★ PCゲームレビュー★


「EU 2」、「HoI」を生み出したParadoxが贈る
懐の深いリアルタイムストラテジー

Victoria: An Empire Under the Sun

  • ジャンル:リアルタイムストラテジー
  • 開発元:Paradox Entertainment
  • 発売元:Strategy First
  • 価格:実売6,500円程度
  • 対応OS:Windows 98/Me/2000/XP
  • 発売日:発売中


 もう3年近く前になるが、他誌にスウェーデンのParadox Entertainmentが開発したリアルタイムストラテジー「Europa Universalis」のレビューを書いた。あの当時は正直なところ「こんなマイナーゲーム、私ぐらいしか買わないだろ!?」などと思っていたのだが、どうやらそのレビューを読んで買った方が何人もいただけでなく、日本にも熱心なファンが数多く存在することを知った。その後、その続編「Europa Universalis II」(EU2)、同じエンジンを使って第二次大戦前後の世界をシミュレートした「Hearts of Iron」(HoI)が登場し、EU2は待望の日本語版発売も近づいてきている。

 EU2が1419~1820年まで400年間の世界を扱い、HoIが1936年~48年の世界を扱っている。では、「1419年以前」と「1820~1936年」はないの? と思っていたら、先ごろ、「Victoria: An Empire Under the Sun」(Victoria)が発売になった。「Victoria」は、EU2とHoIの狭間をすべてカバーしている訳ではないものの、その大半にあたる1836~1920年、ナポレオン時代以後の19世紀から第一次世界大戦終結あたりまでを扱っている。現時点では日本語化の予定も定かでないが、今回はこの「Victoria」の魅力に迫ってみたい。


■ 19世紀らしく、「世界に冠たる」と呼ばれる国を目指せ!?

これは1914年シナリオのイギリスで、ゲーム開始直後にリタイアした場合のもの(1914年にVICTORIA女王は在位していないが、そこはご愛敬)。総合得点は、国威のほか、産業力、軍事力、手持ちの資金から判定される
1861年シナリオでは、アメリカ連合(南部)の生き残りに挑戦できる。表示された主要国以外のどんな小国でもプレイ可能なので、すぐ滅ぼされそうにない小国を選び、「マップの隠蔽」(FOG OF WAR)をOFFにすれば、まったりと世界の変化を眺める、という遊び方もできる
 EU2を知らない読者のために、一言で「Victoria」のゲーム内容を説明すると「リアルな世界地図上で、当時の世界の一国を担当して、「国威」(Prestige)を発揚していくゲーム」である。EU2もそうだったが、「世界制覇」がゲームの目的ではない。内政で富国強兵を目指す一方、欧米列強の間ではむやみに戦争に訴えず(正当性のない戦争は国威を損なう)、国力をプレゼンスにした外交交渉で紛争を解決していく。このゲームにおいては文字通り「戦争は政治の手段」でしかない(もちろん、いったん戦争をやると決めたら勝たなければならない)。

 世界地図はエリアで区切られているが、EU2と違い「Victoria」では、いくつかのエリア(Province)が集まった「州」(State)というゲーム上の管理単位が新しく設定された。1エリアの小国もあれば、植民地を含む大英帝国やアメリカのように100を超えるエリアで構成される国もある。その国力に応じて、大国と小国では異なる国家戦略が求められるわけだ。

 ゲームの進行単位は、EU2同様に「1日」。リアルタイムで進むので(スピードは8段階で切換可)、何も行動せずに放っておくと、いつの間にかゲームは最後まで進んで、終了する。シナリオは、1836年からの「グランドキャンペーン」、1861年からの「A House Devided」、1881年からの「A Place in the Sun」、1914年からの「A War to End all Wars」の4本。いずれも1920年末までゲームが続くから、キャンペーンの場合で約85年間をプレイすることになる。EU2の400年に比べれば短いが、以下で述べるようにシステムは拡張されているので、適度なプレイ時間で充実したゲームが楽しめる。

 ちなみに「Victoria」の各国民は「POP」という概念で扱われている。個々のPOPは、貴族、資本家から将校、職人、農民、兵士、奴隷まで、生活レベルが上層、中層、下層の3段階に分かれた10種類の職業と、民族、宗教、政治信条などの属性、それに「政治意識」(Consiousness)と「好戦性」(Militancy)という2つの値を持つ。

