【連載第1回】 進化し続けるヴァナ・ディールの魅力を徹底解剖■ファイナルファンタジー XI連載■
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「ファイナルファンタジー XI」(以下、FF XI)は言わずと知れた、スクウェア・エニックスが運営するMMORPGである。北米版を含む有料会員数は50万人を超え、純国産タイトルとしては最大規模なのは勿論のこと、全世界総てのMMORPGの中でも、現在最も成功しているタイトルのひとつといっていい。 FF XIの魅力をひとつひとつ挙げてゆくときりがない。中でも特に大きいのが、約2カ月単位で導入される大型アップデートではないだろうか。FF XIのアップデートは他MMORPGタイトルと比較しても類を見ない規模で、他タイトルでいう拡張パックに近いボリュームがある。幅広いプレーヤー層を対象にしたパッチが定期的に導入されることにより、常に新鮮さを失わずにプレイすることができるのだ。 つまりFF XIのゲームシステムとプレーヤー達のコミュニティーは、誇張ではなく日々進化し続けている。いまヴァナ・ディールとそれを取り巻く環境で一体何が起こっているのか、いちプレーヤーの視点から見たありのままの姿を伝えたい! その強い想いが、本連載を企画したきっかけである。 連載第1回目となる本稿では、FF XIに次第に取り入れられつつある数十人規模での攻略、いわゆるRaidと呼ばれるプレイスタイルについて、その魅力と実状に迫っていきたい。なお、今回は「導入編」ということで、各エリアの具体的な攻略要素はあえて重視していないのでご了承を。連載間隔は隔週を予定している。 |
■ 数十人の戦力を要するRaidシステムがFF XIに導入
デュナミスで最も注目すべきは、その難易度である。周知のようにFF XIはパーティープレイを基本としたゲームデザインを採用しており、これまでは大半のプレーヤーが通常時は1パーティ(6名)、多くてもアライアンス(18名)単位で行動を行なってきただろう。
しかしデュナミスにおいて、その程度の戦力ではまるで歯が立たない。最低でもアライアンスが2つか3つ、できれば同時に挑戦できる最大許容人数の64名まで増やしておきたい位なのだ。64名の冒険者が一堂に会して戦闘を繰り広げる光景は、未経験者にはちょっと想像すらできないだろう。たとえるならば、まず下層ジュノ競売前の混雑を思い浮かべてほしい。あの場に居るキャラクタ全員が同時にモンスターと戦うイメージに近い。つまり、あらゆる面において今までの常識とかけ離れた、壮絶な戦闘環境ということだ。
このような大規模なプレイスタイルは、歴史的に見ればFF XIのデュナミスが初めてというわけではない。FF XIにも多大な影響を及ぼしたMMORPG「EverQuest」(以下、EQ)に、「Raid(=襲撃の意)」と呼ばれるものが存在している。Raidという単語の厳密な定義については、MMORPGタイトル毎によって些細な違いはあれども、「数十名の冒険者が集まって、互いに協力し合いながらモンスターを討伐する」と解釈して問題はないだろう。
Raidに挑戦するには、通常の冒険とは異なるいくつかの準備を必要とする。多数の冒険者を募ってスケジュールを調整し、目的地の情報収集を元に大まかな攻略方法を決めておく。当日は、リーダーが参加者のジョブバランスに気を配りながらパーティを編成し、実際にRaidが始まったら戦局を冷静に把握して、全員に指示を与え続けるのだ。場合によって異なるが、一度のデュナミス攻略に要する時間は、平均すると2~3.5時間程度。リーダー役の負担が相当なものであることは、想像に難くないだろう。
もちろん、参加する一般メンバーは気楽なのかというとまったく逆で、リーダーの指示に従ってそれぞれの役割を忠実にこなさねばならない。極端な例では、たったひとりのメンバーがチャットを見逃して自分勝手な行動を行なっただけで、参加者全員が壊滅ということも有り得るのだ。そのためRaidの参加者達の間には独特の緊張感が張り巡らされるが、その分、全員が各々の役割をきっちりとこなし目標を達成したときの興奮度は、通常の冒険時とは比べ物にならない。この興奮を言葉で表現するのは非常に難しい。無理矢理例えるならば、地道に準備を積み重ねた学園祭を成功させたときの充実感に近いのかもしれない。
