★ PCゲームレビュー★


定番中の定番ながらも絶えず進化を続ける
「三國志」シリーズ最新作

三國志 IX

  • ジャンル:歴史シミュレーションゲーム
  • 開発/発売元:コーエー
  • 価格:8,800円
  • 対応OS:Windows 98/Me/2000/XP
  • 発売日:発売中


 コーエーの「三國志」シリーズは、正統派歴史シミュレーションゲームとして15年以上も前から作り続けられ、現在では三国志ものの中では定番中の定番として不動の地位を固めている。前々作「VII」、前作「VIII」では、全武将でプレイできるという、君主以外の武将達の人気を裏付けるような大胆なシステムであった。一種RPGのような独特の面白みもあったが、最新作「三国志IX」ではこれをあっさりと切り捨てている。今回は君主達による中国統一という先祖帰りを果たした従来どおりのシステムだが、プレイの中身は劇的に違っている。本稿では「三國志 IX」の新要素を中心に実際のプレイの雰囲気をお伝えしよう。


■ 黄河や長江の広さが視覚的にわかる新採用の一枚マップ

シナリオ選択画面。全15本はどれも個性的な内容だ
かつては90以上の数値が並んでいた劉備も、今作ではすべて70代という凋落ぶり
敵が柵や陣地を建設している。できれば完成前に叩いてしまいたい
 「三國志 IX」のシナリオは全15本(史実シナリオ10本、架空シナリオ5本)。今回は各勢力差もあまりなく、孫策や呂布も含め百花繚乱の武将達が登場するオーソドックスな史実シナリオ「194年 呂布のエン州強奪と小覇王出陣」、君主は劉備を選択してみる。

 ゲームがスタートするとまずこれまでのシリーズとの大きな違いに気づく。これまでは中国大陸は都市や州ごとに区分けされ、戦闘は州や都市ごとに用意された戦闘マップで争われていた。前情報でご存知の方も多いと思うが、「IX」ではこれまでのシリーズで初めて中国大陸が一枚で表示され、このマップで戦闘のみならず内政、外交が行なわれることとなる。マップには都市や関、港などの施設が点在し、グラフィックにより防御体制、商業規模、兵数なども敵味方問わずすべてわかるようになっている。

 また、金、食料は都市ごとではなく、勢力全体で一括して管理されるようになったのも大きい。資材をあちこちに輸送するような面倒はなくなり、軍の運用にのみプレイヤーが集中できるようになった。

 マップ上には各勢力の拠点となる都市が点在しているが、これ以外にも、陣地、砦など武将が駐留できる拠点を建設することができる。これらは敵の侵略を遅らせるのはもちろんのこと、敵の城の鼻先に建設してしまうことで、攻略のための強力な楔にすることもできるのだ。

 陣地や砦は城と同じく武将を駐留させることができる。そこでは訓練を行なったり、探索なども行なえるため、まさに前線基地としての役割は大きい。もちろん、他勢力も積極的に陣地を立てて侵略をしようとしてくる。陣の取り合いから戦が始まっているのである。

一枚絵と光の演出が絵巻物のごとく展開されるオープニングムービー


■ ゲームの進行もシステムを完全に一新

軍師は君主がどこにいても助言をしてくれる。知力の高い武将を軍師に任命するのは言わずもがなだ
内政には必ずしも政治力が必要なわけではなく、城の改修(耐久度アップ)には統率力が必要だし、巡察(都市人口を増やす)には知力が必要だ
引き抜きなどの命令を受けた武将は現地まで直接赴くことになる。北の果てから南にいる武将を引き抜くためには1ヶ月近くの留守を覚悟しなければならない
激しく戦闘中の呂布軍と曹操軍。いつ見ても他人同士の戦いは気持ちがいい
 さて、ここで「三國志 IX」の基本システムを紹介しておこう。今回1ターンが10日で、1カ月は3ターンで構成されている。1ターンは戦略フェイズと進行フェイズに分かれている。戦略フェイズで武将達に内政や、外交、探索、移動、出陣などの命令を下し、戦略フェイズを終了させると、進行フェイズで下した命令が実行されるようになっている。

 外交や探索などで遠くへ出かけると、1ターン(10日)以内には帰って来られないので気をつけたい。進行フェイズが終わると次のターンの戦略フェイズとなり、これが繰り返されるというわけだ。

 一旦進行フェイズが始まるとプレイヤーは何もすることができない。他勢力の部隊や武将も同時に行動するため、兵を前線の陣へ輸送中に、思わぬ敵の大部隊に遭遇してしまったりすることもある。そうなっては後の祭り。敵兵にじわじわといたぶられていくのを涙を飲んで見守るしかない。

