「Tribes」と言えば、「Quake」や「Unreal」といった有名タイトルと同じ頃から存在している由緒あるFPSだ。当時存在した他のFPSに比べて同時接続人数が多く、CTF(Capture the Flag)をメインに据えたゲームモード、多くの設置武器や移動兵器の存在、ブースターを使った空中起動という要素が大きな特徴となっている。そのため、当時のFPSが「自分だけが強い」事が勝利とイコールだったのと異なり、「Tribes」は「多人数の協力こそが勝利に結びつく」ことが重視された初めてのFPSなのだ。
今回紹介する「Tribes Vengeance」はそんな「Tribes」シリーズの3作目に当たるタイトルだ。現在、「Tribes Vengeance」はチュートリアル的要素をもったシングルプレイデモと、FilePlanet会員のみに先行公開され、9月30日より一般公開が始まったマルチプレイデモ。この2種類のゲームプログラムが公開されている。今回は、この2つのプログラムを通して「Tribes Vengeance」が前2作と比べてどのように変わったのかを紹介していこう。 ■ 登場する武器を一通り体験できるシングルプレイデモ
このステージでは、次々出てくる敵と戦い、生き残ることが目的だ。最初は近接用武器の「Energy Blade」とマシンガン系の武器である「Chaingun」しかプレーヤーには与えられていない。しかし、登場する敵も最初は近接攻撃メインのエイリアン、次にショットガン系の武器である「Blaster」やロケットランチャー系の「Spinfusor」を持った敵という具合に次第にグレードアップしていくので、プレーヤーは敵を倒して武器を奪いつつ、だんだんと強くなっていく敵を倒していけばいいわけだ。 最後のほうでは人間キャラだけでなく、上空から延々とミサイルを撃ち込んでくる「Fighter」や機銃と空爆でプレーヤーを追い立てる「Assault Ship」、強力な主砲と機銃によって強力な打撃力を誇る「Jump Tank」といった「Tribes」シリーズでは欠かせない強力な乗り物も登場する。まさに「Tribes」ならではのキャンペーンモードといった感じだ。
このシングルプレイモードは、初心者にとっても中級者にとってもなかなか絶妙なバランスで、特に「Tribes」シリーズをはじめて遊ぶような初心者はプレイすれば、「乗り物に対してはRocketpodやGren.Launcherのような武器に即座に持ち替えて距離をとって戦う」といった手持ち武器の一通りの使い方が体得できているだろう。全10ステージのこのシングルプレイデモ、初心者でも3時間はかからないぐらいのボリュームで少々あっけない感もあるが、そういう方はぜひマルチプレイデモを遊んでみるべきだろう。
■ 初心者向けの配慮がなされ、遊びやすく生まれ変わったマルチプレイ
小さなマップに関しては、前作「Tribes 2」に比べて格段に狭くなっている。加えて、プレーヤーのHUDには自分がマップ内のどこら辺にいるのか、味方や敵の旗はどこら辺にあるのか、そういったことを表示するミニマップも追加されている。全体的に見るとずいぶんと初心者に配慮した作りになったという印象を受けた。 昔でこそ、「Quake」や「Unreal」、「Half-Life」といったFPSに続いて第4位のサーバー数を誇った「Tribes」だが、協力プレイが前提になる取っつきにくいゲームシステムという問題点を抱えていたため、現在のユーザー数は有名FPSに比べると微々たるものといっていいものに縮小化してしまっている。 Skiingと呼ばれるバックパックジェットと滑走を組み合わせた高速移動法、弾速と敵の移動速度を考えて撃たなければいけない偏差射撃重視の武器、役割を心得て乗らないと力を発揮できない乗り物、乗り物でなくては移動しきれない広大なマップ、これらは使いこなせればとてつもなく面白く、かつ爽快感のある要素なのだが、初心者にとってはこの使いこなすことがそのまま「Tribes」参入への障壁として存在することになってしまった。 実際、今年の4月には「Tribes」、「Tribes2」ともにフリー化され、無料ダウンロードが開始されてもユーザー数の増加は微々たるものでしかなかったことを見ても、この障壁がいかに高かったかがうかがえる。