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[Viva! GM]

 マイペースに展開中のGM(GAME MUSIC)フリークによるGMフリークのためのGMコーナー!「Viva! GM」。スペシャル連発の2回目となる今回は、すぎやまこういちさんのコンサート「第16回ファミリークラシックコンサート ~ドラゴンクエストの世界~」に河本お姉さんがお邪魔してきました。初のクラシックコンサートはどうだったのでしょう?


■「第16回ファミリークラシックコンサート ~ドラゴンクエストの世界~」コンサートレポート

 指揮とMCをすぎやま氏自ら担当

 すぎやまこういち氏が全国で開催しているクラシックコンサート「ファミリークラシックコンサート ~ドラゴンクエストの世界~」は、16回を数えるファンにはおなじみのイベントとなっている。今回は、8月28日、池袋・東京芸術劇場 大ホールにて開催。「ドラゴンクエストIV 導かれし者たち」をフューチャーした内容となっており、昨年発売されたプレイステーション版で追加された曲も含まれていた。

 すぎやま氏が自らタクトを振り、演奏を担当したのは「神奈川フィルハーモニー管弦楽団」。ゲストとして朝枝信彦氏がコンサートマスターを担当し。すぎやま氏の軽妙なトークが味わえるMCも、このコンサートの大きな魅力となっている。

 夏の蒸し暑さがぶり返したこの日、17:00の開場時間前になると、コンサート会場の前は人だかりで埋まっていた。会場は、正面にパイプオルガンが設えられていて、3階席まである広いホール。集まった2,000人近くのお客さんは、20代の友達同士で来ている姿が比較的多く、もちろん親子連れの姿も多数見受けられた。




【プログラム】

 ●前半の部

 ・序曲 Overture

  「ドラゴンクエスト」(以下ドラクエ)と言えば、オープニングタイトルと共に流れるこの曲。誰もが知っていると言っていい「序曲」が高らかに演奏されて、コンサートの幕がまさに切って落とされたという感じだった。そして、すぎやまこういち氏によって、楽団、ゲスト・コンサートマスターの紹介が行なわれ、次に2曲が続けて演奏された。

 ・王宮のメヌエット Menuet
 ・勇者の仲間たち Comrades(間奏曲~戦士はひとり征く~おてんば姫の行進~武器商人トルネコ~ジプシー・ダンス~ジプシーの旅~間奏曲)

 「王宮のメヌエット」は、ゲームをプレイすれば必ず何度も耳にする、城の曲。そして曲が次々に展開していく「勇者の仲間たち」は、とても聴きごたえがあった。フィールドを歩くときの曲「戦士はひとり征く」は、ブラス・セクションがメインを奏でるところが、東奔西走する孤独な旅の戦士というイメージを非常によく表現していた。

 また、カルメン調が印象的だったのは「ジプシー・ダンス」。タンバリンが賑々しく曲を盛り上げ、強くてしなやかなジプシー姉妹のダンスシーンを彷彿とさせる曲。

 ・街でのひととき In a Town(街~楽しいカジノ~コロシアム~街)
 ・勇者の故郷~馬車のマーチ Homeland~Wagon Wheel's March

  街での曲を集めた「街でのひととき」に続いて、勇者の故郷の街の曲、仲間と共に旅をする曲が演奏された。仲間がいることによって風情ががらりと変わるフィールドの曲「馬車のマーチ」では、ブラス・パートが徐々に増えて重厚さが増していき、ストリングスが束になってボリュームが上がっていく辺りに、馬車が行く力強さを感じた。

 ・立ちはだかる難敵 Tough Enemy

  リズム隊が主導を握って大暴れする、激しい印象の曲だった。この直前のすぎやま氏のMCにもあった通り、これはPS版で追加された2曲のうちの1曲。「ハードの進化に伴って、ゲームの曲数も増えてきたが、増えすぎると1曲の印象が薄れてしまう。初代の『ドラクエ』のときは、曲数が少なかったから『荒野を行く』はプレイした誰もが覚えていた。だから、『III』の途中でこの曲が流れたとき、ドキッとする効果を生んだ。必要なものだけを作るようにしているが、PS版で『IV』が発売される際に必要を感じて作った難敵の中ボスに挑むという曲です」という説明があった。

 

●後半の部

 ・恐怖の洞窟~呪われし塔 Fightening Dungeons~Cursed Towers
 ・エレジー~不思議のほこら Elegy~Mysterious Shrine
 ・のどかな熱気球の旅 Balloon's Fight
 ・海図を広げて Sea Breeze

  休憩を挟んで後半の部では、様々な旅のシーンを思い起こさずにはいられない曲が、一気に4曲続けて演奏された。

  「呪われし塔」を聴けたことは、自分の中では収穫だった。というのも、ゲーム中で受けていた印象は「『III』の塔よりも更にヘンテコさが増した塔の曲」という程度だったのだが、おそらく最初からすぎやま氏の頭に描かれていた設計図通りと思われる今回の演奏を聴き、全く印象が変わったのだ。ヘンテコと感じていたメロディーは、鉄琴と木琴によって何とも見事に不思議感たっぷりなメロディーに化け、ストリングスの和音も重なって、高くて不安定な塔のイメージにぴったり! 落とし穴に落ちるかもしれない、しかもモンスターも出てくるし……といった不安な感覚を、まざまざと思い起こした。古いハードの音源が大好きな私だが、とりわけこの曲に関しては交響曲を1度は聴くことをオススメしたい。

