現在、大ヒット中のSFアクション映画「マトリックス・リローデッド」、すでにご覧になった方も多いと思う。ご存じのようにこの作品は'99年に公開された「マトリックス」の続編に当たる作品で、いうなれば「マトリックス 2」に相当するものだ。
■ 「マトリックス」と「マトリックス・リローデッド」の間に何があったのか!? 前作は4年前の作品なので、「2を見るにあたって1を見返した」というファンも多かったはずだ。しかし、それにもかかわらず、2のストーリーを追う中で「?」と感じたシーンがいくつもあったはず。 それもそのはず。1と2の間には、1.5ともいうべきサイドストーリーが存在するのだ。1と2を補完する内容となっているのが、今回紹介するゲーム「ENTER THE MATRIX」と、6月3日発売されたばかりのDVDビデオ「アニマトリックス」である。 細かい話はネタバレになるので伏せるが、1に続く物語が「アニマトリックス」の少年の物語「KID'S STORY」と、ホバークラフト「オシリス号」のクルーの物語「FINAL FLIGHT OF THE OSIRIS」の2本だ。「FINAL FLIGHT OF THE OSIRIS」と「マトリックス・リローデッド」の間を結ぶのが「ENTER THE MATRIX」ということになる。 時系列的に整理すると、
「マトリックス」(映画第一作目) といった感じになる。ところで、「アニマトリックス」は、全9エピソードのうち、なんと4つのエピソードがオフィシャルサイトにて無料配信中だ。残念ながら上記2エピソードについては配信されていないが、ファンは見て損のない内容。まだ未見の人はぜひともチェックしておこう。
■ ゲーム「ENTER THE MATRIX」とは? 「ENTER THE MATRIX」は、映画「マトリックス」の世界観をモチーフにしたゲーム化作品だが、これまでの多くの映画ゲーム化作品のように、映画内容をなぞったストーリーになっていない。 前段で解説したように、ゲームもアニマトリックスも映画マトリックスのストーリーを補完する重大な役割が持たされており、うがった目で見ればかなり強気なメディアミックス展開を図った作品だと言える。これは、大ヒットが約束された大作映画だからこそできる大技といったところだろうか。 この重大なストーリー制作を担当したのは、他でもない、映画三部作の監督でありマトリックスの原作者であるウォシャウスキー兄弟その人。ゲーム中に挿入される専用実写カットシーンムービーは、彼ら自身が監督を務めたというよりも、劇場作品の撮影と並行して行なわれた。だからゲーム用のムービーシーンだから低予算&低品質ということはなく、映画の映像と同等のクオリティに仕上がっている。 そのゲーム専用実写ムービーは総計約1時間にも及び、PC版はメディアをCD-ROMとしてしまったためになんと4枚組になっている。ちなみに実写ムービーの映像コーデックはMPEG1ではなくDivX(MPEG4)を採用している。これも時代の流れというべきか。
そして、ゲーム中に登場するキャラクタ、大道具、小道具は映画中に登場するものと正確に同一化が図られた。人物キャラクタに至っては、映画特撮用にレーザースキャンした俳優の3Dジオメトリデータを元に、ゲーム中のキャラクタモデルを生成しているため、本人そのものに近い人物がディスプレイ中で暴れ回る。まさに強気のメディアミックス展開でしか実現しえないコラボレーション作品といったところだろう。
■ 「リローデッド」に登場する脇役がゲーム編の主人公
