ロジクールのゲーマー向けマウスに新作が登場 MSマウスをあらゆる面で凌駕する高性能に注目 MX-510 RD |
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積極的にゲームをプレイするヘビーゲーマーなら、マウスに対するこういった問題意識を持つ事もしばしばだろう。事実マウスの性能については各所でよく議論されてきたし、そういったユーザーから出てくるマウスの光学性能や形状などに対する要求は客観的にみても合理的なものが多い。デバイスメーカーに直接意見をぶつけてきたゲーマーも多くいると思う。しかし、一般市場向けの視点で製品を作る多くのメーカーにその声は届きにくく、ゲーマーの要望を反映した製品はなかなか実現してこなかったのも事実である。
こういった風潮に風穴を開けたのが、ロジクールのマウス、「MX-510」だ。同マウスはゲーマーの意見を取り入れてデザインしたとメーカー自身が公言する製品。そして先日発売された「MX510 Performance Optical Mouse」こと「MX-510 RD」は、従来の「MX-510」をさらに10%軽量化し、操作性を改善したものであるという。本稿では「ゲーマーの意見をとりいれて」デザインされたという「MX-510」と、その改良版「MX-510 RD」が、本当にゲーマー達の食指をそそるものになっているかどうか詳しく確認していきたい。
■ 外観はMX-500の正統進化。軽量化された「MX-510 RD」は選択肢を広げた
「MX-510 RD」の外観は、前「MX-510」と完全に一致する。両者とも外形寸法は72×130×44mm(幅×奥行き×高さ)であり、見た目の上ではまったく変わらない。「MX-510 RD」の特徴は、「MX-510」の形状を維持したまま10%の軽量化を実現したことだ。実際のところ「MX-510」の重量は167g、「MX-510 RD」は152gとなっており、15gの違いがある。
わずか15gの差とはいっても、実際に手にしたときの感触は大きく違った。167gの「MX-510」は、手に持ってみると見た目以上のずっしり感があって妙な安定感すら感じる。152gの「MX-510 RD」のほうは抵抗なくスッと持ち上がる感じで、操作時の負担が確かに減った感触がある。まずは外観をじっくりみていこう。
どちらが正しいか結論は出せない。なぜなら、両者とも異なる基準で話をしているからだろう。デバイスの最適な重量や軽い重いといった感覚は、結局は操作する者の筋力や力の入れ具合、操作時に手首を軸にするか腕全体を使うか、あるいは指先で微調整を行なうかなどのクセによって決まる。最終的にはいつも「あなたにぴったりのマウスを見つけなさい」という結論が出るわけだ。
この意味で、「MX-510」の軽量化バージョンとして登場した「MX-510 RD」は、マウスを持つときのクセや力の入れ具合によって選択しうる、ひとつのバリエーションとして捕らえることのできるうれしい製品と言っていいだろう。
まずは、この「MX-510」シリーズがどのようにデザインされたマウスなのかを推し量るために、一世代前の製品である「MX-500」と比較してみよう。
「MX-510」は、一見するだけでは一世代前の「MX-500」との違いを見つけることは難しい。しかし、よくみると親指をグリップするくぼみが多分に深くなっており、日本人の小さな手でも余計な力を使わずにマウスをホールドすることが容易になっているのがわかるだろう。この形状の改良からくる微細な操作性の向上は、以前より「MX-510」が確実に進化している印象を感じる。
「MX-500」から微妙に変化したフォルムではあるが、ボタン数(8個)やその配置、スイッチの質などは変更せずにそのまま「MX-500」のものを継承しているようだ。全体としては、ベースとなった「MX-500」自体かなり高いレベルで完成された製品であったので、あえて大きく改変することをせず、良い部分は残し、改良すべきはする、といった質実剛健なセンスを感じさせて好印象である。現在「MX-500」を愛用しているユーザーならば何の違和感もなく移行できるし、気に入るものだと思う。
ただ、「MX-500」から継承された形状、右方向やや前方部分の隆起があるが、これは廃止したほうが良かったかもしれない。マウスの持ち方には個人差があるため一概には言えないが、マウスを深くホールドしたとき、この隆起部分が右手薬指の第二関節に干渉してしまい、多少の異物感を覚える。
オフィスワークなどで指先で軽く保持するときにはこの隆起がマウスを持ち上げるときの助けになるのだが、FPS系のゲームをプレイするときなどはこの隆起が邪魔をして、薬指と小指をマウスに密着させることが難しい。そのため筆者は「MX-500」を利用していたときからこの隆起部分をヤスリで削っていたものだが、この形状が気に入っている人もいるようだから、難しいところだ。
