★PS2ゲームレビュー★

来るべき戦い、通り過ぎていく人々
「ヴィーナス&ブレイブス
~魔女と女神と滅びの予言~」
  • ジャンル:群像ドラマチックファンタジー
  • 発売元:株式会社ナムコ
  • 価格:6,800円(プレミアムボックス:9,800円)
  • プラットフォーム:プレイステーション 2
  • 発売日:2月13日


 ナムコが発売する「ヴィーナス&ブレイブス~魔女と女神と滅びの予言~」(以下「ヴィーナス&ブレイブス」)は、ファンから高い評価を得た「7(セブン)~モールモースの騎兵隊~」の流れをくむ“群像ドラマチックファンタジー”。独特のゲームシステムと世界観が魅力の作品だ。




■ 100年間の戦い

長い歴史の中で、さまざまなキャラクタの登場を予感させるオープニングデモ
 「ヴィーナス&ブレイブス」の主人公はある事件によって不死となってしまった騎士・ブラッド。彼は女神・アリアに導かれ、100年後に訪れる恐ろしい破滅に立ち向かうため、仲間を募り、強い軍隊を作っていく。

 ゲームは基本的に拠点を中心としたフィールドで進行する。他の街など、ポイントに魔物が出現するので、それを退治していく。戦闘には最大7人までの投入が可能で、募った仲間から選抜し、戦いを行う。

 その戦闘を通してキャラクタを成長させていくのだが、ブラッド以外のキャラクタは、「時」の影響を受ける。フィールドを移動していくだけであっという間に時間は過ぎていき、キャラクタは年を取り、ある者は若者から大人になり、またある者は戦闘力のピークを過ぎ、衰えていく。移り変わる時間の中で、より強いパーティーを目指していくのがゲームの目的だ。

 感触としては、「プロスポーツチーム育成シミュレーション」や、「競走馬育成シミュレーション」に近いかもしれない。剣闘士や魔術師、冒険者といった職業を持ち、さらにピークの年齢幅と現在の年齢というさまざまな条件を持った入団希望者。彼らの戦闘条件を見極め、戦線に送り出していく感覚は、とても独特で楽しい。

 長い時を、期限を持ったキャラクタと過ごしていくというと、ゲームが難解のように感じたり、キャラクタに思い入れが薄くなるかと思う人もいるかもしれない。しかし、ルールは比較的優しく、キャラクタへの思い入れをプレーヤーにもたらす仕掛けもたっぷりなのである。魅力的なグラフィックの生み出す、独特の世界観と、手軽さは多くのプレーヤーにオススメできる作品である。


【スクリーンショット】
白い肌に真紅の瞳を持つ不死の主人公・ブラッド。100年の戦いのリーダーとなる 白い翼を持つ女神・アリア。ブラッドを導き、災厄に対抗できる軍隊を作ろうとする 固有のグラフィックを持つゲストキャラクタも多数登場し、歴史を彩る
女神の予言を信じなかったために、最初の拠点の鉱山の街は瓦礫と化す 街の復興のために残るというふたり。ブラッドは彼らに見送られて新たな戦いへ… 恐ろしい力を持つ謎の敵。彼らとは100年の間、何度も出会うことに
マップを移動して、あらわれた敵と戦っていく。移動中、どんどん時は過ぎていく 敵との戦い。基本的に敵は一体のモンスターだ。7人のパーティーで立ち向かう 一年の始まりには一覧表が表示される。ピークを過ぎた仲間には別れが待っている



■ フォーメーションが重要な戦闘システム

 このゲームに登場するキャラクタは、17ある「職種」のどれかについている。騎士、幻術師、魔女など、職業によって、さまざまな特徴を持っている。

 プレーヤーは、この中ら7人のキャラクタを選抜し、4×3のマス目に区切られたフィールドに配置する。
 マス目には前列、中列、後列に分けられていて、それぞれ意味合いがある。前列のキャラクタは敵と戦闘を、中列は戦闘の補助、後列は回復を行うことができる。その列にいるキャラクタは、それぞれの列で職種ならではの特技を使用することができる。

 戦闘中、プレーヤーが出せる主な指示はその列を“ローテーション”させるだけである。前列が後列になり、それ以外はひとつずつ前に繰り上がっていく。キャラクタは、職種によって列に対応した特殊能力を持っており、例えば“騎士”は、後列では自分の回復を、中列では前列の防御を行う。こういったキャラクタの特徴をつかみ、配置することで効率のいい戦い方を目指すことになる。

