歴史シミュレーションファン待望の大本命タイトルParadox Entertainmentの「ヨーロッパ ユニバーサリスII」が、ついに日本語版として発売された。「アジア チャプターズ」(以下、EU2AC)という名のとおり、日本語版のベースとなったのは、香港の販売代理店Typhoon Gamesによって東アジア各国のプレイが拡張されたバージョンだ。オリジナル版EU2では地域のエリア数が少なく、かなり辛かった日本や李氏朝鮮でのプレイも、十分楽しめるように改良されている。今回は、オリジナル版をプレイしたことがない人でも、一刻も早くEU2ACの世界に「浸れる」よう、その「ツボ」をお伝えしよう。 なお、今回のレビューに際し、当初は最初β版でプレイしていたが、その後、製品版パッケージを購入し、3月26日にキッズステーションのサイトで公開されたパッチを当てた上で、チェックを行なっていることをあらかじめお断りしておきたい。
■ 日本人らしい「EU2ACの遊び方」とは? 改めて一言でEU2ACを説明するなら、「1419年~1820年までの400年間の世界史を再現した」ゲームだ。プレーヤーは、好きな一国を選び、ゲーム中での時の経過とともにその歴史をたどる。ゲーム自体の勝利は、軍事、経済、外交そしてあるミッションを達成すると得点できる「勝利ポイント」を、シナリオ終了時にどの国よりも高くすることだが、勝利ポイントについては実のところそれほど神経質にならなくてもいい。「Civlization」シリーズが抽象化された文明のエッセンスを楽しむ作品だとすれば、EU2ACはあくまで、具体的な歴史的できごとを追体験する作品なのだ。 と聞くと「う~ん、世界史習ってないから、歴史のでき事がよくわからないなぁ」とひいた人がいるかもしれない。では、こう言い換えたらどうだろう? EU2ACは、「室町時代以降の日本を世界に雄飛させられる」ゲームだと。「信長の野望」のように全国を統一したら終了、ではなく、EU2ACの日本では、統一された日本で世界に乗り出すところからゲームが「始まる」のだ(これは日本以外の国でも同じだが)。
EU2ACでは、オリジナル版EU2の(ヨーロッパの歴史事実に絡んだ)8シナリオからアメリカ独立戦争を扱った「The American Dream」を省き、新たにアジア地域のイベントに絡む6シナリオが追加されている。ゲーム終了時期は1820年(正確には1819年末)だ。
・Cultural Metamorphosis:1603年~(徳川家康が征夷大将軍になった年) いずれも多少の歴史イベントが追加されてはいるが、基本的にはイベントはあまり気にせず、各年代の大まかな国際関係を踏まえつつ、プレイする国家を選べばよい。グランドキャンペーンの始まりである15世紀は大航海時代以前なので、アジアの国々であれば当分の間、のんびりプレイできる。大航海時代以降になると、16世紀はスペイン・ポルトガル、17世紀はオランダ、18世紀はイギリスとフランスが「世界中をのし歩いて」いるので、アジア諸国もその影から無縁ではいられない。
また、日本でプレイするときは、16世紀末までの戦国時代関連イベントが引き起こす国内の混乱が非常に厳しいので注意しよう。初めてプレイする人は、戦国の争乱が終結した時点(1603年)から始まる「Cultural Metamorphosis」あたりで慣れてから、戦国時代に挑戦したほうがよいだろう。 ■ 何事も最初が肝心、シナリオ開始時の調整を忘れずに
「シングルプレイ」からシナリオ「Cultural Metamorphosis」で日本を選び、プレイを開始すると、すぐに画面上の日付がどんどん進み始めてしまう。このリアルタイム制がEU2ACの「歴史を追体験している感」を高めてくれるのだが、最初は「何をすればいいの?」と面食らう人も多いだろうし、内政の調整を何もせずにゲームを始めると、財政バランスが一気に崩れる国も多いので、ゆっくり考える必要がある。 そこでまずは上のバーの右端の砂時計を一度クリックするか、キーボードのPauseボタンを押して時間進行を止めよう。以後、長考したい人はその都度進行を止めるほうが落ち着くだろうが、たびたびポーズ状態にするとプレイ時間が必要以上に長くなってしまうので、代わりに「オプション」でゲームの進行スピードを落とす、という手もある。ゲームスピードは5分=1カ月から1分=2年まで8段階で設定できる。