また、通常の冒険では目にかかれないような素晴らしいアイテムもRaidでは得られる。デュナミスにおける具体的な報酬は、大別すると2種類。ジョブ専用の高性能な武具、それと各デュナミスエリアをクリアしたときに得られる「証」である。武器は「レリック」と総称されるもので、クエストを経ることで性能を数段階アップグレードできるようだ。現時点ではまだ確認できていないが、その難易度から察するに、恐らく最終段階のレリックは神懸かり的な威力を持つことだろう。防具については、装備時のデザインがアーティファクトを豪奢にしたようなものであるため、プレーヤー達からは「アーティファクト2(AF2)」と呼ばれている。
現在導入されているデュナミスのエリアは、「バストゥーク、サンドリア、ウィンダス、ジュノ、ボスディン、ザルカバード」の6箇所。ただし攻略するエリアには順序があり、ボスディンに関しては「バストゥーク、サンドリア、ウィンダス、ジュノ」の4エリアをクリアした「証」が事前に必要となる。そして、更にボスディンの証を加えることで、ザルカバードに挑戦できるようになる。つまり、デュナミスのエリアも幾つかのランクに分けられており、難易度は次第に高くなるが、得られるアイテムもグレードアップする仕組みだ。これらの素晴らしい報酬と達成時の充実感こそが、多くの冒険者を惹き付けるデュナミスRaidの神髄である。
■ 強大な敵が待ち受けるが、素晴らしいアイテムを得られるデュナミス
まず、デュナミスの地形データは既存エリアを流用しているが、実際に足を踏み入れるとその印象はまったく異なる。空にはどす黒い暗雲が垂れ込め、普段から見慣れたNPCも誰一人としておらず、まるで廃墟のような印象を受けるだろう。筆者が初めて訪れた際は、予備知識がゼロだったこともあり、無闇に進むと何か取り返しの付かないことが起こりそうな嫌な予感がした。
スタート地点から少し進むと、これまで見たことのない石像のようなモンスターを視認できる。一体だけかと思いきや、攻撃を仕掛けると、周囲に数体の獣人モンスターが出現して襲いかかってくるのだ。このモンスターは外見こそ見慣れた獣人と似ているものの、まったく別の生物だと考えた方がよい。平均レベル70の2パーティ程度でようやく倒せるかどうかという桁違いの強さである。単体ですらここまで強い獣人が、束になって襲いかかってくるのだ。
しかも石像モンスターは、物理攻撃に対する防御力が異様に高いという厄介な性質を持っている。これを真正面から相手にしていたら、何人いてもきりがない。何度か試行錯誤を繰り返す内に、魔法攻撃に限っては、石像へ通常通りのダメージを与えられるという点に気付いた。そこで編み出した戦術は、石像と獣人が本陣へ向かってきたら、黒魔道師を中心としたチームが、各々が持つ最強の精霊魔法を石像へ一斉放火。同時にナイトを初めとする前衛ジョブは獣人をがっちり受け止め、他メンバーがそれをサポートするという戦術だ。こうした役割分担が、デュナミス攻略の基本中の基本である。
獣人モンスターにはジョブの概念があり、我々冒険者と同様に特殊攻撃を繰り出してくる。特に手に負えないものの筆頭は、召喚師の「アストラルフロウ」、モンクの「百烈拳」、それと忍者の「微塵隠れ」といった2時間アビリティ系である。しかし対策法もあり、アストラルフロウは召喚獣を魔法で眠らせることによって防ぐことが可能。百烈拳で狙われたキャラクタは、素早く攻撃範囲外へ走り抜ける。最後の微塵隠れは、もうとにかく気合いで耐えるしかない。
このように、モンスターの種類によって様々な戦術があり、状況に合わせて適切な対応を取る課程が面白い。当然ながらこれは、モンスターのジョブ種別を素早く報告し、リーダーが的確な指示を行ない、そして参加メンバーがきっちりと対応することで初めて可能となる。もう一度言うが、デュナミスの攻略は最大で64名の規模だ。まったくもって言うは易し、行なうは難しなのである。