そこで「Tribes Vengeance」ではビギナー層を取り込むために、Skiingの発動をもっと簡単にし、マップを狭めてミニマップを追加し、乗り物の重要さを削るといった思い切った変更を打ち出した。 まずSkiingは、実際に遊んでみるとあまりに簡単に加速がつくので拍子抜けしてしまうぐらいに簡単に扱えるようになった。前作までは下りの山肌などを使って長い距離を滑走しないとなかなか速度が出なかったSkiingだが、「Tribes Vengeance」では坂道すら必要とせず、平地から少し滑走して、そのままバックパックジェットを点火するだけで以前のトップスピードに近い速度まで加速できるようになっている。おまけに、その滑走途中にちょっとした凸部分があればそこを使って一気に上空へとその身を運ぶことが可能だ。 また、マップに関してはゲームエンジンが変更されたこともあって、前作のような最大64人といった多人数プレイができなり、最大参加人数である24人(筆者が見た範囲)程度が遊べる規模の大きさのマップが多く用意されている。また、10人程度いれば乗り物を使わずともそこそこ遊べてしまうようなマップも用意されているようなので「大人数でなければ遊べない」ということもなさそう。 そして、乗り物もマップが狭くなったことにより、前作ほどの重要性はなさそうだ。それに手持ちの対人用武器でたやすく落とされてしまうような耐久力しか持っていないので、使い方をよっぽど考えないと乗り物は力を発揮できなさそうだ。
さて、前作からのユーザーがもっとも気になるのは「従来の『Tribes』とどのくらいゲームシステムが変わっているのか?」というところだろう。結論から言ってしまうとあまり変わっていない。前述したとおりメインのゲームモードはCaputure The Flagから変わっていないし、動きが早く小回りの利くLight Armour、分厚い装甲と強力な火力のHeavy Armour、両者の中間的位置に存在するMedium Armourといった3タイプの基本アーマーに武器と追加パックを組み合わせてキャラクタのオリジナリティを出す点も変わっていない。また、基地の設備はGeneratorを壊せば停止するし、Sensorを壊せば敵の襲来を察知できなくなるという点もそのままだ。従来の「Tribes」に慣れたプレーヤーであれば違和感無く「Tribes Vengeance」を理解できるだろう。
■ 前作に比べて緩くなった印象はあるが、新規のゲームとしてみると及第点か 特にネットワークコードに定評のあった「Tribes」エンジンを捨て、UnrealエンジンでTribesの新作が開発されると聞いたとき、正直筆者は「『Tribes』も2までか、『Vengeance』は別ゲームとして考えよう」と思ったことを記憶している。今回実際に「Vengeance」を遊んでみて、それは半分当たって半分外れていることが良くわかった。 「Tribes Vengeance」は、多人数でのCTFという「Tribes」シリーズのベースとなる部分は変わっていない。しかし、最大参加人数の減少、乗り物の弱体化、マップの縮小という部分が変わったことでゲームの印象としては従来の「Tribes」とはずいぶんと違うものになっている。ゆえに「Tribes」シリーズ最新作という視点で見るよりも、完全オリジナル新作として考えたほうが、十二分に遊べる新作ゲームとして判断できるのではないかと感じた。
現在オープンβテスト中ということは、ゲームシステムの開発はすでに終了し、最終的なバランス調整とマップの細かい修正段階に入ったということだろう。10月にはサイバーフロントから日本語マニュアルつき英語版もリリースされる予定となっている。これまで「Tribes」に興味はあったけど、その難易度の高さに敬遠してしまった方は、これを機会にぜひ遊んでみるといいだろう。また、「Tribes Vengeance」で「Tribes」シリーズ独特の移動や武器に慣れたら、フリーでダウンロードができる「Tribes」や「Tribes 2」を遊んでみることをぜひオススメしておきたい。
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□「Tribes Vengeance」の公式ページ (2004年9月30日)
[Reported by Tyokuta@ukeru.net]
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