地図はエリア式になっている。ズームは3段階。各エリアをクリックすると、左の「情報ウィンドウ」にそのエリアの都市の情報が表示される。都市内の施設の建設や陸海軍の整備、宣教師、外交、貿易、入植などのコマンドも、基本的にこのウィンドウから操作する。生産された陸海軍ユニットはメインマップに配置され、そのユニットを選択して目的地(エリア)を右クリックすることで軍事行動(移動・戦闘)を行なっていく。
また、ミッションが空白(ひとつも選んでいない)のまま一定時間が経過すると(たとえそれがほとんど実現不可能なものであっても)強制的にミッションが選択されてしまうので気を付けよう。とりあえず初期は「Sanin Doを保持」を選んでおけばいい。何故かこのシナリオは、「Kinki」(京)でも「Kanto」(江戸)でもなく「Sanin Do」(山陰道)が日本の首都だ。 続いてチェックしておくのは、陸軍と海軍の維持レベルだ。開始時はどちらも100%になっており、陸軍はサポート可能な兵力を超過しているために維持費が著しく割高になってしまっている。当面戦争をする気がなければサポート兵力一杯まで口減らし(解散)してもいいが、少なくとも維持レベルは平時50%まで落とす。兵力は減らないものの反作用として兵の士気が下がるが、元々日本のサムライは士気が高目なので、戦時でも相手が反乱軍などの非正規兵なら維持レベル50%でもたいていは対処できる。とはいえ、宣戦布告の前には、維持レベルを引き上げるのを忘れずに。 次は、上中央の国マーク(日の丸)をクリックして、国と君主の情報に切り替えたあと、左側の日の丸をクリックする。これで内政情報が表示される。どれか1カ所でも内政方針のメモリを動かすと、以後10年間はイベントによる強制を除き変更ができない。さらに「安定度」が1落ちるので、現在の安定度が1以下のときは操作しないほうが無難だ。などなど注意しつつ、中央集権/地方分権、陸軍重視/海軍重視、あるいは重商主義/自由貿易主義といった国家の基本方針を徐々に固めていく。 また、国情報から右の宗教アイコンを押すと、各宗教に対する寛容度が設定できる。各国には「国の宗教」(日本は「儒教」)があり、各エリアには「州の宗教」(日本列島では「仏教」が圧倒的に多い)がある。この2つが一致していれば心配いらないが、2つがくい違い、かつ州の宗教に対する宗教寛容度が低いと不安定な領土になりがちだ。今後の対外政策を考えて、自国や親密になりたい国の宗教を意識して寛容度を設定すればいい。 -3~+3で変動する安定度は、国家運営でもっとも重要なパラメータのひとつだ。上記の内政方針変更に加え、悪いイベントが来ればバンバン下がるし、外交の選択(同盟の解消など)でもよく下がる。安定度が下がると各エリアで反乱が起きる確率(リスク)が上がるだけでなく、国家の収入にも影響する。 +3まで上げるにはかなりの時間と費用がかかるので、イベントでの「安定度-○」という選択肢はできるだけ選びたくない。外交でも考えなしに多くの国と貿易協定や同盟を結んでしまうと、多国間での戦争になったときなど、何をどう選んでも安定度が下がってしまう、という事態もありうる。せめて、平時は常に「2~3」をキープするよう気を付けて、安定度が低いために外交で有利な選択ができない、などといったことがないようにしたい。 最後に、「予算編成」ウィンドウを調整しなければならない。国家の収入は、年頭(1月1日)に入る税収と、毎月1日に入る収入がある。年収は純粋な収入として考えてよいが、月収のほうは予算編成での支出が差し引かれる。つまり、シナリオが始まって1カ月経たないと、この毎月の収支(「財政サマリー」に表示される)がわからないのである。