 貴族や資本家などプレーヤーでは変えられない職業を除くと、資金と資源を投入すればあるPOPを別の職業に変えることができる(政治信条は国家統治の影響を受けて次第に変わる)。POPを軍人に変える(「マンパワー」を増加させる)ことで、陸軍部隊の動員が可能になる。

ハイライトされている「Ile de France」がStateで、おおよそ「州」や「地方」に相当。Ile de Franceは、Parisを含む4つのProvinceからなる。マップは3段階でズームできる

Parisの事務員(Clerk)。POPは、エリアの「人口情報」で詳細を確認できる。資本家にするには、ポップアップされている5,000の資金とその他資源が必要。また、州や国家の人口情報では、地域全体における各属性のPOP構成比率が円グラフで表示される


■ 国家の指導者たるもの、日々即断即決、懸案は先延ばしせず

「世界市場」の制御は重要。AIによるコントロールを外してしまうと、今度はPOPの必需品の輸入を忘れてPOPが社会主義にはしったりするので、全体的にはAIに任せ、自国の工場に必要で自給できない原料のみ手動で操作する、といった工夫が必要
「予算」ウィンドウ。輸入が国家の支出となるのに対して、輸出収入はPOPのものとなり、その収入に対して課税していることになるので注意。また、たとえば貿易政策を「FreeTrade」にすると関税がかけられない、といった制約もある
 プレーヤーが判断し、行なうべきことは、さまざまな資源の生産活動、生産した資源の貿易、国家財政の管理、政治・社会政策の実施、外交、テクノロジーの開発、そして陸海の軍事作戦である。「Victoria」では、プレーヤーの立場は、国家の指導集団(政治家、官僚、将軍の総体)と考えるのが妥当だろう。

 各エリアには、農業または鉱業の特産物があり、居住している農民と労働者がその生産活動に従事する。これらはいわゆる一次生産物だが、この原料を加工して二次生産物に変えられるのが「工場」だ。工場は、州単位で建設され、その州に住む事務員や職人が労働する。どんな工場が建てられるかは、その国の現在のテクノロジーに依存しており、工場建設のための一定の資源も必要だ。工場が完成しても、原料を自国の中で確保できるかどうか(足りなければ「貿易」で調達することになる)、あるいは工場を稼動させるためのPOPが足りるか、などを考えながら工場の立地を決めていく必要がある。

 一次、二次生産物は、自国にストックされ、国民各層の需要に応じて消費される。ストックされた物資の余剰は、貿易により世界市場に輸出(売却)したり、世界市場に出回っている原料や消費財が自国で不足しているなら、輸入(購入)できる。「世界市場」ウィンドウでの操作は、コンピュータAIにまかせることも可能だが、AIはあまり賢くないので、ときに高額商品を大量に輸入してしまい、国家財政が急速に悪化することがある。不足原料の買い付けは、できるだけ手動で指示したほうが安全だ。

 国家財政の基盤は、各階層からの徴税だ。税率を上げれば、国民は不満を持つ(政治意識が高まる)。支出のほうは、世界市場からの物資輸入、「教育」(率を上げるとテクノロジー開発が早くなる)、「犯罪防止」、「社会政策」、「国防」(マンパワー増加と将軍養成に影響)に加え、陸海軍の維持費(投資額により士気が上下する)からなる。

 加えて、POPが生活で必要とする物資の輸入に関しては、「関税」を課して財政収入を増やすか、「補助金」を出して輸入を促進するかを選択できる。収入と支出は、1日単位で収支が計算される(EU2の年頭収入は存在しない)。また、政治体制やその時々の政権政党の経済政策により、税率や支出項目には上限/下限の枠が付くことがある。

 シングルプレイでゲームを始めるときは、最初に時間を止めて、上記の貿易の設定変更と「予算」ウィンドウでの財政の調整、テクノロジーの開発命令まで一括で行なっておくほうがよい。初期設定のままでは、輸入超過や「教育」、「国防」支出のためにあっという間に資金がなくなって、借金生活に陥る国家が多い。ゲーム中も、財政状況の変化には絶えず注意して、現代日本のような慢性借金依存体質にならないよう、健全な財政運営を心がけたい。

