~ライターによる、GM思い出 暴れ語り~
●担当ライターが思い入れたっぷりにゲームとGMを語ります。
■ かわいいキャラにはトゲがある!?……「PACA PACA PASSION REMIX ALBUM」
|
全てのゲーム中使用曲のアレンジが収録されているのはうれしい。それも原曲のイメージを壊さないナイスなアレンジが施されている。おまけで「パカパカパッション2」 の曲「Quender Oui」 もはいっているデリシャスな1枚。現在は入手困難だと思われるが、パカの曲が好きな人にもまだ知らない人にもお勧めしたい。しかしパカ1の「音楽は戦いです!」 というキャッチはすごいよネ。
|
いまだ現役、現在進行形でモリモリとプレイしているゲームです。
でも初代がお店にあったのって、なんのかんのいって4年くらい前になるんだよね。それからずーっと継続してやり続けているんですよ。全然飽きない。
3~4年前は巷は音ゲームーブメントで、「BEATMANIA」を筆頭にいろいろな音楽シミュレーションゲームがありました。「パカパカパッション(以下パカパカ)」もその流れでブームに乗って生まれたんだろうけど、ゲームセンターの片隅にひっそりと置いてあるパカパカを見ても誰も音ゲーだとは思わなかった。事実、私もかなり長いことコナミの「ビシバシチャンプ」の通常筐体版だとカンチガイしてました。お店の側からすれば一応音楽ゲームなので音がよく聞こえるように、と、わざわざ隔離してくれてたんでしょう。フロアのはじっこのほうにちょこんと置かれて、おまけにいつも誰もやっていない「パカパカパッション」は、私とコミットすることなくずいぶん長いこと「ビシバシ」だと思われたままでした。
それなのになぜ、私は「パカパカ」と出会ってしまったのか?
きっかけは「キャラクタ」だったのですよ。ウサギの耳をつけた胸のでっかいキャラクタがピンク色をしていた、かわいかった。同時に人がプレイしているのを初めて見ました。しかし依然としてどういうゲームなのかはわからないまま。
きっかけはどうあれ、パカパカに興味を持った私は「とりあえず1回やってみよう」と筐体の前に座りました。インストカードを読んでビックリ、なんと音楽シミュレーションゲームではありませんか。ではこのキュートなうさぎ耳のコはなんなのだ? キャラクタごとにパートが決まっている???
なんだかちっともわけがわからず4色のボタンを目押しする私。おもしろくなかった、マジでおもしろくなかった。「PERFECT」の判定がとれないし、自分がどんな音を出しているのかもわからない、なにやってるのか理解できない。おまけにすぐゲームオーバーになる。はっきりいって「ビシバシ」のほうがおもしろいよ……。
この時の私は「パカパカ」のなんたるかなどわかっていなかったのです。ボタンが似ているからといって「ビシバシ」と比べること自体間違っているし、オブジェを目押ししている時点でゲームの趣旨を履き違えているし。「BEATMANIA」で刷り込まれた偏った知識と浅い経験をそっくりそのままこのゲームに当てはめようとしても無理に決まってる、違うゲーム性の違うゲームなんだもの。
こんなに最悪の出会いをした「パカパカ」がなぜ現在は「一生モンのゲーム」なのかというとね、気がついちゃったからですよ、パカパカのなんたるかに。「パカパカの心」というものを手に入れたからですよ。
インストカードに「上手に演奏しましょ♪」って書いてあるじゃないですか。「上手にたたきましょう」ではないんです。その「演奏する」と「たたく」の違いに目覚めたときはもう、視力が低下した人が初めてメガネをかけたような、文明開化の日本人が初めて牛鍋を食したような、まさに開眼! いままでとは世界の色が違って見える、とまで思ったものですよ。頭の中が沸騰して「うおおおおおーっ!!」と叫びながら「パカパカ」をプレイしたあの日、確かにウサ耳ボインちゃんのピンクは以前より鮮やか総天然色だったと、そう記憶にインプットされています(モニタが帯磁していたのかも、今にして思えば)。
「パカパカ」は「おもしろい」と感じるまでに時間がかかるゲームです。私の場合、オブジェのひとつひとつが16分音符で、流れていくガイドラインの点滅がメトロノームだということにはたと気づいた時、初めてこのゲームの真髄に触れたような気がしたものです。 曲を覚えて、パートごとの楽譜を覚えて、他のパートの人と掛け合いながら上手に演奏する、それが「パカパカパッション」の真髄「パカパカの心」だと思うのですよ。