そこで、必要なら兵の移動などを命令してから、2月1日まで時間を進めよう(もちろん、ゲーム冒頭である程度まで予算を調整しておき、1カ月後に微調整、という手順でもよい)。 その後、「陸軍技術力」、「海軍技術力」、「安定度」、「貿易レベル」、「インフラストラクチャー」にそれぞれ予算を振り分ける。先にも書いたとおり「安定度」が最優先ではあるが、早めに戦争をしたいプレーヤーは、陸軍、海軍の技術力も早めに上げていくべきだ。というのは、このゲーム、同数の兵力が戦うと、技術力の格差と士気の差で勝負が決まる。たとえば陸軍技術力で相手が10レベル以上優越していると、相手の3倍の兵力でも敗北することがある。 文化の違いで欧州諸国のほうがレベルアップまでのハードル(必要資金など)が低く、また、1603年には欧米のほうが高めの技術力から始まるので、日本プレイでこれ以上の差を付けられると、戦いが非常に苦しくなる。アジアやアメリカ諸国でのプレイは「当分欧州諸国とは戦わない」と割り切り、外交を駆使して(欧州諸国同士を戦わせる、などで)政治目的を達成するのもひとつの方法だが、それでも戦争が避けられないときのために、できる限りのレベルアップは考えておきたい。
予算の残りは国庫に納められるが、これがまたくせ者だ。この金額がプラスになっていれば、手持ち資金が毎月増えていくのだが、国庫に残せば残すほど、「インフレ」が進行してしまう。インフレは兵士を始めとするあらゆる買い物の値段をつり上げるので、抑制するにこしたことはない。ローンの返済などで一定の資金が必要な場合は例外としても、国庫へ入る資金は限りなくゼロなるよう、予算は使い切るのが定石だ。それでもたいていインフレは進行するが、年に0.1~0.2%台であれば、イベントの「デフレーション」や、各エリアで「知事への昇格」をすることにより、制御可能な範囲に留めることができる。
■ 世界の地理を知らない国は、何もできない弱小国となる さて、1603年シナリオが始まって1カ月半、2月15日になると5つのイベントが同時に起きる。「○○の苦境」というこれらのイベントはおそらく関ヶ原の戦後処理を指しているのだろうが(それにしても3年ほどずれているが)、ここで「伊達の苦境」に対して必ず「彼らの好きにさせる」を選ぶこと! すると、1人の「探検家」を手にすることができる。 海軍ユニットのリーダーとして登場する「探検家」と、陸軍ユニットのリーダーとして登場する「征服者」の入手は、EU2ACで植民地を作るための必須条件だ。西欧各国には史実の著名な探検家(たとえば「コロンブス」)や征服者(たとえば「コルテス」)が登場するが、日本など他の国では、ランダムに登場するのを待つしかない。これは植民地争奪戦における、大きなハンディキャップなのだ。シナリオ冒頭から探検家を入手できるイベントがいかに貴重かは、EU2ACをプレイすればするほど実感されてくる。
東アジアにはすでに既知の中国(明帝国)と満州、李氏朝鮮が存在するので、探検家/征服者がいなくても進出は可能だが、史実の朝鮮出兵のてんまつを知っていれば、相手の強さは容易に想像がつく。最初から総力戦覚悟なら別として、中途半端に挑むぐらいならいっそ、史実の徳川幕府と同様に親交を結んで貿易の利を得たほうがいいだろう。 一方、南太平洋方面は、島々を飛び石でたどることになる上、すでにフィリピンやインドネシアの豊かなエリアにはスペイン、ポルトガルやオランダ勢が進出済みなので、あまりうまみがない。とすると、探検家を進めるべき道は、史実で山田長政等、浪人たちが移民していった道を東南アジア方面に足場を築くか、北米西海岸の地を目指すか、そのどちらかが現実的だ。 探検それ自体はごく簡単で、陸軍/海軍ユニットを選択したあと、未知のエリアで右クリックして移動経路を選択するだけだ。このプレイでは、まず北米西岸を目指すことにするので、とにかく東へ東へと未知の海を切り開いていけばいい。ゲームに添付された紙の地図を参照すれば、どのエリアを通過していくのが最短コースかがおおよそわかるが、後々のためにハワイ諸島は必ず通過するようにしておこう。 