【連載第4回】 進化し続けるヴァナ・ディールの魅力を徹底解剖■ファイナルファンタジー XI連載■
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北米版を含めた全世界の合計で50万人以上の有料会員数を誇る、純国産製MMORPG「ファイナルファンタジー XI」(以下、FF XI)。この日々進化し続ける世界でいったい何が起こっているのかを、いちプレーヤーの視点で追ってゆくのが本連載の主旨である。 ゲーム世界に一定のキャパシティを設けた隔離エリアを設定し、その中で緊張感の高いパーティープレイを楽しむ「プライベートエリア」システム。2001年の「Anarchy Online」で初めて採用され、最近では「EverQuest」、そして「FF XI」と、近年のMMORPGにおけるトレンドのひとつになっている。 既存のMMORPGタイトルでは、プライベートエリアはあくまでも独立したシステムだったが、FF XIでは、次の段階へとステップアップさせることに成功した。ミッションを初めとするストーリー面と、「印章」というFF XI独自のシステムと絡めることで、他タイトルでは味わえない多くのバリエーションと深いゲーム性を実現したのだ。 FF XIでは、このプライベートエリアを「バトルフィールド」と名付け、このバトルフィールドで行なわれる戦闘を「バーニングサークル戦」(BC戦)と呼んでいる。名前の由来は、バトルフィールドの入り口が炎をイメージした円台になっていることから来ている。 先述したようにひとくちにBC戦といってもバリエーションは多岐に及ぶ。そこで今回はBC戦の入門用として最適なレベル20からチャレンジできる3人用のBCNM戦をサンプルにBC戦の魅力について迫ってみる。BC戦に挑戦したいけど、第一歩がなかなか踏み出せない。そのような人は是非とも本稿を参考にしてみてほしい。 |
■ 隔離された特別なフィールドにて行なわれる多対多のイベント戦
FF XIの戦闘はBCを抜きにしては語れない。様々な魅力がぎっしりと詰まった、もっともFF XIらしいコンテンツである |
BCのバトルフィールドは、このように闘技場のような円い広間になっている。この限られた範囲内で、複数の敵との激戦が繰り広げられるのだ |
ウィンダスのミッションにて行なわれるBC。NPCである口の院院長のアジド=マルジドと共に戦うのは、とても新鮮である |
BCの大きな特徴は、参加キャラクタがフィールドに突入すると、通常エリアとは完全に隔離される点にある。そのため誰にも邪魔されることなく、BC内にて待ち受ける敵との戦闘に専念できるのだ。また、タイムラグや描画負荷の悪影響を受けにくい等のメリットもある。
次に重要なのが、大半のBCにおいて戦う敵の数が複数いるという点である。普段の冒険時では、不慮のトラブルを除けば、パーティに対し1匹のモンスターと戦うスタイルが基本であった。しかしBCでは、最初から多対多を基準にデザインされているのだ。そのため、BCの全体を大局的にとらえる視点が求められる。ちなみに最も多いものでは、16匹ものモンスターと同時に戦うBCがある。これらの点だけでも、普段の冒険とはだいぶ雰囲気が異なるのがわかるだろう。
BCの種類を大別すると、ミッションを初めとするストーリーの要所で挑むタイプと、敵を倒した際に稀に得られる「印章」を用いるタイプの2つがある。ミッション等で挑戦するBCの敵は、FF XIのストーリーと密接に絡むことが多く、FF XIの大きな醍醐味となっている。
一方の印章を用いるタイプのBCは、バトルフィールド内に出現するモンスターを「BCNM(ノートリアスモンスター)」と呼ぶことからもわかるように、討伐に成功すると素晴らしい報酬品を得られる。報酬品のグレードは、消費する印章の数によって幾つかにランクが分けられるが、どのBCNMにも等しく「大当たり」と呼ばれるものがある。中には「ダマスクインゴット」のような、競売相場で100万ギルを超える高額品もあるのだ。
しかも大当たりを引き当てる確率は、宝くじとは違い十分に現実的なのである。FF XIの金銭価値を大まかに説明すると、中級者が一般的な方法で金策を行なった場合、時給換算にして約1~2万ギル前後。BCNMの報酬品がいかに注目されているか、想像に難くないだろう。