 また、このゲームのキャラクタのレベルアップは敵モンスターのとどめを刺したキャラクタだけだ。必然的にダメージを多く与えるキャラクタの方がレベルが上がってしまう。しかし、何体かの敵を倒したキャラクタはそれ以上レベルアップをしなくなってしまう。戦いはキャラクタを強くできるチャンス。陣形、そしてローテーションは効率よく味方を強くしていくことに関して、非常に重要な意味を持つのだ。

 列に対応したキャラクタの配置というゲームルールは最初はとまどうかもしれないが、プレーヤーに対しての配慮もされていて、序盤では、ひ弱な騎士・ウィッペルをいかに生き延びさせるかということに頭をひねる必要があり、このポイントを出発点に、どんどん作戦を考え、試すことができる。ゲームを進めていくことで、より効率のいい布陣を模索していく楽しさがある。

 陣形は、後述する“結婚”や、“親友”といったイベントに密接に関係している。増えていく情報量やキャラクタによって、どんどん選択肢も多彩になっていく。
 また、頼りにしていたキャラクタの能力がピークを過ぎ、新しいキャラクタを戦線に投入する時、そのキャラクタをどうサポートし、その職業の特性をどう活かすか、試す楽しさと共に、戦力を維持するのは切実な問題となってくる。こういった局面は、プレーヤーにより深く戦略を考えさせ、うまくいったときの楽しさは、格別なものがある。

【スクリーンショット】
7人のメンバーを選出し、フォーメーションを組む。試行錯誤は、楽しい メンバーの構成によって配置も変わる。前列を何処に持っていくかもポイント 戦闘前に敵のデータを参照できる点もユニーク。敵に対応した戦略を練ろう
ローテーションゲージが点灯する。このままでいくか? 回転させるか? 後列では回復能力を持つキャラクタの能力が発動する。僧侶は自分以外を癒す とどめを刺したキャラクタだけがレベルアップする。若い頃レベルを上げた方が有利
パーティーの戦闘力などの水位を表すグラフ。高いレベルに保つ必要がある 新しい仲間を募る。ピーク年齢など、キャラクタにはさまざまな幅がある。 さまざまな災厄が記された預言書。この「区切り」のタイミングを目指して鍛えていこう




■ 思い入れが深くなるキャラクタの相関関係、そしてアイテム

 前作とも言える「7(セブン)~モールモースの騎兵隊~」から、最も強化されているのが、ここで説明するキャラクタの“相関関係”といった部分。17の職業を持つ入団希望者の多くはランダムにデーターが作成され、ふとした“偶然”でプレーヤーにスカウトされる。そんな彼らが、独自のドラマを造り出し、強烈な個性を発揮することができるのである。

 いくつかの戦いを経たキャラクタは、陣形によってお互い想う部分が出てくる。同性のキャラクタは友情をはぐくみ“親友”状態になったり、男女のキャラクタは恋愛感情を持つことがある。
 パーティーに親友状態のキャラクタを配置することで、敵に大ダメージを与えられる「モールニー」や、味方を復活させられる「ファフニール」といった強力な“精霊”を招喚できる。この精霊は、拠点から出発して世界を探索、また拠点に戻る“遠征”の間で、1度しか使えない。強敵と相対するときの心強い味方となってくれるだろう。

 恋愛イベントが起きたキャラクタは、結婚を経て、子供を作ることがある。この子供にはプレーヤーが好きな名前を付けることができ、両親の意志と力を受け継いだキャラクタとなる。さらにこのキャラクタが成人するまでの成長に助言をすることができ、子供のキャラクタが戦いに参加するときには、優秀なキャラクタとなっているのである。2世代、3世代と世代交代をし、血を受け継ぐキャラクタによるパーティーというのは、プレーヤーに並々ならぬ、思い入れをもたらすだろう。

 恋愛や友情といったキャラクタ同士の感情は「ゲシュタルトボード」という画面で確認できる。ここには現在軍団に参加しているのキャラクタすべてが表示され、キャラクタ達は感情に従って右往左往し、時にはくっつく。

 ゲシュタルトボードではキャラクタ達のつながりの「過程」を見ることができるのも面白い。異性のキャラクタが急速に近づき、一瞬ハートが見えたかと思ったのだが、そのまま他の同性のキャラクタと友情を結ぶほうへ…。ぽつんと残されたキャラクタがちょっと哀れだ。こういうドラマが楽しめるのもユニークな点だと言えるだろう。

 「アイテム」もキャラクタ性を深める要素だ。戦闘やイベントで“剣”や“水晶玉”といったアイテムを入手することができる。職種によって装備できるアイテムが違い、効果もまた違う。アイテムを装備することで、戦いは有利になる。