最短コースを通る理由は、既知の沿岸エリア以外の海上エリアでは、海軍の「消耗」(船の数の減少)が著しいためだ。海軍が消耗して全滅すると、探検家は寿命を残して海の藻屑となってしまうので、それだけは避けなければならない。そして、未知のエリアは既知のエリアよりも移動に時間がかかる(=消耗が激しい)。必然的に、一度で一気に西岸にはたどり着けないので、3、4回日本との間を往復しなければならない。 探検家は、沿岸の陸地エリアを一定の確率で発見できる。一度で発見できなければ、何度も沿岸を行き来してみよう。プレイ開始から3年目、1606年3月24日に、ようやく沿岸エリア「Nehalem」を発見した。ひとつ沿岸エリアを発見したら、次はそのエリアに、入植者を送り込む。 入植者の数は、序盤ではおもに内政方針に依存する(国の宗教にも依存するが、日本の場合、儒教の入植者への効果は「0」)。大体年に2人(ユニット)ぐらいは登場するよう、内政パラメータを調整しておきたい。手持ち資金に余裕ができたら、各沿岸エリアに「造船所」を作ることで、年に1人ずつ入植者を増やすことができる。
入植者の利用法には、「交易所」と「植民地」の2種類がある。交易所が有効なのは、そのエリアの先住民の数が多い、あるいは攻撃性が高い(=植民地が作りにくい)場合だ。植民地に比べて安いコストで、交易センター経由の収入を得ることができる。価値の高い商品を生産するエリアでは、なお効果が高い。交易所はレベル6まで拡張することができる。
内陸の未知の土地は、通常、征服者を使って探検することになる。東南アジア方面であれば、探検家で発見した沿岸の中小国との関係を向上させてから「探検地図情報の交換」を成功させれば、相手国が知っているエリアを既知にできる、という近道もあるが、北米方面では接触相手はスペインぐらいしかおらず、スペインとの地図交換はかなり困難なので、日本としては、ランダムな征服者が登場するまで待つことになる。 ■ 貿易と生産をスパイラルで拡大し、300年早く富国強兵を実現せよ!
EU2ACでの貿易は、抽象化されたシステムになっている。世界各地に「交易センター」(CoT)エリアが点在し、各国はそこに商人を送り込む。各CoTの価値と商人の数、その国の貿易レベルに応じて貿易収入が決定される。登場する商人の数をもっと増やすには、安定度を上げ、CoTのある都市エリアを領有し、「独占」(商人を6人送り込むことに成功した)市場を増やすことを目指す。 つまり、独占市場を増やすほど、収入も商人の数も増え、自国の商業は繁栄する、ということだ。探検でCoTを発見したら、あるいは新たなCoTが設立されたら、資金が許す限り速やかに商人を送り込もう。いずれ領土数が増えたとしても、価値の高い商品があるエリアからの上がりを回収するには、そのエリアが属するCoTを支配しなければ意味がないのだ。 他国の商人から自分の市場を守るにはどうするか? 独占したCoTにさらに商人を送り込むと、他国の商人を排除できる。独占状態のCoTでは、CoTの全20スロットのうち他国商人数の合計を差し引いた残りスロットすべてから収入を得ることができるので、他国をすべて排除できればCoTの収入自体も独占できるのだ。その武器として、外交の「貿易禁止」がある。これを通知すると、自国が領有するCoTから特定の国の商人を閉め出すことができる。その際、内政の「重商主義」を推進すると効果が増す(ただし登場する商人数は減る)。 逆に、敵地に乗り込むときには「貿易協定」が有効だ。協定を結んだ相手国からは自国商人を排除されたり貿易禁止を通知されたりしなくなるので、CoTの領有国や戦略的に重要な友好国とは貿易協定を結ぶのもよい政策だ。このようにして、世界各地のCoTに食い込んでいけば、毎月100以上の収入を得るのも難しいことではない(=陸海軍技術レベルを早く上げられる)。 税収を上げるもうひとつの柱として、「役人の昇格」がある。廷吏を収税官に、弁護士を裁判長に、市長を知事にそれぞれ昇格させると、そのエリアの税収、生産収入を上げることができる。収税官の設置には反乱リスクを上げるデメリットがあるので、早急に反乱リスクを下げる裁判長をペアで設置していくようにしたい。 また、工場を建設することでも収入を増やすことができる。「美術学校」、「兵器工場」、「海軍設備工場」、「醸造所」、「産物工場」のそれぞれに、最大12の年収増をもたらす条件(たとえば「兵器工場」なら「鉄」か「銅」を算出するのエリアに設置など)がある。工場には、予算編成の各項目に割り当てられる資金を(月収とは別に)増やす効果もある。
