★ PS2ゲームレビュー★


純粋なアクションゲームとなったシリーズ最新作
「サムライウエスタン」

 本作「サムライウエスタン」は、アクワイアが制作、スパイクから発売されている「侍」をあつかったシリーズの最新作である。今作のコンセプトは「アメリカ西部で戦う“サムライ”」である。弾よりも速く動き、西部の荒くれ者達をばったばったとなぎ倒す、非常にケレン味の強い作品となっている。

 今までのシリーズとは違いストーリーの分岐などのアドベンチャー要素はなく、シンプルなアクションゲームになっており、シリーズの続編をうたっているが、個人的には外伝的な作品のように思える。シリーズの続編を待ち望んでいたファンにとっては賛否を生む方向性ではあるが、非常にユニークなゲーム性を生み出している。本稿ではこの作品の魅力を語っていきたいと思う。


■無法者達を切り倒す爽快感

主人公・桐生豪次郎。兄を斬るため彼を追い、海を渡った。しかし、悪を前に弱き者を助けるためにその剣を振ることになる
 物語の舞台はゴールドラッシュが一段落し、大陸横断鉄道が設営されたころのアメリカ西部。無法者達の跳梁に荒れ果てた街に異相の男が現れる。見たことのない服をきて、腰に奇妙な剣をつったその男。名は桐生豪次郎。彼は剣を捨て、アメリカに渡った兄・乱堂を追ってきたのだった……。

 ロード画面でいきなり枯れ草が舞い、ゲームを始めれば詳細に描かれた西部の街。凝ったBGM、そして銃を構えた荒くれ者達……。“西部劇”のこだわりを随所に感じさせる作品である。本作は西部劇のクライマックスシーン、悪漢どもがこちらを待ち受けている中をたった独りで乗り込んでいく映画で一番「美味しい」シーンを追体験できる。

 こういうシーンだから、街の中には他の住人達の姿は見えない。みんな締め切った窓の影で息を潜めているのである。舞台にいるのは、主人公と悪党だけ。思う存分剣を振り、大量の敵を裁いていける。

 豪次郎はゲームキャラクタとしても卓越した能力を与えられている。マシンガンの弾の雨さえもかわしてしまう体術に、ライフルの弾すら相手に弾き返す剣術を持っている。さらに“ボム”的な「達人の境地」という特殊能力を持ち、まさに超人的な活躍を楽しめる。「銃より強い刀」という、ロマンあふれるプレイを簡単操作で行なうことができるのだ。

 ムービーシーンを始め、「声」にも注目して欲しい。豪次郎と乱堂以外は、全部アメリカのスタジオで収録されたネイティブスピーカーを起用。彼らの流暢な英語と、豪次郎の無骨な英語の対比は、リアルな雰囲気を生んでいる。また、「義によって助太刀いたす」などの侍の言葉を直訳気味な英語で豪次郎が話すところは、思わずニヤリとさせられてしまうところだ。

ラルフ。2Pプレイで豪次郎を助ける謎のガンマン。彼の目的は? 兄、乱堂。彼は何故剣を捨て、アメリカに渡ったたのか? 豪次郎の問いに彼は答えない  ゴーストタウンと化した街で子供達の世話をする健気な少女、アンネ


■刀は銃よりも強し!

 今作の「サムライ」は西部の荒くれ者にはまさに驚異的な存在だ。銃弾をかわすどころか、刀で弾き返すことまでする。まさに「化物」である。個人的には映画「プレデター」の宇宙人になった気分だった。恐怖の悲鳴を上げながら銃弾をばらまく人間達を余裕を持って屠っていく、“捕食者”の感覚だ。

 この作品ではそんな超人的な強さをもった豪次郎のアクションを簡単操作で行なうことができる。□ボタンで斬撃、×ボタンでジャンプが可能だ。特徴的なボタンは○ボタン。足を止めて○ボタンを連打をしていれば刀で飛んでくる銃弾を逸らすことができる“はじき”になり、方向ボタンと組み合わせることでくるりと身を翻し、高速移動が可能となる“かわし”が行なえる。