 教育投資の効果は、テクノロジー開発だけでなく、POPの政治意識を高めることに繋がる。政治意識の向上は、必ずしも悪い影響ばかりではないが、もう一方の好戦性は、反乱の起因になるので要注意だ。好戦性は、社会、政治改革の実施によって改善(低下)する。「政治」ウィンドウでは、最低賃金、失業対策などの社会改革や集会の自由、報道の自由などの政治改革を実行できる以外に、政党政治の状況を確認できる。多くの立憲君主国では、プレーヤーが政権政党を変更することも可能だ。

バーミンガムの炭坑(特産物)と、ミッドランド(州)の鉄鋼工場。一般的には、その地の特産物を活かした工場を建てると効率がよい。国家の生産状況は「生産」ウィンドウで確認。ここで「労働者の自動割当」をチェックすれば、不用意な失業者の発生を抑止できるが、逆に特定工場への労働者配置を優先するといった操作もできなくなる

「政治」と社会の状況を示すウィンドウ。それぞれの「Reforms」(改革)を進めることができる(有償)。この画面のスペインは立憲王政なので、プレーヤーの任意で政権党(現在は進歩党政権)を入れ替えたり(国民感情は悪くなる)、選挙を実施できる 「テクノロジー」ウィンドウ。陸海軍の強化だけでなく商業、文化、産業の発展のために必須。各ジャンルごとに5つの細目×5個のテクノロジーが開発できる。マップ上の線は、産業テクノロジーで敷設が可能になる鉄道網



■ 列強相手の外交と植民地政策は、19世紀大国の避けて通れぬ道

イベント「明治維新」。幕末のイベント選択により、時期は史実に比べて前後する。「文明国」扱いになる以外に、西欧列強のスタート時点並みの各種テクノロジーを一挙に入手できる
アフリカの植民地。まず、この要塞のような前哨を各エリアに作っていき、最終的にはすぐ北の「Rio de Oro」州のような植民地の建設を目指す
ご覧のように、Bostonにスペイン各地からの移民がやって来ている。アメリカにとっては結構なことだが、スペインにとっては大きな問題だ。国の根本は「国民」。為政者たるもの、これを忘れてはいけない
 外交は、外交行動ウィンドウ上で行なう。EU2と同様、行動可能な回数は限定されており、どんな行動にもそれなりの資金を要するため、思ったとおりの行動ができるわけではない。具体的には、宣戦布告と講和交渉、植民地戦争の宣戦、同盟締結、関係改善、同盟軍指揮権の掌握、他国への遠征軍派遣、他国領土の通過要求、寄航権の要求、門戸開放(指定の大陸での他国の植民地化を阻止)、独立保障、その他の交渉(技術提供、領土割譲など)が行なえる。

 この中で鍵となるのは、植民地戦争と独立保障の2つ。植民地戦争、というのは、おもに西欧列強が「非文明国」(というカテゴリの独立国)に対して、植民地化のために仕掛ける戦争のことだ。「Victoria」では、中国(清)も含めアジアの独立国はほとんど非文明国なので、列強との戦争に巻き込まれる可能性が高い。当時のアジアにおける植民地争奪を映し出したルールだ。ちなみに日本は、イベントで明治維新が起きるまで非文明国扱いとなっている。

 独立保障に関しては、ある国家に対してこれを宣言しておくことで、その国を攻撃した第三国に(それが「文明国」であっても)、国威を落とすことなく宣戦できる、という特徴がある。たとえば、ロシアがセルビアに独立保障をしていたとき、オーストリアがセルビアに宣戦をすると、ロシアはオーストリアに対して宣戦できる。この仕組みと列強間の同盟関係によっては、局地戦のつもりだったひとつの宣戦が、世界大戦につながる可能性が出てくるわけだ。

 アジアに非文明国が多い、と書いたが、ではアフリカはどうだろうか? 歴史どおり、19世紀の前半におけるアフリカの大半は、「誰のものでもない」エリアなのだ(正確に言えばNativeの人々が居住している)。各国は、これらのエリアそれぞれに、前哨となる建造物(交易所、要塞、教会、給炭所)のどれか1つを建設できる。同じ州に全種類の前哨を作るか、州のすべてのエリアに前哨を作れば、その州を自国の植民地にすることができる。

