発売元 Strategy First
ポーランドのデベロッパーTechlandが開発しているアクションシューティング「Chrome」のPlayable Demo。今年は、「Unreal II」、「Splinter Cell」、「Battlefield 1942」などなど良作盛りだくさんだった昨年度を上回るFPSの大当たり年になりそうだが、中でも今回紹介する「Chrome」は、「Half-Life 2」や「Far Cry」、「DOOM III」に比べるとネームバリューの点でやや劣るものの、よく練り込まれたゲームデザインで、ぐいぐい遊ばせてくれる。最終的なゲームの良し悪しは、ゲームデザイナーのセンス如何で決まるということを再認識させてくれた良作だ。
「Chrome」は、遙かな未来の宇宙世界を舞台にしたSFアクションシューティング。ノリとしてはスペースシップを駆って宇宙世界を駆けめぐる正義のバウンティハンターといった感じで、とある惑星の敵を撃破していくという明快なオブジェクティブのもとにチームベースのゲームプレイが展開されていく。
ゲームエンジンは、TechlandオリジナルのDirectX 8.1世代のものが採用されている。現状ならまず最高峰といって良さそうなクオリティだが、「Half-Life 2」や「DOOM III」が年度内に発売されるという前提で2003年度レベルで見ると、中の上レベルといったところ。リアルタイム処理されるオブジェクトはそれほど多くない割には、パフォーマンスはやや悪めで、これに関しては10月の発売までにより一層のチューンナップが望まれる。
そんなことより同作の大きな魅力になっているのは、スクリプトベースのシナリオ展開だろう。スクリプトベースのシナリオ展開とは、プレーヤーがゲーム内である一定の条件を満たすことで、あらかじめ埋め込まれたスクリプトがライブになり、それによって新たなストーリーが展開されていくというゲーム制作における一手法のことを指す。リアルタイムムービーを挟むのが一般的で、ゲームの緊張感を持続させる効果がある。
「なんだそんなことか」と思った人も多いだろうが、この技術に関しては実際、日本のコンソールゲームが世界を圧倒しており、欧米はまだ発展途上にある。というより、ゲームデザインの文化的相違といったほうが正しいのだが、ともあれ、「Half-Life」や「Medal of Honor」が日本で支持された理由のひとつは、このテクニックを積極的に活用していたということが大きい。
この点、「Chrome」のシナリオはさらにユニークで、支援スタイルのスクリプトが多用され、1ステージ目からハラハラドキドキさせられる。Demoでは2人1組で行動し、NPCが行き先を率先して歩いていってくれる。このためプレーヤーはそれに付いていき、彼の行動をチェックしながらバックアップしていくだけでいい。ここまではシンプルなつくり。
俄然おもしろくなるのは、敵の本拠地の側の塔にスナイパーがいることがわかった時点からで、この際プレーヤーは、単独で塔のスナイパーの除去および塔の占拠を命じられる。この任務を達成すると、森に潜んでいる彼の元に戻るのかと思いきや、そのままスナイパーライフルを構えて塔の上から俺をバックアップしろというのだ。「うお、そうくるか」とユーザーに思わせるのが、スクリプトベースの魅力だ。
本拠地内には数多くの敵が潜み、ときおり内部から敵も飛び出してくる。これを撃ち漏らしたら彼がやられてしまって即ゲームオーバーといった具合で、この制限されたゲームプレイがシナリオのおもしろさを助長している。FPSで支援主体のシナリオはなかなかないので、この後の展開も期待できそうだ。
その一方で、ゲームスタート直後、ケースを開けてアイテムを取り出し、その使い方を学ぶというチュートリアルが始まるのだが、少しでも移動しようとすると、「チュートリアルをキャンセルするか?」というダイアログが表示されてイライラするといったスクリプトベースの弱点も同時に露呈してしまっている。
また、基本的に自分の力だけではクリアできないので、「Unreal 2」に代表されるヒロイックなゲームプレイが好きな人には違和感を覚えるだろう。一長一短はあるが個人的にはさまざまなシチュエーションが体験できて好感触だった。ぜひ一度プレイしてみていただきたい。
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