 こうしたことを防ぐためにも戦略フェイズでしっかりとした行動計画を練っておくしかない。援軍をどこからどのくらい出すが、兵力の減少した部隊を退却させるか、戦わせるか。自分のみならず相手の出方をもしっかりと読んでおこう。

 ここで「三国志」で最も気になる人事関係をここで説明しておこう。武将は基本的な8種類の陣形、いくつかの兵法を持ち、それぞれの能力値のほかに猪突や剛胆、冷静などの性格が決められている。これは主に戦争に関係しており、与えた命令に対しての反応が決まる。「猪突」は命令を無視して突っ走るが、「慎重」は命令を無視して撤退してしまうこともある。

 褒美はこれまでどおりお金になっている。そのほか、官位やアイテムで忠誠度を上げることができる。が、今作では他勢力が積極的に武将の引き抜きや離間(忠誠度を下げる計略)を仕掛けてくる。部下の忠誠度はマメにチェックしたほうがいいだろう。

 またこれまでの作品と違い「信望」が低かったりすると、相性が良くてもいざ引き抜く段階で、1回で応じてくれない場合が多い。探索で探した在野の武将でさえ失敗することが多い。何回も時間をかけて説得する方がモノを言うようだ。たとえ1回失敗しても何度もチャレンジすることで相手君主の疑心を誘い、忠誠度が下がり成功する場合もあるとか。

 ちなみに「信望」とは民や他勢力からの信頼の目安だ。都市の民心を上げたり、人口を増やしたり、虎退治などのイベントをこなしたり、皇帝から官位を授かったり、上がる要因は様々だ。逆に友好国に攻め入った入り、要請を裏切ったりすれば当然下がることになる。これを上げることで外交や登用が格段にやりやすくなったり、官爵を得やすくなる。

 ところで我が劉備だが、始まった当初は曹操、呂布など強力な勢力に囲まれている上、何しろ人材が少ない。しかも本人の能力も自慢できるものではないからかなりガッカリな状態だ。しばらくは地道に開墾や商業などで国力を増し、張飛や関羽で現在の兵を訓練し、合間に人材を探索していくしかない。ゲームの序盤は、お金がかつかつだ。知力80代の関羽の助言にはあまり期待はしていなかったが、案の定ほとんど当たらない。あまりの失敗の多さに武将を探索させるのも惜しいといった状況だ。

 そうこうしているうちに、進行ターンで袁術や曹操がしきりに離間を仕掛けてきた。このままでは袁術と険悪なムードになることは必死。そこで袁術の居城寿春との間に陣を建設しよう。と、思ったら早くも曹操が軍を起こし進軍してきた。その数2万。しかもほかに4万近くの兵士を持っている。自軍は総数で9千しかいない。かなり絶望的である。

 が、慌ててはいけない。曹操の居城とはかなり距離があるため、敵が到着するには1ヶ月以上(3ターン)かかることだろう。その間に徴兵と訓練をしておこう。徴兵はその都市の兵役人口分までしかできない。小さな勢力では、やられては徴兵しを繰り返す自転車操業状態だが、季節の変わり目に補充されるので、民心さえ高ければなんとかやっていける。敵の進軍スピードに合わせてこちらの対応ができるのも「IX」の面白いところだ。

 さて次のターン、曹操軍は呂布の居城の鼻先を通ったため、呂布軍を刺激してしまったようで、途中呂布軍と交戦している。しめしめだ。なんとか全滅させてくれないかと思っていたが、目論見どおり、呂布によって散々に痛めつけられ撤退を余儀なくされている。が、安心するのも束の間、居城小沛に焼き討ちなどを仕掛けては失敗していた袁術が2万の軍を起こしてこちらに向かってきたのだ。

また軍師が探索にGOサインを出した場合にも必ず人材が発掘できるとは限らない。お金であったり、アイテムであったり、イベントであったり、様々だ


■ 部隊の編成をマスターせずして中国統一への道なし

強力な兵法を持っていても選択せず、あえて弱い兵法をほかの武将と揃えることで兵法が連鎖発動し、これまた大ダメージを与えられることも覚えておこう。関羽の兵法はご覧のとおり
兵法は出陣するときに選択した一つだけを戦場で発動できる。また戦場で発動したり、敵からくらったりすると経験値がたまり、より強力な兵法を習得できるようになる
急いで現場に急行するには「長蛇」、味方の犠牲を最小限にしたいなら「方円」などその時々の戦略に応じて繰り出せるよう完全にマスターしておきたい
 ここで軍の編成について説明しよう。1部隊には最大5人まで武将を参加させることができる。武将達はそれぞれの官位によって指揮可能な兵数が決定されており、たとえば今のシナリオで言えば、現在「忠義校尉」である関羽は1万5千人まで率いることが可能だ。

