数千の兵士達がぶつかり合う戦場の迫力!
ROME: Total War |
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本作「ROME: Total War」の舞台となる世界は、表題の通り古代ローマ。建国から分裂後まで含めると2000年以上の長い歴史を持つローマ帝国だが、本作ではイタリア半島が統一され地中海を挟んだ強国カルタゴとの衝突が始まる紀元前270年から、帝政が始まり初代皇帝アウグストゥスが没する紀元14年までの、ローマの覇権が最も著しく拡張された約300年間がテーマとなっている。
■ 優れた合戦システムで千年帝国ローマ勃興期の戦いを追体験しよう
大量のユニットが入り乱れる戦場。これであまり重くないのが素晴らしいところだ |
戦史に注目すると、当時の地中海世界の共通語が具体的・客観的な叙述を得意とするギリシャ語であったため、彼ら名将達の実践した見事な戦術は詳細に記録され現代に伝わっている。ローマやギリシャなど共和制や連合国の形をとる国家では、政治家でもあった将軍達が政治宣伝のため記録を残す必要があったことも、豊富な史料の形成に一役買ったようだ。そうして残った記録は歴史的に第一級の史料であるだけでなく、軍事的にも現代の戦術論等に多大な影響を与えている。特にカルタゴの名将ハンニバルが、数に勝るローマ軍を完全包囲して一方的に殲滅したカンネの戦いなどは包囲戦の手本として有名だ。
このような文化的背景を持つ「ROME: Total War」は、古代の名将達が実践したような多彩な戦術をプレーヤー自身で再現できる本格的なリアルタイム合戦システムが最大の特徴だ。なんとアメリカではこのゲームを使って戦史を再現する歴史考証番組なんてものも放送されているそうである。
■ 広大なフィールド。巨大な城塞都市。画面を埋め尽くす将兵達
雪原を行進するユリウス一門の大部隊 |
執拗な投石により破壊され炎上する都市 |
ぜひじっくりとスクリーンショットを見ていただきたい。高いクオリティで描画された個々の兵士たちが織り成す陣形がぶつかり合い、土煙を上げて戦場の騒乱を作り出す迫力は、本作の最も印象的な部分といえるだろう。それでいて、現在においてはそれほど処理速度が高いとはいえない、GeForce3世代のGPUや1GHz程度のCPUを搭載したPCでも、十分にプレイ可能なフレームレートを実現しているのだから驚きである。
戦場のグラフィックスも注目に値する。前作「Medieval: TotalWar」までは、個々の戦場は数キロ平方メートルの小さなマップが戦場となっていたためにマップ端の向こう側には何もない空間が広がっていたものだが、本作ではキャンペーンゲームの舞台となる欧州大陸から北アフリカ、中近東にわたる広大な地域が完全3D化され、区切りのないシームレスなフィールドとして再現されている(ただしゲームルール上の境界線は存在する)。
フライトシム並の遠方まで描画される広大な戦場の眺めは雄大で見ごたえがあるが、機能面においても、戦略マップに対応した広大なフィールドが用意されていることで全く同じ地形は1箇所もなく、バリエーションに富んだ戦いを楽しむことができるようになっている。
さらに本作で注目したいのは攻城戦の舞台となる都市だ。前作に比べて城壁などの建築物が巨大化し、破城槌や攻城塔などの多彩な攻城兵器が登場するようになった。また、都市の3Dモデルには後述する戦略モードで建築された施設が実際に登場するようになっており、戦う舞台と時代によってフィールドの構造が変化するようになっている。大人口を抱える巨大城塞都市などはまさにフルスケールに近い感覚で、民家や路地裏まで再現された都市内部の構造はあきれるほど巨大。絵的にも内容的にも本格的な攻城戦を楽しめる作品となっている。
外壁を守る守備隊には飛び道具の洗礼を。騎兵部隊が残敵を掃討しつつ市内を行軍している |
都市の外観は文化圏による違いがダイナミックに表現されている。発展半ばにして占領された都市には、異文化の建築物が同時に立ち並ぶことも |
