石井ぜんじの「GGXX」ゲーセン放浪記

ライター 石井ぜんじ(3?歳 男)
もはや40に届く勢いのオヤジゲーマー。ゲーム歴は「スペースパニック」以来約20年。最近は「ムサピィのチョコマーカー」や「WCCF」にはまっている。「イグゼクス」になってからのぶっぱなしはOKだが、ジョニーの発展性のなさにはちょっとがっかり。そのぶん別のキャラで頑張ろうと思っている今日この頃。


 「ギルティギア イグゼクス」の全国大会が、そろそろ間近に迫ってきました。予選はほぼ終了し、すべての種類のキャラクタが出そろって本番が楽しみです。予選も最後になって、名だたる猛者たちがどんどん予選を突破してきました。伝説の「ウメハラ」選手も予選を通過した模様。本選ではきっと嵐を巻き起こしてくれるでしょう。

 さて、「ゲーセン放浪記」の最終回となる今回は、これまでのまとめとして「ギルティギア イグゼクス(以下GGXX)」のシステムのルーツとなったゲームをたどってみましょう。「GGXX」にはオリジナルのシステムに加え、2D対戦格闘のさまざまな伝統的システムが使われています。それを考察してみようと思います。

高速タイプの2D格闘が出現するまでの流れ
 対戦格闘ゲームがブームになったのは、「ストリートファイターII('91年 カプコン)」の大ヒットがきっかけです。その後のほぼすべての2D対戦格闘が、この作品をベースに作られていきました。特に上下のガードシステム、必殺技コマンド(これ自体は「ストリートファイター」が元祖です)などは、2D格闘の黄金律ともいえるものです。しかし、「GGXX」と比べると、「ストリートファイターII」にはダッシュがなく、展開が非常にスローでした。また体力ゲージ以外のゲージが存在しないことも、比較するとずいぶんシンプルに感じられます。

 「GGXX」では、地上ダッシュはもちろん空中ダッシュも存在します。このレバーを2回入れてダッシュというシステムは、古くは「ドラゴンバスター('85年 ナムコ)」や「熱血硬派くにお君('86年 テクノスジャパン)」というアクションゲームに使われています。しかし、「簡単に間合いが詰められてしまい、駆け引きが薄くなる」という理由で、初期のカプコンの対戦格闘では採用されませんでした。ダッシュを最初に取り入れたのが「龍虎の拳('92年 SNK)」で、その後に出た「サムライスピリッツ('93年 SNK)」でメジャーになりました。対戦格闘が高速化するには、長い時間がかかっているのです。

 「GGXX」のような、素早いスピードで動き回るタイプのゲームの元祖はカプコンの「X-MEN('94年)」になります。このゲームは、ハイジャンプやダウン追撃、空中ガード、空中での連続技という概念が生まれた画期的なゲームでした。以降「X-MEN」シリーズはどんどん高速化し、ボタン3つ同時押しで空中ダッシュの使えるキャラも出てきました。カプコンの「ヴァンパイア」シリーズも高速タイプの2D格闘ですが、自在に空中ダッシュできるキャラクタは限られています。「GGXX」は歴史的に見てもっとも移動操作の自由度が高く、対戦格闘のひとつの到達点といえるでしょう。

 次にゲージシステムを考察してみましょう。前述の「龍虎の拳」、「サムライスピリッツ」は、ゲージシステムの元祖でもあります。しかし相手に攻撃をガードさせてゲージをため、そのゲージを消費して必殺技を出す、という概念は「ストリートファイターIIX」が確立しました。「ストリートファイターIIX」は、まだ現役で稼働しているゲームセンターもある名作ですが、このシステムの流れが「GGXX」にも採用されています。「GGXX」ではテンションゲージ、ガードバランスゲージ、バーストゲージの3種類があるので、「ストリートファイターIIX」と比較して単純に3倍の情報量がつまっていることになります。


高速タイプの2D格闘が出現するまでの流れ
 そのほか、デッドアングルアタック(ガードキャンセル)の元祖は「ヴァンパイア('94年 カプコン)」、バックダッシュ無敵の元祖は「餓狼伝説スペシャル('93年 SNK)」と枚挙にいとまがありません。しかし、これらのシステムの多くを過去の名作ゲームにたどれるからといって、そのことは「GGXX」の価値を損なうものではないと思っています。いろいろなシステムを使っても、それが統一されていなければ面白くありません。「GGXX」は開発者の理論に基づいて、各システムが修正、アレンジされています。そしてその結果、これまでの対戦格闘ゲームの課題をクリアする、新たな突破口を開いていると思います。その重要なポイントが、テンションゲージシステムなのです。

 対戦格闘ゲームの永遠の課題に、「待ち」と「ハメ」の防止があります。どんな攻撃をしてもガードできてしまうのでは待ちプレイ全盛になってしまうし、必ず受けきれないのではハメになってしまいます。いかにその中間の戦いにするか、それはシステム上非常に難しいことなのです。

 ひたすらガードを固める相手に対しては、ガードの上から削る、見切りにくい中段攻撃を当てる、投げるなどの方法が考えられます。しかしこれらの戦法があまり強力だと納得感が薄いため、開発者としては悩みどころです。そこで考えられたのがガードクラッシュというシステムですが、これは単にガードの信頼感を低くしただけで苦し紛れの感がありました。

 しかし「ギルテイギア ゼクス」から引き続いて採用されているテンションゲージシステムは、「ガードし続ければダメージをくらわないが、ガードしているとくらったときに大ダメージになる」という新しい概念を生み出しました。これならガードばかりしていると明らかに不利ですが、ガードクラッシュと比べると受けきれる可能性もあるので納得感が増しています。攻める側はカウンター効果により、ガードをさせたあとに決める連続技を変える必要があり、より深い戦略性が要求されます。ゲージをためることにより、フォルトレスディフェンスができるというのもうまいバランスで、「攻めているほうが有利になるが絶対ではない」という方向でしっかり統一されているのです。シリーズを通してプレイしてみて、その感覚の確かさには感心しました。

 対戦格闘にはまっていくと、ゲームのシステム面に対する開発者の深い思考が見えてきます。それはマニアックではありますが、ゲームを楽しむひとつの形です。いろいろな角度からゲームを見ると、ゲームの魅力はさらに増していきます。それは「GGXX」のような優れたゲームなら、なおさらのことだと思うのです。


[Reported by 石井ぜんじ]



GAME Watch編集部内GUILTY GEAR Watch担当game-watch-ggxx@impress.co.jp

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