★ PCゲームレビュー★


度重なる開発元変更と発売延期を乗り越え
世界No.1FPSが大量の追加要素をひっさげてついに発売!!

Counter-Strike: Condition Zero

  • ジャンル:アクションシューティング
  • 開発元:Valve Software
  • 発売元:カプコン
  • 価格:6,800円(日本語マニュアル付き英語版)
  • 対応OS:Windows 98/Me/2000/XP
  • 発売日:発売中


 '99年に「Half-Life」用のMODとして無償公開されて以来、不動の人気を誇るのが「Counter-Strike(以下CS)」だ。約24,000台という対戦サーバーが、有志の手によって世界中で常時稼働しており、オンラインのプレーヤー数は常に平均55,000人を数えるという、名実共に現時点で世界最高峰のFPSだ。

 ルールはシンプルで、プレーヤーはカウンターテロリストとテロリストの2チームにわかれ、それぞれのチームの目的を果たすために戦うことになる。テロリスト側の目的はC4爆弾を設置し爆破したり、要人が救出されるまえにカウンターテロリストを殲滅すること。これに対し、カウンターテロリスト側の目的はテロリストの殲滅やテロリストが設置した爆弾の解除、要人の救出と護衛といったもの。

 この目的を果たすまでを1ラウンドと定義し、規定数ラウンドが終了した時点で、勝ったラウンド数の多いチームが最終的な勝者となるのだ。Cyber Professional League(CPL)やWorld Cyber Games(WCG)といった世界規模の競技大会では、5人1組でチームを構成し、24ラウンドを1ゲーム(前半後半12ラウンドずつ戦い、12ラウンド終了時点でカウンターテロリストとテロリストが入れ替わる)として戦うのが一般的だ。チームの目的を果たすか敵を殲滅すれば一応の勝ちという単純明快なルールと、実在する武器が登場する点などが好まれ、MODとしてリリースされてから5年たった現在でも続々とプレーヤー数を増やしつづけている。

 これだけの人気を持つCSだが、もともとの始まりがマルチプレイMODということもあり、他のFPSのようなシングルプレイモードが一切用意されていない。そのため、初めてのプレーヤーでもいきなりマルチ対戦に参加する形になり、上級者に一方的に倒されてしまうことが多かった。かといって練習するためには、既存のプレーヤーから手ほどきを受ける必要があり、FPS初心者にとってはハードルが高い作品と敬遠される事も多かった。

 今回紹介する「Counter-Strike: Condition Zero」(以下CSCZ)は、FPS初心者でも安心してCSをプレイすることができるように、シングルプレイモードや高性能AIを搭載したBOTによる疑似マルチ対戦、CSで人気のあるマップのリメイクなどが収録されている。また、CSCZの発表当初から長く心待ちにしていたプレーヤーにとっては、開発の関係上削除されたと発表されたシングルプレイモードが改めて実装されるなど、初心者から上級者まで満足できる特盛り級のボリュームを持った一本となっている。


■ 発売延期!? 開発中止!? 発売まで二転三転し、難産だったCSCZ

Ritualから公開されていたスクリーンショットの一部。特に日本ステージでは背景のテクスチャに採用されていた日本のアニメーションのイラストや、女子高生のセーラー服などが当時は話題になっていた
 CSCZは、「Counter-Strike」という世界規模で成功を収めたFPSの名に恥じない続編にしなければならないということから、CSCZの開発当初から異常とも言えるほどのこだわりを感じさせるプロジェクトとなった。まず、CSCZの開発は、「Quake」シリーズの拡張パックや「アリスインナイトメア」などの開発を手掛けたRogue Entertainment社が開発を担当する予定だった。しかし、Valve側が期待して開発を依頼していた開発者がRogue Entertainment社から退社したことで、満足のいくクオリティでの開発ができないと判断し、Rouge Entertainmentから開発権を剥奪した。

 次の開発会社としてValveが選びだしたのが、CSがまだユーザー開発のMODであった頃の開発に携わったほか、「Opposing Force」や「Blueshift」といったHalf-Life用のアドオンの開発を担当して、相応の実績を残していたGearBox Software社だった。GearBoxによる開発は順調だったようで、CS関連のさまざまなコミュニティサイトでは、開発中のゲーム画面がGearboxから公開され、CPLなどのプロゲーマーリーグ等での採用も発表されていった。

