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人類の転機となった9つの時代をピックアップ
更に奥深くなった歴史百科事典ストラテジー

シヴィライゼーションIII コンクエスト

  • ジャンル:ターンベースストラテジー
  • 開発元:サイバーフロント
  • 価格:オープンプライス(完全日本語版)
  • 対応OS:Windows 98/Me/2000/XP
  • 発売日:4月2日


 実際に起こった歴史の再現性とゲーム性とを両立させた「Civilization」は、一部で熱狂的なファンを持つシリーズだ。その最新作となる「Civilization III」に2番目の拡張パックが発売されることになった。ある時は戦国時代、またある時は太平洋戦争などの9つの場面を、異なるゲームシステムで遊べる贅沢な内容である。


■ 複雑に絡み合う人類の歴史を、地球全史規模のスケールで再現

ターン進行であるCivの戦闘に、AoEのようなアクション性は無い。その代わり局地的な戦術面から一歩引いた視点の、より戦略的なプレイを存分に堪能できる
 「Civilization」(以下、Civ)シリーズは、原始時代の太古から宇宙ロケットが飛び出す近未来までの、6,000年以上にも及ぶ地球全史を扱ったターン制のシミュレーションゲームだ。プレーヤーはたった数名の開拓者を元手にスタートし、町を築き、次第に都市へ、国家へ、そして文明規模にまで民族を発展させていく。ゲームの最終目的が戦争による征服以外にも複数用意されており、様々なプレイスタイルを選べるのも大きな特徴である。

 Civシリーズを知らない読者には、「Age of Empire」のゲーム進行をリアルタイムからターン制に変更したタイトルと説明した方がわかりやすいだろうか。昨今のシミュレーションゲームは「Age of Empire」のようなリアルタイム型のゲームデザインが主流となっているが、落ち着いてプレイできるターンベース型も実は根強い人気がある。

 なぜならば、Civにおいて自国を発展させる技術ツリーは、実際に人類が得てきた英知の課程を忠実にシミュレートしている。また、手持ちの資源や技術などの切り札を用いて、ライバルと外交でしのぎを削るのは、終始せわしない展開のRTSにはない要素だ。コーヒーを片手に、人類がこれまで歩んできた歴史をゆったりとたどりながら未来へと思いを馳せるような遊び方は、Civならではだろう。

サムネイルをクリックして、各技術をどのような順番で習得してゆくかをじっくり見てほしい。Civは歴史に関する勉強用教材としても極めて優れている Civは都市運営の部分だけを抜き出しても1本のゲームにできるほど奥が深い。それだけに慣れるまでは大変だが、各分野のAI担当相が適切なアドバイスをしてくれる



■ プレイできる時代範囲を狭め、特化したルールを持つコンクエストモード

 今回紹介する「Civilization III: Conquests」(以下、C3C)は、Civ3に新たな要素を追加する2番目の拡張パックである。C3Cの最大の特徴は、人類史において重大な転機となった時代及び地域にスポットを当てていること。これらの場面は全部で9つあり、”コンクエストモード”というシナリオでプレイすることができる。

 コンクエストは従来のCivシリーズとは違い、それぞれシナリオでプレイできる時代が定められていることに注目してほしい。またコンクエストの種類によっては、あらかじめ発展した実在の都市や国でスタートするので、これまでランダムマップで文明を一から築き上げるプレイスタイルが主体だったCivシリーズとは、だいぶ印象が異なる。

 それだけならば有志のユーザーが自主配布するシナリオ集と大差はない。しかしC3Cコンクエストの凄い所は、当時の時代背景をより深く表現するために、ゲームの基本システム面にまでひとつひとつ変更を加えた仕様が用意されているのだ。コンクエスト用として独自に書き起こしたユニットや技術ツリーの構造、固定化された外交関係や勝利条件などの異なるゲームバランスが同時に9種類というのは、他に類を見ない規模である。

 つまりC3Cの基本コンセプトは、プレイできる時代範囲を狭める代わりに、その時代用に個別チューンしたゲームバランスを楽しむことにあるのだ。各コンクエストの詳細は後述するとして、とりあえずは他の主なC3C追加要素について説明していこう。

 プレーヤーが選択できる国は、Civ3から新たに「ポルトガル、オランダ、ピザンチン、ヒッタイト、シュメール、マヤ、インカ」の7つが追加され、全31カ国となった。これに伴い、政治体制と文明特性も新たなものが用意され、一部の既存国にも適用されている。今回新たに追加された国は、どちらかというと国家というより文明といった方が近いものも多いが、これはコンクエストの内容に沿ったものになっているからだ。