ゴーストは映画版のヒロイン、トリニティとは旧知の仲という設定で、ゲーム中、トリニティとの演武シーンもあるからお楽しみに。ナイオビはリローデッドの中でも少し描かれているが、映画版の準主役モーフィアスの元恋人という設定だ。 プレーヤーはゲーム開始時にゴーストでプレイするかナイオビでプレイするかを選択する。プレイ中、キャラクタの切り替えはできないので、選んだキャラクタで最後までプレイすることになる。ただし、選ばなかった方のキャラクタもゲーム中に頻繁に登場し、プレーヤーをアシストするNPCとして活躍する。 2人のキャラクタは、ステージごとに与えられた同じ目的のために同一時間軸上で並列に活躍するという設定なので、基本的なストーリー進行は選んだキャラクタによって変わることはない。しかし、ステージをクリアするための経路が異なるために、片方のキャラクタをクリアした後にプレイすれば別シナリオをプレイしている感覚で楽しめる。 あるいは、片方のキャラクタでステージクリアしたら、今度はもう一方のキャラクタで同じステージに挑戦するといったプレイスタイルで進めていくのもありだ。この場合はストーリーに対する理解は一層深まることだろう。楽しみ方はいろいろだ。 なお、ゲーム編の「ENTER THE MATRIX」の時系列は「リローデッド」の前と前段で述べたが、実際にはそのストーリーは、「リローデッド」のストーリーの時系列にもオーバーラップする。 よって、「リローデッド」で印象的な100人に増殖したエージェント・スミスとのバトル、古城でのキーメーカー争奪戦、ハイウェイでのカーチェイスシーンもゲーム中に登場するのだ。本作をプレイすると、ネオ、トリニティ、モーフィアスの三人の活躍の裏で、実はゴーストとナイオビも彼らを支えるためにこんなことをしていたというのがわかるようになっている。これこそが同作の最大の魅力だ。
「リローデッド」を観る前にプレイすれば、映画が2倍面白く見られるし、「リローデッド」を見た後にゲームをプレイすれば、映画の方をもう一度見たくなってしまうかもしれない。そうなるとまさにウォシャウスキー兄弟の思うつぼなわけだが。
■ ENTER THE MATRIXってどんなゲーム?
操作系はW、A、S、Dで移動、マウス操作で視点移動、マウスボタンで攻撃というPC向け一人称シューティング(FPS)ゲームのスタイルを踏襲する。なお、視点の切り換え操作を行なうことで一人称視点でプレイすることも可能となっている。 また、映画「マトリックス」といえば、なんといっても格闘アクション。これ無しには語れない。というわけで「ENTER THE MATRIX」でもこの要素は盛り込まれており、銃器をしまった状態で攻撃ボタンを押すことでキック、パンチ、投げのアクションを自在に行なえてしまうのだ。 操作系としてはパンチとキックのキーが割り当てられているのみ。パンチとキックの操作を適当にやるだけで映画の主役達が見せてくれたド派手なカンフーアクションを自動的にご披露してくれる。格闘ゲームのようなコマンド入力は一切不要。ただし、パンチとキックの同時押しは「投げ」操作に割り当てられているので、時折これを意識して入力すると、さらにかっこいいアクションが堪能できる。 映画の中でも炸裂するジャンプ両足キックのように、複数の敵に同時にお見舞いする攻撃アクションも自動で行なわれるので、敵に対して必ずしも正面を向いている必要がないのも楽ちんだ。 劇中においてインパクトの強かった、銃を持った状態でのカンフーアクションも、もちろんある。例えば相手の腕をねじ伏せた状態で頭部に近接銃撃といった華麗かつ情け容赦ない残虐アクションも自動で発動する。がちゃがちゃ動かしているだけなのに、かっこよくスーパーアクションが決められるという恍惚感は、あらゆる層に受け入れられそうだ。
ちなみに、こうしたカンフーアクションのモーションデータは、これまた映画制作用に採取したモーション等を流用しているとのこと。つまり、ゲーム中で見られるゴーストやナイオビらのド派手なアクションは、マトリックスシリーズの武術振り付けを担当したユアン・ウーピンの指導のもとで得られたモーションデータを元にして動いているわけだ。これはゲームファン以外のその筋の方達にも喜ばれそうなフィーチャーだろう。
■ バレットタイムアクションが本家へ逆輸入!?