私の中では「パカパカパッション」は音楽シミュレーションというより「楽器」なのです。ボタンが4つしかない楽器。音色はプリセットされていて1曲中にいろいろ変わる。いっしょうけんめい譜面を見ながら、他のパートの人と1つの曲を演奏する「奏でてる感」 が気持ち良くて夢中でプレイしたあのころ、いつも私は自分のほかにも同じ曲を一緒に演奏する「仲間」 の存在を意識できたものです。「仲間」 は筐体のなか、私はこっち側だけれども共に1つの曲を作り上げるメンバーとの連帯感はゾクゾクするほどリアルに感じましたよ。
──(編注:ここから遠藤さんの妄想が始まります)──
もうゲームセンターで初代パカパカパッションを見かけることはないかもしれない。大好きな「Cool Dancing」のブラスを演奏できることもないかもしれない。高層ビルのてっぺん、こじゃれたバーのカウンターで下界の光の海を見下ろしながら、静かに流れる生バンドの演奏に耳を傾ける。曲は「Cool Dancing」。ゆっくりと進む車のヘッドライトの動きが絶え間なく聞こえるストリングスの音色とシンクロしてきれいです。ストリングスの音色の海を泳ぐようなピアノも美しい。ちょっとはしゃいだブラスも元気があってよろしい。ときたま入るカウベルとクラップも印象的、中盤のタムのきいたパーカッションの控えめな自己主張が好き……。ものすごい妄想力だなあ、自分。はずかしいですぅ。
──(編注:ここまで妄想)──
いや、本当に大好きなんですよ「Cool Dancing」が。イントロのストリングスとピアノ、それとタムのゆるやかに始まる感じが和みます。ストリングスってすごく透明感があって爽やかで、好みなんですよ。ストリングスの美しい曲は心ひかれますね。この曲のピアノも、アルペ(ジオ)よりのコードがほとんどでストリングスのゆったり感をより引き立てるような押さえた譜面が心憎い。サビのところがいいです。
よーく聴かないとわからないんだけど、ギターも意外とがんばっているんです。でも譜面が数種類しかなくてその繰り返しであまり展開しない。そこがまた「Cool Dancing」の途切れのなさみたいな部分に一役かっているような気がするんですよね。どのパートも他のパートとの調和を大切にしつつ、それぞれが自分の仕事をこなしている。オブジェが多いとか少ないとかではなく、曲としてこういう譜面が一番ベスト! という形なところが「『パカパカ』はやっぱり楽器だ」と、余計に思わせるんです。
そして全部のパートがユニゾンのループ前とラストは圧巻の盛り上がりです。たまんないですよ! 「Cool Dancing」 最高です!
「パカパカ」を始めてけっこう時間がたっていますが、これじゃまだ語り足りないくらいです。私のなかでは思い出と同時に新しい感情が日々生まれています。プレイするたびに思うこと、気づくこと、たくさんあります。伝えたいことがある限りパカパカについて語れると思うんですが、プレイするごとに何かしら新発見があるんじゃいつまでたっても語り尽くせないはずですよね。自分では「一生語れる」 と思ってはいるんですが、本当かなあ。まあ「気持ち的には」 ということだと、そう受け取ってくださいね(笑)。
[Text : 遠藤 美幸]
■ 「POWER DRIFT」……「POWER DRIFT&MEGA DRIVE」
|
最初を飾るのが「LIKE THE WIND」の秀逸なアレンジバージョン。オリジナルバージョンでは、全ての曲に加え、プレーヤーなら曲を聴いて思い出さずにはいられない、スタート時の掛け声やエンジン音などのSEも収録されてます。「LIKE
THE WIND(オリジナル版)」はSMEから発売されている「セガコン
Vol.1」などでも聞くことができます
|
ドライブゲームにしてはキャラが12人も選択でき、その中には女の子が2人もいたのが嬉しかった「パワードリフト」。こぢんまりしたコースに複雑に立体交差が絡み合い、そこで周回を重ねるこのゲームの印象は、ジェットコースターです。コースごとに数々のステージが用意され、それをこなしていく展開が好きでした。キャラの頭がびょこんと飛び出した車の絵も可愛く、起伏に富んだコースから落っこちた時の、車や背景の様相にも妙に感動しました。コースによって曲が固定されていたので、曲を聴くと各コースの背景が蘇ってきます。
私がこよなく愛していたのが、ルーシーちゃんとEコースです。ガチンガチンの硬派な格好良さで押し通すんじゃなく、Eコースの曲って程良く甘めに落としてある印象があって好きです。CDで聞くと、オープニングから全コースが1つのトラックに収まっているため、選り好みせず、フルコースで順番にいただく機会が増えます。