■ 多彩な戦術を駆使して戦場のダイナミズムを体感
長槍で密集隊形を作るギリシャスタイルのファランクス。この時代の主力だ |
ローマ軍団兵はピラやピルムと呼ばれる投槍と短剣、大型の盾で武装。機動力に優れる |
敵側面を奪うため、騎兵同士の熾烈な戦いが展開 |
敵の突破に成功した騎兵がファランクスの背後に襲いかかる |
キモとなる戦闘シーンは「生産」などの戦略的な概念が存在しない純粋な戦術レベルの内容となっている。50~200人からなる部隊が操作可能な最小単位で、戦場では最大20部隊の軍団をプレーヤーが指揮することになる。野戦では敵の部隊を全滅させるか敗走させるかして無力化することが勝利条件。攻城戦では城壁を破り町の中心を占拠することが勝利条件となるが、そのために敵軍を撃破する必要があるのは同様だ。
独特の戦闘システムを持つ本作では、操作面では他のRTS等とは多少違ったクセのあるものになっている。基本は左クリックで選択、右クリックで移動先または攻撃対象を指示するといったものだが、右ドラッグで各部隊の陣形の厚みと長さを調整したり、CTRLキーとのコンビネーションで陣形を維持したまま方向転換を指示するなどの陣形を操作する機能を極めて多用する点が特別である。複数の部隊をグループ化して陣形を維持したまま移動させることもでき、軍団を自在に操作するための方法がよく練りこまれた形で揃っている印象だ。
これをふまえて、本作のおもしろいところは他のRTS等に比べて「陣形」の概念が非常に重要な要素となっている点だろう。
基本的に部隊単位では方形の陣形が基本となるが、プレーヤーはその陣形の長さと厚みを自在に操作することができる。陣形を敵に対して縦に長くとって厚くすれば敵の激しい突撃にも耐える分厚い盾となり、長く持ちこたえることができる。だが分厚い陣形は敵の前面を全てカバーすることが難しく、側面を突かれて多くの犠牲を出すリスクもある。
逆に横方向に長く伸ばした陣形では多くの敵を一度に足止めすることができ、敵の側面を突くことも容易になる。しかし最も薄い部分が集中した攻撃に晒されれば陣形はたやすく乱れ、士気の低下を招き敗走しやすくなる。一旦敗走を始めた部隊はもろく、敵に追撃された兵士は次々に打ち倒されてしまう。
こういった戦闘の効率に関する要因は、兵士1人1人の単位で解決される戦闘と「自分の背後に味方がいるかどうか」、「敵に囲まれていないか」といった要素によって計算されているようだ。細かく説明するとまわりくどくなってしまうが、簡単に言えば兵士やその集団である部隊の挙動が「非常に現実的にみえる」のである。
本作はこうしたリアリスティックな戦闘システムを持つだけに、プレーヤーが用いるべき戦術も戦史に見られるような現実的なものとなる。特に、陣形の概念と同様に極めて重要な要素となるのが、「機動力」の概念だろう。密集隊形を組んだ鈍重な歩兵部隊に比べ、軽快な機動力を持つ騎兵部隊は、有効に活用すればたった一部隊だけであっても戦闘の結果を左右する重要な存在になりうる。
ペルシャを滅ぼして大帝国を築いたマケドニア王国のアレキサンダー大王が完成させた戦術に「槌と金床」と呼ばれるものがある。第一に、ファランクス隊形を組んだ歩兵部隊の分厚い陣形が敵の主力を受け止める。第二に、両翼に配置した騎兵部隊が敵の側面を迅速に突破し、主力の背後にまわって強力な攻撃をしかけ壊滅させる、というものである。敵を受け止める歩兵部隊が「金床」、背後に回ってとどめをさす騎兵部隊が「槌」というわけだ。
アレキサンダー大王が騎兵の機動力を生かしたこの戦術の有効性は普遍的なもので、後の時代の名将たちも同様の戦術を活用して歴史的な数々の会戦に勝利している。こうした戦術の基本は本作「ROME: Total War」でも極めて有効だ。むしろ、全く同じことが、戦史にあるのとほとんど同じくらいに機能すると言ってもいい。もちろん状況に応じて最適な戦術は変化するものだが、根底にある考え方は共通したものになる。ゲーム中でひとつひとつの戦闘に勝利することを考えるとき、歴史上の将軍と同じように考え、実行することができる。これこそが本作の持つ最大の魅力と言えるだろう。