 公開された情報には、ロケットランチャーや盾などの新規追加武器やエフェクトなどの変更点、COOPモードの搭載。さらにプレーヤーがスキンを組み合わせ、CSCZならではのオリジナルスキンを組み上げるといった興味深い仕様となる予定だった。当然、ファンはこのまま順調に開発が進みリリースされるだろうと期待をしていたが、2002年中旬の発売予定がいつまでたっても続報は聞こえてこず、いつのまにかに発売延期から無期延期となってしまっていた。

 そして、次にCSCZのニュースが流れた際に多くの人が驚きを隠せなかった。いつのまにかGearBoxから開発会社が代わっていたのだ。Gearboxが開発から外された状況は不明だが、この発表に前後してPC版「HALO」の移植チームとしてGearBoxがアナウンスされていたことを考えると、GearBox自身が2本並行で開発できるだけの体力が無いと判断したのかもしれない。

 そして、CSCZの開発は第3の開発会社であるRitual Entertainmentに移管された。Ritualは、「Heavy Metal F.A.K.K.2」や「Star Trek: Elite Force 2」などの製作で有名な開発会社だ。Ritual版CSCZはGearBoxの手で作られていたデータは一切引き継がず、新たにシングルゲームとしてCSを楽しめることを主眼においた、ストーリー性の強い物を製作しはじめた。

 Ritual版には3Dゲーム界では有名なマップアーティストのLevelord氏が製作総指揮として順調に製作が進み、2003年のE3ではほぼ完成版が公開されていた。発売日は2003年の8月15日と発表され、早く発売日にならないかと思いを馳せていたプレーヤーも多かった(実際私がそうだった)。しかし発売予定日が近くなっても新しい情報はアップデートされず、発売延期の情報だけが流された。2度ある事は3度あるということわざもあり、ファンが不安になっていた矢先の事だった。「Valve側が求めていた水準のゲームとなっていなかったため白紙に戻し、新たに別の会社に開発を依頼した」と驚愕のコメントをValveが行なったのだ。

 結局、第4の開発会社としてTurtleRockStudioという、従業員数は4人の非常に小規模な開発会社が発表され、2003年の7月から開発が開始された。TurtleRock版では、Ritual版で製作されていたストーリーモードを省き、新たにTurtleRockで開発した次世代A.I.を搭載したBOTを導入してCS本来の持ち味を引き出す擬似オンライン対戦モード「Tours of Duty」モードを搭載した。だが、開発人数がたたったのか、発売予定の9月から半年以上も延期され、3月25日にやっと発売となった。

 しかし、Ritualが製作していたシングルモードを惜しむ声も多く、最終的CSCZにはTurtleRockStudio開発の「Tours of Duty」とRitual版「Deleted Scean」、そして通常のCS1.6がプレイが可能になるという、実に贅沢な仕様で発売される運びとなったのだ。

CSのバージョン1.6が出た当時、開発中だったCSCZからの先行投入という触れ込みで新しい装備が追加された。正面から撃たれた弾をすべて無効化するカウンターテロリストの専用アイテム、RiotShield。価格が安価で、ゲームの早い段階から使えるカウンターテロリスト用のアサルトライフル、FAMAS。テロリスト用のFAMSとも言えるGalilの3種類だ。特にRiotShieldは“敵の攻撃をあるていど防げる”という効果のため、導入当時から現在に至るまでCSコミュニティでも賛否両論分かれる装備だ


■ 素人も玄人も満足できるTours of Dutyで基礎を練り直せ!