この要素は、ゲームではREMEDYのアクションシューティング「MAX PAYNE」がいち早く取り入れ、そして今回、ついに本家本元が逆輸入という形でゲームシステムに取り込んだのだ。 なお、「ENTER THE MATRIX」では、ゲーム画面左側に表示されている「FOCUS」ゲージを消費してバレットタイムアクションへと移行するシステムを採用している。このモードを発動しながら、移動、銃撃、格闘といった各アクションを行なうと、プレーヤーキャラクタが置かれた局面に対応した超人的なアクションを自動的に行なってくれる。 たとえば複数の敵が自分を取り囲んできて絶体絶命の時に発動すれば、これら複数の敵に対して連続同時攻撃をお見舞いできたりするのだ。さらにこのバレットタイムアクションは、攻撃だけでなく、防御、移動の目的で活用することができ、ゲームを進める上でも重要な要素となっている。 たとえば銃撃戦の時に発動すれば、音速に近いスピードで飛来する銃弾が、ゆっくりと進んで見えるようになり、これを簡単に移動で避けることができる。これが防御的な活用だ。あるいはジャンプ中に発動すると、ジャンプ能力は数倍に跳ね上がり、とてつもない距離を跳躍できるようになる。 ゲーム中、難関に対面したときには、このバレットタイムアクションの応用活用をまず試みてみるといい。フォーカスゲージは時間と共に徐々に自然回復し、敵が周囲にいない時にじっとしていると体力ゲージ共々急速回復させられる。大量の敵が待ち伏せていると予感したときには、先へ進む前にじっとして回復というのも1つの戦略となる。
■ ゲームの難易度は低め。映画譲りの迫力満点の演出を堪能せよ
ゲーム中、同じ場所を行ったり来たりしていると進むべき方向を指し示す“矢印”表示が出てきたり、さらにまごついていると、オペレータ(仮想世界へジャックインした人間に対して現実世界から通信で指示を与える人)が、具体的なヒントメッセージを送信してきてくれる。 こうした親切設計は、普段はゲームをプレイしない人にもこの作品を「インタラクティヴなマトリックス世界」として楽しんで貰いたい、というウォシャウスキー兄弟からの配慮からくるものなのだろう。 また、通常の三人称視点のアクションアドベンチャーモード以外に、車を運転してのカーチェイス、車から身を乗り出してのガンシューティングなども用意されており、長いストーリーをプレーヤーに飽きさせない演出で見せていく手法は、まさに映画譲りの巧さだ。 BGMも映画版のものがそのまま使われており、プレーヤーを取り巻く状況にインタラクティヴに反応して演奏される。カーチェイスではエンジンのエギゾースト音とうまくユニゾンが決まるド派手なパンクロックが鳴り、エージェントからの追跡を振り切るための逃走シーンではスリリングなオーケストラ・アンサンブルが挿入されるといった具合。こうしたサウンドを絡めたドラマチックな演出も映画譲りといった感じだ。 通常のゲーム進行は、前述したように比較的楽なのだが、ステージの要所要所で登場してくるボスはかなり手強い。しかし、洋ゲーにありがちな、常人にはクリア不可の難易度ではなく、弱点を見極められて、敵の攻撃パターンに気が付けばなんとか倒すことはできる。その意味ではゲームバランスの調整も及第点があげられる。 ゲームデザイン的に取り立てて「これは新しい」という要素はないが、総括として「内容盛りだくさん」という感じでお買い得感は高いと思う。そして何より映画のサイドストーリーを覗ける快感は大きい。 「ENTER THE MATRIX」は、今回ここで画面を紹介しているPC版の他、PS2版、GC版、Xbox版が発売される。グラフィックス的に、最も進んでいるのがPC版、続いてXbox版、GC版、PS2版という順番になるだろうか。 PC版にてグラフィックス設定を最高位に設定しつつ、快適にプレイするための環境としては、CPUはPentium 4 1.6GHzクラス以上、ビデオカードはGeForce3/RADEON8500以上が必要になるという手応えだった(筆者が試した限りでは)。
Enter The Matrix video game (C) 2003 Warner Bros. and Atari, Inc. All rights reserved. All other trademarks are the property of their respective owners. Manufactured and Marketed by Atari, Inc. New York, NY.Published in Japan by Infogrames Japan K.K. TM & (C) Warner Bros. (C) Warner Bros.--U.S., Canada,Bahamas & Bermuda (s03) (C) Village Roadshow Films (BVI) Limited -- All Other Territories.
□インフォグラムジャパンのホームページ http://www.atari.com/ □関連情報 【5月16日】ATARIブースポート ~ゲーム「ENTER THE MATRIX」をプレイしなければ 映画「THE MATRIX RELOADED」の謎が解けない http://game.watch.impress.co.jp/docs/20030516/atari.htm 【5月9日】インフォグラム、PC版「ENTER THE MATRIX」を6月19日に発売 COLLECTOR'S EDITIONは6月7日に先行発売 http://game.watch.impress.co.jp/docs/20030509/matrix.htm (2003年6月13日)
[Reported by トライゼット西川善司]
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