 いったん植民地が成立したら、その争奪は「植民地戦争」により、文明国(列強)同士でも比較的容易に可能となる。1836年、1861年シナリオでは開始から20~30年ほどの間にアフリカや太平洋諸島は列強の前哨で分割されてしまうことが多いので、そのあと、各州ごとの植民地を成立させるため、各国間での交渉や局地戦が勃発することになるだろう。現実の19世紀末に、イギリスのアフリカ縦断政策とフランスのアフリカ横断政策が衝突し、同様にイギリスの3C政策とドイツの3B政策が衝突しては交渉で妥協が重ねられてきた「時代の空気」が、再現されている。

 経済面から植民地を見ると、原料生産地の確保、という面から捉えられる。自給自足で高度な工業製品を作り出せるようになれば、総合的国力は上昇するわけだが、ここでもうひとつ重要なのは、POPの「移住」という要素。移民はシステムで自動的に処理されるが、アメリカのような移民国家の場合、とにかく移民が増えるような経済政策が必須だ。逆にヨーロッパ諸国、特にイギリスやフランス以外の工業化が遅れて自給自足が難しい国家は、国民の流出を防ぐために、POPの生活物資を確保し、雇用を創出し、好戦性を下げる方向に政策を誘導しなければならない。

「外交」ウィンドウ。画面上のバーの右端、ペンと紙のアイコンが現在、外交が可能な回数を示している。目標とする国、たとえば日本の領域をクリックすると交渉ができるが、この時期の日本は非文明国扱いなので「植民地戦争」の対象にもなる


■ 常時「予備」を貯め、開戦で総動員、和平とともに復員するのが軍事の極意

リー将軍指揮下の北バージニア軍3個師団。軍団の分割や、同じエリアにいる軍団同士の統合は随時行なえる。実名の将軍や提督は、リーダーシップ値20を消費するごとに1人、プールに追加できる
艦隊の編成。輸送船を含む艦隊で陸軍を輸送するときは、いったん艦隊が海上に出てから、陸軍部隊をその艦隊のいる海上エリアに移動させることで乗船が可能となる
 さて、手段としての戦争が不可避になったら、勝利を目指さなければならない。「いざ鎌倉!」のための想定と備えが必要だ、という重要性は、今の日本の戦略眼と計画性のなさを見ていれば実感できるのではないかと思う。おまけに時代は19世紀、われわれの時代のような国際組織もなければ「人道的」といった概念もまだ認められていないので、戦争から守ってくれるのは自国と同盟国の軍備しかないのである。

 陸軍は、複数師団から構成された「軍団」単位で行動する。各軍団は、師団規模の複数の部隊から構成され、無名または固有名のリーダー(将軍)が指揮をとる。個々の師団は、マンパワーといくらかの資源(歩兵、騎兵など師団の種類によって違う)を消費することで動員できる。マンパワーは、通常国防支出に応じて増加するが、緊急時には農民や労働者など他のPOPを兵士に徴兵することで増やすこともできる。

 一方の海軍は、「艦隊」を行動単位とし、個々の戦闘艦や輸送船団から構成される。固有名の提督に艦隊の指揮をさせることができるのも陸軍と同様だ。艦船の建造にはマンパワーよりむしろ資源を大量に消費する。陸海軍ともに、いったん編成されてからの移動や戦闘行動は、輸送船団を含む艦隊が陸軍を輸送できるとか、同一のエリアに侵入した敵味方の軍団や艦隊が戦闘に突入し、敗北すると(全滅しない限り)隣接エリアに後退する、といった点などEU2とほぼ同様だ。

 「Victoria」の特徴、というより19世紀の国民軍という印象を強く感じさせるのが「予備軍」と「動員」のルールだ。テクノロジーで予備が作れるようになると、日常は別の仕事をしているPOPを予備軍として蓄積できる。いったん動員が行なわれると、一定の日時がたった後、全予備部隊が師団として配置可能となる。残念ながら動員は全面的なものだけで、一部動員といった技は使えないが、19世紀後半以降では「万一の備え」として考えておきたい。

 戦争の危険性が少ない平時には、陸海軍の過度な増強をするとかえって産業の発展を抑圧し、結果として国力を損なうことになりかねない。軍の整備は国力に見合った範囲を基本線に、しかし仮想敵国の軍事力も勘案して予備軍の準備を行なうのが賢明だ。明治期の日本が歩んだ道、特に日清戦争後日露戦争へ至る10年間のような軍備増強最優先に追い込まれるよりは、外交でロシアを牽制し、目的を達成できるほうが国家にとっては成功なのだ、ということを肝に銘じたい。