 ゲームの勝利条件は、これまでの地上制覇・国家征服・宇宙開発・文化繁栄・外交の各分野を極めることだけでなく、「不思議による勝利」が追加されている。様々な恩恵を与える不思議の総てを建築した時点で、ポイント数の最も多いプレーヤーが勝利するというシステムだ。

 ここでその総てを紹介することは不可能だが、前作から新しいユニットや技術開発、不思議、地形要素、資源、都市改善などは多数追加され、歴史シミュレーションゲームとしてのリアリティがより深められている。また、AIの進化やユニット生産時のラリーポイント設定などといった、細かなプレイアビリティ面での向上もある。ゲームの難易度も、最上級者用に「現人神、シド」という2つのモードが追加された。シドとは勿論、「Civilization」シリーズの生みの親であるSid Meierのことで、これまで最上位だった「天帝」の難易度を更に上回る。

 なお、1番目に発売されたCiv3拡張パック「Play the World」の要素は、すべてC3Cに引き継がれている。厳密に言うとCiv3とC3Cをインストールした時点で、スタートメニューに「Play the World」が登録される形だ。「Play the World」で追加された8つの文明や、レジサイドモードなどのマルチプレイは、Civ3+C3Cだけでプレイできる。もちろん、C3Cのコンクエストをマルチプレイで遊ぶことも可能だ。

コンクエストは国家を一から築き上げるといった下準備が必要ない。誰でも当時の歴史の激変をすぐに体験できるのだ 他国に先駆けて技術をいちはやく習得した際、稀に科学リーダーユニットが誕生するようになった。一時的に技術開発を促進させるなどの役割を持っている


写真の政治体制「ファシズム」を選択できるのは、やはりあの国である。こういった繊細な取り扱いが必要な要素をゲームシステムに反映させているのが凄い 今まででも十分すぎるほど難しいと思うのだが、コアユーザーはまだ満足できないようだ。この「シド」という難易度名称は、手がけたタイトルに自分の名前を冠させるSid Meierらしいアイデアだ



■ 「Civilization」の方法論で「信長の野望」を実現? ~戦国時代コンクエスト~

選択できる大名は8人だが、各地にはコンピュータの操作する他国が数多く存在する。開始時の拠点場所は、例えば織田信長なら尾張といったように史実になぞられている
 同じ拡張パックに納められたシナリオとはいえ、C3Cでプレイできる9つのコンクエストは、それぞれ基本システムが微妙に異なっている。ここでは我々日本人にとって最も馴染み深い、戦国時代を扱ったコンクエストを例に挙げ、従来のCiv3システムとの相違点を踏まえながらゲームの流れを追って説明していこう。

 「戦国時代(Sword of the Shogun)」コンクエストは、1467年の応仁の乱によって幕を開け、1603年に徳川幕府が成立するまでの日本を舞台としたシナリオである。この期間中、全国各地に乱立する諸国が、将軍の地位を目指し大小様々の戦いを繰り広げる。プレーヤーはそれらの中から一人の大名を選び、国を興して覇を競うのが目的である。

 より具体的に説明すると、「総ての大名を倒して天下を統一」、「70%の地上を領地にする」、そして「幕府を設立して投票によって征夷大将軍に推される(国際連合ではない)」のいずれかを達成した大名が勝利となる。幕府設立による勝利方法は、必ずしも戦闘を必要とはしない。いかにも「Civilization」らしい設定である。

 ゲームを開始して最初に気づくことは、開拓者と百姓(いわゆる労働者)の他に「大名」がユニットとして存在すること。大名とはいわば戦闘可能なヒーローユニットで、技術開発を進めると10段階のアップグレードが可能となる。最終的には攻撃力11/防御力11プラス様々な特殊能力を駆使する、シナリオ中最強のユニットとして君臨できるのだ。ゲーム序盤は内政作業を行ないながら大名を放浪させて、各地にいる原住民アイヌから知識を譲り受ける(強奪する)展開になるだろう。ただし、大名が倒された時点で即座にゲームオーバーとなってしまう点は要注意。

 大名以外の通常ユニットも、足軽や騎馬武者、侍大将といったように日本テイスト溢れるものとなっている。これらは既存のCivユニットの名称を変えただけでなく、同様に戦国時代に合うように調整された技術ツリーと密接に絡んでいるのが面白い。例えば、弓術を開発することで「弓大将」を作れるようになり、これに居合術と薙刀術を加えた後に武士道を開発し、「足軽大将」を作るといった流れだ。