■ 戦略モードはターンベース。戦略を練り、地中海世界の覇者をめざそう
戦略マップ。1ターンは半年で、夏と冬が交互にめぐる |
軍団の周辺の赤線の枠内が合戦モードでの戦場となる |
元老院は様々なミッションを命令してくる。これが非常にしんどいことも…… |
最初のプレイでは、プレーヤーはローマ内の三氏族(ユリウス一門、スキピオ一門、ブルータス一門)のいずれかの陣営の当主となって大帝国ローマの実現を目指すことになる。ちなみにプレイ中に滅ぼした陣営は次回のプレイで使用可能になるので、2回目以降のプレイでは視点を変えて楽しむことができる。
キャンペーンゲームの基本的なシステムは、わりとオーソドックスな国取りゲームのシステムだ。プレーヤーは自分の支配する属州の人口を増やして経済力をつけ、多彩な施設を建設して強力な兵種の編成を可能にしていき、軍団を組織して敵国に攻め込み、領土を増やしていくわけだ。
軍団は戦略マップ上の「駒」として表現され、一つの軍団に最大20個の部隊を編入することができる。軍団は戦略マップ上の進入可能な地点ならばどこにでも移動することができるのだが、舗装された道路上を移動するとより高速に移動できるなど、前作にはなかった戦略レベルの機動力の表現が盛り込まれている。「すべての道はローマに通ず」というわけだ。
戦略マップ上で隣接する敵の軍団への攻撃を指示するか、もしくは移動中に待ち伏せに合うと、戦闘状態となる。このとき、戦略マップ上で軍団の駒が位置していた場所が合戦シーンでのフィールドとなるので、意図的に地形を選んで戦うことができる。また、合戦シーンに配置される各部隊の位置関係も戦略マップから反映されるので、敵を複数の軍団で挟み撃ちにしたり、川を挟んで拠点を防衛したりといった選択もプレーヤー次第だ。
戦闘はプレーヤー自身が指揮するほか、自動計算により一瞬で結果をはじき出すことも可能だ。自動計算では戦闘に参加する互いの兵種や将軍の質、地形などの要素が考慮されて計算されるが、プレーヤーが実行できるような華麗な戦術は反映されないので予想に反して厳しい結果になることが多い。しかしゲーム中盤以降、版図が広大になり1ターンに発生する戦闘が数多くなるときにはゲームを早く進められるため重宝する。
多くの戦闘に勝利した部隊は経験を積んでより強力になっていく。それを指揮する将軍も経験にしたがって能力を獲得し、部隊の士気を高く維持できるようになる。とくに将軍の能力は重要で、すぐれた将軍の指揮する部隊は困難な状況でも敗走せず持ちこたえられるようになる。逆に情けない敗戦を呈してしまった将軍にはマイナスの属性がつくこともあるので、いかにして勝ちつづけるかがキャンペーンにおける大きな関心事になることだろう。
ローマ陣営をプレイするときにキーとなるのが「元老院」の存在だ。共和制ローマを支配する元老院は、ローマ陣営の三氏族に対して次々にミッションを与えてくる。やれ「属州をふやせ」だの「通商条約を結んで来い」だの「港を封鎖してこい」だのと期限付きで命令してきてうるさいことこの上ないが、従わないと会計監査をされるうえに罰金を課せられるので、とりあえず積極的に協力するほかない。元老院のミッションを着実にこなせば人気を獲得でき、一族の将軍が法務官や執政官などの要職に選出され、プラスの属性を得ることができるのだ。国家の要職を一族で独占すべく、元老院の犬になってしまうのも悪くない。
だが、そういった元老院との関係は永遠には続かない。プレーヤーが力をつけていくうちに突然、歴史の必然は訪れることだろう。史実において、子飼いの軍団でガリアを平定し、返す刀で内乱に勝利して共和制に終止符を打ち、実質的な帝政を開始することになったかのユリウス・カエサルのごとく、サイは投げられるべきで、ルビコンは渡られるべきなのである。そのときに最終的な勝利者となれるよう、精強な軍団を育て上げ、政略と戦略のセンスを磨こう。