キャラ選択時の曲は、「行くぜー!」じゃなくて、「レースが始まるっすー!」っていう陽気な曲で、これも大好き。大勢でお祭りみたいに競り合う、賑やかなこのレースゲームの独特の味わいを引き立ててると思います。「スーパーハングオン」を思い出すAコースに続いて、Bコースはメロディーが最高な「LIKE THE WIND」。手前の曲をフェードアウトさせずにちゃんと終わらせて、サクッと次の曲に入るのがココだけっていうのは、やっぱ狙ってるんでしょうか!? 一旦切れた後に、短いパーカッションが入ってパーンと「LIKE THE WIND」のメロディーを聴かせるところが憎い、憎すぎる! プレイしていた当時の私は、断然BコースよりEコースが好きでしたが、今聴くとBコースも毛穴が開きますね。ほんと、メロディーがパキッと際立っていて、何かを語りかけてくる感じがして、この語りには、他のどのコースも勝てないよなぁーなんて。今更ながら「LIKE THE WIND」の人気が高かったのには、激しく頷けます。
続くCコース、「ボンボンボンボン・んボボンボンボン」はダメっす。私には合いません。というよりむしろ何故か、笑いのツボです。開幕の部分は、サクッ、サクッ、て言ってるパーカションが好きだし、夜の高速道路をドライブってイメージがするんだけど、途中から「スパイVSスパイ」を連想しちゃうのです。たぶん、サーチライトぴっかー、拳銃構えて横顔ちらり、みたいなスパイ映画のデフォルメされたテイストを感じるようです、間違ってます私。
一転して、お次のDコースがドンピシャっとツボを直撃! 「パシューン、ドコドコドッドコッドコッドコドコ」これ普通、出るでしょ鼻血。パシューンて何よ。メロディーにコレが重なる開幕なんて、もぉ~……シビレルー(地団駄)!! 最初のパートが終わった後、リズム帯が主導で延々と続くところは、トライアスロンって感じがして、岩場を頑なに走り続ける車の群れに似合ってて渋いー! メロディーが語るBコースとは違って、Dコースはリズムが主役で踊る、跳ねる! しかし今となってはこういう芸風が大好きだけど、プレイしていた当時は、まださほどパーカッション主体が好きじゃなかったみたいです。実は、盛り上がる数カ所のパート以外は、ちょっと単調に感じていて、その点でEコースの惚れっぷりにはやや負けてたんですよね。
そしてEコース「ARTISTIC TRAPS」です。そもそも、好きになったきっかけは、ステージの鮮烈な青空の印象と、ルーシーちゃんの服(水色に雲のような白ライン)がベストマッチに思えて、このステージばっかやってたのがきっかけ。
私にとって「ARTISTIC TRAPS」はルーシーちゃんのテーマソング(希にエミリーちゃんに浮気)です。Dコースは格好いいけどストイックすぎる。コースも岩場を激走して、スピード止めみたいなのを踏んでガタガタ揺れるなんて、ルーシーちゃんのお尻が痛そう、そんなのダメダメ、ルーシーちゃんはEコース。Dコースに似合うのは、やっぱ野郎だもんなぁ。
なんて妄想はさておき、青空なんて他のコースにも広がっているわけで、やっぱりこの曲の魅力には、早い時期から強烈に魅かれるところがあったみたい。開幕パートのメロディの、ブラスっぽい音色も好きだし、和音を作って重なっていくところも良く、パーカッションもリズミカルでうきうきしてきます。続いて、メロディーがにゅーんと尾を引いて落ちて、肩の力が抜けるところが、そつなく落としてある感じ。ここではレースの緊張感より、むしろ日常臭さを思わせるのです。それらがループして次のパートに移り、どんどん盛り上がってぐいっと哀調に変わると、メロディーラインが胸に刺さる! 涙だって出ますよそりゃあ、切なさ一杯胸一杯、青空に広がる印象です。
どうして、こんなにも上手く感情を引き込んでくれるのか。それこそが「ARTISTIC TRAPS」と呼ぶにふさわしいのかもしれないと、改めて聴いて思いました。実は当時、「LIKE THE WIND」と「ARTISTIC TRAPS」のタイトルは、逆でもいいんじゃないか、と思ってたんです。ただ青空と雲の似合うこの曲(Eコース)にも、「WIND」って単語を使ってほしかった、という単純な理由でした。むしろBコースは宇宙。途中でメロディーが無くなってパーカッションがカラカラ鳴る辺り、びゅいーんってメロディーが入るところなんて、SPACEナントカってタイトルが似合うんじゃないかなぁと思ってました。
まったく余談ですが、当時といえば中学生。クラスの前の席の友達が、ルーシーちゃんそっくりのショートカットだったので、私が勝手に「ルーシーちゃん」と呼んでいたら本人も気に入ってくれ、いつの間にか周囲にそのあだ名が定着していました。……しかし、元ネタを一体クラスの何人が知ってるのか? それは、スタート時の英語の掛け声が何て言ってるのかと同じくらい謎でした。
[Text : 河本 真寿美]
|