■ 「MX-500」の基本機能を堅実に進化させた「MX-510」シリーズの特徴
「MX-510」と「MX-510 RD」は、重量を除き、内部のチップも含めてまったく同じものだ。ここでは「MX-510」を基準に、その内部性能について詳しく論じてみたい。
ゲーマーが欲するマウスの性能に関して最も重要で、しかも長らく課題とされていたのが「高速な操作の正確な再現能力」である。FPS系の対戦ゲームでは、音や映像から得た情報により標的の位置を感知し、マウスを大きく動かして射界に入れ、正確に照準をおこなって射撃をする、という一連のマウス操作を際限なく行なう。
そして、熱心なFPSゲーマーにとっては対人の試合が基本であり、このような照準から射撃にわたる操作を相手より素早く行なうことを常に求めるものである。その結果マウス操作は肉体の許す限りの速さと激しさにさらされる。しかし、従来のマウスにはそのような速い操作を正確に再現できる性能がなく、このことがゲーマーにとって極めて大きな問題でありつづけていた。
ボールの回転を読み取ってマウスの移動量を検出していたボールマウスの時代は、性能的な問題はまさに機械的な部分に集約されていた。一定の基準をクリアした高機能なボールマウスでも、あまりに素早く動かすとボールの回転がひっかかったり、ボールが物理的に「跳ねて」、カーソルの動きがプレーヤーの意図しないいびつなものになることがあった。
その後、ボールマウスのこのような機械的な制約から完全に解放されたオプティカルマウス時代の到来は、多くのゲーマーにとって歓迎するべきものであった。しかし、当時のオプティカルマウスにはもっと深刻な問題があった。第一世代のオプティカルマウスのすべてが、一般的なボールマウスよりも操作速度への適応能力が劣っていたのである。その原因は、マウスの移動を検出する映像処理技術の未発達であった。
すべてのオプティカルマウスは内部に映像処理チップを持っていて、マウスの置かれた操作面へ放射した赤外線の反射波を映像として繰り返し処理し、AB2枚の映像の違いを検出してマウスの移動を検出する。この処理の速さと正確さがオプティカルマウスの性能を決定するのである。
ボールマウスがオプティカルマウスによって淘汰されはじめた当初の時期、全てのオプティカルマウスは通常のオフィスワークではあまり問題にならなかったものの、映像処理チップの処理能力が低かったために、ゲーム用途ではほとんど使い物にならなかった。すこしでも高速に操作したり、反射面が適切でなかったりするとマウスカーソルが意図しない方向に「飛んで」いったり、同じマウスの動かし方をしてもカーソルが同じように動かなかったりといった不具合が頻発していたのである。当然、枯れた技術であったボールマウスの性能には及ぶべくもなく、当時、「本当に使えるマウスはボールマウスしかない!!」と力説していた熱心なゲーマーは多いだろう。私もそのひとりだ。
オプティカルマウスの移動を検出する手段が、反射面の映像処理にある以上、その能力を測る基準は「解像度」と「フレームレート」にある。解像度は、反射面のディティールをどれだけきめ細かく処理できるかという基準で、「20×20ピクセル」のようにピクセル数で表現する。フレームレートは、その映像をどれだけの速さで繰り返し処理できるかという基準で、「2,000フレーム毎秒」のように秒間の処理回数を表現する。
この2つの項目が実際にどういう現象を引き起こすかだが、まず低い解像度しか処理できない場合、反射面をぼやけた映像でしか認識できない。少しでも平坦であったり、きめが細かすぎる面上ではマウスの動きを検出できないことがあるのだ。これは、操作面によっては同じマウス操作でも異なるカーソルの動きをもたらすという、ゲーマーにとっては非常に嫌な問題をひきおこす。
次に、低いフレームレートしか処理できない場合だが、素早い操作をすると比較するべき2枚の映像がまったく重ならない範囲となってしまい、映像のちがいを正しく得ることができない。これは低いマウス速度で素早く照準操作を行なうゲーマーにとっては致命的である。結論として、オプティカルマウスの映像処理能力における解像度とフレームレートは高ければ高いほどよいわけである。
実際問題、ゲーマーにとってオプティカルマウスが真に実用的といえる性能を持つに至ったのはそう昔の話ではない。「MX-510」の一世代前の製品である「MX-500」や同世代のオプティカルマウス、または、これらと同世代のマイクロソフト製オプティカルマウス等では、性能的な要求がほぼ完全に満たされてきた。しかし、今回の「MX-510」と「MX-510 RD」ではその性能に満足せず、完全なるゲーマー向けマウスを目指してさらなる性能の向上を行なっているのだ。