 このアイテムはさらに、装備したキャラクタが戦闘に参加することで「成長」をする。しかもこのアイテムは他のキャラクタに「伝承」させることができるのである。引退するキャラクタから渡されるアイテムというのは、思い入れがたっぷりになっていくものだ。しかも何人もの手をわたっていくことによって、そのアイテムは成長を続け「伝説のアイテム」ともいえる強力なものになっていく。

 キャラクタの子孫が、先祖が使っていたアイテムを身につける。こんなストーリーを自分の手で紡ぐことができるのだ。このゲームの楽しさの、大きな部分だと言っても過言ではないだろう。

【スクリーンショット】
相関図を示したゲシュタルトボード。恋愛関係は赤、友情は青い光が降り注ぐ 友情イベント。共に戦いをくぐり抜けたふたりの強い絆を、精霊が祝福してくれる 精霊・ファフニール。敵に大ダメージを与え、さらに死んだ仲間を復活させる
結婚したキャラクタには、ハートマークがつく。友情関係は星のマーク 結婚イベント。キャラクタによっていろいろなセリフがあって、楽しい 子供の成長にアドバイスができる。成長し、戦列に加わってくれるのが楽しみだ
拠点の街を移動することで、さまざまなイベントに遭遇することがある イベントによって得られたアイテム。装備したキャラクタの能力を強化する アイテムを引き継ぐ。多くの使用者の手を経て、強力なアイテムとなっていく


■ 振り返る楽しさ、ネットの向こうのライバル

 時の流れは、主人公以外に平等に降り注ぐ。あのときのパーティー、あのときの敵、あのときの戦い。パーティーメンバーがめまぐるしく変わるだけに、普通のRPGより戦いが印象的だ。ゲームを進めていけば、さまざまな記憶がプレーヤーにもたらされるだろう。

 100年後の戦いに備えて、ただキャラを育てるだけでは中だるみをするかも、と思う人もいるだろう。しかし、ここに「予言書」が絡むと、ゲームがグッとしまる。女神の予言書には最終的な破滅の前に、さまざまな災厄が描かれている。10年後に襲いかかる災厄、三年後に来る敵、こういったイベントがプレーヤーに緊張をもたらすのだ。

 そして何より、時代を経るごとに強くなっていく敵がプレーヤーを焦らせる。世代交代は必然的で不可避なイベントだ。これをいかにスムースにこなし、高いレベルにパーティーを保つか、これにランダムのさまざまなイベントが、冒険に彩りを加えていく。

 さらにゲームをクリアすることで新しい展開が見えてくる。ブラッドの冒険が終わることで定命のキャラクタを主人公に置き、年月が過ぎていく「クロニクルモード」を楽しむことができる。このクロニクルモードで成長させたパーティーは、ネットワークモードで他のプレーヤーと戦うことができるのだ。
 ネットワークモードでは他のプレーヤーと対戦だけではなく、チャットや掲示板でさまざまなコミュニケーションも楽しむこともできる。戦いの結果はランキングなどに反映される。

 交流の場では他のプレーヤーと最強の座を競うだけでなく、効率的なキャラクタの育て方、戦略、キャラクタ自慢といった雑談も楽しいだろう。ネットワークモードをプレイするにはBBユニットが必要となるが、熱い対戦が繰り広げられるのは間違いない。
  またこのゲームはUSBキーボードにも対応している。もちろんソフトキーボードも用意されているが、チャットなどを楽しむためにはキーボードが必要になるかもしれない。


【スクリーンショット】
ワールドマップ。ゲームを進めることで、マップはより広く、多彩になる 年表。「あのころのパーティー」を思い出し、感慨にふけるのもいいだろう 自分も不老不死だという魔女・ヴィヴィ。ブラッドとどんなドラマが待っているだろうか?

■ ムービー公開!

【下の画像をクリックすると動画を見ることができます】

「ヴィーナス&ブレイブス~魔女と女神と滅びの予言~」オープニング

「ヴィーナス&ブレイブス~魔女と女神と滅びの予言~」職業紹介



(C)2000 2003 NAMCO LTD.
※画面は開発中のものです。

□ナムコのホームページ
http://www.namco.co.jp/
□プレスリリース[PDF]
http://www.namco.co.jp/home/pr/48/48-043.pdf
□「ヴィーナス&ブレイブス~魔女と女神と滅びの予言~」公式ページ「VenusWeb」
http://www.venus-web.net/

(2003年2月6日)

[Reported by 勝田哲也]


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