 ここで注意したいのは他の武将(たとえば兵1万を指揮できる簡雍)を同じ部隊に加えたとしても兵数は変わらず1万5千だということだ。さらに多くの兵を出陣させるには、もう1部隊増やすか、指揮兵数のより高い武将を部隊に加えなければならない。

 ではなぜ1部隊に複数の武将を加える必要があるのか。その答えが「兵法」だ。兵法は武将がそれぞれ持っている特技のようなもので、戦闘中にランダムに自動的に発動し、敵に大ダメージを与えてくれる。

 「三国志IX」では武将達の10や20程度の能力差では短期に決定的な差はでてこない。そこでより強力な攻撃である兵法を、戦闘中にいかに発動させて敵を大きく削っていくかがポイントとなる。兵法には歩兵系、騎馬系、水軍系など9つの系統があり、さらにそれぞれ3段階のレベルに分かれている(策略、攻城系などは除く)。もちろん最高レベルのほうが攻撃力は大きい。

 たとえば関羽であれば、歩兵系の兵法である「奮戦」「奮闘」「奮迅」をすべて持っている。その他、騎兵系の「突破」、策略系の「罵声」「鼓舞」など、なるほど関羽ならと、うなずけるものが揃っている。つまり部隊における兵法の数が多ければ多いほど一気に敵兵を減らせるチャンスが増える。それだけ楽に戦闘を進めることができるというわけだ。

 そうはいっても、武力が20や30の武将に関羽が大ダメージを与えられるというのはどう考えても納得がいかない。そこはよく考えたもので、100%ではないが、力の差がある武将の間で兵法が発動されると、力量の高い武将はこれをかわすことができる。

 兵法の発動はランダムとはいっても、その確率を着実に上げる方法がある。それが、「陣形」だ。陣形は16用意され、それぞれ攻撃力、防御力、対施設攻撃力、対守備兵攻撃力、機動力、視界などが異なる。

 さらに陣形によって発動しやすい兵法の系統が決まっている。たとえば、「魚鱗」は歩兵系、「雁行」は騎兵系が発動しやすいなどだ。また陣形は3列からなり、前列にいるほど兵法の発動率は高くなる。だから武将の持っている兵法を陣形に合わせて変更することでより有利に戦闘を進められるようになるだろう。


■ 必然の中にも思わぬ偶然が介在する手に汗握る戦争

施設に取り付かれるとみるみる耐久力が下がってしまう。城の耐久力を下げないためにも、安価な「陣」を手前に作り、そこで勝負をした方が効率的だ
戦闘中はどの武将もしゃべるしゃべる。実ににぎやかだ
 さて、いよいよ袁術と対峙するわけだが、敵の情報をみると2万の兵に武将が5人だ。弱い武将といえどもこれは手ごわい。劉備はこれまで徴兵した兵数をあわせても合計2万3千あまり。前線基地を建設、駐留するのに5千を使ったので、残り1万8千。当然この虎の子を任せる武将は関羽しかいない。

 関羽は最大指揮兵数1万5千のため、小沛は3千の兵で守ることになる。同伴する武将は張飛。兵法は歩兵系の奮迅に統一しておき、陣形は歩兵系兵法が発動しやすく、敵を捕らえやすい鶴翼の陣にしておく。敵が建設した前線基地に張り付く前にはなんとか遭遇したいところだ。が、さらに敵は日をおいて別部隊1万を繰り出してきた。敵の大将は蜀の滅亡までを行動を共にする廖化だ。まさに絶体絶命のピンチ!!となったところで進行ターンは終了となった。

 画面をみてもらえばわかるとおり敵との遭遇は前線基地のギリギリ手前だった(san9-b)。早速、関羽と張飛の歩兵最強兵法「奮迅」がコンボで決まり5千以上の兵を減らすことに成功。ほくそ笑んでいると、敵も5人の武将がそれぞれ兵法を発動してきた。敵武将が多いと次々と兵法を繰り出され、かなりの人数を削られてしまった。さてどうするか。袁術部隊は兵法のコンボにより約半分の1万弱に減っているが、関羽の部隊も1万弱。前線基地の兵数も5千から3千に減っている。