だが、挑戦権となる印章を取得するペースは、キャラクタレベルの高低に関係なく一定となっている。また印章はキャラクタ間でトレードできないため、一人が挑戦できる回数も自ずと限られる。ここが最大のキモで、たとえ上級者になっても、BCNMに挑戦する際の緊張感は決して失われない。BCNMは戦術を追求する醍醐味だけでなく、大切な印章を消費するリスクと、一攫千金を狙える可能性を秘めた一大イベントとして、現在最も人気が高いFF XIならではの戦闘コンテンツになっているわけである。
■ 入門用とはいえ決して侮れない3人用のBCNM
ジュノ港に居る怪しげな商人に印章をトレードすると、対応したオーブと交換できる。狙うBCと照らし合わせ、くれぐれも種類を間違えないように |
各種消耗品はできるだけ多めに確保した方が良い。スタックできないジュース等の類は、参加者が現地にて合成できると助かるだろう |
消耗品の中で特にお勧めなのが、「ペルシコス・オレ」に代表される飲物。強力なHPのリジェネ効果が5~15分間も持続する優れ物だ |
3人用のBCNMは、6月末のFF XIアップデートにより大幅に増強され、現在では13種類と全体の約1/3を占める。今までBCNMは6人用のものが中心で、以前からFF XIをプレイしている読者にとっては、このイメージが強いかもしれない。しかし3人用のBCNMは、レベル制限が20/30/40と比較的低いこともあり、入門用として急速に定着しつつあるのだ。
3人用BCNMの特徴としては、参加人数が6人用に比べて3人と半分ですむため、掛ける手間も半分ですむという点が挙げられる。この手間は、レベル制限に見合った装備を揃えることや、連続して挑戦する際の拘束時間など、あらゆる面において従来の半分といっていい。たとえば、参加者の全員が印章を用いる場合でも、連戦時の所要時間は1時間未満である(敗退時の再移動時間を除く)。そのため既存の6人用BCNMと比較しても、思い立った時に気軽に挑戦しやすいのだ。
もっとも、参加人数が少ないからといって、戦闘内容は決して単純ではない。後で詳しく紹介するが、3人用BCNMにて待ち受ける敵は、外見こそ通常エリアのモンスターと同じものの、他では見られないユニークな特殊能力を持ち合わせている。これらの特殊能力はどれも、仮に通常エリア内のモンスターに導入されたら、恐らくゲームバランスが大きく崩れるほどだ。
そして、これらのユニークな特種能力に驚き、打破するための戦術を3人でじっくりと考え、実行できるジョブ構成を各メンバーに割り振る。このパズルを解くかのような、BCNMにおける試行錯誤の課程がたまらなく面白い。しかも3人用BCNMは参加人数が少ない分、各メンバーの役割が特化されにくい面もある。すなわち決め打ちの戦術だけでなく、メンバーには臨機応変さも求められるのだ。総合的に見ると、戦術を追求する楽しみは、もしかすると6人用のBCNMの上をいくかもしれない。
次にBCNMで得られる報酬品についてだが、基本的にレベル制限に見合った武具や呪文書等を、最大で6個得られる。たとえばレベル20制限のBCNMでは「プラトーンアクス」を初めとするシリーズ武器、レベル30制限では「ウィザードピアス」等といったシリーズ防具を得られる。また、レベル30または40制限では「イレース」や「空蝉の術:弐」といった高額な呪文書も稀にドロップする。入門用BCNMといえども、大当たり品の価値はそれなりに高い。
報酬品の中で少々特種な、「マネキンヘッド」等についてここで触れておこう。これは、モグハウス内に武具を飾ることのできる「マネキン」を完成させるために必要なパーツである。しかもマネキンは、7スロット分の調度品でもあるのだ。完成させるために必要なパーツは、全部で「頭、胴、手、脚、足」の5種類で、脚と足を除く3種類は、レベル20または30制限のBCNMでしかドロップが確認されていない。そのためマネキンを完成させることを目標に、BCNMへと通うプレーヤーが増えてきているのだ。
■ 3人用のBCNM「甲殻小隊」にチャレンジ!!
