が南へ南へと開拓し、やがて最南端の喜望峰を経て東岸に到達し、アジアへの航路を開いてしまうという「本当にあった話」なのだ。
プレオープン版でも、野心あふれる冒険者たちによって、アフリカ大陸西岸の港町が次々に発見され、東岸の一部にまで達した。また地中海ルートは黒海沿岸、北海方面は北欧諸国へと一気に広がっていった。まさに大航海時代を追体験である! 今後、エリアが追加されていけば、新大陸の発見や世界一周も可能になる日が来るかもしれない。
「大航海時代 Online」というゲームには、シミュレーションゲームの「大航海時代」シリーズという「原作」が存在する。クエストをクリアしていくシステムは似ているが、実際に海上で操船して港を目指す感覚は、より「本物」に近づいたのかもしれない。水平線の向こうを目指す、という根源的な冒険心に訴えかけてくるからだ。
マゼランが5隻の艦隊を率いて世界一周に出発した時、船員はおよそ250名だったといわれる。しかし、世界一周を遂げて戻ってきた船は18名の船員を乗せた1隻だけ。それほど向こう見ずで危険な冒険だったのだ。ファンタジーやSFの世界のように、テレポーテーションは存在しない。行き先を指定すれば自動航行してくれる便利な船もない。この移動の困難さすら、「ロマン」として面白がれそうだと感じたなら、「大航海時代 Online」は間違いなくオススメだ。
大都市の交易所近くでは、プレーヤーたちが集まって露店を開く。値段とタイミングを見極めて、お買い得な品をゲットしたい | 「レシピ」を手に入れればアイテムを生産できる。相応のスキルを持っていなければうまくいかないが…… | リスボンの酒場の看板娘「クリスティナ」の気を惹こうとする筆者。惜しげもないプレゼントこそ、海の男の心意気だ! |
(C)2005 KOEI Co.,Ltd.
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(2005年3月16日)
[Reported by 下野 宏]
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