本稿ではECTSに出展された残るビッグタイトルをいくつか紹介していく。1本目は連日お伝えしているBlizzardの次回作「Warcraft III:Reign of Chaos」、2本目はNovalogic、3年ぶりとなる新作ヘリシミュレータ「Comanche 4」だ。
■ Blizzard「Warcraft III:Reign of Chaos」
前作の発売以来、実に5年以上も月日が経過した今なお発売日すら明らかにならない「Warcraft III:Reign of Chaos」だが、先日の内覧会で「World of Warcraft」の向かいに設置されたデモ機をプレイした限りでは、「もうマスターアップでいいじゃないか」と言いたくなる完成度だった。おそらく、これからマルチプレイ時の各種族間戦争におけるバランス調整に入るところなのだろう。
本作は、前作にあたる「Warcraft II」とはまるで別物とすら思えるほどの大きな変貌を遂げている。まず第一にグラフィックに3Dを採用し、派手な3Dエフェクト効果に加え、ユニットの動きが格段になめらかになり、さらに飛行ユニットの飛翔感がよりリアルな形で表現されるようになった。システム部分における最大の進化点は、マップ上にランダム処理で中立の建物が自動作成されるようになったことと、ヒーローユニットを中心とした大規模戦闘が各地で展開されるダイナミックな戦闘システムの採用にある。
ヒーローユニットは敵を倒すことで得られるマナストーンを消費することで雇えるユニークユニットで、森をなぎ倒したり飛行が可能になるといった個性的なアビリティを備え、かつヒールやマジックレジスト、ディスペルマジックといったスペルを唱える能力を持っている。グラフィックも個性的で、今回のデモで特に印象に残っているのは、Night Elves族で雇えるヒーローユニットDark Nightだ。馬上、矛を振りかざし最前線に立つ姿は、今すぐ使ってみたくなる気にさせる圧倒的な魅力を感じた。
ヒーローユニットは、わざわざ特記するまでもなく特別扱いのユニットで、敵を撃破することで獲得できる経験値でレベルアップが図れ、使えば使うほど能力が上がっていく。仮に死亡してもそのレベルで再雇用でき、大事にとっておく理由は特に見あたらない。常に最前線で戦わせるべきユニットだ。また、フィールドに落ちている宝を拾って使用できるのもヒーローユニットのみ。さらに彼らは一定時間、上杉謙信の騎馬突撃的な無敵ぶりを発揮できるスペシャルスキルを持っている。ただし、時間経過後はHPが1になってしまうため、使いどころに頭を悩ませそうだ。Blizzardが今作の戦闘をどのタイトルより新鮮でおもしろくするために行なった最大の工夫はヒーローユニットの採用にある、といえるだろう。念のために書いておくと、空を自由に飛べるDragon Nightは女性が竜に乗っていた。この辺のファンタジーまわりのバランス感覚の鋭さは、さすがBlizzardというべきで、Warcraft IIIは日本人にも慣れ親しみやすい世界観になっている。
ゲームに登場する種族は、Humans、Orcs、Night Elves、Undeadの4つ。Night ElvesとUndeadは新規参入種族だが、特に人気が出そうな種族がNight Elves。彼らの拠点は“木の精霊”で、いつもはどっかり腰を下ろして、RTSにおける各種建物の役割を果たしているが、彼らを立ち上がらせて好きなポイントへ移動させることも可能となっている。建物の大きさがそのままユニット化するので、彼らが行動するさまは、さながら木の葉に身を包んだ巨大なゴーレム集団の大移動のようで、かなりの迫力がある。便利なのが防御塔や壁の役割を果たすユニットも移動可能なところで、資源に無駄の少ない種族といえそうだ。
一方のUndeadでは、内政ユニットAcolyteがおもしろい。独自スキル「Sacrifice」を使うことで、StarcraftのZergのようにひたひたと領土を拡大していくことができる。Sacrificeがやっかいなのは森も押し倒す威力を備えていることで、空を飛ばなくとも自由に森を挟んだ先の領土に押し寄せることができそう。このUndeadにしろ、Night Elvesにしろ、Starcraftを彷彿とさせる要素をゲーム内にふんだんに取り入れており、Starcraftユーザーもばっちりハマれる仕様になっている。
ECTSで配布されたプレスリリースによれば、Warcraft IIIの発売は2002年の冬で、価格は55ドル程度。内容は飛び切りのものを感じたが、ユーザーの手に届かなければ意味がない。実際の発売日がいつになるのかは不明だが、少しでも早い発売を願いたいところだ。
■ NovaLogic「Comanche 4」
ECTS会場お膝元のロンドンに子会社を持つNovalogicは、ホールの隅の小さなブースで、ヘリシミュレータとしてはもっとも古い歴史を持つ人気シリーズ最新作「Comanche 4」をひっそりと展示していた。実はこれが世界初公開。ひっそりと出展されながらもパッと見で「これは凄い」と思わせるインパクト抜群の内容で、デモ機の隣に常駐していた女性スタッフも、口角泡を飛ばすような勢いで「Commanch 4」の特徴を説明しつつ、次々と敵ヘリを撃墜していた。
今作の特徴は、ひとつはDirectX 8(もしくは8.1)およびハードウェアT&L採用による3Dグラフィックの正式サポート、そしてもうひとつが初心者でも手軽に楽しめる3Dシューティングモードの搭載だ。Commanch 3は、2Dグラフィックを立体的に見せる疑似3D技術によってゲーム世界を構築していたが、本作ではフル3Dで描かれ、見違えるように美しくなっている。もちろん、ただ単純に美しいだけでなく、たとえば、海上で低空飛行を行なった際の、外へ押し出すように円形に吹き上がるさざ波の表現だとか、同じく砂漠地帯での粉塵の吹き上げといった処理が、凄まじくリアルに再現されている。爆発のエフェクトも見事で、近距離で爆発を興すと、その噴煙でまわりが見えなくなる。
一方、W、A、S、Dでヘリを手軽に操作できるアクションゲームファン向けのシューティングモードも良好な出来映えだ。このモードでは、ゲーム性に特化した仕様になり、微妙な操作を行なわずともその場滞空が可能で、ミサイルの発射感覚もアバウトでガンガン連射できるようになる。思い切った仕様といえるが、その分敵の攻撃もアバウトで、通常のヘリシミュレータファン向けのシミュレータモードとは本質的に異なる、ヘリによる3Dアクションシューティングといった内容に仕上がっている。コンセプトとしてはヘリ操作に対する知識が0の状態から、5分ですべての操作をマスターし、楽しく遊べるようにする、ということで、これまで敷居の高さが定評だったフライトシミュレータにちょっとした風穴を開ける歓迎すべき行為と言えそうだ。
ちなみに3Dエンジンの搭載により、各種建物や地上兵器、その他一般車両といったオブジェクトもすべて3Dで表現され、そのすべてを破壊することが可能という。ミッションは全部で30以上、ステージパターンも都市や港のほか、田舎町やジャングル、砂漠などが用意される模様だ。気になる発売時期は11月となっている。レポートで取り上げた大作の中では比較的早いスケジュールとなっているのが嬉しいところ。発売を楽しみに待ちたい。