 弾が当たる寸前でかわしを行なうと、“かすり”になり、高速で地面を転がり移動ができる。この状態での斬撃が非常に強力。相手の後ろにあっと言う間に回り込み、叩き切ると、敵は血煙を上げて倒れる、その感触は非常に爽快だ。

 本作はリアルさよりも、爽快感、そして神秘的な力を持つ「サムライ」になりきるところにベクトルが置かれている。敵は豪次郎の強さを引き立てる「斬られ役」でしかない。時代劇の格闘場面のように大量の敵を倒していくのが非常に楽しい。

 プレイしていて強さに酔える本作だが、すこし“大味”なのも確かである。見えないところからいきなり攻撃されたり、敵が見つけられなくなったりする。これらはカメラ操作を行なうことで補正できる。ゲームでは自動的にロックオンし、R2ボタンでそちらに向くことができる。L2ボタンではカメラをリセットし正面を向くことができる。

 本作はこのカメラにちょっとクセがあり、相手の方向を向いたとき、自分がどちらにすすんでいたかが一瞬わからなくなったり、カメラが障害物にめり込んだりする。敵がいきなり至近距離に現われることがあるのだが、ちょうどカメラの外でプレーヤーに見えなかったり、「3D表現の難しさ」を感じさせるところもあるだろう。

 特に本作の操作性と表現力で細い足場をすすまなくてはいけない「廃鉱ステージ」など、プレイしづらい時があり批判を受けかねない部分もある。

 しかし、「ガンマンより強いサムライ」そして、「カッコイイプレイに酔う」という視点でプレイすれば、不満点を気にしながらも、許せる部分が出てくる。相手の攻撃には一定のタイミングと、かけ声による演出があり、これに感覚を合わせてかわしを行なう。相手の攻撃とどんぴしゃりだったときはかすりが発動し、さらに強力な反撃が行なえる。

 細かい敵の場所をあまり確かめず、とにかく斬りボタンを連打してブッたぎる。その姿が「鬼神のごとき」強さを実現させてくれる。多少大味ではあるが、本作はその爽快感に関しては、間違いなくきちんと表現されているのである。銃弾をかわし、斬る。そこにロマンを感じる人なら大満足できるゲームだ。

 銃弾を斬ることで敵に打ち返すというまさにマンガのようなアクションができるのは本作の方向性をよくあらわしている。斬った弾丸は黄色に変化し、撃った相手は大ダメージを受ける。ボスによってはこれで倒すのが有効な場合もある。ただし、このアクションはかなり難しい。敵の距離によっても弾が届くタイミングは違うし、かなりの練習か、優れた反射神経が必要となるだろう。

 この本作を象徴するともいえるアクションは、限られた人しかできないか? というとそうではない。本作はゲームを進めることで様々な刀を入手でき、その中には“はじき”を使うだけで打ち返しをおこなうことができる刀がある。○ボタンを連打しているだけで、相手に銃弾を撃ち返すことができるのだ。初心者や、筆者のように“ちょっと鈍い”人はこういった刀に頼るのが良いだろう。

 刀は他にも、強力な攻撃が行なえる上段構えや、二段ジャンプができるもの、二刀流など多彩なものが用意されている。性能だけではなく、よりカッコイイプレイスタイルにこだわることも可能だろう。刀とプレーヤーキャラクタには成長要素があり、敵にかなわなければ、前のステージを繰り返しプレイすることで強化することができる。

 「達人の境地」もまた初心者にはうれしい要素。ダメージを受けるなどで達人ゲージが貯まったときに使える技で、発動すると豪次郎が一定時間無敵になる。雑魚敵を斬るとゲージの残る限り連続で敵を斬り、ボス相手には無茶な力押しが可能になる。硬派なゲーマーならばあえて封印したくなるような強力な技だ。発動すると画面が赤くなって雑魚を連続切りする場面は、このゲームで最も派手なシーンだ。