 「のどかな熱気球の旅」の前半は、ブラスの中でもフルートなど小さめの金管楽器だけを用いた四重奏で演奏されるのだが、この素朴な4つの音色の重なり合いが素晴らしい! 大地を進んで行くのとは違い、風に乗って気球でのんびり旅する心象をすごくうまく引き出していると感じた。

 また、そこから「海図を広げて」に進むと、今度は海の広大さを思わせる。俄然荒っぽい感じになり、ストリングスとブラスがそれぞれ忙しく出たり消えたりする様が、波に揉まれながら船を進めて旅するシーンを連想させる。

 ・ピサロ~ピサロは征く Pissarro
 ・謎の城 The Unknoen Castle
 ・栄光への戦い Battle for the Glory(戦闘~邪悪なるもの~悪の化身)
 ・導かれし者たち Ending

  「ピサロ~ピサロは征く」も、PS版になって新たに増えた曲。これについて、すぎやま氏からMCがあった。「ピサロは悲劇的でありながら、ある種特異な人物。ロザリーに恋して叶わず、ある時激情にかられて部下を率いて攻めてくる……そんなピサロのための曲を作る必要を感じた」という。この曲は最初、フルートとバイオリンで優しい感じで始まるのだが、ブラスが入って音色が太くなり、メロディーも段々と不穏な感じになっていく。パーカッションも加わってどんどん不吉な感覚が増し、一番盛り上がる部分ではピサロの感情の大嵐が吹き荒れる、といった感覚を覚えた。

 その後一転して、静けさを感じさせる「謎の城」が、弦楽合奏によって演奏された。ここでは朝枝信彦氏によるバイオリンソロが奏でるメロディが美しかった。

 そしてプレーヤーにとっては印象が深い、戦闘曲のオンパレード。とりわけ「悪の化身」では、「これほどまでの破格の強さをもつ相手と生を賭して闘う」という妄想をかきたてる。十六分で力強く刻まれるリズムにのせて、木琴とブラスが甲高い高音を急に入れてくるのが、感情に突き刺さる感じだ。自分の中に持っている、好きなボスの曲=「破綻系」のルーツが見えた気がして、個人的にはこれも非常に興味深く収穫だった。

 ●アンコール

・亜麻色の髪の乙女
・花の首飾り
・そして伝説へ

  アンコールでは、先ごろリバイバルで大ヒットして若い世代にも親の世代でもわかる、すぎやま氏の代表作のひとつ「亜麻色の髪の乙女」が演奏された。「『ドラクエ』コンサートで『ドラクエ』以外の曲をやるのは初めて」とのMCがあり、また、「最近ヒットした曲は、メロディーの5小節目の音程が変えられている」との説明が、楽器を使って丁寧に行なわれ、会場に来た人はその違いを実際に聞き比べることができた。

 アンコールの2曲目では、これまた歌謡曲の「花の首飾り」が演奏された。こちらも、あまりにも有名なすぎやま氏の代表作。すぎやま氏をドラクエでしか知らない人にとっては、驚きだったのではないだろうか。むしろ、子供の付き添いで来場していた父兄の方々に向けてのサービスとも感じられる選曲だった。

 そして鳴りやまない拍手の中、何と3曲目までアンコールに応えるというサービスの良さ! 「一度舞台の袖に戻って、もったいぶって出てこようかとも思ったけれど、このままやります。曲名は言いません、これを知らなきゃモグリ!」というMCに続いて演奏されたのは、ロトシリーズのラストを飾った名曲「そして伝説へ」。

 締めくくりはやはり「ドラクエ」で、最後の最後までサービスたっぷりに楽しませてくれたコンサートだった。帰り際には、ほのぼのした中にも、ちょっと熱気を帯びた親子連れや、友達同士の会話で、「やっぱりナマはいいね」、「『V』、『VI』がPSで出ないかなぁ」、などと口々に交わされていたのも印象的だった。

N響版:「ドラゴンクエストIV」導かれし者たち+オリジナル・ゲームミュージック
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(C)アーマープロジェクト/バードスタジオ/ハートビート/アルテピアッツァ/エニックス2001
 それにしても、序曲のファンファーレから毛穴が開いたのは、生演奏のハンパじゃない破壊力のせいだったと思う。もちろん、「ドラクエ」だったからこそ催した感慨は多かった。ベタな例え方をすると、白黒写真はそれはそれで味わいがあるけれど、急にフルカラーの色彩を帯びて迫って見えくるような、そんな感じがした。それによって、概ねの曲には感銘したし、逆に自分の思っていた色と全く違う色付けがされて、「そ、そうなの!?」という裏切りによる驚きと一瞬の戸惑いの後、その色使いのとりこになった曲もあった。様々な個性を持つ数々の楽器が重なり合って響いてくるひとつひとつの音楽は、時に優しく、時に険しく、感情に様々な波を生み出していく。すぎやま氏の言葉通り、まさに心のご馳走だ。

 このコンサート、「ドラクエ」だから聴いてみたい、という理由で十分。みなさんも機会があれば是非足を運んでみて下さい。絶対、損はしませんよ!

 

□すぎやまこういちオフィシャルHP「すぎやまこういちの世界」
http://sugimania.com/
□SME・ビジュアルワークス  ゲームミュージックサイト
http://www.sonymusic.co.jp/gamemusic/
□SME・ビジュアルワークス  『ドラゴンクエスト』サウンド・トラック紹介ページ
http://www.sonymusic.co.jp/Animation/DRAGONQUEST/index.html

 

[Report:河本 真寿美]



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 (2002年8月29日)

  [Text by 遠藤 美幸 ・ 河本 真寿美 / Produced by 佐伯 憲司]



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