足音を消して敵の頭上から奇襲をしかける。階下の薄闇にいる敵は、まだこちらに気付いていない! 右上にはプレーヤーに要求されている条件がポップアップしている
敵に捉えられていた要人を保護。救出するまで気を抜く事はできない。360度すべての方向に神経を配って警戒しよう
要人救出エリアを敵に占拠されていることもある。最後の最後で作戦が失敗したくなければ安全の確保をしつつ進もう
 CSCZで新しく導入された「Tours of Duty」モードは、CSをプレイする上で最低限必要なことを知る事ができるモードだ。ゲーム中にヒントがポップアップし、どうやって武器を購入すればいいか、いま何をやらなければならないのかを教えてくれる。

 このモードの大きな特徴のひとつなのが、マップごとに満たさねばならないクリア条件設定されていることだ。この条件をクリアーしていく事により、選択不可能だったマップがプレイ可能となっていく。たとえば「ハンドガンを使用して3人倒せ」、「合計8人以上を倒せ」、「75秒以内に敵を殲滅」、「敵より2ラウンド以上の差をつけてゲームに勝利しろ」といったものだ。

 ステージによっては使用する武器が指定されている場合もあり、自然と武器の特徴を覚える事になる。このモードではEASYからEXPARTまで4段階の難易度があり、それぞれの難易度に同じマップでも違う条件が用意されている。初心者はEasyから初めて行けば、EXPARTでこのモードを遊ぶ頃には立派なCSプレーヤーになっていることだろう。また、このモードでは新旧CSのマップが使用されているため、新規プレーヤーには既存のマップを把握でき、既にプレイしている人にとっては新たに追加されたマップを覚えるのに丁度いい。

 ちなみに、筆者の体験談になってしまうが、要人救出のマップで要人を救出しなければならないのに、味方のAIが指示を聞かずに敵を殲滅してしまい、なかなか救出の条件をクリアできない事があった。このモードでは、ゲームを進めていくとプレーヤーにポイントが付与され、このポイントを使って能力の高い味方AIを新たにメンバーに加える事が可能になっている。だから、先ほどのようにAIが指示を聞かない場合は、そのAIをチームから外して新たに能力の高いAIを加えることが可能だ。

 AIにはあらかじめスキル、協調性(指示に従える事ができるか)、勇敢さ(積極的に前へ出るかどうか)といったパラメータが設定されている。ゲーム開始当初にいるAIは能力値が低く、ゲームを進めてポイントを貯めることで、より優秀なAIを手に入れ部隊を編成することができる。結局能力の高いAIでチームを構成したことで、苦戦をしていた要人救出ミッションも「ここで待機せよ」といった指示を味方AIに出し、要人を安全地帯まで誘導する事ができた。

 CSの特徴として、敵にやられた場合は観戦者モードにうつされ、戦闘をただ見るしかなくなる。オンラインと違い、チャットする相手もいないためにプレーヤーは待ちぼうけをくらって暇になる。しかし、このモードでは無駄に空いてしまった時間を省くためにギブアップし(当然敵にラウンドを取得されてしまうが)、新たなラウンドを望む事ができるように配慮されている。ちなみに、このモードで敵味方にわかれたBOTは「Custam game」と呼ばれるオフラインの疑似マルチ対戦モードで使用することも可能となっている。

Tours of Dutyメニュー画面。Magnum Sniper Rifleで3人を倒せという勝利条件や、すでにクリアした難易度の確認などをすることがが可能だ オフラインモードでのBOTの設定画面。BOTが使用する武器などの設定も可能だ。武器をピストルだけに設定してしまえば、ゲームスタート直後のピストル戦を再現することができるわけだ


オブザーバーモードで、テロリスト部隊が一斉に突入してくるシーンを見る。こうやってみていると普通にCSをプレイしている錯覚に陥る 日本の地下鉄ステージにある交番。署員の姿は無く、すでにもぬけのからとなっている。また、ステージ内の本やポスターのテクスチャも思わず笑ってしまう物が多い



■ 人間くさい動きを見せる世界最高のBOTを使って、オンライン対戦に備えろ!