オプティカルマウスの核といえるオプティカルエンジンだが、「MX-510」に搭載されたオプティカルエンジンは従来の「MX-500」世代のものに比べ映像処理能力がさらに向上し、5.8メガピクセル/秒の処理速度としている。これは一世代前のMXオプティカルエンジンに比べてトラッキング面の読み取り速度が約25%向上したもので、これにより「MX-510」に搭載されるオプティカルエンジンは、現行のマイクロソフト製マウスのオプティカルエンジンを凌駕することとなった(従来のMXオプティカルエンジンは、マイクロソフトのIntellieye3.0オプティカルエンジンに比べて解像度は優れていたものの、フレームレートが若干ながら低速であった)。
「MX-510」は、リリースによれば、この新世代MXオプティカルエンジンによって最大15Gの重力加速度が掛かるような激しいマウスの動作に追従する。また、最大約1メートル/秒のマウスの動きを検出できるという。これはすでに通常の利用限界を超えた数値であり、ゲーマーが要求するいかなるハードな使用にも耐えうる文句なしの性能といえる。
筆者は「MX-510」のカタログスペックを凌駕してやろうと、意図しないカーソルの動きが現われることを期待して、全力で前後左右に操作してみたが、実際のところ高速のあまり意図的な制御が不可能になってしまったのは、自分の腕のほうであった。
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マウスウェア9.80のプロパティ画面。以前のバージョンと外見上の大きな違いはないが、内部的には新しいデータバンドの導入といった重要な変更が加えられている |
この新しいデータパスは従来の8ビットよりも4ビット拡張された12ビットのデータバンドとなっている。-127~+127の移動量しか検出できなかった従来のものに比べて-2,047~+2,047と大幅に有効データ域が拡張されているため、従来のデータパスではオーバーフローを起こしていた高速なマウス移動に対しても忠実なデータ転送を可能にしている。このことは、ハードなゲーマーにとって何よりも重要な「どんな入力も正確に再現する」という特性において充分な性能を提供するものだろう。ほかにも、マウスに実装されている8ボタンすべてに任意のキーボードコマンドを割り当て可能な点など、従来からの利点は健在だ。
「MX-510」ではこのように、違いのわかるゲーマーにとって重要な基本性能が堅実にパワーアップしており、現状では性能的に並ぶものがない。一般向けとしてはすでに必要十分な性能を持っていた従来製品に対してさらなる改良を加え、明らかにゲーマーを意識した進化を遂げているわけだが、オプティカルエンジンの性能向上、データパスの拡張と、ここまでの高い基本性能を提示されてしまうと、ゲームでの勝負に敗北したときに自分の腕のいたらなさをこのマウスの責任に転化することはもはや不可能かもしれない。ある意味すがすがしい製品である。
■ 「加速度問題」に対する明快な解答
マウスウェアのプロパティページに追加された[ゲーム中は加速を無効にする]オプション。全世界のPCゲーマーが待ち望んだチェックボックスだ |
多くのゲーマーは「リニア」な操作感覚をマウスに求める。つまり、マウスを同じ方向に同じ距離だけ動かしたら必ず、マウスカーソルも同じ量だけ動くことが約束されているのが理想なのである。これが満たされていれば、画面上に敵をみつけて照準をするときに、マウスをどれくらい動かせば正確に照準できるかといった感覚を肉体的に学習し、無意識に反復することが容易になる。
しかし、プレーヤーの期待しない「マウスの加速度」がOSやドライバから設定されている場合、マウスカーソルの動きはプレーヤーの求めるものにはならない。例えば、プレーヤーがマウスを1cm動かしたらカーソルが100ドット動くこと肉体感覚で把握していたとしても、加速度が設定されている場合、マウスを1cm動かしたら実際にはカーソルが150ドット動いてしまう、あるいは同様の理由で、マウスを同じ距離だけゆっくり動かしてみたら、カーソルが50ドットしか動かない、といったことが起こる。これでは体得した照準感覚は当てにならず、また、照準感覚を新たに体得することもきわめて難しくなり、本来は一瞬で済ますべき照準動作が、照準操作・確認・微調整操作・確認・射撃という複数段階の思考を必要とする冗長なものになってしまい、プレーヤーのパフォーマンスは圧倒的に低下してしまう。
この問題は特にWindows 98からWindows 2000への移行時、またはWindows XPへの移行時などの、各種ドライバやそれを利用するミドルウェアやアプリケーションの仕様、そして使う側であるユーザーのノウハウが固まっていない時期に頻発してきたし、ハードウェアとソフトウェアの組み合わせによっては解決不能に陥り、不本意にもその状況に妥協するしかないということが続いてきた。