 大味な印象もあるが、本作はやりこむことで初心者からアクションゲーマーまで広いユーザーにアピールできるポイントがある。何よりも、超人的なサムライアクション、西部の荒くれ者をなぎ倒すという破天荒なシチュエーションを思いっきり楽しめるのである。

弾をかいくぐり、斬る! 本作は豪次郎の超人的な強さを満喫できる作品だ ○ボタンと方向キーで行なえるかすり。マシンガンの弾を全弾回避することも可能 刀によってははじきを使うだけで相手に弾を撃ち返すことができる
△ボタンで物をつかむことができる。人を盾にすることも可能だ ゲームを進めるごとに増えていく刀。刀、キャラクタ共にパラメーターも成長する 二刀流での斬撃。刀によって構えや特性が異なる。居合いなども用意されている
複数の敵を切り倒すことでコンボが生まれる。どこまでつなげられるか? 赤いゲージを満タンにすることで「達人の境地」を発動させることができる 達人の境地発動中、雑魚を切ると、ゲージが続く限りつぎつぎと切り倒していける


■待ち受けるステージ、そしてボス

 筆者が前作にあたる「侍道2」から感じていたことに、「映画のセットの中で戦っているようだ」という感覚があった。今作では特にその感触は強められているように感じた。通りの広い西部の街、天井の高い酒場、南部の富豪のような庭園がある砦、どれもがこまかく作りこんであって、戦闘を忘れてチェックしたくなってしまう。特に酒場や砦などはひとつの建物として整合性を持たせており、3Dならではの実在感がある。

 ステージによってきちんと戦う楽しさが違うのがうれしいところ。屋根の上から銃撃してくる弾を打ち返し、敵を倒すことができるのはたまらない爽快感がある。筆者が特に好きなのは「荒野」のステージ。立ちはだかる何十もの敵の間を駆け抜けてつぎつぎと倒すその気持ちの良さは格別だ。いくら銃を撃ってもすべてかわされ、仲間がつぎつぎと倒されていく。筆者がならず者だったら、逃げ出さずにはいられない豪次郎の物凄い強さをプレーヤーの手で実現できるのだ。

 基本的にすべてのステージに同じ敵しか出てこないのはちょっと寂しいが、ステージのいくつかの最後に立ちはだかるボスは良いアクセントになっている。特に最初のボス“ジャン”は成長していないキャラクタには非常に厚い壁となってプレーヤーの前に立ちはだかるだろう。彼のガトリングガンにどう立ち向かうかは、腕で勝負するか、迂回をし前のステージでたっぷり経験を積んで力押しをするか、の選択となるだろう。

 ステージでちょっと寂しいなあ、と思わせたのは「群衆」の存在がほとんどないことだ。「侍道2」では町中でいきなり斬り結ぶと、住人があわてふためいて逃げていくシーンがあった。今作はゴーストタウンという設定のためか、ほとんどそういう人が出てこない。あわてふためく娼婦や、ヤジばっかりを飛ばす腰抜けの住人、ボケた爺さんなど、西部劇ならではの名前もない端役達が出てきて欲しかった。彼らの姿があればこそ、サムライと無法者達の戦いが一層派手になる。ゲームにはよけいな要素かもしれないが、デモや、可能ならステージでも彼らの存在による「演出」が欲しかったところだ。

屋根の上から撃ってくる悪役。西部劇の悪役の王道的演出である カウンターやピアノ、テーブルなど非常に細かく作り込んである酒場 荒野。多くの敵が待ち受ける中に独りで飛び込み、力の限り戦えるステージだ
坑道。薄暗い中、ゴールを目指してひたすら前進しなくてはならない 砦の中に作られた優美な庭園。武器を持ったならず者達とのミスマッチがいい雰囲気だ 墓場。朽ちようとしている教会や、埋められる棺桶などが確認できる
酒場の2階。スタッフのモデリングへの情熱が伝わってくる。娼館じゃないのはちょっと残念 ボスであるジャン。ガトリングガンで弾をばらまくだけでなく、それで殴りかかってくる ドナルド保安官はだまされて豪次郎と敵対する。弾を撃ち返す攻撃が有効