ラウンドスタート直後の様子。よく見ると持っている武器がキャラクタごとに違っている。人間同士が遊ぶときは、使いやすい武器でチーム全体の装備が固まる傾向にあるが、BOTの場合は好みの武器などの性格設定ができるため、このように武器がばらけるのだ
テロリスト最後のひとりとなったBOT。敵が通りそうな通路で待ち伏せをする、キャンプという行動をとっている。こういった動きが、BOTの動きを人間くさいと感じさせるのだ
 TurtleRockが開発に携わったことにより、一番進化を遂げたポイントは、「Tour of Duty」の紹介の部分でも触れた、高性能AIを搭載したBOTたちだ。発売前にも、CSCZのBOTはかなり人間に近い動きをすると発表がされていたが、筆者を含む多くのユーザーは半信半疑だったはずだ。だが、実際にプレイしはじめて10分ほどでその疑いもすぐ晴れた。

 実際のCSを遊ぶ際、敵の行動を把握するために味方同士で多くの会話を交わす。たとえば「Aサイトに敵の侵入を確認」といった報告が必要な場合にはボイスチャットなどで味方に注意を促すのだ。今回付属のBOTもほぼ同内容の報告をしてくれるから驚きだ。「制御室内に敵がいるぞ」といったマップ内の細かい場所についても無線報告があるために、逐一変わっていく戦況の把握が非常にしやすい。先回りして敵を待ち伏せることが基本のCSでは非常に意味のあるメッセージと言えるだろう。

 しかし、筆者が一番驚かされたのは、壁越しに足音が聞こえるようなシチュエーションで、「何かが聞こえないか?」という風に人間のような反応を見せた点。実際のマルチ対戦でも、「いま、足音聞こえなかった!?」という声を交わすことが多いが、BOTが音にまで反応を示すとは思わなかったので、かなり驚いた。

 また、このBOTたちはプレーヤーの指示におおまかではあるが従ってくれるため、テロリストが防衛圏内に入ろうとした時に「Storm in the Front」(前線に集中砲火)といった指示を出すとそれに応じて迎撃をしたり、突入前に「Cover me!」(援護しろ)と言うと後ろから援護射撃をするなどの行動をとる。そして、時にはこちらの指示に対して否定の意志を示し、別行動を取ってしまうところも憎らしいが人間味を感じさせてくれる。

 残念ながら無線で指示できる内容は、CSから実装されているラジオコマンドの範囲でしか指示する事ができないため、プレーヤー側にはCZならではの拡張無線コマンド(警戒する場所の指示とか)くらいは用意してほしかったところだ。とはいうものの、人間離れをした射撃や無機質な行動といった、これまでのBOTの特徴を、本作のBOTはこれらの問題をクリアーすることにより、より人間らしい行動をとる事に変わりはない。敵の足音が聞こえると自分の足をとめて音のする方向をさがしたり、敵が潜んでいそうな所に近づくと走るのをやめて足音を消して近づいたりといった行動もとってくれる。

 また、ネット対戦で必要なスキルとして敵を制圧する際、箱の裏などに隠れていないか探す、クリアリングという行動がある。このクリアリングすら本作のBOTは実践するため、実際にネット上で対戦しているのではないかとマジメに錯覚を起こしかけた。

 また、これまでのBOTは自分の有利不利の状況判断が行なえず、ただ突っ込んで視界に入った敵を撃ちまくるだけという印象があったが、その点も改善されている。たとえば、筆者がスナイパーライフルを構えて敵の侵入を待ち構えていた時、敵のBOTがハンドガンをもって通路から突如飛び出し、こちらの姿を確認したかと思うと一瞬で後退してしまった。これはマルチ対戦中でも見られる光景で、要するに「あ、これはやべぇ」といったような状況を人間らしい動きで再現しているわけだ。

 また、BOT側のチームが残り一人になった場合、箱の中や車の影などに隠れてキャンプし、敵が通りかかるのを待ち伏せするといった行動などが見せてくれる。とくにこのキャンプは、「死にたくない!」と考えるプレーヤーがよくやる行為で、BOTにここまでやられたら、人間プレーヤー形無しだなとも思わせてくれた。

 余談だが、これまでCSでは、有志が製作したBOTをインターネット上に公開し、それをユーザーがダウンロードして練習として使っていた。しかし、これらのBOTは進撃方向がわからないため、敵と遭遇するような通り道を設定したWAYPOINTファイルがさらに必要だった。このWAYPOINTの設定がされていなければ、線路の無い列車と同じで、箱にひっかかると前進できなくなったり、ひどい時にはなにもない所でぼーっと立ち尽くしていたりといった実用性に欠ける内容だった。さらに、WAYPOINTファイルはいくつか少量のマップのものしか用意されておらず、限定されたマップでしか使用することができなかった。このため、大会などで使われる主要なマップでもBOTが使用できないという不満は常にあったのだ。