この種の問題を回避するため、これまで多くのゲーマーが、マウス製品に添付されるドライバとユーティリティソフトを敢えてインストールしないでOS標準のHIDドライバのみを用いたり、あるいはドライバだけをインストールして、マウスウェアのような拡張部分をインストールしない、といった裏技的なテクニックを用いて苦心を重ねてきた。問題の原因がどこにあるかを正確に知ることは難しいが、とにかく経験則的なものがそういった行動に駆り立ててきたのである。無論のこと、このような工夫をすることで加速問題を回避しても、専用ドライバやアプリケーションのもたらす便利で文化的な機能(ボタンへのキー割り当てやアプリケーションの起動など)は利用できないままなのであった。筆者もまた、そのようなかつての「悲惨な」ゲーマーの1人である。
一瞬の照準操作が勝敗を分けることの多いFPS系のゲームにおいて、期待したマウス感度が得られない苦しみは、言葉で表現する以上のものである。この問題についてはさすがに、かねてからメーカー側にも多くの意見が寄せられていたらしく、ロジクールはこの新製品「MX-510」の発売に合わせ、これらゲーマーの要望に対して明快な回答を表した。「MX-510」に同梱される最新のマウスウェア9.80に追加された「ゲーム中は加速を無効にする」オプションである。
「加速問題」のよくあるケースとして挙げられるのが、ゲーム中では正確な照準操作を行なうためにマウスの加速機能をカットしたいが、OSあるいはマウスドライバがそれを許してくれないといったものである。このような問題を抱えてきたゲーマーにとっては、今回の最新マウスウェアに搭載されたゲーム中のマウス加速を無効にするオプションは福音に等しい。
筆者はPCを使って日夜ゲームをプレイする一方で、オフィスワークをすることも多く、ゲーム画面とデスクトップ画面を行き来するたび、コントロールパネルからマウス設定を開き、加速度の設定を切り替えていた。今回のマウスウェアではこのような作業が不要になるばかりか、特定の組み合わせの環境でゲーム中のマウス加速機能が意図的に設定できなくなる問題(Windows XP上での「Half-Life」エンジン系ゲームなど)をも、一度に解決してくれる。
実際、「Counter-Strike」などのいくつかのゲームでこの機能をテストした。テストした全てのゲームにおいて、OS上ではマウス加速度がONになった状態でも、タスクを切り替えてゲーム画面に入ると、照準操作に加速度はなく意図したとおりの動きが可能であった。また、ゲームからタスクを切り替えてOS操作に戻ると、マウス加速度は自動的に元の状態に戻る。実に便利である。
マウスウェアがこの機能をどのようにして実現しているのかは定かではないが、筆者のテストしたゲーム(FPS、RTS、ターンベースストラテジー、フライトシム、MMOG等を含む)ではすべて完全に機能した。ゲームが完全に起動していない状態でも、タスクフォーカスがそのゲームにある限りマウスの加速度がカットされていたし、MMOGの起動ダイアログ画面が表示されているだけの状態ですら、マウスの加速度はオフになっていた。
ここまで完璧に動作していると、仕組みが気になってしょうがなくなってしまうのはプログラマー系ゲーマーの性である。そこで、DirectX 9 SDK に同梱されている複数のサンプルアプリケーションを用いて動作を検証してみた。その結果、どうやらこの最新マウスウェアはDirect Inputの処理を監視しており、マウスがDirect Inputによってコントロールされる処理を検出してマウスの加速度を切り替えているようである。仕組みはともかく「MX-510」に同梱されるマウスウェア9.80により、長くゲーマーを悩ませてきた「加速度問題」はほぼ解決されたといっていい。
■ ゲーマーの意見を取りいれて製品化したことを最大限に評価
「MX-510」は、以上で見てきたようにゲーマーの要求を強く意識した製品内容になっている。このロジクールの製品に対する姿勢は我々ゲーマーにとって高く評価できるものだろう。そして「MX-510 RD」では「重量」というゲーマーにとっては重要なポイントに着目し、わずか15gの違いであっても製品のバリエーションとしてラインアップしたロジクールの戦略には敬意を表したい。
筆者は現在、「MX-510」と「MX-510 RD」の両方を自宅で愛用している。これに匹敵するマウスが他にほとんどないこともあるが、入手のしやすさも大きなポイント。海外のゲーマー向けプリフェラルメーカーが作ったガチガチなゲーマー御用達マウスに比べて流通量の多い本製品、仮に壊してしまってもすぐに取替えが効くという安心感が大きい。同じ道具をずっと使い続けられることがおおむね保証されるという点も、ゲーマーにとっては重要なのである。
(c) 2004 Logicool
(2004年12月17日)
[Reported by KAF@ukeru.jp]
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