デュナミスのモンスターを倒すと、ごく稀に先述したレリックやAF2等をランダムでドロップする。レリックもそうだが、特にアップグレードの手間を必要としないAF2は、ロット画面でその強力無比なステータスを確認できるため、俄然盛り上がる瞬間だ。運良くAF2を取得できた冒険者は早速身につけ、その珍しい姿を一目見ようと仲間達が周囲に群がり、そして時にはRaidが一時中断することもある(笑)。やはりなんだかんだ言っても、多くのプレーヤーがこの瞬間を一番楽しみにしているのではないだろうか。ちなみにどうでもいい話だが、まだ筆者はAF2をひとつも持っておらず実に悔しい。
デュナミスのエリア内には石像タイプのモンスターが多数配置されており、これを少しづつ倒しながら侵攻するという雰囲気である。侵攻する順番については適当、というわけではない。実はデュナミスエリアに滞在できる時間には制限があり、初期段階では60分となっている。しかし、特定の石像を倒すことで、滞在時間が数十分単位で延長される仕組みなのだ。
現実的にはチームが1、2度半壊すると、復旧に要するタイムロスで余裕はほとんど無くなってしまう。また、滞在時間に比例してアイテムを得られるチャンスも増えるため、時間延長の石像モンスターの配置を覚え、これを効率よく目指すことも最重要ポイントのひとつである。
■ デュナミス挑戦時の注意点とその対策法
ここまで読んで貰えれば、少なくともデュナミスの戦闘環境が通常の冒険とかけ離れていることは、理解してもらえただろう。あるいは、これまで敬遠していたユーザーの中にも参加する意欲がわいてきたという人もいるかもしれない。
しかし、通常の冒険とかけ離れてるというのは、言い換えるとそれだけ独自のノウハウが必要になるということでもある。そこで、デュナミスに挑戦する際に各自注意すべき点をアドバイスしておきたい。これらの対策法をお互いに伝え合っておけば、それだけでもデュナミスでの冒険がかなりスムースに進行するはずだ。
まず、もっとも注意せねばならないのが描画処理関連である。先に下層ジュノの競売前を例に挙げたが、やはりこれだけの数のキャラクターが一斉に戦闘を行うと、通常の冒険よりも処理がどうしても重くなってしまう。敵味方が密集しているので、たとえばマウスによるターゲット指定など、常日頃から慣れたアクションを行ないづらいのだ。
この問題に対しては、ゲーム内での描画に関するオプションを一時的に変更すると効果がある。具体的には、画面内のキャラクター表示数やモーションレート、表示距離、天候エフェクト等を総て最低値に設定すると大分改善されるはずだ。さらにWindows版に限っては、スタートメニューから「Final Fantasy XI Config」を実行し、「ScreenSize」タブ内の解像度設定を縮小すると明らかに違いを感じられるだろう。
また、アビリティや呪文等の描画に関連したオプションの「バトルエフェクト」を変更するのもお薦めである。さらに、描画からは少し逸れてしまうが、デュナミス侵攻中はメッセージが滝のように流れるため、「チャットフィルター」もチェックし、自分への影響が薄い項目はカットするとよい。ただ、これらのオプションはゲーム環境を大きく変えてしまうため、どのような効果があるのか事前に確認しておこう。
次に、デュナミスに侵攻する前の準備関連である。数十名もの冒険者を集めねばならないため、これに要する時間だけでも相当長くなってしまう。特に一般公募で集める場合は、十分な戦力が揃うまでに2~3時間掛かることも珍しくない。その後にパーティ編成等の準備を整え、数時間のデュナミス侵攻を行なうわけだ。準備時間を含めると余程手慣れたチームでも最低4時間、一般公募を含むと6時間以上に及ぶことも多い。
この問題ついては、参加者の1人1人が開始日時をきっちりと守るしかない。もしデュナミスに参加するのであれば、自分くらいは少々遅れても何とかなるだろう、という甘い認識は即刻捨てたほうがいい。少々堅苦しいと感じるかもしれないが、たとえゲームとはいえども集団行動に変わりはないのだ。参考までに言うと、統率の取れたチームは集合から30分程度でデュナミスエリアに侵攻できているケースも実際にある。