 こうした既存の問題点をふまえてCZ搭載のBOTはWAYPOINTファイルが一切不要となっている。CSCZのAIは非常にすぐれているので、AI自身が勝手にマップの構造を学習し、自分の進行すべき最良のルートを選びだして進んでくれるのだ。さらに驚くなかれ、対応マップは収録されていたマップに限らず、ユーザー側で製作&公開されているカスタムマップにも完全対応しているのだ。

 ちなみに、カスタムマップで起動した場合、最初はぎこちない動きをしているるが、徐々にマップの構造などを自ら把握して、人間のような動きをし始める。ユーザーがマップを作成することも多く、カスタムマップファンの多いこのゲームにとっては非常に嬉しい機能とも言えるだろう。また、BOTで遊ぶ際にはBOTが使用できる武器の制限や、強さの設定ができるため、BOTにはナイフだけをもたせ、プレーヤーが練習したい武器の的になってもらう事も可能となっている。

 これまで書き記したさまざまな点をみても、これまでに存在したいかなるBOTよりも、本作のBOTが優れたAIを積んでいることが御理解いただけたと思う。とりあえず一回でもいいからこのBOTたちと戦ってみてほしい。あなたの中にあるBOTという物に対する価値観が180度変わってくるだろう。


■ 多くのファンの声によって復活した“Deleated Scenes”は、CSの流れを組んだまったく新しいゲームに!

ドアを開錠し突入する直前。銃やプレーヤーのモデルが一新されている点に注目
体に巻きつけられた爆薬がプレーヤーを恐怖に陥れる。死をも恐れない最強最悪な攻撃だ。近づかれて致命傷を負う前に倒せ
ファイバースコープにより壁越しからでも情報を収集できる。室内の敵の人数と兵装を考慮して突入しよう
敵の攻撃に応戦する味方部隊。がんばっているようだが、敵はやすやすと突破させてくれない
 さて、開発会社が変わってしまったことで、残念ながら削除対象となったRitual版CSCZだが、Ritual版期待していたファンは多く、TurtleRockStudioに開発元が変更された際、Ritual版はお蔵入りという発表に多くの人々が反発した。そのせいか、海外のCSコミュニティサイトの掲示板では「TurtleRockStudio版はただのBOTが付属されたマップパック」と悪し様にけなす書き込みもあったぐらいだ。

 結局、こういった多くのファンの声の大きさに対する配慮して、Ritual版CSCZは“Deleated Scenes”として本作に付属されると発表される運びとなった。このRitual版はTurtleRock版と起動用プログラムが別個用意されており、Tour of Dutyとはまったく別のゲームとして起動するようになっている。

 その内容は、前述した通りストーリー性の濃いもので、世界中で悪事を働くテロリスト達を片っ端から壊滅させていくといった内容になっている。プレーヤーはGSG9やスペツナズといった有名な特殊部隊員になるだけでなく、日本の機動隊員(見た目はそのままSAT)となる場合もある。

 このDeleated Scenesでは「Half-Life」、「Medal of Honor」などと同様、スクリプト形式でゲームストーリーが展開していく。たとえば、圧倒的に敵の数が多い広場にて味方のヘリが突如飛来、ホバリングをしている間に支援部隊がヘリからロープをたらしてスルスルと降下し、エリア内の敵を排除するといった映画さながらのドラマティックな演出で特殊部隊ならではのかっこよさを感じさせてくれる。

 また、Deleated Scenesではシングルプレイ用に製作されていた新たな武器として敵の戦車を破壊するためのロケットランチャーや、M60ヘビーマシンガン、南京錠を焼ききるためのガスバーナー、遠隔操作用爆弾などのアイテムが追加されおり、敵の輸送車団の先頭車両をロケットランチャーで攻撃して後続の車を足止めさせたりといった迫力のある展開が繰り広げられる。