敵対大名を滅ぼし、領土を広げるあたりは「信長の野望」となんら変わらない。日本文化の表現部分は違和感がまったく感じられず、これがCivであることを一瞬忘れてしまう 日本文化を体系別にまとめた技術ツリーを眺めているだけでも楽しめる。外国人が適当に作ったシナリオという認識はすぐに改められることになるだろう


待ちに待った鉄砲隊がようやく完成した。だが時代遅れになったユニットの処分や新たに必要となった資源の確保など、まだまだ問題は山積みだ
 一般的な戦闘ユニットに関する技術ツリーとは別に、文学や外交術を経て浪人と接触した後、最終的に「忍者」を作る流れもある。忍者は、山伏と極限までアップグレードした大名以外には探知されない特殊戦闘ユニットで、一方的な攻撃(つまり暗殺)が可能だ。

 このように、かつて日本史に実在したユニットを、技術ツリーを絡めつつ順を追って確認するのは、我々日本人ならとても興味深くプレイできるはずだ。この手の込んだシステムが海外において開発されたという事実は、映画「ラスト・サムライ」を観たときと同様に日本人として誇らしく思ってしまった。

 しかし、史実の日本史がそうであったように、戦国時代の戦術はいずれ激変することになる。その引き金となったのは、ポルトガル人によってもたらされた、黒色火薬と鉄砲の技術だ。この事象についても勿論C3Cでは再現しており、「ポルトガル人との接触」や「火薬」などの技術ツリーを経て、「鉄砲隊」ユニットを作れるようになる。

 鉄砲隊の威力は凄まじく、それまで最強のユニットだった騎馬隊など足下にも及ばなくなる。まさに、鉄砲の到来によって刀の時代は終わりを告げるのだ。他大名としのぎを削りながら、いかにして早くこの鉄砲の技術へと到達するかが、戦国時代コンクエストにおける最大の焦点である。

 これは一例だが、序盤は戦闘ユニットは一切無視してひたすら技術開発に資金を注ぎ込み、他大名に対しては土下座外交に徹する。その後、先駆けて鉄砲隊を編成できるようになったら、手のひらを返して破竹の勢いで天下統一へ突き進むといった展開も面白い。なお、鉄砲隊を生産するには、技術を進化させるだけでなく、新たな戦略資源「硝石」の確保が必須となる。これの取引を巡った外交手腕も中盤以降では大きな意味を持ってくるだろう。

 その他のポイントとしては、日本列島が細長い地形であることを利用するとよい。特に中部・近畿より西の地域は、2~3の都市を並べれば簡単に封鎖できる。とりあえず封鎖さえしてしまえば、後はよほどのことがない限りは邪魔されることがないだろう。この際、隣接する大名とは相互通行条約を結ばないでおけば、比較的楽に領土を広げられるはずだ。

文化の侵略によって他国の都市を寝返らせるのは、Civでもっとも快感を覚える瞬間かもしれない。極端な話、一度も戦闘を行なわずに天下統一を成し遂げることも可能だ 無事に幕府を設立して、征夷大将軍に任命された。しかし、これで終わりではない。次は難易度を上げてみよう、次は別の手段で天下統一をしてみようとあれこれ考えてしまうのだ



■ その他のコンクエスト概要を一気に紹介

1.メソポタミア(Mesopotamia)紀元前4000年~
 「文明のゆりかご」とも称されるメソポタミア盆地と地中海沿岸地方を舞台に、新たな文明を一から興すコンクエスト。「不思議」によって得られる勝利ポイントが通常時の2倍で、これらが総て完成した時点でゲームは終了となる。戦闘よりも内政の好きなプレーヤー向きのコンクエストだ。

2.ローマの勃興(Rise of Rome)紀元前300年~
 地中海の西部ではローマとカルタゴが戦争を行ない、それとは別に東部ではマケドニアとペルシャが同時に戦争を行なっている。これらの国家からひとつを選び、総面積の20%以上を領土とする帝国を築き上げることが目的。コンクエストの主役であるローマの戦闘ユニットは、まるで労働者のように道路を敷設でき、また市民は移動速度が速く都市間の移住に優れている。故に領土を広げる作業が桁違いに早く、地上制覇の勝利条件が好きなプレーヤーにはうってつけだ。

3.ローマ帝国の滅亡(Fall of Rome)紀元324年~
 かつては栄華を極めたローマ帝国も、内部にはびこる汚職のため東西に分割せざるを得なかった。しかし、分割後は周囲を取り囲む蛮族からの襲撃に悩まされるようになる。プレーヤーは蛮族のひとつを操り、東西どちらかのローマ帝国から合計8つ以上の都市を奪い取ることが目的。蛮族らしい粗暴なユニットが多数登場し、倒した敵を奴隷化させるなどといった特色を持っている。