先述したように、3人用BCNMの最大の醍醐味は、他では見られないユニークな敵の攻略にある。そこで、敢えて事前に必要以上の情報を調べない状態で、これらのBCNMに実際に挑んでみた。BCNMがどのような流れで進行するか、その雰囲気を一例として掴んでもらえれば幸いである。
今回選んだのは、ギデアス(ワールンの祠)にて獣人印章を20枚用いる、「甲殻小隊」という3人用BCNM(レベル20制限)。待ち受ける敵は、Cripper(甲殻)タイプのNMが3匹という構成だ。参加メンバーが実際に一度経験していたので、感想を聞いてみたところ、「どのような攻撃方法でも1しかダメージを与えられなかった」とのこと。精霊魔法だろうがウェポンスキルだろうが1ダメージで、何がなんだかよくわからない内に負けてしまったらしい。
この点を踏まえて3人で相談した結果、とにかく攻撃回数を数多く叩き込むことに専念。具体的には、全員が忍者のアビリティ「二刀流」を用い、間隔の短い武器を両手に持つことにした。しかもレベル20制限のため、忍者はサポートジョブに選んだ場合でも、二刀流(レベル10)をぎりぎりで習得できる。それならば、赤魔道師の「エンサンダー」系と併用することで、最大で4ダメージを一気に与えられるだろう。
もうひとつ気になったのが、敵が3匹いるという点。普段の冒険において複数の敵と戦う際は、「スリプガ」や「魔物達のララバイ」等を駆使して、各個撃破の状況に持ち込むのが定石である。しかしレベル20制限では、これらの決定的な魔法を使えないのだ。自分達が選べる手数の少なさに悩まされつつも、「バインド」で近い効果を得られることに注目。最終的に3人のジョブは、「忍者/戦士」「赤魔道師/忍者」「赤魔道師/忍者」という構成にした。
こちらの思惑としては、開幕時に赤魔道師2名がバインドを唱え、敵2匹の動きを封じる。そして、残りの一匹を全員で集中攻撃し、ひたすら1ダメージを積み重ねて倒す戦術である。そして準備を整え、いよいよBCに突入……。毎回思うことだが、自分達で編み出した戦術を投入する瞬間は、とても緊張し、同時にわくわくする。この感触こそ、筆者がBCに最も強く求めている要素だ。
で、緒戦の結果はというと、残念ながら敗退してしまった。敗因としては、最初の一匹を倒す前にバインドの効果が切れ、複数の敵から同時に攻撃を受けたのが大きい。また、敵の中の一匹は範囲魔法の「ウォタガ」を立て続けに使い、こちらの回復サポート等によってターゲットがふらついたのも痛かった。BCNMは貴重な印章を用いるため、敗退時のプレッシャーは結構しんどいものがある。印章を用いなかった他の2名も、心なしか落ち込んでいる(ように見える)。
前回の失敗を踏まえた上での二戦目。慣れもあってか、BCを繰り返す度に自分達の腕がめきめきと上達しているのを実感できる |
更に、赤魔道師1名のサポートジョブを戦士に切り替え、二刀流の代わりに「挑発」アビリティを習得。バインドが切れた後は、挑発でターゲットを引きつけながら逃げる、いわゆる「マラソン」(一般的には"Kiting"=凧揚げ)と呼ばれる戦術だ。これなら最悪の場合でも、倒れるのは囮となった赤魔道師の1名だけで済むだろう。
そしてリベンジしたところ、この戦術が見事に的中! 懸念していたウォタガも、詠唱範囲外へ逃げることでほとんどダメージを受けなかったのだ。そして続く3戦目も難なく勝利し、完璧と言っていいほど、終始我々の思い通りのペースで進めることができた。もうこのメンバーであれば、たとえ今後100連戦を行なっても負ける気はしない(だろう)。
残念ながら緒戦は敗退したが、後に続くという意味で決して無駄ではなかった。最後に得られたこの達成感に比べれば、報酬品などおまけのようなものだというのが、一通り終えた上で3人に共通した感想である。心地よい達成感と、マネキンパーツ等の報酬品を手に我々はギデアスを後にした。
■ BCNMはもっとも民主的で平等な、FF XIらしい戦闘コンテンツ
マネキンに飾れる装備品は、ジョブやレベルの制限を受けない。複数ジョブのアーティファクトを混在といった、本来ではありえないコーディネートが楽しい |
また、より強力なハイパーノートリアスモンスター(HNM)に関しては、上記の要素に加え、討伐時に必要な戦力がアライアンス単位と大きい。そのため、上級者用のリンクシェルが再出現時間(数日単位)を管理下に置き、独占しているのが実状である。
しかし、BCNMであれば、総てのプレーヤーにとってチャンスが平等に与えられる。FF XIの大多数を占めると思われる、1日のプレイ時間が1~3時間程度の人でも、NM討伐の興奮を存分に味わえるのだ。このようなことを改めて言うのも気が引けるが、BCNMは総合的に見て、他のどのMMORPGにも導入されていない、FF XIならではの素晴らしい戦闘コンテンツである。
印章を必要とするリスクがあるため、今までBCNMに尻込みしてきたプレーヤーはいるかもしれないが、その点も3人用BCNMの充実によって緩和された。確かに、BCNMで敗退したときのショックは大きい。筆者は本稿執筆時の検証のために、合計80枚分の獣人印章をふいにしており、しばらくの間は引きずることだろう(笑)。だがしかし見方を変えると、挑戦時にリスクがあるからこそ、その先で得られる達成感もあるのだ。
他人が考えた攻略法を丸飲みにするのではなく、2人の仲間と共に試行錯誤しながらBCNMに挑戦することは、たとえ結果がどうであれ、きっと何年経っても忘れない経験となるだろう。3人用のBCNMは、上級者にとっても戦術を追求する醍醐味が十分にあり、しかもマネキンパーツを集める別の目標もある。本稿を読んだ総ての読者は、是非とも、身近な人を誘ってこれらのBCNMに挑戦してみてほしい。
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(2004年8月24日)
[Reported by 川崎政一郎]
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