部隊はこのように陣形を維持したまままとめて移動させることもできる | 先頭の前にはこのような演説シーンが挿入される。状況によって演説内容が適切にかわるのがおもしろい | 木の壁で守られた小規模な町は破城槌で攻略する |
門を突破した先にある、動くに動けないほどの混雑と乱戦 | 野戦では騎兵の突破力が如何なく発揮される | ブリトン人の大部隊は2頭立ての戦車を持っており、いやな相手のひとつだ |
高い城壁で守られた城塞都市では多種多様な攻城兵器を活用する | 城壁にとりついた攻城塔に続々と軍団兵たちが乗り込んでいく | 城壁の上を守る守備隊との戦闘。勝って城門を開くのだ |
■ ローマ史ファンはもとより、じっくりプレイできるゲームを求める人全てにオススメしたい
マルチプレイにて。これは笑えるほど慎重なプレーヤーの一例。慎重すぎて、投石器で吹き飛ばされた |
さて筆者の初対戦の相手は、全部隊カタフラクト重装騎兵一色による一斉突撃という無茶苦茶な戦術をとってきたわけだが、こちらのファランクス隊形が一瞬でコナゴナに粉砕されるあまりの光景に飲んだお茶を噴出しながらも、投石器と軽騎兵を駆使して善戦することができた。
以降数回のマルチプレイを体験したが、毎回異なる展開を楽しめた。特に2on2以上のチーム戦は、被害を拡大したがらない味方同士の妙な駆け引きもありおもしろい。1回の対戦は10分程度から長くても30分程度で完結するので、ちょっと時間が空いたときにサクっとログインして1対戦するというスタイルも悪くないだろう。
会戦シミュレーションの本命として長らく注目を浴びてきた「ROME: Total War」だが、同じく注目してきた筆者も実際にプレイしてみて期待以上の手ごたえを感じることができた。抜かりのないグラフィックスやサウンドの演出はもちろん、肝心のゲーム内容も戦術・戦略両面で高い完成度でまとまっており、じっくりプレイするゲームが欲しいPCゲーマーには安心してオススメできる作品だ。
古代ローマ史の一ファンとしては、永田町で人気とのうわさの歴史小説「ローマ人の物語」やカエサル直筆の「ガリア戦記」を読んだことがあって、古代ローマ史に多少なりとも興味がある人にはこのゲームを意地でもねじこみたいほどだが、歴史的なテーマを別にしても、戦史上の戦術に興味がある人などにはただのゲームとしてでなく一種のホビーとしてお勧めしたいところである。
最後に、本作はコーエーから「ローマ:トータルウォー」として完全日本語版の発売が11月に予定されている。英語版である本作のゲーム中に登場する文章はユニットの解説や歴史イベントなど結構な量になるので、これが日本語で楽しめることが確実になったことは非常にうれしい。これで、海外で始まったマルチプレイのラダーリーグ(ランキングシステム)のようなコミュニティが日本国内でも展開されたら楽しいだろうなァ、と期待してしまう筆者である。
Total War Software (c)2002-2004 The Creative Assembly Limited. Total War, Rome: Total War and the Total War logo are trademarks or registered trademarks of The Creative Assembly Limited in the United Kingdom and/or other countries. Published by Activision Publishing, Inc. Activision is a registered trademark of Activision, Inc. All rights reserved.
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[Reported by KAF@ukeru.jp]
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