4.中世(Middle Ages)紀元843年~
 大英帝国を元に分割された3つの国家と、誕生したばかりのイングランド王国は、それぞれ3人のキリスト教徒の王によって治められている。総ての国王ユニットを守りながら、聖地エルサレムへと聖遺物を届け、中世最大の王国へと発展させることが目的。聖遺物を無事に届けると多大の勝利ポイントを得られるが、他国王の抹殺による勝利も可能。しかしゲーム中盤以降は、伝染病(黒死病)の驚異が大陸全土を覆うようになる。

5.メソアメリカ(Mesoamerica)紀元300年~
 コロンブスが到来する以前の古代アメリカ。中南米の独創的な古典文明を発展させ、来るべき東からの征服者に備えるコンクエスト。敵兵を捕獲して奴隷として働かせ、しかもこれを生贄に捧げて勝利ポイントを得るというのは、C3Cの中でも特にユニークなシステムだ。また噴火して汚染を撒き散らす火山や、通行不可能な熱帯雨林など、原始的なシステムが数多く採り入れられている。

6.大航海時代(Age of Discovery)紀元1490年~
 黄金期を迎えたヨーロッパ諸国が自国を飛び出し、世界の覇者として君臨した大航海時代。植民地化を進めるヨーロッパ人と、それに対する原住民とのせめぎ合いがテーマとなっている。船舶や植民地化にちなんだ技術やユニットが多数登場。また、原住民側を選んでヨーロッパ勢力を撃退することもでき、両者でプレイ感覚がまったく異なるのが面白い。

7.戦国時代(Sengoku - Sword of the Shogun)

8.ナポレオン期のヨーロッパ(Napoleonic Europe)紀元1800年~
 フランスの若き皇帝ナポレオンが、ヨーロッパ全土に革命を広めるべく戦いを始めようとしている。一方、海峡を挟んだイギリスは、ポルトガルやオランダといったヨーロッパ諸国と同盟を結んでいる。フランスの戦闘ユニットの選抜兵と帝国騎兵は、他国の同等ユニットよりも攻撃力が3以上上回る。ナポレオンがヨーロッパ全土を征服するのか、あるいは同盟を結んだヨーロッパ諸国が彼の野望を阻止するのか?

9.太平洋戦争(WWII in the Pacific)AD 1941年~
 強大な軍事力を過信する日本は、マレー半島及びフィリピン諸島と、ハワイ近海に向けて領土を拡大しようとしていた。真珠湾の奇襲攻撃によって幕を開ける(最初のターンは日本のみ行動)本コンクエストは、軍艦名の多くが実名で登場し、人口1と引き替えに強力な爆破攻撃を仕掛ける神風特攻隊など、当時における日本の異質さがよく表れている。Civの説得力のあるシステムで描かれた第2次世界大戦は、吹き出す血などの直接的な描写は一切無いものの、筆者は思わず一歩引いてしまうほど生々しく感じた。

各コンクエストは世界史に従った内容だが、丁寧に解説してくれるため前提知識がなくても楽しめる。むしろプレイ後に、これまで知らなかった世界史への興味を抱くだろう 次々に不思議を建て、後世へと言い伝えられる偉大な文明を築き上げる。当時に暮らしていた人々の生活を想像しながらプレイするのが楽しい


生け贄の儀式。ひどい行為なのは十分承知だが、我が文明を発展させるためにはこれしかないのだ! 生贄の儀式からICBMミサイルまでを網羅するのがCivというゲームである 資源に乏しい大日本帝国は、国家を支えるために豊富な資源を持つ国へ攻めなければならなかった。コンクエストの視点で見ると、当時の日本がいかに無謀だったかがよくわかる


(C) 2001 Atari, Inc. All Rights Reserved. Sid Meier's CivilizationR, are U.S. registered trademarks. Atari and the Atari logo are trademarks of Atari, Inc. Firaxis Games is a registered trademark of Firaxis Games, Inc.


【シヴィライゼーションIII コンクエスト 完全日本語版】
  • CPU:Pentium II 400MHz以上
  • メモリ:128MB以上
  • HDD:1.2GB以上


□サイバーフロントのホームページ
http://www.cyberfront.co.jp
□「シヴィライゼーションIII コンクエスト」のホームページ
http://moon.cyberfront.co.jp/title/pc/civ3co/

(2004年4月1日)

[Reported by 川崎政一郎]


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