■豊富なオマケ要素

 本作はさまざまなオマケ要素がある。最も特徴的なものは2P用のパッドを接続することでプレイできる二人同時プレイだろう。パッドを接続し、スタートボタンを押せば2P側は謎のガンマン・ラルフとなってプレイできる。ラルフは銃で戦い、豪次郎をサポート。あくまで主は豪次郎側にあり、視点などは1P側に従う。最初は慣れが必要だが、接客用にも楽しいアイデアである。

 やりこみプレイの意欲を増してくれるアイデアも詰め込まれている。ゲームを進めていくうちにさまざまな刀が入手でき、多彩なスタイルで戦っていけるほか、「アクセサリー」が多く用意されている。アフロヘアやお面などシリアスな豪次郎がユニークな姿になっていくところは特に楽しい。アクセサリーには白い帽子に白いギターなど、テーマに合わせた「セット」を思わせるものもある。

 ある条件で現れるハードモードには「手配書」がステージに隠されていて、これを入手することでプレーヤーキャラクタのモデリングが変えられる。雑魚のガンマンが日本刀を持って“同僚”達をつぎつぎと斬っていく姿は、非常に奇妙な感覚がある。

 追加要素はこれだけで終わらない。「侍」や「侍道2」など過去作品を持っていれば、それを読み込むことにより、プレーヤーキャラクタをさらに増やすことができるのだ。繰り返しプレイにはこれらのキャラクタを使ってプレイすれば感触はずいぶん新鮮なものになるだろう。アクセサリはこれらのキャラクタにも使用可能。場所も変えられるので、自由にカスタマイズができる。

 やりこみ要素たっぷりな本作だが、欲を言えば、シリーズの流れを汲む複数のストーリーラインも欲しかったところだ。個人的にはラルフを使った違うストーリーもプレイしてみたかった。駅馬車や、鉄道、銀行強盗、だましあい、騎兵隊などなど、今作で取り入れられなかった西部劇の要素はたくさんある。シリーズの流れを汲むアクションアドベンチャー路線と共に、この「アメリカに渡ったサムライ」のシリーズラインの続編も期待したい。

ラルフが参加する2Pプレイ。2P側のスタートを押すだけでいつでも参加できる 白いギターに帽子。テーマに沿った格好をさせるにはゲームをやりこまねばならない アクセサリはムービーでも繁栄される。本来は腰につく猿を移動させることも可能
正義に目覚めた? 雑魚ガンマンでのプレイも可能になっている 前作までのディスクを持っていると、使用キャラクタが増える。筆者は「侍 完全版」を使用 レイチェルが正義のために戦う! 新鮮な感触でプレイできる。アクセサリも反映される

(C)2005 Spike/ACQUIRE

□スパイクのホームページ
http://www.spike.co.jp/
□アクワイアのホームページ
http://www.acquire.co.jp/
□「サムライウエスタン 活劇侍道」のページ
http://www.samurai-w.jp/
□関連情報
【12月13日】スパイク、PS2「サムライウエスタン 活劇侍道」
体験版などが当たるミニゲームを公開
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20041213/sw.htm
【11月26日】スパイク、日本の侍がガンマン相手に大活躍!
PS2「サムライウエスタン 活劇侍道」元旦発売決定
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20041126/sw.htm
【10月29日】スパイク、日本刀の達人が西部のガンマン達と戦う!
PS2「サムライウエスタン」公式サイトを開設
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20041029/sw.htm

(2005年1月19日)

[Reported by 勝田哲也]


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