以上の手段を組み合わせて本国や海外の都市に展開し、次第に国家の財政力を増やしていくことで、より積極的な(カネのかかる)外交・軍事行動が可能となり、それがまた国力を高めていく。1603年のスタート時点では東洋の島国に過ぎない日本でも、史実の幕府が選んだ鎖国による天下太平に代わり、北米植民地を基軸とした海洋立国を目指すことは十分に可能だ。 ■ 平時の外交と有事の戦争は、表裏一体
外交官の数は君主の外交能力に依存するので、こればかりは歴史上の君主の評価に依存せざるをえない。結果、日本プレイでは、戦争が迫ると外交官不足に悩まされることが多い(史実では鎖国していたので、当たり前ともいえるが)。少ない外交官を有意義に使うよう努力したいところだ。イングランドやオランダとは極力親善関係を結びたいところだ(フランスはいずれスペインの宗主国・同盟国となる可能性――ブルボン家によるスペイン王国の継承――があるので、当てにできない)。 具体的には、地道に関係を改善して(対西欧諸国の場合、改善にかかる金額も中小国の10倍近いので「紹介状を送る」で小刻みに改善していくしかないだろう)、貿易協定を結び、「軍隊通行許可」を要求し、できれば同盟を結ぶ。ただ、同盟についてだけは、イングランドやオランダだけを見ることなく、他の同盟国を慎重に見極めてから締結するように注意しよう。というのは、メンバーの多い複雑な同盟に参加すると、あるメンバー国が起こす戦争への参戦が、別の友好国への敵対行為になりかねない場合もあるからだ。 もし自国が新教国なら、イングランドやオランダと「王室間の婚姻」もできるのだが、残念ながら日本は儒教国なので、婚姻政策が取れるのはキリスト教国と異教国以外に限られる(仏教国はいいとして、イスラム教国、ヒンドゥー教国とも婚姻できるのは? だが)。婚姻については、他国と婚姻を結んだあと、それを根拠に「併合」へと進んだり、逆に「王位を要求」して戦争の「大義名分」を手に入れることができる。 婚姻に限らず、この「大義名分」(Casus Belli、「開戦理由」とも訳される)があれば、安定度の低下を招かずに宣戦布告ができる。したがって、ターゲットの国に宣戦する前には、周辺の第三国に「保証を宣言」したり(その第三国に宣戦した国に対して大義名分を得る)、「警告を送る」(ターゲット国が自国の周囲に宣戦したとき大義名分を得る)などの布石を打ち、常に戦争は受けて立つ態勢にしておきたい。 いざ戦争となれば、敵領土に侵入し、敵陸海軍を撃破し、都市を攻略・占領し、というプロセスを繰り返して、和平交渉を有利に締結できる環境を整えるのが戦争目的になるのは他のゲームと変わらない。戦争が長引くと、次第に国家は疲弊し、反乱の起きる可能性が上昇する。和平交渉は占領した領土の割譲と賠償金がおもな議題となるが、戦果より控えめに要求するなど、当初の目的を達成したらずるずると戦争を続けず速やかに収拾するよう、心がけたい。 敵味方の陸海軍が同じエリアに入ると、戦闘が発生する。戦闘はお互いの兵数(陸軍は歩兵/騎兵/砲、海軍は軍艦/ガレー船/輸送船)、その士気、その技術力から実際の戦力が計算され、自動的に解決される。日本軍は士気は元々高めなので(内政で「量重視」を志向していなければ)あまり気にする必要はないが、むしろ西欧諸国と戦争する際は、技術力の格差が大きな問題となる。 技術力を底上げするため、「徳川の伴天連追放令」イベントを利用する手段がある。