 実際にプレイをしていて気づいたのだが、敵の中枢に攻撃をしかけると、マップ中のいたる所に敵が配置されている。敵はザコキャラといえど、場所によっては一気に8人ほどの敵に囲まれてしまうこともあるため、ゲーム中一切手を緩める事ができないぐらいに緊張を強いられる。また、敵の中には体中にダイナマイトを巻きつけてプレーヤーに突進してくる敵もおり、これを食らうとプレーヤーはほぼ即死状態に陥ってしまう。自爆テロの怖さを身をもって思い知らされることになるだろう。

 そして、敵のテロリストはただ攻撃してくるだけでなく、自分の弾薬が切れるとすぐに安全圏まで退く。そして弾薬のリロードをしてからまたプレーヤーに挑んでくるというCSならではの動きも見せるのだ。しかし、マルチ対戦とは違って、敵の弾薬は無尽蔵なので、隠れて敵の弾切れを待つこともできない。

 おまけにこれらの武器弾薬は、敵を倒しても自分では一切拾うことができないため、プレーヤーは弾薬量に危機感を感じたらマップ上にちらばる、プレーヤー用の武器弾薬を探す事になる。こういった危機を回避するためにはマップ上に配置されている爆破可能なドラム缶などを上手に使い最小限の消費で敵を倒していきたいところだ。上手く敵に気付かれる前に爆破してしまえば、1発の弾丸で最低1人から4人は倒せる。

 また、Deleated Scenesでは、武器の追加だけではなく、本来のCSとはアイテムの効果演出も変わっている。たとえば、FlashBangグレネードを食らった敵は目が見えない! とうずくまったり、スモークグレネードの煙に巻かれれば、あまりの煙たさに手でけむりをあおぎ、咳き込んだりもする。そうやって敵の気をそらしてる間に背後から近寄りナイフで一閃といった事もできるのだ。ナイフで斬りつけてもダメージをちょっとしか食らわなかったことを考えると、ずいぶんリアリスティックな演出になっている。

 そして、シングルプレイ中にやはり注目してほしいのは日本ステージだ。「エリア安全確保」のような怪しい日本語ではなく、「そこにいるのは誰だ!」や「侵入者だ! こっちにいるぞ!」などなど、比較的まともな日本語を喋るのにも驚いた。加えて、日本特有の“ママチャリ”のモデリングの精細さには驚かされた。あえて多くは語らないが、このステージを遊ぶと外国人から見た日本のイメージがどういった物なのかがわかるだろう。

 また、マップ中にはイースターエッグと呼ばれる、開発者の遊び心が見られる隠し部屋やギミックも用意されている。筆者は弾薬を探していた所でたまたま発見したのだが、日本ステージのイースターエッグはCSのマルチ対戦をしているプレーヤーには爆笑もののネタなのでぜひ探し出してほしい。

敵が大量にいるエリアにヘリからロープで降下し奇襲を試みる味方部隊。燃えるシチュエーション。しかし、降下しつつ攻撃を試みるが敵の反撃も激しい 味方のヘリに合図を送る。これから奇襲作戦がはじまるのか? という雰囲気だ。さすがスクリプトで演出を行なっているだけあって、場面場面で魅せてくれる


作戦地域まで輸送されるスペツナズ部隊。武器をせわしくいじったり、プレーヤーの顔色をうかがったりという行動が、プレーヤーの緊張を一層加速させる バーナーを使用し、南京錠を焼ききる事で侵入可能なドアやダクトも多い。切り開くことで敵に気づかれずに移動したりすることもできる



■ 今後さらに進化していくことが予想されるCSCZの今後の動向は?