 エリアで行なわれる個々の戦闘に関しては、各軍団/艦隊の兵力と組織力、モラル、そして攻撃/防御力といった総合的戦力から勝敗が判断される。プレーヤーとしては、敵よりも戦力に勝る軍を、適切な機動で集中投入することぐらいしか介入できない。Victoriaにおいても、戦争は(その準備段階において)「敵を知り己を知れば、百戦して危うからず」なのである。

1881年シナリオ開始時のドイツ帝国。すでに予備の32個師団が動員可能になっている。「Mobilize」ボタンを押すと動員が開始される。動員されるPOPの種類はランダムだ 戦闘では、ほとんどの場合全滅するより士気の崩壊で敗走することが多い。士気を上げるには、軍の維持費をMAXで支払うのに加えて、陸海軍テクノロジーの開発でベースを底上げする、ということにも留意したい



■ 採りうる「戦略」の幅が広いからこそ、人それぞれの理想国家を追求できる

 ここまで「Victoria」の諸要素を概観してきたが、おそらくEU2をプレイしたことがない人からは、「なにやらいろいろな要素が入り交じった複雑なゲームらしいことはわかったけど、で、何がどう面白いの?」と問われるかもしれない。その答えは「どんな楽しみ方もできるゲームなんです」というやや抽象的な答えにならざるを得ない。たとえば、国民の幸福を優先した国家運営もできれば、植民地を基軸にした大産業帝国を築いて悦にいることもできる。EU2よりもややハードルは高いが、軍事力による欧州制覇も不可能ではない。

 同じ目標を目指すにしても、1836年時点ですでに産業革命が進行中で、インドにも拠点を持っていたイギリスでプレイするのと、まだ江戸幕府の下で太平の夢に浸かっていた「非文明国」日本でプレイするのでは、諸条件がまったく違うので、難易度はかなり変わる。だが、どんなプレイにも「挑戦できる」自由度と、その国家運営を支える国民(POP)、政治、経済、外交、軍事それぞれの特徴にリアルさを感じる度合いにおいて、現在このシリーズを凌駕するタイトルはない、と断言できる。すなわち、「Victoria」は自分自身の面白さを見出すことから始めるゲームであり、それに耐えうる奥行きを持った、長く遊び続けられるゲームなのだ。

 もっとも、初期バージョンに若干多目のバグがあることまでEU以来の伝統になってしまった点は、できれば改善して欲しいものだ。ただ、Paradoxは発売以後もかなり長期にわたってバグ修正と全体バランスの調整を行なったパッチを出し続ける、という稀有なポリシーを持つ会社でもある(そのコストは一体どこから出ているのか!?)。日本語版の発売が近いEU2はともかく、英文メッセージを読み解く覚悟のある方なら、「Victoria」をいち早く英語版でプレイするのも悪くないと思うが、いかがだろうか。

 蛇足になるが、この原稿、たまたまNHKスペシャル「映像の世紀」第1集の再放送を見ながら書いている。まさにビクトリア女王やボーア戦争、植民地の様子の映像を見ていると、遠い過去のように感じがちなこのゲームの時代が、それほど昔のことでもないのだ、ということに改めて気づかされる。21世紀初頭、再び流動化を始めた世界情勢を意識しながら、この「Victoria」をプレイすることにも、人それぞれ、何らかの意義があるかもしれない――。

(c) 2003 Strategy First Inc. All rights reserved. Victoria: An Empire Under the Sun is a trademark of Paradox Entertainment AB. All rights reserved. All other trademarks and copyrights are the properties of their respective owners.


【Victoria: An Empire Under the Sun】
  • CPU:Pentium III 450MHz以上(Pentium III 800MHz以上を推奨)
  • メモリ:128MB以上(256MB以上を推奨)
  • HDD:600MB以上
  • ビデオカード:VRAM 4MB以上(8MB以上を推奨)


□Strategy Firstのホームページ
http://www.strategyfirst.com/en/
□「Victoria: An Empire Under the Sun」の公式ページ
http://www.strategyfirst.com/games/GameInfo.asp?sLanguageCode=EN&iGameID=104&sSection=Overview

(2004年1月5日)

[Reported by culi]


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