 新たな1万の動向が気にかかるため、劉備を使って前線基地に最後の3千の兵を輸送することにした。これでなんとか前線は持ちこたえられるのではないか。そう読んだところ、次のターンでは関羽と張飛の兵法コンボがまた決まり、予想外の6千近いダメージを与えて袁術部隊を撤退に追い込んだ。そうなると新たな1万など赤子の手をひねるようなもの。最終的には関羽と紀霊との一騎打ちが行なわれ、無事関羽が勝利。終わってみればその差は圧倒的となった。

 結局残りの兵数は関羽の9千プラス前線基地の4千で1万3千。そして最大の戦果は廖化を捕虜にしたことだ。早速劉備が彼のもとへ出向くと一回目は渋ったものの2回目で味方になってくれた。頑固な捕虜は放っておくと脱走してしまうことが多いため、捕虜の返還交渉が来たら、お金と引き換えにしてしまった方がいいかもしれない。

 さてこれで一安心かと思っていたら、袁術は西に前線基地を建設し始めた。そこから1万を、南からも兵1万8千の部隊を立ち上げてきた。さらに曹操も兵を溜め込んでいるようで全く予断を許さない状況だ。

 このように「三国志IX」では戦いは絶え間なく行なわれていく。他勢力が失敗覚悟で行なう計略や引き抜きが頻発するおかげで、中立な勢力に対しては率先して友好的に振舞わない限り、必ず攻めてくると思った方がいい。これまでの作品がぬるいと思われるくらいに戦争はシビアだ。たとえ強大な勢力を誇る曹操を選んだとしても、常に兵を補強し積極的に戦略を立てていかないと、中国大陸制覇は夢のまた夢ということになるだろう。一方弱小勢力は武将の数、質ともに低いので、序盤は投げ出したくなるほど痛めつけられることは間違いない。

 さて以上ここまでプレイしてきたが、実は1年がまだ経過していない。1ヶ月がこれまでの3倍になったことで、武将を活躍させる機会も圧倒的に増えている。能力の高い武将ほど中国大陸を東西南北縦横無尽に駆け回ることになるだろう。

 反面、中国大陸制覇までの道のりは果てしなく遠くなった。さらに今作では、強大な勢力に対しては反対連合が結成され、終盤でも決して手を抜くことの許されない戦いが中国統一まで続く。終盤でもあまりダレることなく楽しめるだろう。

 今回の「三國志 IX」では何よりも戦闘の比重がかなり重くなった。あえて言うなら「三国志Internet」に内政要素をプラスした感じだ。そのためこれまでのシングルプレイのシリーズだけを丹念に遊んできた人は、考え方を変えないと序盤から大いに苦しむことになるだろう。

 逆に、これまでの「三國志」にちょっと飽きてしまっていた人は「おっ、これは」と感じられることと思う。お気に入りの武将達の活躍が存分に見られるシステムも好感度が高く、久しぶりに中国統一の瞬間が見てみたい作品に仕上がっている。ただ、個人的にはマルチプレイがかなり普及している現状を考えると、折角システムを一新したのなら、「仮想モード」や、「I」の頃から続いている旧式のマルチプレイなどを盛り込む代わりに、LAN対戦や「Civilization」のようなメールでのマルチプレイなど新しい分野にも挑戦して欲しかった。

三国志の華、一騎打ちはやはり楽しい。相手に大ダメージを与えると兵の士気が高まるのだ

武将達による兵法コンボの威力は絶大だ

(C)2003 KOEI Co.,Ltd.


【三國志 IX】
  • CPU:Pentium II 333MHz以上(Pentium III 1GHz以上を推奨)
  • メモリ:128MB以上(256MB以上を推奨)
  • HDD:600MB以上


□コーエーのホームページ
http://www.gamecity.ne.jp/
□製品情報
http://www.gamecity.ne.jp/products/products/ee/new/san9/
□関連情報
【2003年2月24日】コーエー、WIN「三國志IX」を3月14日に発売
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20030224/san9.htm
【2002年10月3日】コーエー、「三国志 IX」最新情報を公開
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20021003/san9.htm

(2003年3月26日)

[Reported by 嶋村智行]


Q&A、ゲームの攻略などに関する質問はお受けしておりません
また、弊誌に掲載された写真、文章の無許諾での転載、使用に関しましては一切お断わりいたします

ウォッチ編集部内GAME Watch担当game-watch@impress.co.jp

Copyright (c) 2002 Impress Corporation All rights reserved.