 本作では、CSからCSCZ用に新たに調整、再作成されたリニューアルマップと、CZ用に新しく製作された新規マップ、合わせて25ものマップが収録されている。とくに手入れがされたマップはマップ上のテクスチャー解像度が高くなり、CS版とは比較にならないほどの見易さが出ており一見の価値はある。

 また、cs_militiaといったマップではテクスチャーだけでなくマップの構造自体にも手が加えられ、無印CSでは不評であったカウンターテロリストの突入ルートを追加するなどの変更が加えられている。本作収録のマップならば、以前のマップよりもストレスなくマルチ対戦ができるだろう。また、主要マップの再調整が行なわれたことにより、CPLやWCGといったゲーム大会における戦術も新たにかわっていくだろう。

aztec(左CS、右CSCZ)
元のマップに比べて陰影が強調されただけでなく、川の形も一直線ではなくなり地形の隆起が見られ、より自然なマップとなった。また、これによりキャラクターの視認性が少々悪くなっている感もある

dust2(左CS、右CSCZ)
空、壁、床のテクスチャーの変更だけでなく、テントやドラム缶といったオブジェクトも追加。遮蔽物の追加はこれまで培ってきた警戒ポイントをまったく変えてしまう可能性を持っている

inferno(左CS、右CSCZ)
殺風景だったただの裏路地が夜になり、街灯がつき、樽やドアなどが見えるために生活観あふれ、温かみのある風景に変更。夜になったことで若干見通しが悪くなり、突発的な遭遇戦が起こる確率は上がりそうだ

italy(左CS、右CSCZ)
テクスチャーの変更だけでなく、建物、街灯、排水溝の追加により、閉鎖感のあった風景がより街らしさを感じさせている

 ちなみに、今回のレビューを書くにあたって開発者の方から直接の情報を頂いた際、TurtleRockStudioのCEOから「我々は、限られた短い開発期間の中、RitualとGearboxからの幾つかの実用的なコンテンツをできるだけ使うようにしました。発売からの数ヶ月間は、我々がこれからもSteamを通じてこれらのコンテンツをアップグレードしていく予定です」といった予定を聞くことができた。この発言の通りにCSCZがアップグレードがされていくならば、今後もCSCZ用のマップだけでなく、CSCZ用のエフェクト等やモデルが、CSへ導入されることも期待できるかもしれない。それを考えると今からワクワクしてしまう。

 今回レビューをしてみて、発表当初からいささか時間はかかりすぎたものの、リリースされた内容はその時間に見合う内容だと筆者は思っている。買って損をした! と思うことはまず無いだろう。ただ、オンライン市場は、売れば終わりが通用しない業界なだけに、購入者にとってプラスになるアップデートが行われる事に一層の期待をしたいところだ。ちなみに、レビューを執筆した時点ではCSのプログラムを管理するSteamサーバーによって、マルチプレイにはロックがかかっており、残念ながら今回レビューをすることができなかったことを付け加えておきたい。

旧CSでお馴染みのマップは、Tour of Dutyではこのようなマップになっている。現在のCSを遊んでいる方から見ると、微妙にイメージが変わっているので、新鮮な印象を受ける

(C) 2003 Valve Corporation. All rights reserved. Valve, the Valve logo, Half-Life, Counter-Strike, the Counter-Strike logo and Counter-Strike: Condition Zero are trademarks and/or registered trademarks of Valve Corporation. Ritual and the Ritual logo are trademarks and/or registered trademarks of Ritual Entertainment. Gearbox and the Gearbox logo are trademarks of Gearbox Software, L.L.C. The Turtle Rock logo and "Turtle Rock Studios" are trademarks of Turtle Rock Studios, Inc. Sierra and the Sierra logo are registered trademarks or trademarks of Sierra Entertainment Inc., in the U.S and/or other countries. Vivendi Universal Games and the Vivendi Universal


【Counter-Strike: Condition Zero】
  • CPU:Pentium III 500MHz以上(Pentium III 800MHz以上を推奨)
  • メインメモリ:128MB以上(258MB以上を推奨)
  • HDD:730MB以上
  • ビデオメモリ:32MB以上(64MB以上を推奨)


□「Counter-Strike: Condition Zero」の公式ページ
http://www.capcom.co.jp/pc/cscz/
□関連情報
【3月12日】カプコン、「Counter-Strike: Condition Zero」を3月25日に発売
「アソビットシティ FPS祭り!」にも参加を表明
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20040312/cscz.htm
【3月2日】カプコン、「Counter-Strike: Condition Zero」の完成を発表 3月下旬に日本語マニュアル付き英語版で発売
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20040302/cscz.htm

(2004年3月26日)

[Reported by BRZRK]


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