また、一度にデュナミスへ侵攻できる人数の上限が、64名となっている点も注意しなければならない。これは1つの団体としての上限人数を指しているのではなく、仮に64名の団体がデュナミスエリアに侵攻している最中は、ほかの団体がそのエリアへ入ることができないという意味である。
つまり、参加者を集めて現地へ到着しても、バッティングする可能性があるのだ。知人のつてを辿ったりして何とかして人数をかき集めたものの、現地に到着したら既に先客がいたので中止します、では泣くに泣けないだろう。最近ではデュナミスに挑戦しようとするチームも数が多くなってきており、もしかすると今後深刻化するかもしれない。
バッティングに関しては、外部のプレーヤーに向けても告知を行なうことで未然に防げる可能性が出てくる。一例としては、ジュノにて「明後日の土曜日、午後4時よりデュナミス-ウィンダスへ行きます。同時刻に検討しているチームがあれば御一報下さい」といったシャウトを行なう。逆に、他のチームからこのような発言を聞きバッティングの可能性があると思ったら、自分達の主催者に報告するとよい。この程度なら別に誰でも行なえることだろう。デュナミスにおける主催者の役割は非常に多い。参加者が手助けできる範囲内であれば、積極的にサポートを行なうべきだろう。
■ 大人数によるプレイスタイルの選択肢が追加されたことを歓迎
デュナミスは既存のRaidシステムの規模に留まらない、チャレンジングな試みである。既にデュナミスでの動作環境を改善させるためのアップデートも幾つか行なわれており、環境は今後より良くなるはずだ。そんな些細なことよりも、数十名単位で楽しめるコンテンツがFF XIに導入され、プレイスタイルの選択肢がさらに広がったことを素直に歓迎したい。
そして、今後デュナミスがどのような展開を見せてゆくのかが、一プレーヤーとしても楽しみでならない。というのも、「バストゥーク、サンドリア、ウィンダス、ジュノ」よりも先のデュナミスエリアは、本稿で触れた内容と微妙に異なっているのだ。一例を挙げると、ボスディン編では広大なエリアを迅速に侵攻するノウハウが求められ、最後のボス戦ではあっと驚く仕掛けが用意されている。また、ザルカバード編ではこれまでの石像モンスターすら出現せず、基本戦術面からしてがらりと変わっているのだ。筆者は他MMORPGタイトルにおけるRaid経験はそれなりにあるが、それでも特にザルカバード編の侵攻は非常に新鮮でこれまで以上の手応えを感じている。
現在導入されているデュナミスエリアは合計6カ所だが、ストーリー面やレリックのアップグレード段階数も考慮すると、まだまだ先があるような気がしてならない。また、ボスディン編やザルカバード編を見るにつけ、デュナミスがいったいどこまで進化するのかを見届けたいという気持ちもある。かつてEQにおいて、初めてRaidというシステムが産声を上げた時(Lady Vox/Lord Nagafenのドラゴン討伐戦)から、現在に至るまで様々な進化を遂げてきた。FF XIのデュナミスは、これらとは異なる方向性での大人数プレイスタイルの可能性を感じさせるものだ。そして、それが純国産製のMMORPGタイトルであることを素直に嬉しく思う。これからデュナミスを長い目で見守ってゆきたい。
デュナミスはレベル制限や参加費の徴収など、参加条件が厳しく、万人にお奨めできるコンテンツではないが、新鮮さという意味ではこれ以上のものはない。普段の冒険やリンクシェルの雑談等で、話題が上がることもきっとあるはずだ。興味を持った読者は、本稿では触れられていない点も含めて、彼等から生の声を聞いてみてほしい。初めてのデュナミスへの冒険が、あらゆる意味で衝撃的となることは筆者が保証しよう。
ザルカバード編 デュナミスのザルカバード編では、BGMに名曲「Awakening」(闇の王戦のテーマ)が常時流れ、しかも侵攻手順が独特なため実にワクワクする |
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(2004年7月13日)
[Reported by 川崎政一郎]
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