1614年2月14日の最初のイベントで「キリスト教徒を迫害する」を選び、すぐ次の4月14日のイベントで「キリスト教徒を大目に見る」を選択すると、日本の「技術」パラメータが「中国」から(なぜか)「ギリシア正教」に変更され、技術が改善されやすくなる。 これで多少なりとも技術力が西欧に引き離されないようになるが、その代償として、以後ゲーム終了まで、北九州エリアの反乱リスクが10%底上げされたままになる。この流れを選んだときは、20,000~25,000の兵力を常時北九州に駐屯させておけば、いざ反乱が起きても対処できる。とはいえ、根本的には国力を上げ、陸海軍技術力改善に投入できる資金量を増やすのがベストの政策であることは忘れないよう。
最後に、実戦で気をつけたい点をひとつ。EU2ACでは、敗戦した陸軍は隣のエリアに退却する。ところが、自軍のいない自国領に退却される場合があり、士気を回復したその敵部隊に都市が被害を受けることがしばしばある。戦力の集中には反するが、できれば後背の自国領には後詰めの戦力を残して戦うようにしたい。 ■ ユーザーの手で修正・改善ができる、希有なSLG
3年前、筆者が初めて初代EUを紹介したころは日本で知る人など皆無に近かったEUシリーズだが、今ではインターネット上に日本語でEU2、HOI、Victoriaそれぞれの攻略情報やプレイレポートが複数載るようになり、掲示板での情報交換も活発に行なわれている。そして今回の日本語版EU2AC発売。すでに発売後2週間が過ぎているので、正直なところ、筆者のなまくらプレイなどよりも日本で大きな成功を納めている方も少なくないだろう。 EU2ACの時代(19世紀の国民国家成立以前)には、王や皇帝による私的戦争が目的達成の手段として公認されていた、という厳然たる事実まで含めて、このタイトルには歴史の教科書よりずっと看取すべき内容が詰まっている。「アジア」チャプターズといいつつ、日本の地勢が微妙に間違っているなど気になる点はあるものの、オリジナルEU2に比べればアジアの歴史により正確に迫り、かつプレイの幅とが広がったことは素直に歓迎したい。 若干の問題点を挙げるとすれば、日本語の訳語だろう。文章のできがどうこう以前に、歴史事実を理解せず直訳しているように見受けられるのは残念だ。西欧中小国の翻訳が甘いのはやむを得ないとしても、上記した「伊達の苦境」イベントなど日本関係のイベントまで不可思議な説明が直訳されているだけなのは、本来賞賛すべき快挙である日本語化の中で、とても残念なことだ。せめてアジア関連の翻訳と内容チェックには、日本人監修者を起用すべきだったのではないだろうか。 もっとも、Paradoxのタイトルはテキストスクリプトの修正で改善できることが多いので、おそらく今後、EU2ACについても日本人ユーザーの有志で改善への取り組みが進んでいくことだろう。ただ、プログラム部分のパッチだけはフォローをお願いしたい。特にオリジナル版EU2は、先日バージョン1.08がリリースされ、基本システムにも手が加えられたばかりだ。Paradoxタイトルのライセンスである以上、せめてメジャーなパッチについては日本語版でも対応してほしい。
ところで、日本以外の国でもプレイしてみようと思ったものの、どの時代のどの国を選べばいいか悩んだときは、ゲームのCD-ROMの中に「ヒストリカルブック」がPDF形式で収録されているので、これをざっと読んでみるといいだろう。市販の一般向け歴史書は、すべてEU2の参考書になることは言うまでもない。プレイ中のイマジネーション(あるいは妄想)を豊かにするため、ゲーム中に引っかかった人物やイベントに関係する本をいろいろ読んでみてはいかがだろうか。
□「ヨーロッパユニバーサリス II アジアチャプターズ」のホームページ http://www.kids-station.com/game/eu2/index.html (2004年4月23日)
[Reported by culi]
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